白き英雄への復讐   作:煌酒ロード

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遅れたねえ・・・遅くなりました
ホンッッッッッッットスイマセンでしたァ!!
ラウラさんメインの今回。急遽生えてきた思考に勢いをブレンドして書いてるからとんでもない事になってるw
それでも宜しければ、お楽しみくださいw


対話

side 一夏

 

風華と一緒に、放課後の廊下をアリーナに向かって歩く。次に開催される学年別トーナメントでは学年全員が参加し、更に外来の客を招くという事もあって、企業所属としては無様な戦いを見せるという訳にも行かない。そういう意味合いもあって、風華と訓練をしようと向かっているのだが、少し騒がしい。なんだと思って少し急いでアリーナに向かう。そして目に飛び込んで来たのは、

ボロボロの甲龍とブルー・ティアーズ。そしてそれを吊るし上げている黒い機体。

一瞬、何が起こっているのかわからなかった。しかし黒い機体に乗っているのが、ラウラ・ボーデヴィッヒである事から何となく察しは着いた。訓練をしていた二人を挑発でもして戦ったのだろう。あの二人が簡単な挑発に乗るとは考えにくいが、取り敢えずはそんな所かと当たりをつける。

 

「俺が突っ込む。風華は二人の救出。任せた」

 

「任されました」

 

そう言って頷いた風華を確認して、極夜を展開。単一仕様を使ってアリーナのエネルギーシールドを突き破って中に入る。ワイヤーブレードを切り飛ばして、丁度ラウラと二人の間に立つ。

 

「悪いがそれ以上は二人の命に関わるんでな、止めさせてもらうぜ」

 

そう言ってラウラの前に立つ。その言葉に反応したのか、ラウラの顔が笑顔に歪む。

 

「別に殺すつもりは無いがな、ついでに言えば感謝もしている。あの二人はこのシュヴァルツェア・レーゲンの機体テストには勿体無い相手だった。優秀な指揮官の元で研鑽を積めば良い操縦者になる」

 

その言葉に少し緊張を削がれるが、レーゲンが戦闘態勢に入ったのを見て、片手の直剣を握り直す。

 

「そういう台詞は本人達に言ってやれ、勿論その前に詫び入れてからな」

 

「そうさな、ゴミ掃除の前の相手などさせて悪かったと謝罪しておこう」

 

突っ込んでくるレーゲンに、そうじゃねえんだけどな、と思いつつも両腕のトンファーの様なプラズマブレードを両手に構えた直剣で受け流す。

 

「俺が気に入らないと言ったな。ゴミ掃除ってのも俺の事だろう。何故そこまで俺を憎む」

 

「教官から絶大な希望と信頼をかけられていたにも関わらず、それを裏切っただけでは無く、逃げ出した。それだけの単純な理由だ」

 

「成程、実に単純だ」

 

「教官は素晴らしい人間だ!汚点などあってはいけない!ならばその汚点を取り除くのが私の仕事だ!」

 

そう叫びながら両腕のプラズマブレードで切りかかってくる。それを両手の直剣で再び流しながら後ろを流し見る。風華が鈴とセシリアさんをピットの中に運び込んでいるのを見てから正面に向き直る。突っ込んできたレーゲンを弾き飛ばし、片手にハンドカノンを呼び出し叩き込む。が、

 

「そんな豆鉄砲が通じるとでも?」

 

弾丸が全てレーゲンの前で停止し、地面に落ちる。不可思議な現象に眉をひそめ、ハンドカノンを収納し、再び直剣を呼び出す。

 

「フン、ゴミという評価は改めなければいけないな。やはり教官が目をかけるだけのことはある」

 

そう言ったラウラの顔は一瞬、悔しそうだったがすぐに表情が戻る。そして再び吠える。

 

「何故それだけの腕がありながら教官の期待に応えない!」

 

斬り掛かるレーゲンと正面から打ち合い、鍔迫り合いの格好になる。

 

「・・・応えようと思った事もある。姉の後ろ姿を糧に努力を重ねた時期もあった。無邪気に姉の背を追いかけたさ」

 

「ならば何故!」

 

「意味が無いと悟ったからだ」

 

「何!?」

 

「いいや違うな、正確にはそこに俺の求めた、欲しかったものが存在しなかったからだ」

 

「何だと?」

 

レーゲンの動きが止まり、ラウラが怪訝な顔になる。その直後、

 

「そこまでだ」

 

その言葉と共にスーツ姿の織斑千冬が出てくる。

 

「模擬戦をするのは一切構わん。だがそれによってアリーナのシールドバリアをぶち破るような事態は感心しない。双方この決着は学年別トーナメントでつけろ。いいな?」

 

「了解しました!教官」

 

「依存は無い」

 

「ならば良し。ではこれよりトーナメントまで一切の私闘を禁止する。解散!」

 

その言葉と共に全員がロッカーに着替えに行ったり、寮に帰ったりと行動し出す。俺は医務室に見舞いに行こうかと思い、歩き出す。

 

「待て、夜空」

 

ラウラに声をかけられ、立ち止まる。

 

「話がある、付き合え」

 

それだけ言って歩き出す。強引ではあったが、人付き合い等した事が無いであろう事を考えるとそんなものなのかもしれないな、と思い風華にラウラと話をしてくる。とだけ送り、ラウラについて行く。

更衣室前の休憩スペースで向かい合うように座る。そしてラウラが口を開く。

 

「期待に答えることが意味が無いと悟ったと言ったな」

 

「俺にとって、ではあるがな」

 

「何故だ」

 

問いかけてきたラウラの顔は真剣にわからないという顔をしている。

 

「私は職業軍人だ。私とお前達民間人では常識が違うと言うのも承知している。それでも恩人の期待に応えたいと思うのは普通では無いのか?」

 

「間違ってはいない。普通、かどうかはさておき一般的に期待に応えようと思うのは間違ったことではない」

 

「ならば何故!」

 

そう叫ぶラウラに答えず。少し昔の事を思い出す。別に隠している事でもないので話すことにしようとは思う。その後どう思われるかは、後で考える事にする。

 

「・・・少し、昔の話をするか」

 

怪訝な顔のラウラに構わず話し始める。

 

「俺には姉が居た。姉は優秀だった。剣術に秀で、運動能力に秀で、勉学に秀でた。出来ない事は無いとまで言われ、持て囃された。弟である俺自身も姉を誇りに思っていた。両親は居なかったが、姉が頑張ってくれていたから俺は不自由をしなかった。

ある日ある時、ISと言う機械が登場した。それで世界一位となった姉はますます脚光を浴びた。俺もそれが誇らしかった。あの人の弟であることを誇りとし、恥じない姿勢を取ってきたつもりだった」

 

そこで一旦言葉を切り、飲み物を口に含む。今でもあの言葉は鮮明に脳に焼き付いているし、その言葉を思い出すだけで、不快な気分にはなる。

 

「段々と周囲の期待が重くなって行った。出来なければ恥晒しと罵られ、出来たとしてももっと出来るはずだ、なぜ全力を尽くさない。あの人の弟なのだからもっと出来るだろうと、説教をくらうだけだった」

 

今でも思い出すと吐き気がする。

 

「それでも姉に認められるのならそれでいいと、好成績を維持し続けた、剣道も続け、姉からも指導を受け、都大会一位と言う成績も勝ち取った。喜んで報告をしに行った。

今でも覚えている。賞状を持って、嬉々として姉に報告に行った。帰ってきた言葉は、私の弟だからな、だった」

 

吐き気がする、今でもあの声は脳に、耳に残っている。案外俺にとってこの言葉はひどいトラウマになっているらしい、飲み物を飲み干し、吐き気を押し戻す。ラウラが不安そうな顔をするが、大丈夫だと言って続きを話す。

 

「嬉しかった気持ちが冷めていったのをよく覚えてる。今でもあの声が頭から消えない。姉は俺を見てくれていると思っていた。周囲の人のように俺を織斑千冬の弟では無く、織斑一夏(オレ)を見てくれていると思っていた」

 

もしかしたら本当は見ていてくれたのかもしれない。でも、あの時俺が欲しかったのはそんな言葉じゃなかった、織斑一夏(オレ)だから出来たと言って欲しかった。俺の努力の成果だと。

 

「それからも姉は俺がどんな結果を出そうと、「当然だ、私の弟だからな」と言っていた。確かに誇らしい言葉かもしれない。でも俺が見て欲しかったのは、周囲の人のように織斑千冬の弟としてじゃない。織斑一夏(オレ)を見て欲しかった。多分その辺だ、姉の期待に応えるのが嫌になったのは。そして風華達に会って、今まで知らなかった事を知った、そして風華の力になりたいと思った。それが今の夜空一夏(オレ)だ」

 

そこまで喋って、飲み物を飲み干してペットボトルをゴミ箱に放る。俯いたラウラを横目で見る。

 

「・・・私は」

 

俯いたラウラから言葉が漏れる。

 

「私にとって教官は全てだ。ドン底から這い上がらせてくれた、私にもう一度生きる意味を与えてくれた、その期待に応えんとしようとした」

 

震える声で紡ぐ。

 

「それは間違っているのか?」

 

「間違っちゃいないさ、言っただろ?俺にとって無意味だったと言うだけの話だ」

 

再びラウラが黙り俯く。その姿をただ見つめる。

 

「私は間違っていないと信じている。期待には応えるべきだと。だから私はお前が許せない。期待に応えることをやめたお前を」

 

顔を上げ、鋭い光で俺を射抜く。それを正面から受け止める。

 

「だのなんだの言ったが、結局は八つ当たりだ、私の子供のような癇癪だ。私の一番の人は私が一番じゃない。別の人を見ている。それが気に入らない。だから見られているお前を潰す。私があの人の一番になりたい。それだけだ。故にお前を認める訳にはいかない」

 

「・・・そうか」

 

「だからお前の考えも正しいと言うのなら、私に勝って見せろ」

 

そう言って不敵に笑んだラウラに、当然だ。と返す。

学年別トーナメントでの再戦を約束して、俺達は別れた。互いに何処か、近いものを感じながら




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