元アイドルであったものはデレマス世界で何を想う 作:しましまパンダ
週明けからはゆっくりになると思います。
他のアイドル達が待っているという場所へ向かうために出入口の扉を開けてみると、すぐ近くにやたら大きな部屋があったので聞いてみるとお偉いさんがいるはずの場所だと風見さんが言っていました。ただ、今は海外へ出ているらしく不在みたいですけど。
「ツバサさん、他のアイドルがいるのは下の階だからエレベーターで降りようか」
「そうなんですか。それでは行きましょう」
何故私たちのような下っ端が上階の、しかも上役の近くなのかわかりませんけどね。風見さんはガチガチですね。初の自分のプロデュースするアイドルが私のようですから仕方ない所もあると思いますが。
そう言えば、初と言うことは一年間何をしていたのでしょうか。研修が一年もあるとは思えませんし、場所につくまでの間ですし、聞いてみましょう。
「風見さんは二年目ですよね。一年目は何をしていたんですか?」
「えーっと、最初はビジネスマナーとかの研修をしていたんだけど、その後OJTっていう働きながら仕事を覚えていく奴をやってたよ」
「つまり、他のプロデューサーの補佐のようなことをしていたんですか?」
「そういう事になるね」
「その先輩プロデューサーって誰なんですか?」
「あっ、ツバサさん。もう着いたよ。それはいずれ教えるから、とりあえず、此処にいる他のアイドルに挨拶をお願い」
あからさまに、話をそらされましたが、私の気のせいかもしれませんしそのうち聞きましょうか。とりあえず、この扉の先にいる方々に挨拶しなければいけませんからね。
人間の第一印象は数秒で決まると言いますし、気合い入れていきましょうか。
プロデューサーに言われて此処に来てみたけど、ずいぶんと沢山集まっているわね。重大な発表でもあるのかしら。でも、ライブも少し前にやったし、そんなことはないと思うけど……
「あれ、奏も来てたんだ~」
「あら、周子も呼ばれたの?」
「そうなんだよねー、何か新しいアイドルが入ったらしいからその挨拶だってさー」
「ふーん……」
新しいアイドルが入るのは別に特別な事ではない気がするけど……そのアイドルが特別なのかしら。すでに何かで有名とか?
「皆、集まってるようだね」
そんなことを考えつつ、周子と話していると部長さんが入ってきた。部長さんの知り合いってことかしら。いつも気が付いたらアイドルが増えてたからこういうのは違和感しかないわ。
「今日は新しく入った彼女を皆に紹介しようと思ってね。彼女は僕も少しばかり知ってるからこういう形で皆に溶け込ませてあげたくてね。ツバサくん、入ってきてくれないか」
やっぱり、部長さんの知り合いなようね。溶け込ませてあげたいってことは少しコミュニケーション能力が乏しいのかしら。一応美城にもそう言ったタイプのアイドルはいるからそれを見越して……って、なんか聞き覚えのある名前言ってなかったかしら。
「失礼します。本日から美城プロダクションアイドル事業部に所属することになりました綺羅ツバサです。皆さんよろしくお願いいたします」
「彼女は新人の風見くんの所の新人でプロデューサーも拙いところもあるだろうから色々とフォローしてあげてほしい」
「そう言うことですから皆さん仲良くしてくれると嬉しいです」
……何だかツバサにすごく似た女の子がいるわ。おかしいわね、あの子に似た子がそこらにいるわけと思うのだけど。
うーん……いったい何がどうなっているのかしら。
「……なで、……奏ってば」
「……ごめんなさい。聞いてなかったわ」
「もー、無視する何てひどいな~。あれってツバサだよね、奏何か知らないの?」
「……知らないわ」
ふー、いったん冷静になりましょう。前にいるのはツバサ……よね。何でアイドルになっているのかしら。今日話した時は何もなかっ──!?
まさか、あの機嫌が良かったのって新人Pと××とか××したからとか……無いわね。ツバサに限ってそんなことはありえないわ。
じゃあ、何で……
「ちょっと、あたしツバサと話してくるね~」
「ちょっと待ちなさいっ! 私も行くわ」
まったく、抜け駆けとは油断も隙も無いんだから。
ツバサじゃん……この前只者じゃなかったって思ってたけど、まさか同じ事務所になるなんてね★
周子や奏はあっちで話してるし、というか周子が一方的に話してて奏はツバサを見ながらボーっとしてる。
それにしてもツバサは部長さんと知り合いなんだ。じゃあ、結構融通利いたりするのかな。
ツバサの所の新人Pには悪いけど、程よい実力が付いたら一緒にステージに立ちたいな~。今のうちにプロデューサーに頼んでおこうかな。
でも、ツバサってとてつもないオーラとかは纏ってるけど、どれくらいの事が出来るのかわからないや。あの風格で運動音痴ってことはなさそうだけど……
まっ、細かいこと考えても仕方ないかっ!アタシもツバサの所いこーっと。
自己紹介が終わり、ざわ・・・ざわ・・・と皆さんがし始めました。誰かに話しかけるべきですかね。それにしても、いっぱいアイドルがいますね。新しめな部署と聞いていましたが。
「ツバサじゃん。どうして此処にいるのかな★」
「そうそう、何でさー」
「私も知りたいわね。特に、何で秘密にして私に話してくれなかったところとか」
ぼーっとアイドル達を見ていると、美嘉、周子、奏のこの部署で唯一知り合いの三人が気を利かせてくれたのか話しかけてきてくれました。というか、居たんですね。見当たらなかったから今日はいないのかと思いましたが、奥の方に居たんですかね。
「えーっと、まず奏は落ち着いてくださいね。そうですね、経緯としては──」
風見Pにスカウトされて受けるまでの事を島村さんの事は伏せて話してみました。反応は三人ともそれぞれで、へぇーと適当な感じな周子やストリートで歌を歌ってたんだーと何やら確認している美嘉、そして私の学友でもある奏は──
「何か、秘密にしていること多すぎないかしら。ストリートで歌うなら私に言ってくれれば最速で最前列で聴いたのに……貴女の歌をいつも聞いていた観客が恨めしいわね……」
何か病んでる?気がしないでもないです。奏はすごく有能な娘なんですけど、時折こうポンコツ化するのが欠点ですかね。事務所でもちゃんとできてるんでしょうか。
「落ち着いてください奏。これからはいつでも聴かせられますから安心してください。」
「それもそうね。でも……お詫びというかこの前行けなかったし、今日この後カラオケに行きましょう」
「何を奏は抜け駆けしようとしてるのかなー」
「別に、抜け駆けってわけじゃないわよ。この前誘われたけど忙しくて行けなかったから……」
「まあまあ、奏、よかったら皆で行きましょうよ。多い方が楽しいでしょう?」
私がそう言うと、渋々と言う感じではありますが、仕方ないわねと言う感じで頷いてくれました。
やっぱり、奏でも複数で行った方が楽しいってことがわかっているんですね。この前ぼっちで私はカラオケボックスへ行って店員の目線が怖かったですよ。いや、あちらもそんなつもりはないのでしょうけど、先入観と言うか此方の思い込みでそう見えるんですよね。何だこいつ、ぼっちやんけwwwみたいな風に見えてしまいますから。
「流石ツバサ、話分かるねー」
「アタシも入れてよねっ★」
「勿論、美嘉も入ってますよ。それでは、一旦他の皆さんにも個別で挨拶してきますね」
「私も一緒に行くわ」
「あたしもー」
「アタシも手伝うよ」
嬉しいことに三人とも手伝ってくれるようです。私一人ですと全くとっかかりがないので三人がいてくれると心強いです。
さて、あの方から行ってみましょうか。三人ともアシストは頼みますよ。
とりあえず、一通りあいさつ回りをし終えて各々のプロデューサーに帰宅許可を貰ったのでカオラケに来ました。
ぶっちゃけ、この三人と一緒に入っても三人の正体が一般の人にバレないか心配でしたがそこらへんは大丈夫でした。
まず入ってしたことと言えばドリンクバーへ飲み物を入れに行きましたが、テンプレと言うかなんというか、私は荷物を少し整理してから行ったので少々遅かったんですよ。
そしたら案の定、ナンパされてましたね。三人ともこういうのに慣れてないのか若干強引に持っていかれそうでしたが私が相手の写真を撮って店員さんへ即伝えて、ポリスメンに連絡する準備を整えてから即座に介入したので事なきを得ましたが、若干頬が三人とも紅潮していたのは怖かったんですかね。
元男の私はああいう手合いがやられるときついことをよく知っているので大丈夫でしたが三人では確かに危なかったですね。
「三人ともいつまでも固まってないで曲入れましょう。時間無くなっちゃいますよ?」
「あっ……うん。入れる入れる」
そう言って周子にパネルを渡しましたが、ちょいちょいとパネルいじるだけで数分やっているもんですから、私が強引に奪って美城プロの代表ともいえるお願い!シンデレラを入れました。
先ほどの事を吹き飛ばすような歌を私が歌うしかありません。彼女の歌ならリラックスもできるでしょうし……
曲の前奏が始まり、周子達は何の曲が掛かったのか理解したようです。ハッと三人とも顔を上げています。
「……これって」
「あれだよね~」
「アタシたちの前で歌うなんて、度胸あるじゃんっ★」
三人とも少しは元の調子に戻ってきたようですね。それでは、歌います。三人とも聞いてくださいね。
「──♪」
「うまいね~……ほんと」
「こんなに上手かったかしら」
「マジでうまくない?」
曲が進むにつれて三人とも先ほどの事を忘れたのか切り替えたのか私の歌にしっかりと、耳を傾けてくれるようになりました。
三人の前でこの曲を歌うのは少々緊張しましたがうまくいってよかったです。
「ふぅ──少々緊張しました」
「次はあたしの曲一緒に歌おうよー」
「待ちなさい周子。付き合いが長いし、それにカラオケに行くのを言い出した私のが先でしょう」
「二人とも待ってよっ!アタシでもいいじゃん~」
歌い終わった私に三人がそれぞれ自分の曲を一緒に歌わせようとしてきます。嫌ではありませんが、本家の人と歌うのは合わせるのが難しいので少し苦手なんですけど……そうも言ってられないですね。せっかく、彼女達の調子が戻ったのにそれを落とすのは私も本意ではありませんからね。
「それでは、奏、周子、美嘉の出会った順でいきましょう。お手柔らかにお願いしますね。曲は知ってるレベルですから」
「出会った順かー、なら仕方ないね~」
「そうだねー、じゃあ奏頑張って★」
「それじゃあ、二人ともお先にやらせてもらうわね」
この後、滅茶苦茶三人で歌った。ただ、三人とも歌った後で一緒にステージで今度歌おうって誘ってくるのはプロデューサーとか今西さんや貴女方のファンが怖いですからちゃんと話通してからにしましょうね。
まあ、最後に四人で歌ったりしていた時は良い感じにシンクロしていて綺麗だったと思いますが。それにしたって、三人とも高いレベルで歌唱力も纏まっていますね。私が彼女たちくらいの時とは比べ物にならないです……二週目とか言うずるしている私が言えることではないかもしれないですが才能って怖いですね。
「それでは三人とも夜道には気を付けてくださいね。後不測の事態があれば警察をすぐ呼ぶか大声を出すんですよ」
「「「わかってるわ(は~い)(りょーかい)」」」
「本当にわかっているんですかね……」
「そんなに心配ならツバサの家に泊めてくれてもいいのよ?学校同じだし、ウチまで来てくれればその後行くけど……」
「えー!奏ずるいー」
「そうだそうだー」
「その元気があれば大丈夫ですかね……」
この元気があれば大丈夫でしょう。もし、何かあれば犯人を消滅させます。奏を泊めるのはもっと予定を細かく立ててからにしましょう。別にダメではないですからね。
「奏のはまた今度にしましょう。もちろん二人も良かったら来てくださいね。それでは、また明日」
「もう……つれないわね。まあ、言質は取ったわよ?また明日ね」
「あたしも帰ろー。それじゃ、予定はまた後でね~」
「アタシも早く帰ろ~っと。じゃね~★」
今日は色々あって精神的にも身体的にも疲れましたね。眠い……
誤字脱字の報告いつもありがとうございます。
ツバサは主役も張れますし、他人と合わせて共鳴のようなこともできます。なので一緒に歌った相手は気持ちよく歌えますし、発揮できるパフォーマンスも一人の時よりも若干ですが良くなります。
まあ、RPG風に言うと高ステ、補助スキルもあるキャラクターって感じですね。味方と言うよりどっちかというとこれだとボスキャラくさいな……
今回も読んでいただきありがとうございました。それでは、次回もよろしくお願いします。