白き英雄への復讐   作:煌酒ロード

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お久しぶりでございます
今回試験的に戦闘シーンだけ三人称なんですが
正直全部三人称で書くのと
今までの様に一人称視点で書くの
どっちがいいんでしょうか?ご意見あったらお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ


降り始めた、黒い雨

side 一夏

 

あの後、ひとしきり泣いたシャルロットは寝てしまった。幸いにも部屋はここだし、移動にしても少し期間がいるとの事だったので、今は片方のベッドで眠っている。処分に関しては、未遂という事もあり不問、という事になるそうだ。そして肝心な事だが・・・、

 

「フランス国籍を日本国籍にして、専用機はフランスへ返還。及びフランス代表候補生の剥奪・・・と言ったところですか?」

 

「剥奪、というよりは辞める。と言った形ね、国籍が違う人間に自国の候補生をやって欲しいという人間はあまりいないわ」

 

アレからすぐに束さんがフランス政府と交渉し、シャルロットを日本国籍とする事や、専用機返還の手続きなども全て済ましてしまった。ついでにシャルロットは倉持のテストパイロットとして引き抜くそうだ。

 

「名前は本人の希望もあって、シャルロット・アイリス。国籍は日本。倉持技研のテストパイロット。まあ大体はそんな所ね」

 

「しかし卒業後は?いきなり日本に移住させるようなものですし・・・」

 

「心配しなくてもおねーさんがキチンと面倒を見るわよ。約束だしね」

 

そう言って微笑む楯無さん。

 

「シスコン極めてますね」

 

「風華ちゃ〜ん?サラッとおねーさん馬鹿にしてない?」

 

そう言ってじゃれ会い始めた二人を他所に、俺はまず一つの問題が片付いた安堵と、もう一つの問題について思考する。

 

「ドイツ軍IS部隊シュヴァルツェア・ハーゼ。その部隊隊長ラウラ・ボーデヴィッヒね・・・」

 

彼女が俺を目の敵にする理由。一時期織斑千冬がドイツで教官をしていたという話は聞いている。第二回モンド・グロッソ終了後、俺の居ない事に気がついた織斑千冬が、俺の事を知らないか。と役人を問い詰めた所、俺の誘拐事件が発覚。日本政府としては俺の安否よりも織斑千冬の優勝の方が大事だったらしく、俺の誘拐事件を黙殺しようとしたらしい。それが織斑千冬にバレ、捜索隊が組まれた。その時に協力してもらったドイツ軍に、礼の意味も込めて教官職を一年間だけしていたらしい。

 

「難儀な事だ・・・」

 

「悩み事ですか?」

 

目を開けると、風華が俺を心配そうに見ていて、そうだな。と頷いて頭を撫でる。少し赤くなった風華を可愛いな〜なんて思いながら眺めていると。

 

「なんで僕は寝てる間に糖度の高い空間に放り込まれてるのか説明が欲しいよ」

 

「ナチュラルにイチャついてくれるわよね〜。おねーさん砂糖吐きそう」

 

目覚めていたシャルロットと楯無さんにジト目で見られていた。解せぬ。

しかしまあそんな事はさて置き、目覚めたシャルロットに事情を説明。自身の状況などを把握してもらう。

 

「日本国籍ね・・・、それに代表候補生権限の消失・・・。専用機が無くなるのは痛いなぁ・・・」

 

「お前にとっては苦労して手に入れた〝力〟だろうからな・・・」

 

「まあでも無くなったものはしょうがないさ。それに有形の力は手に入れようと思えば手に入れられる。代表候補生の地位だって二度と手に入らないって訳じゃ無いんだし」

 

顔を上げたシャルロットの目には濁った光では無く、綺麗な光が宿っていた。

この分なら大丈夫だろう。と結論づけ、その後を話そうとした所で、窓がノックされる。全員が警戒し、窓に向かって殺気を飛ばす。

 

コンコンコン、コンコンコン、コンコンコンコンコンコンコン

 

軽快な337拍子で再び窓がノックされる。シャルロットは困惑しているが、俺達は心当たりがある。と言うかこんな悪ふざけをする人は世界に一人しかいない。俺は窓に寄ると、カーテンを開け、窓を開ける。そうすると、

 

「いやー、全員から殺気の一斉掃射なんて受けるものじゃないね!」

 

空間にいきなり現れた、ウサ耳エプロンドレスの女性から放たれた言葉に俺は頭を抱える。

 

「いきなり窓がノックされたら誰だって警戒しますよ・・・。束さん」

 

「にゃはは〜。でもサプライズにはなったでしょ!」

 

「次同じことが起きたらサブマシンガン乱射しますね」

 

「風華ちゃん辛辣!?流石に束さん死んじゃうよ!?」

 

「冗談ですよ」

 

クスクスと楽しそうに笑う風華と、からかわれた!?と、漫画のような驚愕の顔をする束さん。楽しそうでなによりなんだが・・・、

 

「束さん・・・、用があったんじゃないんですか?」

 

「おうおう、そうだったじぇい。シャルルんに渡すものがあるんだよ♪」

 

そう言って束さんはシャルロットに、オレンジ色のペンダントを投げ渡す。

 

「えっ・・・これって」

 

「ラファール・リヴァイブの待機形態!?コレはフランスに返却するハズでは!?」

 

渡された待機形態に困惑するシャルロットと、驚く楯無さん。

 

「ん?確かにリヴァイブは返却するよ?ソレは、シャルルんのリヴァイブと全く同じに作り上げた別機体だね」

 

それに対し目の前の天災はそんな事を事も無げに言ってみせる。呆然とする楯無さんとシャルロットだが、

 

「と言っても武装とかは変えてあるし全部が全部前と一緒って訳では無いんだよねぇ、流石にコアをちょろまかす訳には行かないし」

 

まあ後の確認は自分でやってよ。なんかあれば連絡先はいっくんとふーちゃんが知ってるから!

とだけ言い残して再び束さんは消えた。

シャルロットの専用機の事は後日、本人が確認するという事なのでその日は解散した。

 

 

 

そして翌日、昼休みに風華、シャルロットと共に昼でも食べようかと食堂へ行こうとした所を、

 

「待て!一夏!」

 

そう呼び止められ、振り向くと篠ノ之が立っていた。

 

「・・・何か用か?」

 

「自室謹慎の間に聞いた。お前は改めること無く邪剣を振るっているそうだな!」

 

その言葉にシャルロットは首を傾げ、風華は少し篠ノ之を睨みつけ、俺は呆れる。

 

「・・・用はそれだけか?俺達はさっさと食堂に行きたいんだがな」

 

「まだ済んでいない!そのような邪道な剣ばかり振るっていても何も無いぞ!お前に剣道の型をもう一度仕込む!放課後に道場に来い!」

 

正論でもあり、間違ってもいるとはこういう事だろうか。あの時あの場で俺達が言った事を理解していないのかどうなのか、俺にはわからない。

 

「・・・断る。少なくとも今日の放課後はシャルロットの機体の整備と訓練の補助をする事になっている。剣道などに割いている暇はない」

 

「お前でなくとも構わんだろう!そこの得体の知れん女が行けばいい!お前の邪剣を矯正する方が優先だ!」

 

「ここはIS学園だ。ここに通う生徒は例外を除いて皆、ISの勉学に来ている。ISの機体の訓練と剣道の練習、どちらを優先すべきかは明白だと思うが?

それに剣道場はお前のでは無く剣道部の物だろう?剣道部以外の人間を簡単に入れていいのか?きちんと指導担当及び部長の許可は取ったんだろうな?」

 

そい言うと篠ノ之は目を泳がせる。そうだろうとは思っていたがやはり個人の独断だったらしい。

 

「やはりお前の自分勝手か、どうしてもと言うのなら許可を取ってから来い。取れるとは思えんがな」

 

俯いた篠ノ之はわなわなと肩を震わせたかと思うと再び顔を上げ、風華を睨む。

 

「貴様のせいか!一夏が邪剣を振るうようになったのは!お前が誑かしたからなのか!」

 

そう叫ぶ。睨みつけ、激情を露わにする篠ノ之に風華が向けるのは哀れみの目。

 

「誑かす・・・、ですか。まあそう思ってればいいです。お好きなように、怒鳴って、喚いてください。子供の癇癪に付き合いきれないほど、私の心は狭くないです」

 

そう言って、俺の腕を引っ張る。時計を見ると、昼休みも半分を過ぎていたので、その場に立ち尽くす篠ノ之を置いて、俺達は食堂へ向かった。

 

 

side 風華

 

昼休み前に篠ノ之さんが突っかかって来た以外は概ね何事も無く終了し、その日の放課後、アリーナには私、一夏さん、セシリアさんがいます。一応、私と一夏さんはシャルロットさんの訓練相手券補助として、セシリアさんは見学及び暇があれば相手をして欲しいと名乗り出て、それをシャルロットさんが了承した形になります。

アリーナにでて、シャルロットさんがISを展開。見た目はカタログで見せてもらった、ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡと何ら変わりはありません。

 

「シャルロットさん。調子はどうですか?」

 

「問題ないよ。うん、リヴァイブを動かしてた時となんにも変わらない」

 

そう言って飛行すると、目標位置での停止や、減速、加速等を繰り返した後、仮想ターゲットを出して、両手にハンドガンを展開。それを撃ち抜いていく、等をしていました。それら全てを終わらせて、着替えたシャルロットさんと合流。セシリアさんや一夏さんとも合流し、食堂に向かいます。

 

「そう言えば、シャルロットさんの機体、名前は何というのですか?」

 

「イロウシェン。侵食って意味だよ」

 

「また物騒な名前だな、意味があるのか?」

 

「悪いけどそれは秘密。機体性能にも関わる事だしね」

 

そう言って微笑んでみせたシャルロットさんを見て、一先ずは少し明るくなってくれたようで安心しました。

 

 

―――

 

side 鈴

 

学年別トーナメントの開催が決定して、クラス代表としては勝たなければいけないなぁと、少しプレッシャーを感じながら、アリーナに出て甲龍を纏う。その時反対側のピットから、ブルー・ティアーズが飛びてて来て、こちらに降りてくる。

 

「セシリアじゃない。アンタも訓練?」

 

「はい。クラス代表として無様な戦いは出来ませんので」

 

「考える事は大体一緒って訳ね。それなら模擬戦でもどう?折角専用機持ちどうしなんだし、このまま互いに個別で訓練ってのもなんかだしね」

 

「私は構いませんわ。鈴さんがよろしいのであれば御相手致しましてよ」

 

「私から誘ったのに私に問題がある訳無いじゃない。じゃあ行くわよ」

 

互いに武器を構え、戦闘態勢に入る。その直後、私とセシリアの間で地面が爆ぜた。

 

「何?」

 

「何ですの?」

 

地面が爆ぜた理由は砲弾。撃ち込んできた方向を見ると、肩に長大な砲塔を搭載した黒いISが立っていた。

 

「ドイツのシュヴァルツェア・レーゲン。ロールアウトしたとは聴いていたけど、いきなり喧嘩売ってくるなんてね。どう言うつもりよ」

 

「イギリスのブルー・ティアーズに中国の甲龍か、データで見た時の方が強そうだったな」

 

こちらの質問には答えず、見下した目でこちらを見て、弱いと貶してくるラウラ・ボーデヴィッヒに苛立ちを覚えながらももう一度問いかける。

 

「なんの用かってこっちは聞いてんのよ、質問にくらい答えなさいよね」

 

「フン、用向きなら今貴様が言った通りだ。貴様流に言えば喧嘩を売りに来た。という所だ」

 

その言葉に自然とセシリアと私の顔が歪む。まさか本当に喧嘩を売りに来たとは思わなかった。

 

「まさか本当に喧嘩を売りに来たとはね・・・、ドイツ軍人ってのは血の気の多い集団なの?」

 

「ハッ、チャイニーズ程じゃない」

 

その言葉に私は本気でキレそうになる。そこでセシリアが口を開く。

 

「喧嘩を売りに来ただけなら帰っていただけると嬉しいのですが、こちらも暇ではありませんの」

 

「生憎と私も暇だから喧嘩を売りに来たのではないのでな。用件もあるにはある。しかし長々と説明するのは面倒でな。要点だけ言わせてもらうぞ」

 

そう言った瞬間に、シュヴァルツェア・レーゲンが戦闘態勢に入る。それを見て、私達も構える。

 

「貴様ら程度なら機体(シュバルツェア・レーゲン)の性能テストになるだろうと思ってな、ゴミ掃除前に掃除機の調子を確かめる事ぐらい誰だってするだろう?」

 

「テッメェェェェ!」

 

頭に血が上るとかそんなんじゃ無かった。ゴミ掃除と言ったけど、そのゴミがなんなのかぐらい私にもわかる。一夏の事だ。コイツは一夏のことが気に入らないって事は知っていた。それでも、言うに事欠いてゴミと言ったか。一夏をゴミと呼んだか。

私の友人を、恩人を、ゴミと呼んだか。

 

「覚悟出来てんでしょうねぇ!その機体ごとスクラップにしてドイツまで叩き返してやる!」

 

「ハッ、出来る事と出来ない事の区別ぐらいつけれるようになってからイキがれチャイニーズ」

 

我慢出来なくなった。もう何も考えない。自重なんて知った事か、コイツに目にもの見せてやらなければ気が済まない。

 

 

side 三人称

 

鈴が甲龍の双天牙月をダブルセイバー型にドッキングさせ、切りかかる。それをレーゲンの両腕のプラズマ手刀で防ぐラウラ。憤怒の表情に顔を歪ませながらも、キレのある斬撃を前にしてラウラは少し驚く。その間、意識外から飛んでくるティアーズのレーザーをワイヤーブレードを使って叩き落とす。即席のコンビネーションとは思えない攻撃を前にして、余裕で勝てると思っていたラウラが初めて顔を歪ませる。

 

「どうしたドイツのチビッ子!防戦一方で手も足も出ないみたいだけど!?」

 

「貴様にチビッ子と言われたくは無いな。大して変わらんだろう」

 

軽口を叩いている間にも、鈴は双天牙月をダブルセイバーから分離させ二刀流へと変更、衝撃砲も混ぜながら縦横無尽に乱舞する。その乱舞の隙間をついて、ティアーズのレーザー射撃が飛んでくる。それら全てを捌き、叩き落としたところでラウラは鈴から距離を取る。

 

「ふむ・・・、予想外だ。ここまでやるとは思っていなかった。データの方が強そうだと言ったのは撤回しよう」

 

「ハン、今更ね。それで?ビビって逃げようっての?」

 

言外に逃がすと思うか?と問われ、それをラウラは失笑で返す。

 

「逃げる訳無いだろう。こちらから勝負を仕掛けたんだ。そんな無様な真似は出来まいよ」

 

そう言ってラウラは顔を鈴とセシリアに向ける。

 

「なに、私も少し真面目にやろうと言う話だ」

 

そう言うやいなや、爆発的な加速でレーゲンが動き、瞬時に甲龍の眼前まで現れる。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)ッ・・・!?」

 

そしてレーゲンが目の前に現れたと思った瞬間に甲龍が全く動かなくなる。

 

「なっ・・・!?動かない!?」

 

「ククッ、捕まえたぞチャイニーズ」

 

しかしその瞬間にレーゲンの頭上をティアーズのビットが囲う。

 

「私を忘れてもらっては困りましてよ」

 

「忘れてなどいないさライミー」

 

頭上を囲まれていながら動揺も見せないラウラに一瞬恐怖を覚えたセシリアだが、それを表には出さずにトリガーを引く。

 

「射撃に集中しすぎだ、ライミー」

 

その言葉と同時に、ビットからの射撃をワイヤーブレードで弾き、更にはビットを捕縛、へし折った。更についでだと言わんばかりに、アリーナの地面から飛び出したワイヤーブレードがティアーズの両腕を捕縛、地面に叩きつけた。

 

「ガッ・・・!」

 

「ククッ、まあこんな物か」

 

そう言ってワイヤーブレードでティアーズを引きずり、レールカノンで甲龍の衝撃砲を破壊し、顔面を掴み、地面に叩きつけワイヤーブレードで吊るす。

 

「カハッ・・・、あぐ・・・」

 

「あっ・・・、がっ・・・」

 

首をワイヤーで締めあげられ、二人から苦痛の声が漏れる。それを他所に。ラウラは機体のチェックを済ませ、顔を上げる。

 

「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズ。期待外れでは無かったぞ」

 

そこで初めてラウラの顔に表情が浮かぶ、凄惨に歪んだ笑みに。

 

「まあ、予想通りではあったがな」

 

そう言い放つと同時に甲龍に右の拳が、ティアーズにレールカノンが撃ち込まれる。

 

「お前達も強かったが、私がそれ以上だったと言うだけの話だ。

さて、さっきも言った様に今回の目的は機体の性能チェックでな。まだまだ付き合ってもらうぞ」

 

冷酷な黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)は、止らない。




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