魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
しっかし番外編どうしようかな······千恋メンバーをこっちに来させるかサノバメンバーを向こうに行かせるか······
1
これは、七年前の話。
その時、彼────一ノ瀬巽は人生で初めて体調を崩していた。
理由は風邪。原因は不明。
群発頭痛────別名、自殺頭痛という、本来アルコールによって誘発する病気を発症していた────のだが、アルコールを摂取しているはずのない年齢であったが為に医者はそれに気づかず(当たり前である)自宅療養をしていた。
何日も苦しみ続けて、学校を休み続けて一週間。
担任教師は『学校に行きたくがないための仮病』と判断したのか、クラスメイト全員に『一ノ瀬君に学校に行こう、と言いに行こう』ととち狂った発言をし始めた。全員渋っていたものの、最終的には逆らえず────結果としてクラスメイト+担任の系31名が一ノ瀬家を訪問した。
一ノ瀬家は住宅街を少し外れた雑木林を超えた先にあるちょっとした豪邸だった。
門をくぐり、彼等は叫んだ。
「一ノ瀬くーん!!」
ガシャアアアアン!!
────その呼びかけに返ってきたのは、彼の声ではなく、ガラスの割れる音。
そして、地面と平行になって飛んでくる、1人の中年男性と、リビングにあるような長机。
そんな、ありえない光景が、突如皆の目に飛び込んできた。
慌てて担任が家の中に入ると────
そこには、既に息をしていない両親の身体を虚ろな目で揺らして、話しかけている一ノ瀬巽の姿があった。
2
「────それが、七年前。」
「「「「「待って色々追いつかない」」」」」
────そして数秒の沈黙。
「なんでリビングにおいてあるようなテーブルが水平に飛んでくるんだよ犯人と一緒に!!いや多分一ノ瀬がやったんだろうけど······!!」
「七年前って······今私達が16か17だから······大体小学三四年生くらい?」
「え、その時からあのパワーですか?」
「俄には信じられない······いや、信じたくないんですけど」
「うん、気になるのはそこなんだ?」
語っていた和奏はひとつため息をつき、肩をすくませる。
「いや、こんな部屋があってその事件と照らし合わせたら何となくわかるわ!!······最後以外は」
確かに柊史の言い分はよく分かる。
「まあ、流石に報道規制されてたからねぇ、私達の証言なんて聞いてもらえるわけないし。ま、取り敢えずこれが経緯だよ。」
「······つまりその犯人を殺しに行ってるかもしれないって······事だよね······止めなきゃ!!」
「でも椎葉センパイ。どうするんです?例えセンパイが把握していても私達は何も知りません。多分センパイのの事ですから手掛かりは何一つ残ってないと思いますし······」
「確かに······少なくとも私が事情を知ってるのはあっちだって知ってるから······もし私が氷室さんとかその辺の刑事さんに教えてしまえば止められるかもしれない、と考えたならこの家に復讐相手の居場所なんて残ってないよね······」
「······結局手詰まりですね······」
と、その時。
電話の着信音が鳴り響いた。
「······?俺のケータイ······海道から?」
何かあったのだろうか、と首を傾げながら電話に出る。
『お、もしもし、柊史かー?』
「おう、いきなりどうしたんだ?」
『いやあ、実はさっき巽に会ってさぁ────』
「······は?」
3
丁度仮屋和奏がオカ研部室へ行く数分前。
「七年ぶりだな、覚えてるか?」
一ノ瀬巽は、家族を殺した男を追い詰めていた。
唯一の出入口を背に、じわりじわりと家の奥に追い込む。
「ひっ······!!」
男は後ずさり、壁際まで追い込まれた。
その瞬間、距離を詰め、持っていたナイフを首に突きつける。
「······ひとつ聞かせろ、何で俺の家族を殺した?」
七年越しの疑問。
何故、住宅街の外れにあった家を襲撃したのか。
何故、他の家ではなく、一ノ瀬家を狙ったのか。
「わ、わからないんだ······!!」
しかし、返ってきた答えは想像の斜め上をいった。
「······巫山戯てんのか?」
「ふ、巫山戯てない!!わ、私は────あの事件の二日前からの記憶が無いんだ!!」
────何を言っているんだこいつは······!?
「き、気がついたら病院のベッドの上で······俺が人を殺してしまったのを知ったのもその時だ!!」
「巫山戯るなよ!!俺はしっかり覚えてる!!あの日!!お前は俺の事を人質にしようとした!!ただの子供の方が人質としては便利だ────その程度の思考ができる頭はあったはずだ!!それに!!貴様はあの時しっかりと、理性的に喋っていた!!」
『────っち、おいそこのガキ!!こっちに来い!!』
『ほら奥さんよぉ、子供殺されたくなかったらとっとと金を出せ!!』
「それで覚えてないだと!?巫山戯るのも大概にしろよ!!」
「し、知らない!!本当に知らないんだ······!!」
一瞬、一ノ瀬巽の動きが止まる。
もしこいつが言っている事が本当だったら────
頭を振り、思考を戻す。本当だろうが関係ない、結局自分の家族を殺したのはコイツなんだから────殺して何が悪い!!
殺意を固め、今度こそ男の喉にナイフを刺そうとした────その時。
「ひっ、く、来るなっ!!」
巽の後ろを見ながら、その男はそんな言葉を口にした。
思わず、後ろを振り返る────が、何もいない。
「く、くるな······こ、来ないでくれえええええええ!!」
絶叫。
殺そうと近づいていたために耳元でその絶叫を聞いてしまった巽は怯み、ナイフを喉から離してしまった。
「ぐおっ······!?」
「く、来るなって!!くるなああああああああああ!!」
その隙をついたのか、無意識なのか、男は走り出した。
「っ······!!待てこらぁ!!」
後を追いかけて、玄関を通り抜ける。
その時、もう男の身体は宙を舞っていた。
階段から、飛び降りた。
────ぐしゃっ
「······なっ!?」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
男が転落死した。その事実を受け入れるまでに数十秒かかった。
慌てて下を覗くと顔面の潰れた男の死体が転がっていた。誰が見ても、死んでいるというのがわかるくらいの出血が地面に広がっていた。
「······冗談だろ······?」
落ち着いて頭の中を整理する。
────あいつは、何に怯えていた?
確かに刃物を持ち、近づいた時も彼は怯えていた。だが、その後。巽ではない、別の何かを見て怯えていた。
────記憶が無い······それにさっきの言動······薬中か?
しかし、その仮説は次の瞬間、目に映りこんだ光景によって否定される。
「······怪、異······!?」
嘘だろ、と叫びそうになった。無理もない。いつも、どんな怪異でも、実体さえそこにあれば、怪異がそこにいるのなら、感じ取れていたのに────
(······何で何も感じなかった······!?)
その男は身体に戻ろうとしている。
「······!!逃がすかよ!!」
そう言いつつ階段を使い下の階へ降りた瞬間────
「······た、巽君!?」
「────氷室さん!?」
その瞬間
────チーン
エレベーターの到着音が鳴り響き、中から何かが飛び出してきた。
バチッ!!
と何かの音が鳴り響き────
氷室等は何が起きたのかを理解する前に意識を失った。
「······なんだコイツ!?」
灰色の泥人形の様なナニカがこちらを見つめてくる。のよりも、気になったのが、氷室等から出てきた謎の着物の少女。
────暫く膠着状態が続き、ナニカは突然ふっ、と消え去った。
それを見届けた少女も姿を消す。
「······取り敢えず氷室さんを安全なところまで運ぶか······確かめたい事も出来たしな······」
復讐どころではなくなってしまった一ノ瀬巽は氷室等を介抱することにした。
4
氷室等が目を覚ましたのはそれから十五分後の事だった。
「······よう、目が覚めました?」
「······君は······何故こんなところに······」
「······なあに、ちょっとした野暮用ですよ。それよりもアレはなんなんです?」
「······少し待ってくれ······」
そう言って氷室はぐっ、と伸びをして、肩を回して、持ち物を確認して公園のベンチに座った。
そして今回の事件の概要を話す。
「────つまり、あれの正体は不明と。」
「ああ、ココ最近この地区で起きた不審死事件の原因なのだろうが······」
「······氷室さん、因みに捜査資料とかあったりする?今回は全面的に協力するよ?」
「······珍しいな、君がそんな事を言うなんて」
「知り合いが近くに住んでいるんでね、影響があってもおかしくないんだ」
勿論、半分は嘘だ。別に今椎葉がどうなろうが今の俺には知ったことではない。それに────
「······わかった、見せよう」
────タゲ取られてるのが氷室さんなら、椎葉は今の所大丈夫だろう。
捜査資料を懐から出す氷室等からは先程の不気味な気配が濃密に感じられた。
捜査資料を読み終え、溜息をつく。
「なるほど······」
整理すると、この新S区は元々霊道が通るかなり危ない土地で、裏で操作し、憑き子持ちを集め、怪異を抑制していたようだ。俺が殺そうとしていた男は憑き子持ちでは無かったようだが······。
しかし、一人目の死が引き金となりバランスが崩壊。
結果、あの怪異がこの区で暴れているというわけだ。
「······しっかし、面倒な事になったな······」
協力すると言った手前、まず何とかして氷室さんからあの怪異を引き剥がさないといけない。
まあ、少なくとも殺られることは無いだろうから放っておくか······。
氷室さんにも何か憑いてるし。
「······取り敢えず二手に分かれましょうか。俺はあくまで一般人なので······怪異を探す事にします。氷室さんは情報を集めてください。」
「ああ、わかった······まあ君なら大丈夫だろうが······気をつけろよ?」
そう言って氷室さんと別行動をとることに成功した俺は誰もいないことを確認し、電話をかける。
『もしもし?復讐は果たしたのかい?』
「······その件なんだが少々面倒な事態に発展してな······追加で情報が欲しい。俺の復讐相手────物部閇(もののべしまる)の周りの人間の情報をくれ。」
『······君はなんというか······いつも貧乏くじを引いているというか······わかった直ぐに調べよう。また連絡する。』
その言葉を最後に電話を終え、ふう、と溜息をつく。
────これは一度、七年前の事件をまた洗い直す必要があるかもしれないな······。
復讐は止めない。やめるつもりは無い。だがしかし、このまま終わったら多分、俺の心は二度と晴れないだろう。
多分、まだ他にも犯人がいる。
ほとんど勘。だけどその考えは異常にしっくりときた 。
────さて、とっとと怪異を殺るか。
そう思い一歩を踏み出────
「あれ?巽?何してんだよこんな所で!!」
「······か、海道······?」
5
海道秀明は暇を持て余していた。
親友である保科は部活。仮屋和奏に関しては触れない方が吉と考え、一ノ瀬巽は休み。久方ぶりのぼっち下校である。なので────
「おっ、ミニ〇ュウいる!?」
ポケ〇ンGOをしていた。それ位暇なのだ。バイトも休みで何もする事がないとたまにこうして街を徘徊するのである。
「うわ、タマゴからカビ〇ン産まれた、スクショしとこ!!」
凄い満喫していた。この場に仮屋がいたら冷ややかな目で見られるであろうレベルで。
「ふーんふふふーんふーん」
遂には気持ち悪い笑顔で鼻歌を歌い始めた。そのくらい上機嫌だった。
────目の前に、とある人物が映るまでは。
「······あ、あれ?一ノ瀬······?何してんだこんなところで······」
そこには今日、学校を休み、消息を絶っていた一ノ瀬巽が居た。
そしてそのまま流れるように話しかけ────
(な、なぜ海道がここに!?家真逆だろお前!!)
一ノ瀬巽は内心めちゃくちゃ焦っていた。
理由は至極単純。ブロックと着信拒否の言い訳を考えていなかったからである。尤も、この時点で海道はまだそれに気づいていないのだが。
────と、取り敢えず平静を装って······
「お、おう海道。奇遇だな。こんなところで会うなんて」
「だな、びっくりしたぞ。お前何で学校を休んだんだよ、佳苗ちゃん激おこだったぞ?」
「うへぇ······まじかぁ······」
「んで?なんで無断欠席なんかしたんだ?」
────来たなその質問。
仕方無かった。誤魔化すしか無かった。後に彼はそう語る。
そして、一ノ瀬巽は一世一代の言い訳を語った。
「いや、実はな。ハロウィンパーティーの数日前くらいからかな、ストーカー被害にあってなぁ、とうとうハロウィンパーティーの日にケータイの電話番号とかメールアドレスとかも全部特定されてさぁ······仕方なく新しくしてきたんだ。過剰かもしれないけどその過程でLINEは全員ブロック、電話も全部着信拒否にしてな。」
「······」
「······」
どうだ······!?
「うわ、マジかよ······大変だなぁ、やっぱ有名人だとそういう事あるのか······」
────セーフ!!
「あれ?でもバンドの練習の時は何も無かったような······」
「ああ、家電は既に抜いてたからな。プラグ。基本的にケータイだけにしてたよ。」
「なんだ······そうだったのかぁ」
────あっぶねえ!!
こいつらが居る時に家電鳴らなくて良かったああああああ!!
内心冷や汗をドバドバと滝のように流しながら笑顔を作る。
「学校休んでもケータイは買い直さなきゃならなくてなぁ、仕事も基本ケータイで連絡取り合ってるしさ。」
「なるほどなぁ······大変なんだなやっぱ······」
よし、納得してくれたぁ!!
「じゃあ、俺この後学校行って経緯を説明してくるよ。んじゃ!!」
「おう、あ、巽!!気をつけろよ!!このへん最近殺人鬼がうろついてるらしいからよ!!」
「おう、忠告さんきゅ!!じゃな!!」
そして、一ノ瀬巽は学校方向へ走り────適当に姿を消し、再び新S区へ足を踏み入れた。
『って訳らしいぞー、やっぱ有名人って大変なんだな!!』
まさか電話されているとは露知らず。さらに────
「······え?でもプラグ······ついてる、よね?」
家に侵入されているとも知らず。
一ノ瀬巽は意気揚々とS区の捜査へ乗り出した。
さて、そろそろヒロインアンケートやりますかね!!
めぐる「······でも私と椎葉センパイと仮屋センパイと相馬さん、最終的に全√書くのにやる意味あるんですか?」
後々やる番外編(千恋万花とのクロスとか名探偵海道とか)においてこのヒロインアンケートでトップだった人が恋人になれる。────つまり、番外編ではトップだったヒロイン√の後の話となるよ。という訳で
①イケメン(但し若干ヤンデレ)仮屋和奏√
②ヤンデレ椎葉紬√
③依存因幡めぐる√
の三つから選んでね!!
和奏「······私の√が何かおかしい件について」
主人公を攻略するのが和奏√だから······
七緒「まて、私は!!!?」
七緒さんはサブヒロインなので······
七緒「ウゾダドンドコドーン!」
まあまあ、七緒さん√はしっかり書きますから······
という訳で活動報告にてアンケート実施するので皆さんバシバシコメントください!!
あ、言い忘れてた。紬√も重くなります
紬「えっ」
いやー、プロット見直してたらなんか物たりねーなーと思ってその場のテンションでつい?
紬「ついで重くしないで!?」
大丈夫大丈夫、人は死なないから。
めぐる・紬・和奏・七緒「ふ、不安だ······」
締切は12月5日の0:00────つまり12月4日の23:59まで!!
選択肢は
①仮屋和奏
②椎葉紬
③因幡めぐる
と、なります!!皆さん活動報告へ目を通してどれか一つ選んでください!!