魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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紬ママああああああああああああああああああああ!!


椎葉紬の体験入部────人形────

1

怪異症候群からおよそ三日後。

 

「なんか今回高難易度クエって感じしなくない?」

 

「そうですねー、正直フレンドにオルタニキ居れば完封できます」

 

相変わらず俺と因幡はずっとゲームをしていて。

 

「ダメです······あの人難易度高すぎますよぉ······」

 

「これもダメでしたか······」

 

「どんな難攻不落の要塞だよ······」

 

と、撃沈しては相談に来る姫野を保科と綾地が対応する毎日である。

 

······え?なんで因幡がこっちサイドかだって?

 

本人曰く、「もう少しで育成が終わるんです······」だそうだ。中学時代、暇さえあれば俺とゲームしてただけあってかなり染まっている。

 

「しかし、平和とはいいものだなぁ······」

 

「なんかセンパイがそれを言うと重さが違いすぎるんですけど······重すぎますよ······」

 

「いや、もうホント暫く怪異絡みは勘弁して欲しいね。マジで。」

 

テンションがおかしくなる。定期的に幼女に甘えなきゃテンションどころか正気保てない、なんて事は避けたい。

 

と、そんな感じでぐーたらしていたらノックの音がした。

 

「入るぞー」

 

「······久島先生?」

 

入ってきたのは我らがクラスの担任だった。

 

 

 

 

 

 

2

 

「······つまりその転校生が訳ありで、学校生活をサポートして欲しい、という事ですね?」

 

「ああ、その通りだ、入ってきてくれ。」

 

と、先生が廊下に向かって呼びかける。

 

「えっと······失礼します······」

 

入ってきたのは男装女子だった。

 

「し、椎葉紬(しいばつむぎ)です······宜しくお願いします」

 

ジーッと、椎葉を見る。ふむ······

 

ナニカに見つめ返された。よく見るとナニカが後ろにいる。

 

「ほうほうほう······」

 

「ふぇ?あの······私の顔になにか付いてる?」

 

「おっと、見すぎてしまったな。不快にさせてしまったか、すまないな。」

 

「え?いや、大丈夫だけど······何か私の顔見てたから······なにか付いてるのかなぁって······」

 

「安心しろ、確かに憑いてはいるが悪いものじゃない、寧ろいいものだ。偶に出てくるかもしれないがその時は遊んであげなさい。」

 

「ちょ、ちょっと待って!?なんか『つく』の字がおかしくない!?え!?憑いてるの!?」

 

「お前を守ってくれてる······まあ簡単に言ってしまえば守護霊の様なものだ。害はない。気にするな。」

 

「ふぇえ!?」

 

「え、それマジか一ノ瀬······」

 

「マジだマジ。久しぶりに見たぞ。」

 

と、まあそれは置いておいて。

 

「しかしもっと珍しいとすれば、魔除けか?その男装は。」

 

「へ?魔除け?」

 

「珍しい事じゃない。地域によって異なるが男子が女子の格好を、もしくは逆のことをすることによって育てるとかはあることにはある。······まあ、やるとしたら幼少期でこの年までやってるのは珍しいが······」

 

「へー、そうなんですか?」

 

「ち、違うよ、ちょっと他に事情があって······」

 

「あ、そう······」

 

なんだ違うのか。

 

「っと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は一ノ瀬巽。しがないホラー小説作家だ。」

 

「保科柊史だヨロシク。」

 

「綾地寧々です。よろしくお願いします」

 

「1年の因幡めぐるです!ヨロシクお願いしますね椎葉センパイ!!」

 

「オカ研じゃないけど······姫野美琴です、宜しくお願いします。」

 

「うん、みんなよろしく!······ところで一ノ瀬君······そのいきなりで悪いんだけど······」

 

「ん?どうした?」

 

「お母さんが一ノ瀬君のファンで······この学校に所属してるのは有名だから······その······『サインもらってきて』って言われちゃって······お願い······できるかな?」

 

上目遣いでこちらを見てくる椎葉。ハッキリ言おう。カワイイと。

 

「まあ構わ······ない······が······」

 

「ん?どうした一ノ瀬。」

 

いやー、最近怪異ばかり絡んでて尚且つファンに会うのも久しぶりで────

 

「サイン······どうやって書いてたっけ······」

 

「「「「「「────へ?」」」」」」

 

······サインの書き方忘れちゃった。

 

 

 

その後、インターネットで自分のサインをネットで検索してどうにかなった。

 

 

 

 

翌日。ホームルームにて。椎葉紬が同じクラスになった。

 

「しかも隣の席か······よろしくな椎葉。」

 

「うん!!······ところで······何でみんなこんなにも遠巻きに私達のこと見てるのかな······?」

 

「······さあ?」

 

 

 

「海道······何でこんなに皆遠巻きに見てるんだ?」

 

「ん?······ああ、実はあくまで噂なんだが······一ノ瀬が一時期警察に協力という事で公欠になってたろ?」

 

「というかつい最近だよね······」

 

「その時に『一ノ瀬巽は警察の公安の人間』という噂が流れてな······」

 

「······は?」

 

なんだその無茶苦茶な噂は。

 

「隣に座った椎葉は何らかの組織に狙われていて一ノ瀬が護衛······という設定らしい。」

 

一ノ瀬巽のせいで全力で学校生活をバックアップしないと椎葉紬が馴染めないという最悪な状況が作り出された。

 

 

 

3

放課後。オカ研部室にて。

 

「つまり椎葉は体験入部?」

 

「うん、人助けするオカルト研究会って珍しかったし······何より特に所属したい部活もあるわけじゃないし······かと言ってこのままだとなんか馴染めなさそうだし······」

 

「部長は許可したのか?」

 

「はい、大歓迎ですよ。」

 

「ならいいか······じゃ、これから宜しくな。」

 

「うん!それで······普段は何してるの?」

 

「基本、何もなけりゃゲームの周回かなぁ······普通なら綾地の占いか相談目当ての方が多いし······」

 

実際八割くらいは綾地の方目当てで来る奴らばかりだ。どうやら俺が怪異に巻き込まれている間にも来てたらしい。

 

「······?一ノ瀬君は、相談に乗ったりしないの?」

 

「んな事言われたって······恋愛なんて勝手にしてくれと言いたいし占いに関してはもう訳わかんねえし。」

 

「一応マジモンのオカルト相談専門になってるな。」

 

余計な事を言わんでいい、保科。

 

「え······じゃあホントに見える人なんだね······?」

 

「信じるかどうかはお前に任せるがな。」

 

正直どっちでも構わん。本職は小説家なのだ。

 

「ま、オカルト相談なんてなかなかこないから、あんまり信用しなくても────」

 

そこまで言ったところでノックの音が鳴り響いた。

 

「すいません、一ノ瀬先輩に相談があるのですが······」

 

「························」

「························」

 

······勘弁、してくれよ······

 

 

 

4

 

「一年の九十九康人(つくもこうと)です。美術部に所属しています。今回、美術部で起こっている怪奇現象を解決していただきたく、こうして頼みに来た次第です。」

 

一見金髪のチャラ男、だがやたらと丁寧な言い回しに面食らった。

 

「······あ、そう······なら聞かせてもらおうか」

 

「はい、宜しくお願いします。」

 

そして彼は語り始めた。

 

「最初にそれが起きたのは丁度一週間前でした。」

 

美術部は近く、コンクールがあるので夜遅くまで残り、作品を作り続けていた。

その日は九十九康人と部長、副部長が残って作業をしていた。そのまま作品を片付け、帰宅した。そして次の朝、部室(美術室)へ向かうと────

 

「その······髪の毛が落ちていたんです。めちゃくちゃ長い髪の毛が···········まあ、それだけだったので悪戯かなぁと思っていたんです。」

 

ところが、次の日の朝。部室に向かうと、また髪の毛が。今度は作品に絡みついていたらしい。

 

「それから暫くは何も無かったんですけど····つい昨日再び髪の毛が大量に出てきて······もうどうしたらいいか······」

 

「······ふむ、髪の毛ねえ······」

 

毛羽毛現でも居るのだろうか?まあそれは置いといて────

 

「あわ、あわわわわわ」((( ´ºωº `)))ガタガタ

 

ガタガタと震えている椎葉を先ずは落ち着かせるか。

 

「落ち着け椎葉、どうせ俺一人でやる事だ。」

 

「────え?ひ、一人でやってるの?」

 

ああ、なるほど。全員で取り組むものと勘違いしてるのね。

 

「さっき言ったろ?俺は綾地が取り組んでる普通の恋愛相談やらには関与せず、オカルト専門の相談を不本意ながら受け付けていると。」

 

まあ初期······部員が卒業してしまい綾地と俺の二人になった時に『綾地の恋愛相談や恋占いは関与しない、その代わり文化祭の出し物は俺が全部引き受けよう』という契約だったのだが。二学期明けてからオカルト専門の相談を引き受ける流れになってきているけども。

 

「というか、普通の一般人は関わるべきじゃないレベルのものだった場合流石の俺も守ってはやれん。だから1人の方が動きやすいんだ。例外があるとすれば······例えばコトリバコ(低級)を処理する時に男手が必要で保科を頼ったりしたりすることもあるが······」

 

「······?コトリバコ······?」

 

「あー······うん、人の話を聞いて、人手が必要で尚且つ問題ないと判断したら適した人間に頼むという感じだ。」

 

少なくとも、自らの判断で被害者を増やすことは無いように心がけている。一応。

 

だって責任云々とか面倒臭いし。

 

「とにかく、案内してくれ九十九君?俺だけで行こう。何、解決してやるさ。······それではあとは頼んだぞ?綾地。」

 

そして俺は鞄を持って外に出た。

 

 

 

5

美術室に着いたとき、既に先客がいた。

 

「······生徒会長?」

 

「おっ、一ノ瀬君、久しぶりだね~」

 

生徒会長の戸隠憧子(とがくしとうこ)である。

 

「何してんすか?美術室に何か用事でも?」

 

「え?ああ······いや、あれを見ればわかると思うよ?」

 

そう言われて俺は部屋の中を覗く。そこには────

 

「······なんじゃこりゃ······」

 

そこには床一面にばらまかれている勿忘草(わすれなぐさ)があった。ただし、髪の毛で作られた、という単語が前につくが。

 

「なっ!?馬鹿な、あんな出来事があったから作品は各自家に持って帰って調整してるからこの部屋には今日も入ってないですよ!?鍵を持ってるのは顧問だけですし、その顧問だって鍵は絶対に職員室に預けなきゃいけない決まりがある!!」

 

「うん、だから困ってるんだよねー、美術部全員の持ち物検査しても合鍵を作ったという事実は確認出来なかったしね······」

 

「······取り敢えず片付けましょう。」

 

「うん、先生達がゴミ袋取りに行ったからその内戻ってくるから手伝って~」

 

そしてとりあえず掃除した。

 

 

 

「······うーん、特に何か呪われている様な物······と言うより髪の毛が関わるようなものがまず置いてないのに髪の毛が増えてんのは謎だよな······」

 

「ていうか何?イタズラじゃないの?これ······」

 

「イタズラの可能性はすごく低いです。髪の毛で勿忘草なんて難易度高いものばら撒くくらいなら画材ぶっ壊すとか色々あるでしょ、もっと簡単な方法が。」

 

そんな凝ったイタズラは流石にないだろう。まず髪の毛を用意しなければならない。

 

この場合、ただのイタズラという方が非現実的だ。

 

「それにしても何故勿忘草?」

 

「んー······?花言葉は『私を忘れないで』だよね?」

 

「······九十九君、誰か······いや、誰かじゃなくてもいい、何か忘れたりしてない?」

 

「······そういえば一人先輩が転校してしまったんですが······だけど俺は忘れちゃいないし······特に何事もなく転校していきましたよ?」

 

「······君の先輩達······部長さんとかなら何か知ってるかもね。呼び出し······は無理か電話かけてみてくれないか?」

 

 

6

 

その後、部長さんに掛けたところ。暗号を託されたのだとか。

 

『必ず解いてね』そう言われて。

 

しかし、部長は一月かけても解くことが出来ず。そのままコンクールの準備で完全に忘れていたらしい。

 

「······で、これがその暗号らしい。」

 

翌日のオカ研部室。今日は綾地は用事があって、保科は別件で動いているらしい。よって今日は3人。因幡、椎葉、俺。スペシャルゲストに九十九康人君と戸隠憧子。

 

因みに部長さんとかが居ないのは受験の関係である。

 

「······で、何ですかこれ······数字?」

 

11 55 31 23 91 55 14 55 13 91

 

という数字が並んでいた。

 

「今日は皆でこれを解くの?」

 

椎葉が質問する。しかし────

 

「その必要は無い。もう昨日一瞬見たら解った。」

 

「「「「え!?」」」」

 

「ただ、問題はその物の在り処が何処にあるかわからないだけだ。」

 

「え、ちょ、嘘!?」

「私全然わからないよ!?」

「俺も何が何やらさっぱり······」

 

「まじかお前ら」

 

「私も解った~」

 

「「「嘘ぉ!?」」」

 

少し頭が固いんじゃないですかね?

 

「てか因幡。てめえ謎解きゲームやっててこの程度出来ねえのかよ一から勉強し直せ」

 

「辛辣ですね!?······でもわからないから否定出来ない······!!」

 

いや、お前中学の時『西村〇太郎サスペンス』クリアしてたじゃん、初見で!!あれを初見クリアしておいて何故できない!!あれより遥かに簡単だろ!?

 

「······あ、······私わかった······」

 

「嘘でしょ椎葉センパイ!?嘘だと言ってください!!」

 

「······あ、そういう事か」

 

「九十九君ッ!?」

 

どうやら因幡以外は全員わかったようだ。

 

「······因幡······」

 

「そんな可哀想な子を見る目で見るのやめてくださいよ!?泣きますよ!?泣いて転がりますよ!?うー······だ、ダメだわからない······!!」

 

「さて、唸ってる因幡は置いておいて話を進めよう。で、九十九君。心当たりある?」

 

「······確かにそれはありますが······美術室の中ですし、何よりこれ部長にあてられた挑戦状でしょう?自分達だけで解いて進めてもいいのか······」

 

「······部長さんって今回受験関係なんだっけ?」

 

「確か、担任と話し合うと言っていました。」

 

「······なら、終わった後に来てくれと言ってみてくれないか?」

 

 

 

そしてきっかり三十分後。

 

部室に入ってきたのはスポーツマンのような体付きをした男子生徒だった。

 

「美術部部長の宮藤直道(くどうなおみち)だ。で、挑戦状を解いたんだって?」

 

「ええ、解きました。しかし九十九君が『部長にあてられた挑戦状なのにこのまま自分達だけで解き進めるのはどうなんだ』という意見を出しましてね······」

 

「······そんな事言われてもな······最後のコンクールで、その後受験なんだ。そんな事をして何かメリットはあるのかい?」

 

「少なくとも、髪の毛騒動は解決します。」

 

即答した俺を宮藤はじっと見つめたあと、一つため息をついて言葉を口にした。

 

「······解った。いいだろう。顧問に鍵は借りておいた。」

 

そして俺達は美術室に向かった。

 

それの裏にそれはあった。

 

「「「「「「────鍵?」」」」」」

 

何の変哲もないただの鍵。なんだそりゃ。

 

「そういえば部室に開かねえ金庫ありませんでした?」

 

「······試しにやってみるか······」

 

そして金庫が開いた。そしてその中身は────

 

「ひいっ!?」

「きゃあっ!?」

 

「あ、はは······これは私もちょっとびっくりしたなぁ······」

 

「「「に、日本人形······!?」」」

 

そこには一つの日本人形があった。

 

かなり綺麗な日本人形だ。もしかしたら相当高いものかもしれない。

 

「······何か手紙が入ってるぞ?」

 

『宮藤直道くんへ

 

この手紙を見ているということは君はこの日本人形を探し出すことが出来たのだね。おめでとう!!君の頭の固さを考えたら解けないと思っていたから正直びっくりだよ!!その日本人形は君がコンクールで日本人形を題材に書くと言っていたので実家から拾ってきたものだ。それを見て最高傑作を作り上げてくれたまえ、それではさらばだ、愛しのマイダーリン!!

 

足利弓那(あしかがゆみな)』

 

「······あんの、バカ······普通に渡せよ······」

 

「ていうか恋人いたんすね部長······全然気づきませんでした······」

 

「部内恋愛をそこまで隠し通せたんですか······!?」

 

「いつまでも見つけてくれない日本人形が何か伝えようとした、結果があの髪の毛事件の真相······だったのかな?」

 

「全く······ダメじゃないか宮藤君、彼女さんのプレゼント忘れるなんて。折角遠くへ行って離れ離れになってしまった置き土産だ。大切に扱うといいと思うよ?」

 

そう言って戸隠先輩が宮藤先輩の肩をポンと叩いた。

 

ただ、次の瞬間、とんでもない言葉が宮藤直道の口から吐き出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······でも······俺らまだ別れてないんだけど······連絡もしてるし······」

 

「「「「「······え?」」」」」

 

「そもそもアイツ転校って言ったって隣町に引っ越すだけで、別に会えないってわけじゃねえし······」

 

いや、ちょっと待て、まさか────

 

「会う機会なんていくらでもあったのに······つい一週間前にもあったばかりだぜ?」

 

丁度、事件が起き始めた日だ────。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれます?宮藤さん、まさかアンタ────」

 

何故九十九康人が部室に来たか?それは美術室で作業できなくなったからだ。だから原因の解決を依頼しに来た。

 

作業とは?コンクールで出す作品を作る事だ。

 

そして九十九康人はこう言った。

 

『作品は各自持って帰って』と。

 

つまり、宮藤直道はコンクールに出す予定の作品を既に作っていたという事で────

 

「部長、ひょっとして自腹切ってYa〇〇o!オークションで落札して手に入れた日本人形使って絵を描いたこと話したんじゃ······」

 

「········································································あ」

 

さっ、と宮藤直道の顔が青く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······そりゃ激怒もするわ。邪魔する気持ちもわかるわ。」

 

「······結局、今回の髪の毛事件って······」

 

「珍しい例だが、ほったからしにされた事実を知った足利弓那の怒りの念が、日本人形媒介に呪いのようなものになったんだろうな······」

 

「あ、あはは······でも一件落着······だよね?」

 

「そうだね~当人以外は、だけど。」

 

そう言って戸隠先輩の視線の先には

 

『いやはや、確かに君には多少難しいだろうなと思ったクイズを出したよ。だけどまさかそのまま諦めていたとは······ボクは少々驚いたよ』

 

「いや、その、ホントマジすいませんでしたあああ!!」

 

必死で電話口に土下座をかましている宮藤直道の姿があった。

 

「······というか、よくその場で怒鳴りませんでしたね、その、足利センパイでしたっけ?」

 

「必死に堪えたからこそこの事態になったんだがな······」

 

必死で謝る宮藤直道の悲鳴をBGMに、烏がアホーと鳴いた気がした。

 

 

 

8

今回の結末。

 

「あの後、見つけた日本人形を元手に作り直してるらしいよ。ギリギリ間に合いそうだって」

 

「あ、そうなんすか······てか何故ここに?」

 

「暇だから遊びに来ちゃった♪」

 

あの惨劇(笑)の次の日の昼休み。

 

何故か教室に来た戸隠先輩と因幡、そして椎葉と海道と仮屋に俺といった構成で昼飯を食べていた。

 

「はー、あの大量にゴミ箱に捨てられてた髪の毛はそれが原因だったのか······」

 

「なんというか······アホな先輩もいるもんだね?海道みたいな」

 

「俺関係なくない和奏ちゃん!?」

 

いつも通りの海道と仮屋のコントを見ているとそういえば、と因幡が口を開いた。

 

「結局あの暗号。なんであれが答えなんですか?」

 

────────────

 

俺と戸隠先輩、そして椎葉の顔が凍りついた。

 

「おま······まだわからないの······!?」

 

「あ、あはは······因幡さんって頭硬いんだね······」

 

「うーん、因幡さん、大丈夫?答えみてわからないのはちょっと重症じゃない?」

 

「なんでそこまで言われなきゃいけないんですかぁ!?」

 

涙目になる因幡、しかしここで意外な助け舟が来る。

 

「えっと、因幡さん······だよね?ぶっちゃけ巽は全国統一学力テスト1位の猛者で戸隠先輩も学園内でトップを争う程の頭脳の持ち主だから······椎葉さんの実力は知らないけどその二人基準じゃわからないかもしれないよ?」

 

「うわ、海道が珍しくまともな事言ってる······」

 

海道が本当に珍しく上手く女子をフォローしている。

 

が、しかし。

 

「······いや、これははっきり言ってお前でも解ける。」

 

そう言って俺は昨日のメモを二人に見せた。

 

「······んん?私はパッと見分からないなぁ······」

 

仮屋は多少頭を捻っているようだ。

 

海道は────

 

「······ごめん、因幡さん。流石に答え見てもこれがこうなる理由がわからないのは流石に擁護できない。」

 

「!?!?!?裏切られた!?」

 

「え!?海道わかったの!?今の一瞬で!?」

 

そう言われて海道はこちらに歩み寄り、俺の耳元で答えを囁く。

 

「おお、海道大正解!!」

 

「「何ィ────!?」」

 

因幡と仮屋の絶叫が響き渡った。

 

「よくわかったな本当に······」

 

「いや、こうなんじゃねえかなぁって思っただけだよ」

 

「ぐうっ!!海道に解けて私に解けないはずがない······!!」

 

しかし、海道のやつ。やはり探偵には向いているのではないだろうか?前に仮屋が泊まりに来た時もそうだったし。

 

 

 

────その後、何とかノーヒントで解いた仮屋を見て因幡が沈んだのは別の話。

 

 




めぐる、アホの子になる。

皆さんわかりましたか!?一応五分で考えました!!間違ってたらごめんなさいね!!一応答え考えてみてください。次話に答えを載せますので。

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