元アイドルであったものはデレマス世界で何を想う 作:しましまパンダ
毎度誤字脱字の報告ありがとうございます。自分でもチェックは少ししているんですが、先入観があると見つけられないんですかね……7
追記 本当に申し訳ないです。一部のキャラの名前がごっちゃになってたところがあったのですべて統一いたしました。
本番前のリハーサルが終わり、後は本番のみとなりました。スタッフの方々は良い人達ばかりですし、新人にはもったいない素晴らしい場所です。
このライブのために準備してきた私以外の人の想いを背負って私はステージに立ちます。そう思うと失敗できないとも思いますが、それ以上に私の力になります。
そんなことを考えていると、部屋に風見さんが来たようですね。
「ツバサさん調子はどうです?」
「リハーサルの時も大丈夫でしたので、不測の事態が無ければこのままいけます」
「それじゃ、俺は関係者の方と話があるから本番まで待機していてください」
「分かりました。それでは風見さんも頑張ってください」
「ツバサさんの方が大変ですからね。俺が音を上げるわけにはいかないよ」
彼はそう言っていますが、目に見えて疲れているのが分かります。新人ですし、色々と経験のある現場のスタッフ相手はキツイものがあるのかもしれないですね。
私も集中しなければいけません。成功する確率の方が高いですが、それ故に慢心し、何かの拍子にミスったとすれば悔やんでも悔やみきれません。
ですから、最後まで気を抜かず、集中力を高めていきましょう。
今の私に出来るのは歌う曲を聞きながらステージへ立つ自身の姿をイメージすることだけです。
◇◇◇
お客さんが入場し始めたとスタッフの方から教えてもらいました。一応会場はほぼ満席らしいですね。嬉しい事ですが、その来てくださったお客さんを全て楽しませられるようにするのがアイドルである私の存在意義ですからプレッシャーを感じますね。
「綺羅さん、準備をお願いします」
スタッフの方がそう私に言います。レッスンはできる限りやりましたし、リハーサルでもミスなくほぼパーフェクトに近くこなせました。
何事も簡単ではありません。だからこそ皆頑張っているのです。そのための努力をこの場所で発揮しに行きましょう。
「ツバサさん、頑張ってくださいっ!」
「──ありがとうございます。行ってきますね」
ステージ袖、ここまでは風見さんでも誰でも見れる景色です。しかし、この先にある光に包まれる世界の景色を見ることができるのは私達のような演者だけです。
胸が高鳴ります。この先に見えるのはどんな景色なのでしょう。そして、私はきてくれた方々を満足させられるのでしょうか。
私が出てきたことでそれに気づいたお客さんの歓声が上がります。よく見ればストリートの時に見た人も幾らかいるのが此処からでもわかります。
こうしたお客さんとの物理的な距離が近いのはドームなどとは違った良い所でしょうか。
「初めまして、綺羅ツバサです。今日は来てくださってありがとうございます」
「それでは聴いてください──」
曲が完成してから毎日のように聴いてきたイントロが流れ始め、声を出すその瞬間が近づくにつれて意識は研ぎ澄まされます。
何百と繰り返してきた練習が走馬灯のように脳裏を駆け巡り、体は最適化され、眼を開くとそこには私の声が響くのを今か今かと待つ笑顔の観客。
その観客の笑顔によって僅かに意識に残っていた無駄が無くなり、私の全てがお客さんのために存在すると言うような状態になりました。初ライブ、思い切って行きましょう。
◇◇◇
やっぱり、ライブは一瞬ですね。例えるなら100m走のようなものです。スタート前はお腹痛くなったりしますが、スタートすればそこからは一瞬です。
スタッフの方に挨拶をして椅子で一休みしていると見知った顔が近づいてきました。
「ツバサさんすごかったです!」
私が誘った島村さんです。彼女の後学のためといいますか現場を感じてほしかったので私が風見さんに無理を言って捻じ込みましたが彼女の表情を見る限りでは良かったのでしょう。
「そうでもないです。最後の方で力が抜けてしまいました。──それよりも今回の現場はどうでしたか?少しは為になったでしょうか」
「すごく為になりました。ライブの裏方などは全然知らなかったので見えないところがよく見れて良かったです!」
そうなんですよね。アイドルと言うのは何というか煌びやかで華やかな物と思いがちな少女が特に多いですが、それをアシストしてくださっている現場の方々を忘れてはいけないのです。
はっきり言って、私達がどれだけ頑張ろうとも音響がダメなら結局だめですし、掃除ができてなければお客さんは不快な思いをしてしまいます。
ですから、デビューする前からこうしたところを見ておくことで自分たちが誰の仕事によって成り立っているのかと言う事を知っておくのはいい事だと私個人的には思います。
「なら良かったです。これでも風見さん……ああ、プロデューサーに少し無理を言って捻じ込んだ甲斐がありましたね」
「ツバサさんのためにも私もっと頑張ります!」
島村さんはすでに頑張っていると思いますがね。そこら辺のアイドルと遜色ない位のレッスン量をこなしている気がします。
やはり彼女から目を外すと危ないかもしれないですね。島村さんの純粋さは強みであり弱みでもあります。純粋すぎる思いは時に自分を傷つけますからね。
「レッスンは重要ですが、無理だけはしないでくださいね。焦らずとも貴女は確実に伸びています。近くで見てきた私が保証します」
「えへへ……ありがとうございます~」
「これからも二人で頑張りましょう」
島村さんにそう言った時でした。此処にいるはずのない人の声が私に聞こえてきました。
「初ライブお疲れ様、ツバサ」
「お疲れー。良いライブだったよ~」
「お疲れツバサ!」
「何で来ているんですか……」
三人とも私に内緒でライブに潜り込んでいたようです。現役アイドルの三人と突然遭遇したことで島村さんはテンパってしまっています。
「あら、友達の初ライブが気になったからじゃいけないのかしら」
「別にダメというわけではないですが」
「それよりもツバサ、さっき親しそうに話していた彼女は誰~?紹介してよ」
「そうそう、アタシも気になってたんだっ★」
矛先が私ではなく島村さんに行ってしまいました。島村さんはまだデビュー前ですからあんまり関わらせたくはないのですが仕方ありません。当人もあわわ……とか言っていてまともに話せる状態ではなさそうですし私がどうにかしましょう。
「彼女は養成所に通っている島村卯月さんです。縁あって私が色々と教えているんですよ」
「あっ、島村卯月です!よろしくお願いしますっ!」
「あのツバサがねぇ……私は速水奏。島村さんよろしくね」
「アタシは城ヶ崎美嘉。よろしくね、卯月ちゃん」
「えー、あたしは塩見周子。島村さんよろしくねー」
島村さんがああなるのも仕方ありません。美嘉はカリマスJKっていうジャンルでカリスマらしいです。私はJKって言うのを知りませんが。奏や周子も前のライブで大きく知名度を上げましたからね。
「そう硬くならないで大丈夫ですよ島村さん」
「そうそうリラックスリラックス!」
美嘉の持ち前の姉御肌的なもので島村さんも少し溶け込むことができたようです、流石は美嘉。
その後も私と美嘉がフォローを入れつつ五人で話していましたが、島村さんが帰る時間になり先に帰宅しました。
島村さんがいなくなり、先ほどのライブの話になりました。
「改めてお疲れ様ツバサ。素晴らしいライブだったわ」
「知り合いに面と向かって言われると照れますね」
「でもさー、実際初ライブとは思えない落ち着きとクオリティだったよね~」
「レッスンの成果とお客さんの笑顔のおかげです」
「ていうかツバサまた口調戻ってる。アタシらには前みたいな口調でいいじゃん」
美嘉に言われて思い出しましたが、この前別れ際に口調崩したんでしたっけ。でも、無意識で出るのは何時もの口調ですからね。
「癖と言うのは中々治らないもので、こっちの口調が自然と出てしまうんですよ」
「まあ、ツバサと言えばそんな感じよね」
小さいころは男だった時のこともあって一人称がボクだったりオレだったりしましたが、女であることを自覚してからはアタシとかは使いませんが私を使い、使い慣れている丁寧な感じの口調を心がけてきましたからね。
「おーい、ツバサさーん」
皆と話していると遠くから私を呼ぶ風見さんの声が聞こえたのでここらへんで終わりにしましょう。ライブの本番は終わりましたが片付けや携わったスタッフにも挨拶しておきたいですし。
「それじゃ、風見さ……プロデューサーに呼ばれたので失礼します。また、今度」
「お疲れー。また今度~」
「そう……なら私達は先に帰らせてもらうわ」
「それじゃ、頑張って!」
そうして3人と別れた私は風見さんの所へ行きました。皆が来ているのは予想外でしたがまあまあの高評価?っぽいので良かったのでしょう。
私的にも悪くないかな、と思っていたので他の人にも良い感じに思われたのなら成功でしょうか。
「ああ、ツバサさん。まずはお疲れ様。この後は……」
この後挨拶回りして精神が疲れました。
◇◇◇
最初のライブがあってからは少しですがメディアへの露出が増えました。まあ、美城が大きい影響力持っていたりするところなのでコネに近い気がしますが嬉しい事です。
他にも、ライブの反省などをトレーナーさんとしたり、今後の方針を風見さんが考えていました。色物にならなければいいかな、と言う程度に思っています。
色物だとちょっと、私の強みとはかけ離れてしまうのでそれだけは勘弁したいところです。
突然ですが、この世界で気づいたことがあったんですが、前世と限りなく近いんですが若干の違いはあるみたいです。
例えばまだ太陽系惑星が水金地火木土天海だったのが前世ですが、ここでは冥王星がまだ仲間に入っていたり、肌とかの若返りっていうんでしたっけそう言った女性が気にするような部分でもいくつかありました。
機会があればそうですね……事務所の大人組の方とかに話してみるのもありかもしれません。ああいう若返り効果等って上手くいったとしても誤差レベルな気がしますけど。
機会があればってことで頭の片隅に置いておきましょう。事務所にも二十を超えて四捨五入すれば三十になる方もいるみたいですし。
「何を険しい表情で見ているんです?」
「ああ、ツバサさんか。ちょっとね……」
私たちの部署の部屋っていうんですかね、そこへ入ると表情が険しい風見さんが紙束とにらめっこしていました。
あそこまで険しい表情になっている原因のものが気になったのでコソコソと近づいてチラっと見てみました。
さりげなくバレないように行ったので詳しいのは分かりませんが、何かの企画書のようです。何というかそう言ったところを見ると失礼ですが、この人も何だかんだプロデューサーやってるんだなーって思います。
普段を見ていると気のいいお兄さんな感じなのでそうは思いません。それに、最近は長時間レッスンを行ったりしているので挨拶や当日の流れの説明程度しかコミュニケーションしていないのでそうしたところにも原因があるのでしょう。
「それでは、今日もレッスン行ってきますね。風見さんも頑張ってください」
「あっ、ああ。ツバサさんいってらっしゃい」
気の抜けた返事ですね。大丈夫なんでしょうか?
ようやく、ツバサさんの初ライブ終わって次へ行きます。
卯月はどんだけ頑張っても頑張りますって言いそうなイメージを私は持っていますが実際どうなんですかね。
後、ツバサさんの歌ったソロ曲の曲名はまったくいい感じのが思いつかなかったですねー。
常務が好きそうな感じのつけたかったんですが。