魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
────声が聞こえる。
『────さん!!なんで、何で俺を────』
『────にも、────残って────』
子供と、大人の女性の声だ。
『────があの程度じゃ────って解っていただろ!?なのに何で!!』
『────み、よく聞きなさい────生き────』
何を言っているのか、所々途切れてわからない。
が、両方聞き覚えのある声だ。
そして、暗転。
次は何処かの家だった。
一人の少年が、机の上に大量の本を置き、叫んでいる。
『何であいつが無罪なんだ!!なんで裁かれないんだ!!』
『母さんも父さんも殺したやつが!!なんで!!』
────ああ、これは七年前の────
「······夢······か」
そりゃそうだ。夢じゃなきゃなんだ。あれは七年前の私が見た、事件の記憶だ。
「······なんでこのタイミングで見るかな······」
そう思いつつ、起き上がり、着替え、洗濯機にパジャマを入れ、両親に挨拶し、朝食の準備をする。
自分専用のお気に入りのマグカップ。────去年、彼から貰った誕生日プレゼント。それにコーヒーを注いで、それをテーブルの上に持って行く。
いただきます。そう言って私はコーヒーを────
パキッ!!
飲もうとした瞬間に、持つ部分が根元から綺麗に砕けた。
「······なんか、嫌な感じがするなぁ······」
今日見た夢といい、今起きた現象といい、何かが起きる気がする。そう、彼に関して、何か起きそうな予感がする。
「何も無ければいいけど······」
そう呟いた、彼女────仮屋和奏はこの後、自身の発言がフラグになるなんて思ってもいなかった。
1
「······ここが新S区か······」
そう言って氷室等はその街に足を踏み入れた。
事の発端はハロウィンパーティーの一週間前。
旧神代家で封印されていた『ハッカイ』のコトリバコの封印が解かれたのが引き金になったのか、あちこちで怪異が発生するようになった。そして今日、この菊川市S区の隣────新S区に足を踏み入れた。
そして同時刻────彼も新S区とS区の境目に来ていた。
「······ん?椎葉······?あいつの家か······?まあどうでもいいか······」
見慣れた名前を見つけ、少し足を止める。
が、しかしほんの数秒だ。すぐさま気持ちを切り替える。
「······さて、ちゃっちゃと決着つけますか······首洗って待ってろクソ野郎」
そして、殺気を振りまきながら、一ノ瀬巽は新S区へ侵入した。
その頃、学校では緊急の全校集会が開かれていた。内容は『菊川市新S区連続変死事件』についての話で────まあ、なんというか、『夜遅く出歩くな』等の注意喚起だった。
そして時は飛んで放課後、オカ研部室にて。
「椎葉さんの家って確かS区の方じゃなかったっけ?」
「うん······S区と新S区の丁度境目に······」
「そりゃまた何というか······怖いなぁ」
などと、雑談をしていた時の事だ。
コンコンコン、とノックの音が鳴り響いた。
「空いてますよー」
と綾地が言うとガチャり、と音がして扉が開く。
「って、仮屋?どうしたんだ?」
そこには息を切らしている仮屋和奏の姿があった。
「······一ノ瀬が着信拒否?」
「うん······」
今日、珍しく一ノ瀬が無断欠席をした。
いつもなら何があろうと連絡はすることで有名なあの一ノ瀬が無断欠席。保科柊史と椎葉紬、そして海道秀明は『まあ、そんな事もあるだろう』と思い特に気にも留めていなかったのだが。というか今訪れた仮屋和奏すらそう言っていた。
「でもさっきやっぱ心配になって······電話かけてみたら······着信拒否設定されてたみたいで······LINEもブロックされてるし······」
「······あ、私のもなってる······」
「わ、私もですね······」
「私もなってます······保科センパイは?」
「······どうやら俺もみたいだな」
LINEはブロック、電話は繋がらず。家にも掛けたが────でない。これは······
「失踪······というヤツなのでは······?」
因幡めぐるの声が、やけに重々しく聞こえた気がした。
「······で、一応一ノ瀬の家に来た訳だけど······」
何かあったのでは、そう考えた一同は一ノ瀬家を訪れていた。
元々仮屋は此処に俺たちを連れてくる予定だったらしい。その為にオカ研部室に来たのだ。最初は一人でもいいか、と思ったらしいが、途中『一ノ瀬の事は心配だけどあの家に一人で行くのは嫌すぎる』と思ったらしい。気持ちは凄くわかる。
「しかし······ここからどうするんだ?流石に家には居ないと思うんだが······」
「だろうね、だから侵入するよ」
「「「「────は?」」」」
そう言った仮屋はポストの裏をまさぐり始める。そして数秒後────
「ほらあった」
その手には鍵が握られていた。その鍵を玄関の鍵穴に差し込むと────
ガチャ
「「「「あ、あいたー!?」」」」
「泊まりに来た時に教えて貰ってたんだ······靴がないって事はやっぱ居ないかな······?」
そう言いながら玄関を一瞥した仮屋はこちらを振り返りこう続けた。
「······で、誰か、誰でもいいから先入って······」
その声と、足はガタガタと震えていた。
「────取り敢えず全部屋ぱっと見たが、家には居なさそうだな」
「······どころか、殆ど生活していた形跡が消されてるような気がするんですが······」
いや、本や食器、ゲーム類など全て残ってはいるのだが。
シンクには水滴一つ残っておらず、ゴミ箱も全て空。不気味な程に綺麗にされていた。
「······うーん、何かしら手がかりとか残ってるかと思ったんだけどなぁ······ていうか残ってなかったらもう手詰まり何だけど······」
「そういや仮屋、あいつが失踪する心当たりとか無いのか?」
「······あるけど、それだという確信はないから何も言えないなぁ······あれはあんまり話したくないし······ていうか話したら一ノ瀬に殺されそう······」
なんだそれ、逆に気になるんだが。
「にしても本当に何も無いですね······って寧々センパイ、どうしたんです?そんなにリビング黙って見渡して······」
先程からずっと黙りながらただただじっとリビングを眺めている寧々の事が気になったのかめぐるが声をかける。
「いえ······その······気の所為かもしれないのですが······外から見たリビングの広さと中の広さが一致してないような気がしまして······ひょっとして隠し部屋とかあるんじゃないかなーと······」
「「「「······え?」」」」
いやいやいや、そんなまさか。いや、彼女の言葉を彼氏のお前が信じないで誰が信じるのかと言われそうだけども流石に────
「そんなフリーのホラーゲームじゃないんですからぁ!!幽霊屋敷に隠し部屋とかフィクションの世界────」
ガラガラガラッ!!
「あ、ここの本棚動いたよ!!後ろに扉もある!!」
「「「「嘘ぉ!?」」」」
「ごめん寧々······疑って悪かった······」
「き、気にしないでください!!私だって本当にあるとは思ってませんでしたから!!」
と、イチャついている二人を無視し、椎葉紬と仮屋和奏と因幡めぐるは扉を注視していた。
というのも────
「······暗証番号式······」
「うーん、4桁かぁ······これがチャリについてる錠ならまだ楽なんだけどねー······」
暗証番号で開く扉だったのだ。
「うーん······でもノーヒントじゃどうしようもないよ······」
「どっかしらにメモはしてると思うよ?一ノ瀬結構用心深いから。この前だって余裕で覚えられるであろうゲームの引き継ぎコードメモってたし。」
となるとどっかしらに答え────とまではいかなくてもヒントか何かはある筈だ。
「そういう場合その辺の本棚とかにありますよねー······ゲームではの話ですけど······」
「そうだね······大体そういうものって普通肌身離さず持っておくもんね······」
「うーん······ここで手詰まりか······」
「······?何でしょうこの紙······」
「なんだこれ······漢字?」
「「「························」」」
綾地寧々は何かを引き寄せる能力を持っているのだろうか、それともフラグブレイカーなのか······何れにせよ、手詰まりは回避できたようだ。
三人もその紙を見る。
響 麻耶 三日月 不知火
「「「「······なにこれ······」」」」
いや、本当になんだこれ。こんな四つの単語に意味があるのだろうか。規則性もなさそうだ。
というかそもそも、漢字なのだ。四桁の暗証番号に何か関係があるのだろうか。
誰もが黙り込んで数分経った頃だろうか。
「────あ、解った」
「「「「え!!!?」」」」
誰もが驚いた。無理はない。なんてったってこれまで散々アホのイメージしか無かったのだから────。
「なんですかその驚きっぷりは!?」
心外です!!と叫んだ因幡めぐるは頬をふくらませながら暗証番号を入力する。
ピー、と電子音がしてガチャリ、と鍵の開く音がした。
「「「「なん······だと······」」」」
「(´꒳`*)どやあああ」
ない胸を張る因幡、そのドヤ顔はとてつもなくウザかった。
無視して、その扉を開ける。そこには────
2
新S区にて。
「······ここか······結構歩いたな······」
とある会社の社宅だろうか?良く分からないが普通のアパートのようなところ。
「確かここの四階だったか······?」
五階建ての社宅の四階の402号室。隣は空いているということは事前に調査済みだ。じゃなきゃ夜に向かう。
「······さて······いよいよ、か。」
────ここまで長かった。
七年待った。色々した。金を工面するために小説を書き、その金で情報を買った。そこからターゲットがあちこちを転々としたためここまで時間がかかってしまったが、漸く、漸く────!!
はやる気持ちを抑えてその家のチャイムを鳴らす。
もしチェーンを掛けていた時のためにチェーンカッターは既に用意してある。いつでも使える。
そして、ドアが開いた。
チェーンは掛かっていなかったようだ。
男は俺の顔を見て、顔を青ざめさせ、震える。
漸く────漸く会えた────!!
一ノ瀬邸の隠し部屋。そこには新聞記事が壁一面に貼られていた。
「な、なんですか······これ······?」
「パソコンと······新聞記事だけ······の部屋?にしたってこの量は一体······」
壁の新聞記事には色々書かれている。
『一家壊滅、生き残ったのは子供だけ』
『平日の昼起きた悪夢、一家壊滅の強盗事件』
『強盗事件の犯人、責任能力不十分で起訴されず!!』
「······七年前の記事?だよねこれ······」
誰もが困惑している中────
「一ノ瀬······やっぱり······!!」
仮屋だけは、ハッキリと。その言葉を口にした。
そしてその言葉を聞き流せる、俺達ではなかった。
「おい、やっぱりってどういう事だよ仮屋······?」
仮屋は、震えながら拳を握りしめて────とんでもない事を口にした。
「久しぶりだな、オッサン。七年ぶりか?殺し損ねた相手が殺しに来てやったぜ?喜べよ」
「多分······一ノ瀬は······七年前に両親を殺した相手に復讐しに行ったんだ······!!」
ここから先は七年前の物語の続き。────復讐の物語。
誰も止めることは出来ず、誰も得する事なく、誰も無傷では終われない。
主人公が、壊れるまでの、物語。
新コーナー(笑)
怪異譚ラジオのコーナー!!(唐突)ゲストはヒロインの一人因幡めぐるさんと我らが主人公、一ノ瀬巽君だ!!
めぐる(以下め)「え、何ですかこれ」
巽(以下変わらず)「そもそも質問なんて募集してたのか作者」
いや、募集して無かったよ?ただ、この作品を作るきっかけを作ってくれたリア友が質問あるって言うから······ならコーナーにすればいいかなぁって······あ、これ投稿したら活動報告辺りに質問募集するから
巽「来なかったら?」
この第1回が最初で最後。その可能性はかなり高いぜ。
め「······まあいいでしょう、で、その質問とは?」
友人Aからの質問『めぐるちゃんが中学時代の後輩に似ているんだがお前まさか────』
うん、その通り。原作のめぐるちゃんにリアル後輩混ぜたハイブリッドが今作のめぐるちゃんです。原作よりかなりアホの子になったりしたのもそれが原因。
め「マジですか」
うん、流石にめぐるちゃんとは月とすっぽんの容姿だったけどその娘重度のゲーマーでさぁ······テストはほぼ赤点だったしね。
巽「でも似せた理由ってなんだ?別に似せる必要ないんじゃ······」
いや、たまたま。今回見てわかったろうけどこっから先ゲーム関係の謎解きが多くなるからそういうのに詳しい人間を作りたくて、そしたら適任がいたから。
め「そしたらたまたま似たんですか······その後輩何者ですか」
兄のせいでFPSとかにどハマりして友達いなかったぼっち女子。マキブはやたら上手かった。
巽・め「oh······」
ま、似てる理由はこんなもんだよ、納得してくれたまえ友人よ。
それでは今回は終わり!!じゃあね☆⌒☆⌒☆⌒ヾ(*>ω<)ノ
め「······あれ?まだ残ってますよ質問······」
巽「え?何······」
『ジョジョ早く更新しろカス!!』
『他作品も書けやコノヤロウ!!』
め・巽「······怪異譚次回更新は未定です!!」
────という訳で暫くジョジョの更新を二話くらい頑張るので次回更新は未定です、ハイ。ま、ハロウィンもあるしね?