やはり人数が多いと話が長くなりますね
「ナザリック地下大墳墓最高支配者、アインズ・ウール・ゴウン様のご入室です」
インクリメントの宣言の後、玉座の間の扉が開き、アインズは歩を進める。
ここ最近、店から指示を出すことが多かったこともあり、玉座の間を使用するのも久しぶりだ。
いつもはアインズの傍に立ち、守護者統括として話を進めるアルベドも今回は守護者たちと共に、アインズに対し頭を下げている。
そのアルベドから、いつも通りの長く、心からの挨拶を聞いた後、アインズは本題に入ることにした。
「皆、既に話は聞いていると思うが、計画が一部変更となった。具体的には戦争までの時間が早まり、戦場がアベリオン丘陵に変更された。本来我々魔導王の宝石箱は表舞台に出ず、後方支援に徹する予定だったがこうなっては仕方ない。私も戦場に出る。理由の説明は必要ないな?」
アインズの言葉を聞いた瞬間、ピリピリとした空気が流れる。
それが向けられている相手はデミウルゴスだ。今回の原因である何とかという貴族の暴走は、ヒルマの管理不行き届きだが、そのヒルマは現在デミウルゴスの配下である。
大本を辿ればデミウルゴスの責任。と皆が思っても不思議はないが、アインズとしてはそうは思わない。むしろ責任があるのは──
「今回の件はお前たちから引継を行っていたのにも関わらず、貴族の暴走を見抜けなかった私の不徳の致すところ。申し訳なく思っている」
そう。今回の件が誰かの責任だというのなら、それは引継書まで用意させながら、使いこなせなかったアインズの責任だ。
「なっ! お止め下さいアインズ様」
「そ、そうです。お顔をお上げ下さい!」
「インクリメント! アインズ様のお顔を上げて」
「お、お許しを。私にはそのような──」
皆口々にアインズに顔を上げるように進言、いや懇願して場の混乱が最高潮になる。
(お、おう。予想以上の反応。いや、前にもこんな事があったな。確か王都の舞踏会後だったか)
もう少し考えて行動するべきだっただろうか。皆の慌てように、軽率な行動を後悔しつつ、けれどそれを表には出さず、ゆっくりと顔を持ち上げ、その後大きく一つ頷く。
それだけで皆は露骨に安堵した。
「謝罪を受け入れて貰ったこと、感謝する。ならばこれにて今回の件は終了。以後、誰かを責めるようなことは禁止とする。良いな?」
ここに話を持って行きたかった。
こう言えば、誰もデミウルゴスを責めることはない。
本来こうした皆の忠誠心を利用するような真似は好きではないのだが、これから全員が協力して事に当たるというのに、妙な遺恨を残す訳にはいかない。
そうしたアインズの意図を誰より早く見抜いたのだろう。
デミウルゴスが、その場で深く頭を下げた。
「承知いたしました。アインズ様。このデミウルゴス、結果を以てアインズ様の御慈悲に報いさせていただきます」
「うむ。期待している」
「はっ!」
力強いデミウルゴスの返答と共に、先ほどまで漂っていた不穏な空気が霧散した。
これでようやく、本題に入ることが出来る。
「さて。では本題だが、お前たちの準備はどうなっている?」
元から神人討伐は、戦争開始前に行う手筈だった。
切り札である神人が居なくなり、追い詰められた法国がクアイエッセを通じて流した六大神復活の儀式を行うため、戦争を回避させないようにする事も目的の一つだったからだ。
その為、守護者たちの準備時間は問題ないはずだ。それもまたアインズが今回の作戦変更を決めた理由でもある。
とは言え、守護者たちが準備不十分なら、時間稼ぎをする必要もある。
「問題ございません。我々守護者一同、既にありとあらゆる事態を想定し、用意は完了しております。アインズ様のご命令一つで、いつでも出陣が可能です」
アルベドの言葉と共に守護者たちが全員、一斉に頷いた。体格差があるというのに、下ろしてから上げるまで僅かな乱れもなく、完璧に揃った礼はチームワークに磨きが掛かっている証に違いない。
いつかザイトルクワエを倒した時にも、彼らの連携は見たが、あの時はまだ完璧なチームワークとは言い難かったが、これならば問題は無い。
「流石だな。では改めて作戦について話し合おう。お前たちの行動は変わらんが、私と時間を合わせる必要がある」
「戦争開始と同時に、わたしたちも行動を開始するのでありんすね?」
シャルティアの言葉に大きく頷く。
まだこちらの情報は話していないというのに、シャルティアが作戦を理解している。
以前のアインズなら、これだけで驚いたかも知れないが、今の守護者たちならば驚くべき事ではない。ぷにっと萌えの考案した誰でも楽々PK術、その神髄は如何にして事前に情報を集められるかにあるのだから。
デミウルゴスの引継書に残された作戦を、守護者全員が共有していても不思議はない。
「その通りだシャルティア。二つの作戦を同時進行する。息を合わせるために、互いの作戦も把握しておかなくてはならないわけだ。お前たちの行動はある程度決まっているだろうが、戦争に関してはこれからここで詳細を詰める。今までであれば、私やデミウルゴスが立てた作戦を実行していたが、今回はお前たちにも加わって貰おう。気兼ねすることなく思いついたことを自由に発言して良い。私も発言はするが、あくまで参加者の一人として考え、疑問があれば指摘するように。これは命令だ、お前たちの成長を見せてみよ」
アインズとしても戦争でどう振る舞えば良いのかという、漠然とした考えはあるが、戦争とはその場での勝利だけでは終わらない。戦後のことも考えた大局的な振る舞いが必要となるはずだ。
それを皆で考えて欲しい。という願望もあるが、かつての仲間たちと行っていたような作戦会議を、久しぶりにしてみたかったのも事実だ。
これはある程度皆の予備知識が揃っていないと難しいのだが、今ならば出来るかも知れない。
「承知いたしました。皆、訓練の成果をアインズ様にお見せするように」
「はっ!」
再度、完全に揃った返事を聞きながら、アインズは満足して頷いた。
「では、改めて、戦争に魔導王の宝石箱が参加する際の、こちらの戦力は何が適当だと考える?」
「やはりアンデッドがよろしいと思いんす。元はアベリオン丘陵の護衛をさせるために、各国には二十組までしか分配できないと言っておりんしたが、その場が戦場となる以上、戦力に回してもおかしくはありんせん」
「でもさー、そっちはアベリオン丘陵に住む亜人の護衛に回した方がいいんじゃない? 法国って亜人も狙うんだし、六大神の復活には一人につき十五万の生け贄が必要だって思っているんだから、戦争前にそっちを狙うかも」
今度は先ほどのように行かず、シャルティアの意見にアウラが口を挟んだ。
「うっ。だ、だったらアウラは何を使えば良いと思いんすぇ?」
「うーん。あ、アインズ様。魔獣はどうですか? 運搬用に魔獣がいるのは知られていますし、基本的に今回の運搬はゴーレムメインですから、魔獣は余っています。それに、魔獣はテイムした者でないと操れませんから、戦力としての貸し出しには向かないので、各国から文句を言われることもありません」
シャルティアに問われ、少し考えていたアウラが、パッと表情を明るくしてアインズに提案する。
皆きちんと各国を消耗させるために戦力の貸し出しを絞った意味を理解し、それを前提条件としている。その上でアインズが思いつかなかったアイデアを出してくれる様は実に気分がよい。
(本当にあの頃みたいだなぁ)
「確かに魔獣は強力だが、それこそアウラが居なければ細かな指示が出せないだろう」
昔を懐かしむ気持ちを押さえ込み、アインズは思ったことをそのまま口にする。
これはアインズのアンデッドでも同じだが、傭兵モンスターであれ、テイムした魔獣でも一体一体に細かな指示を出せるのは、実際に見えない繋がりを持っている者だけだ。
今回の各国に預けた二十組のアンデッド程度なら、それぞれの国で指示を出しながら戦うことも出来るだろうが、今戦争に出ることが決まっているのはアインズ一人。とてもではないが、大量の魔獣にそれぞれ的確な指示を出せる余裕なぞあるはずがない。
「ああ、そうでした。申し訳ございません」
「良い。謝るな、話し合いというのはこういうものだ」
やはりこうしたところはまだまだ意識改革が必要なようだ。
「で、でしたら、あの……ドラゴンはどうでしょう。知能もありますし、大きさ的にも目立ちますから、アインズ様のご威光を見せるには、ピッタリかと」
姉の代わりにと言うことなのか、今度はマーレが意見を出す。
「ほう」
これもまた悪くない案だ。
現地レベルではドラゴンは一騎当千の存在であり、ブレスによる範囲攻撃も可能。
惜しいのは──
「マーレ。貴方のドラゴンのような、ナザリックに元から居たドラゴンを戦争には出すわけには行かないわ。そうなるとナザリックにいる現地のドラゴンは全てで六体、内成体は二体だけよ。それに種類も
そう。魔導王の宝石箱で使用しているドラゴンは、全てアゼルリシア山脈に生息していた者の生き残りだけだ。キーリストランとヘジンマール以外は小さなドラゴンであり、ブレス攻撃も出来るか怪しい。
アルベドの言うとおり、一属性の攻撃しかできないのなら、他の国ならいざ知らずプレイヤーの遺産や知識を有する法国からすれば対策を取るのはそう難しくない。
魔導王の宝石箱に
「そ、そうですね。申し……あっ」
謝罪しかけて、先ほどアインズが言ったことを思い出したらしく、マーレはそのまま口を手で覆う。
「でしたらアインズ様。エ・ランテルの冒険者たちを使用しては如何でしょうか? 組合からは我々に組み込まれることを、前向きに検討する返事が来ております。忠誠心を試すには丁度良い機会かと」
続いて口を開いたのはナーベラル。
守護者たちではなく、メイドであるプレアデスが臆することなく提案して来るのは彼女の成長を感じられて嬉しく思うが、その内容に関しては残念ながら穴がある。
「ナーベラル。冒険者組合はあくまで、冒険者として魔導王の宝石箱に組み込まれることを望んでいるのよ。それも王国から無理矢理戦争に連れて行かれることを嫌って、こちらに付くことを選択したのだから、それでは本末転倒でしょう」
提案の問題点をアインズが口にする前に、ソリュシャンが否定する。
実際彼女の言う通りであり、それではバルブロと同じだ。とも思ったが流石にそれは口に出来ない。
ナーベラルはアインズからそう言われたら引きずりそうだ。実際そこに思い至ったのか、ナーベラルはがっくりとうな垂れてしまった。
それからもしばらく、あれこれとアイデアは出るが、これと言った決め手に欠けるものばかりだった。
とは言え、守護者たちだけではなく、プレアデスもまた積極的に意見を出しているのは喜ばしい。気になるのはアルベドやデミウルゴスが発言をしないことだが、彼らのことだ。何か考えがあるのだろう。
「……一ツ考エガ、ゴザイマス。亜人ヲ使用シテハ如何デショウカ」
そんな中、アルベドとデミウルゴスを除いた守護者の中で唯一、発言をしていなかったコキュートスが口を開く。
「それは
確かにコキュートスが統治している
そう思ってのアインズの言葉を、コキュートスはゆっくりと首を振って否定する。
「イエ。奴ラダケデハナク、アベリオン丘陵ニ住ム亜人モ含メタ、亜人連合ヲ結成スベキカト」
その言葉にアインズは感嘆の息を漏らした。
確かに亜人の多くは実力と知識もあり、戦争を経験している者たちも多いため、アインズの細かな指揮など無くてもそれなりに戦うことが出来、相手が人間ならば兵の数や質も十分。既に亜人たちにはアインズたちの強さを見せつけているため、人間以上に弱肉強食の掟に忠実な価値観から武器を預けても持ち逃げされる心配は少ない。今まで挙がった意見の中では最も条件が整っている。
だがこの案にも気になることもある。
「亜人連合か、しかし聖王国辺りが文句を言ってきそうだな」
今残っている亜人は、ヤルダバオトが率いた亜人とは別の種族ばかりだが、人間から見ればどの亜人でも同じなのでは無いだろうか。特に聖王国はヤルダバオトのことだけではなく、遙か昔から──ごく一部の友好的な亜人を除いて──アベリオン丘陵の亜人全てと敵対していた。
そんな者たちが轡を並べて戦うことは出来るのか。
法国と戦争を始める前に、仲間割れなど起こされたらたまったものではない。
その言葉を聞いた皆は、これも駄目かと別の案を考え始めたようだが、ここに来て、今まで黙っていたデミウルゴスが唐突に前に出た。
「私はそうは思いません。アインズ様の仰る通り多少の軋轢は生まれるでしょうが、聖王女が法国こそが全ての元凶だと事前に言い含めているでしょうし、むしろここで轡を並べて戦うことで、聖王国と亜人の仲も多少は改善する可能性もあります。今後のことを考えると利は大きいかと」
デミウルゴスの発言を聞いた何名かが驚いたような顔をする。
アインズもまた動かす表情こそ無いものの同じ気持ちだ。
デミウルゴスがアインズの提案をはっきりと否定したことは今まで無かった。正確には明らかにデミウルゴスを試す──と言う演技で話を聞き出す際など──口振りで言った時には、それを見抜いて自分の考えを話すようなことがあったが、今回アインズはごく普通に思ったことを言っただけだ。
もちろん、先ほどアインズ自身が自分を参加者の一人として見るように、と言ったので、デミウルゴスの行動には何の問題もない。だが、きっと無理だろうなと半ば諦めつつ言った言葉だったので、驚くと同時に喜ばしい気持ちにもなった。
今後もこうして、アインズの提案だからと何でも鵜呑みにせずに否定してくれれば、虚像の修正もそう遠いことではないだろう。
「なるほど、それはもっともな意見だ。流石はデミウルゴス」
余計な勘違いをされる前に、キッチリとデミウルゴスを称えておく。これでアインズが試したとも思われない。
「デハ……」
「うむ。コキュートスの案を中心として考えよう。とは言えもうあまり時間が無い。直ぐに動かすことができて、暮らしに影響のでない兵となるとどれほどになる?」
戦争のために無理な徴兵をしては、王国と同じになってしまう。
王国民の不満ぶりをみるに、そうしたことを続けていては、いつか暴発しかねない。
アインズは統治に際しては王国を反面教師として使用することを決めていた。今回もそれは同じだ。
「狩猟ヤ農作業ヲ兼任シテイル者モ多イタメ、影響ガ出ナイ者で、直グニ動カセルノハ五千程カト」
思ったよりも少ない。
トブの大森林とアベリオン丘陵。広大な二つの土地に住んでいる亜人たちからかき集めれば、もっと大きな軍勢を作れると思ったが。
(いや、考えてみれば今アベリオン丘陵に残っているのは、ヤルダバオトに反抗した者たちだけだ。その時に減った分や、建て直しやらを考えれば戦士として動かせる者が少ないのは当たり前か。となると数ではなく少数精鋭で力を見せつけるべきか……)
「……五千か。そいつ等に持たせられるだけの武具は揃っているか? 出来れば魔法の武器が良い。
後に
アインズが
色々と行ったが、そのほぼ全てが
今回もそれをすれば良い。
「三国に貸し出しも行っているため、魔導王の宝石箱で制作した分だけでは足りませんが、ルーン武器と偽っているナザリック製の武器に加え、アベリオン丘陵にいる
(そんな奴らがいたのか。うーん。アベリオン丘陵に関してはデミウルゴスに任せきりだったからな)
世話をすることになった種族の数程度は把握していたが、種族ごとの特徴までは知らなかった。
その
「ならばそいつ等に言って武具を調達しておけ。無理に奪うのではなく、適正な金銭を支払うように」
これも無理な徴兵と同じだ。幾ら土地の実質的な支配者とは言え、貴重な武具を無理矢理持ち出すようなことをしては、遺恨が残ってしまう。
「承知いたしました。では私が武具の調達を、コキュートスが徴兵の準備を行うということで如何でしょうか?」
「お前たちが良ければ私は問題ない。だが現在お前たちが最も重視しなくてはならないのは神人討伐だ。そちらの準備に支障はないか?」
確かに亜人たち全体を管理しているコキュートスやデミウルゴスの方が、徴兵も武具の調達もうまく進むだろうが、第一はこちらだ。
さきほどアルベドはいつでも出撃できると言っていたが、僅かでもやれることがあるなら、そちらを優先して貰いたい。
そんなアインズの言葉に応え、デミウルゴスとコキュートスは同時に頷いた。
「問題ございません。我々のすべきことは既に無く、後の準備が必要なのはアウラとマーレのみとなっておりますので」
「デミウルゴスノ言ウ通リデ御座イマス。アインズ様ト共二戦エル名誉ヲ賜ル者タチニハ、私カラモ一言激励ヲサセテ頂キタク存ジマス」
「そうか。分かった、ではそちらはお前たちに任せよう。アウラとマーレは準備に全力を注ぐように」
「はい!」
「は、はい」
二人に頷きかけて、次の話に移行する。
それから更に詳細な戦争での行動を決め、いよいよ最後の一つ。唯一アインズが事前に決めていた事を告げようとして、その前にアルベドが口を開いた。
「ところでアインズ様。兵隊として亜人を連れていくことは理解しましたが、アインズ様の護衛は誰を連れて行かれますか? 本来ならば妻であるこの私が、御身の守護を務めさせて頂きたいところではありますが、神人討伐においては、私とお預かりしている
「この大口ゴリラ。性懲りもなく」
妻という言葉に反応したらしいシャルティアが毒を吐いているが、アルベドは気にした様子も見せない。
言っていることは正論だが、些か驚いた。
アルベドならばこうした場合、無理にでもアインズに着いてこようとするのではないか、と懸念していたからだ。
しかしこれならば話が早い。
「それなのだが……」
チラリと顔を動かし、視線を端に向ける。
守護者たちから一歩下がった位置に立っていたプレアデス、その一人に注がれた視線に、全員が一斉に反応した。
「はい。恐れながらアインズ様の護衛は私が務めさせていただきます」
「ソリュシャン……貴女が?」
アルベドの瞳が細くなり、懐疑的なものになる。
ソリュシャンの実力で、アインズの護衛が務まるのか疑問に思ったのだろう。
よく見れば他の者たちも同じような顔をしている。
そしてそれは守護者たちだけではない。
「えぇ? 聞いてないっ……よ?」
ソリュシャンの隣に立っていたルプスレギナの驚愕に満ちた声が響き、尻すぼみに小さくなっていく。
プレアデスのリーダーとして、彼女たちの先頭に立っていたセバスの鋭い視線に萎縮したのだろう。
だがそれよりアインズには、ルプスレギナがソリュシャンの言葉をまるで知らなかった様子なのが気になった。
「ソリュシャン。伝えていないのか?」
「はい。問題がなければ、とのご命令でしたので、先ずは皆の仕事を他の者たちに任せることが可能かを確認しておりました。そちらは問題ございませんでした」
なるほど。
確かに、アインズが命じた内容を実行するに当たり、そちらの確認は重要だ。
命じた後でやっぱり無理だった。となった場合、ぬか喜びさせる結果になってしまう。
だからこそ、事前に調べていたという訳だ。
いや、それだけではないかも知れない。
あの話をした時のソリュシャンの喜びようはそれこそ、言葉に出来ないほどだった。
そうした喜びを直属の上司や、姉妹たちにも味わわせたいという願望からなのかも知れない。
ならばそれに応えるのもアインズの役目だ。
「セバス」
「はっ」
「それにプレアデスよ。お前たち七人に、私の護衛と供を命じる」
一瞬、空気が止まったような静寂が流れ、同時に困惑の色が強くなる。
「アインズ様。セバスはともかく、プレアデス、それも六人全員をお連れになるのですか?」
口にしたのはアルベドだが、他の者たち、当の本人であるプレアデスたちすら、困惑したままだ。
確かにプレアデスは全員揃えることで、近距離から遠距離、魔法や回復、バフやデバフなどといったバランスの取れたパフォーマンスを発揮するが、やはりレベルの差は如何ともしがたい。同じ数の高レベル傭兵モンスターを召喚する方が攻撃や防御、護衛面でも優秀だろう。
まして彼女たちには既に魔導王の宝石箱の支店長やメイド、最高位冒険者としての現地での立場がある。
表だって派手な働きをさせては、これまでの苦労が水泡に帰す可能性すらある。
だが、それでもアインズは彼女たちを連れていくことを選んだ。
自らの報賞をも引き替えにした、ソリュシャンのあまりに真剣な懇願で、ある事実に気が付いたからだ。
アインズは一度たりともプレアデスに本来の仕事をさせていないと言うことに。
セバスはまだ良い。彼の本来の役割は執事もこなす
どちらの仕事も今は存分にできていると言えるだろう。
NPCの多く、守護者たちや一般メイド、五大最悪の者たちすら、皆一度はギルドメンバーたちが定めた本来の職務を全うしている。
しかしプレアデスは、守護者たちと同じように多くの仕事を任せているにもかかわらず、本来の職務である戦闘メイドとしての役割を全うしたことは恐らく無い。
だからこそ、アインズはユグドラシルの最終日に、彼女たちを哀れんで玉座の間まで連れていったのだ。
そしてこの世界に来てからも、アインズは一度として彼女たちにその役割をさせたことはなかった。
「当然だ。私こそがアインズ・ウール・ゴウン。私の敗北はギルドの敗北。ならばこそ、その最終防衛となるのはセバスとプレアデスをおいて他にいない。違うか?」
そう。ギルド、アインズ・ウール・ゴウンに攻め込んできた者たちへの最終関門──正確には一歩手前だが──こそが彼女たち本来の役割だ。
それも、撃退を期待してのことではなく、あくまで時間稼ぎの役割しか求めていなかった。
もちろんあの時の彼女たちは今と異なり、意志のないNPCでしかなかったのだから、その事を気にする必要はないと分かってはいる。だが今に至るまで彼女たちは、期待されているわけでもない仕事を任せられ、それすら一度たりとも実行できなかった。
だったら今ここで、アインズが本当の意味で彼女たちにその役割を与えよう。
そう考えたのだ。
「なんという……感謝いたします。アインズ様。このセバス・チャン。そして──」
深い礼を取りながら、セバスは一度言葉を切る。
それを合図に、一歩前に出たプレアデス、その先頭に立ったユリが続きを口にした。
「私たち戦闘メイド、プレアデス一同。相手が何者であれ、御身に指一本触れさせないとお約束いたします!」
「お約束いたします!」
ユリに合わせ、残る五人のプレアデスたちの隠しきれない喜びを抱いた宣言を聞き、アインズは満足して頷いた。
「素晴らしい! お前たちならば必ずや私の期待に応えてくれると信じている」
セバスとプレアデスを讃え、次いで守護者たちにも目を向ける。
これで全ての準備は整った。
後は法国を叩き潰すだけ。
ようやくここまで来たのだと、アインズは拳に力を入れ、玉座から立ち上がった。
「私はかつて、シャルティアを操った者に、己の愚かさをたっぷりと嘆かせてやると誓った。いずれ必ずアインズ・ウール・ゴウンに手を出したことを後悔させてやると」
一度言葉を切り、全員を見回してから続ける。
「そして今、その時が来た。皆の力を合わせ、必ず奴ら、スレイン法国にその愚かさの報いを受けさせよ。これは勅命である!」
今までは情報収集や作戦が決まるまでは動けなかったため、ハッキリと法国を叩き潰すという意思表示ができずにいたが、もう我慢する必要はない。
アインズは全員に向け宣言した。
「はっ!! 御身の望むままに!!」
全員の声が合わさり、アインズと同じく力の籠もった返答が玉座の間に響き渡った。
・
主が退席した後、玉座の間、そしてその前の部屋である
言葉はなく、全員無言だ。
それぞれ言葉に出来ない思いを抱えているのは間違いないが、その内情は大きく二つに分けられる。
一つは喜び。そしてもう一つは──
「いやぁ。それにしてもビックリだね。でも、そうだよね。至高の御方々が定めた役目だもんね。アインズ様の護衛は任せたよ、ユリ」
そうした空気を読まずに、明るい声でアウラが言う。
「アーちゃ……アウラ様。お任せ下さい。私たちを信頼し役目を与えて下さったアインズ様に報いるため、必ずや使命を全うしてみせます」
アウラに声を掛けられたユリが応える。その声は、彼女にしては珍しく誰が聞いても分かるほど喜びに満ちていた。
無理もない。と思うと同時にデミウルゴスの心に僅かな嫉妬心が芽生える。
普段の彼であれば完全にそれを隠すことが出来ただろうが、今回ばかりはそうも行かない。
自分の配下である八本指の一人が犯したミスによって、主が危険な戦場に出陣することになった。本来、その不始末のけりは自分自身がつけなくてはならなかったはずだ。
だが主はそれをセバスたちに任せた。正直プレアデスの能力的に護衛として不満はあるが、先ほどアウラも言っていたように、これは至高の御方々が決められた役割に沿ったもの。デミウルゴスが口出しをして良い問題ではない。
しかし──
「……全てはアインズ様のご采配。当然私も異論を唱えるつもりはありませんが、セバス。くれぐれも頼みましたよ」
そうした思いが、生理的に嫌っているセバスに向けられる。
「言われるまでもなく、承知しております」
淡々と、けれどデミウルゴスの抱いた僅かな不満に気がついたのだろう。セバスは必要以上に強く頷いた。
「ふふ。君は少々甘いところがあるからね。今度も、人間相手に慈悲など掛けないか心配になったものでね」
「ご心配なく。アインズ様に牙を剥く者は何であれ、誰であれ、必ず葬ってみせます」
周囲にピリピリとした険悪な空気が流れ出す。
「……相変わらずでありんすねぇ。二人とも」
そんな中、はあ。とシャルティアが息を吐き、呆れたように呟いた。
他ならぬシャルティアに呆れられたという事実が、デミウルゴスの中に大きな衝撃を与え、思わず言葉を失った。
「そ、それにしても。コキュートスさんの亜人を兵隊に使う案は良かったですよね。ボクは思いつきもしなかったです」
「マーレノ提案シタ、ドラゴンモ亜人ノ護衛トシテ採用サレタデハナイカ……ソレニ、アインズ様ガ気付イテイナカッタトハ思エン。アレモマタ以前ノヨウニ、案ヲ出シテクルノヲ待ッテイタノダロウ」
空気を読んだらしいマーレが慌てたように話を変え、コキュートスもそれに応える。
マーレのこうした気遣いは良くも悪くも我の強い者しか居ない守護者たちの中にあって、非常に貴重だ。
デミウルゴスもそれに乗せて貰おうと、セバスから視線を外し、コキュートスに顔を向けた。
「恐らくはそうでしょうね。ですが、それに気付き、その上でアインズ様の望みに応えたのは、間違いなく以前の君より成長している証でしょう。誇って良いことだと思いますよ」
以前
あの時、コキュートスは戦士としての光る物があるという理由で、皆殺しを止めるように提案はしても、主が望んでいた納得させられるだけの利益を提示することは出来なかった。
だからこそデミウルゴスが、恐怖によらない統治の実験という利益を提示することで、主の計画通りに話を進めることに成功した。
今回もデミウルゴスは亜人を利用することが、最もナザリックの利益に繋がると気付いていたが、恐らくは誰でも楽々PK術を学び、大局観を身に着けた他の守護者たちから提案して欲しいのだろうと思って発言しなかった。その点はアルベドも同じだろう。
そして今回コキュートスはキチンと利益を考えた上で、提案をしてみせたのだ。
「イヤ、聖王国ノ件二関シテハ今回モマタ、デミウルゴス二助ケラレタ。ダガ、今ニシテ思エバ、アインズ様ハ今回ノヨウナコトモ想定シテイタカラコソ、恐怖ニヨラナイ統治ヲ望ンデイタノデハナイダロウカ」
しみじみと語るコキュートスにデミウルゴスは感心する。
そこまで気付いているとは思わなかった。
「そ、そうなんですか? で、ですけど、あの時はまだ、経済による支配に関しては計画されて居ませんでしたよね?」
「いや、正確には武力と経済。どちらに転んでも、あるいは両方を選択しても問題ないように考えていたと言うことだろうね。
世界を統べると言うことは亜人と人間、その両方を支配すると言うことだ。轡を並べ共通の敵を討つことで、両者が歩み寄るきっかけとなる。それもまた主の狙いだろう。
「な、なるほど。アインズ様はあんなに前から、ここまで考えていたんですね」
「流石ハ、アインズ様ダ。ソシテ、ソレニ気付イタ、デミウルゴスモマタ流石ダナ」
「いえ。私などまだまだです」
苦笑しながら、自分の無様な行動を思い返す。
そうした亜人と人間の協力関係を築くメリットに気付いて貰いたかったからこそ、主は一度コキュートスの策の問題点を提示したのだろう。
本来それもまた守護者の成長を確認するためのものだったはずだが、その前にデミウルゴスが答えてしまった。
八本指の犯した失態を一刻も早く挽回したかったが為に焦っていたのだ。
だが今になって、あの愚かな貴族が暴走することも、主は読んでいたのではないかと思えてきた。
元々このタイミングで戦争を開始した方が利益は大きくなることにはデミウルゴスも気付いていた。しかしその結果主が戦場に出陣し、その身を危険に晒すことなど許されない。とデミウルゴス自身がその案を却下したのだ。
だが主はかつて、守護者たちに何が最もナザリックの利益になるか考えて行動しろ。と命じた。
今回、主はそれを自ら実行したのではないだろうか。
それも、貴族の暴走による不可抗力という形を取ることで、主の身を第一に考える自分たちを気遣い、またその責任を八本指の直属の上司であるデミウルゴスに向かわせないように、謝罪という方法を取った。
事実、あの件に関して、誰もデミウルゴスを責めることはしない。主が自ら頭を下げるという、あり得てはならない行動を取ったことで軽々に口に出来なくなったのだ。
だが、それは同時にデミウルゴス自身、その失態を謝罪し償う術を失ったことでもあった。
そのことを思い出し、気分が暗くなる。
そんな空気を察したわけではないだろうが、唐突にシャルティアが声を張りあげる。
「アインズ様と比べたら、それはそうでありんすね。とにかく皆、アインズ様のため、そしてわたしにあのような暴挙を行わせた憎っくき法国に鉄槌を下すためにもそれぞれの役割をきっちりこなしんしょう」
瞳をぎらつかせながらシャルティアが拳を堅く握りしめる。
気負いすぎているようにも見えるが、デミウルゴスと異なり、自分の失態を挽回する絶好の機会を得たのだから、それも仕方ない。
「それは良いけど、シャルティア。法国憎さで変な暴走とかしないでよ。ちゃんと計画通りに動いてよね」
「言われるまでもありんせん。アインズ様は法国に愚かさの報いを受けさせよと仰っていんした。あれはわたしが操られたことをお怒りになったが故のお言葉。つまりわたしに対する愛の言葉、わたしはそれに応えてみせるわ!」
主の言葉を思い出すように、恍惚とした表情を浮かべたシャルティアが、そうあれと定められた言葉遣いも忘れて叫ぶ。
「シャルティア、やる気を出すのは結構ですけれど、下らない妄言を口にするのは止めておきなさい」
そのシャルティアの発言に怒りを覚えたアルベドが、いつものように突っかかる。
「はぁ? 妄言を吐いたのはそっちでありんしょう? さっきの言葉、忘れておりんせんぇ。そ・れ・に、アインズ様が以前、わたしのことを『愛するお前』と言ったことは事実! アルベドも聞いていたはずでありんすぇ」
シャルティアは詰め物の胸を張り、勝利宣言とばかりに高笑いする。彼女が言っているのは、
それは許されざる失態を犯し、自暴自棄になっていたシャルティアを気遣った主の慈悲から出た言葉であり、特別な意味はないだろう。
恐らくはあそこにいたのが誰であれ、主は同じ言葉を告げたはずだ。
その事を理解していない訳でも無いだろうに、感情的になったアルベドと、迎え撃つシャルティアはそのままいつもの罵り合いを開始する。
そんな光景を冷めた目で眺めながら、デミウルゴスはふと、違和感に気がついた。
今まではデミウルゴスが己の不甲斐なさや嫉妬心から来る感情を持て余していたが故に、思い至らなかったが、先ほどの主の言葉は感情が先走りすぎている。
無論、慈悲深い主のことだ、守護者が操られたことに怒りを覚えても不思議はないが、だからといって主が怒りに任せた短絡的な行動など取るはずがない。
確かに法国は危険な国だ。
プレイヤーの影響が色濃く残り、神人や
ナザリックが世界征服を目指す上で、大きな障害になるのは間違いない。
だがそれはあくまで極一部の上層部しか知らない機密だ。
それは逆に利用できる。神人と六色聖典、そして
信仰心の高さはアンデッドを主軸として世界を主に依存させる計画においては障害になるだろうが、同様に信仰心の高い聖王国も、今ではむしろどの国よりもアンデッドを受け入れていることから、方法はいくらでもあるはずだ。
今の計画通りに進めば、上層部はデミウルゴスたちが壊滅させ、軍事力は主たちが壊滅させる。
そうなれば法国は国家という形を維持していくことも難しくなる。
恐らく三国による分割管理の形になるだろう。
しかしそれで儲かるのはあくまで三国であり、今現在、国家という形を持たない魔導王の宝石箱はそこまで多くの利益を得ることはできない。
主がナザリックの利益を最優先させたというのなら、そのやり方を選択するのはおかしい。
上層部のみをすげ替え、戦争自体はあくまで小競り合い程度に留め、四ヶ国それぞれに緊張を与えておく。
これが最も大きな利益を生むはずだ。
それを捨ててまで、感情による鉄槌を下すのは主らしくない。
そうした怒りを抱いていたとしても、主ならば、ナザリックの利益に繋がる方法で法国に罰を与えるのではないだろうか。
(法国にとって最大の罰になり、同時にナザリックの利益にもなるもの──)
考えられるのは、法国の理念に関することだ。
自分たちを救ってくれた六大神そのものを否定し、主こそを新たなる神とした宗教を作り上げること。
しかしそれをするなら、聖王国のように自作自演で民を救う方法を選ぶはず。
だとすると、残るのは人間こそが至上であり、異種族の排斥を考えとする理念。
それを根底から覆す、つまりは──
(まさか。そういうことか! だから
この時期にわざわざエ・ランテルに主自らが出向いたのは、冒険者組合を取り込むだけではなく、ラナーを手元に残しておくためだった。
そう考えるとすべての辻褄が合う。
そうなると、デミウルゴスがバルブロの身柄を欲しがることも主には計算ずくだったということだ。
亜人と人間が協力して事にあたる。
法国の理念。
そして、主の持つ、自分では想像も出来ない程、遙か未来のビジョン。
それら全てが一つの結論に繋がっている。
(ナザリックの利益となり、なおかつ法国に対する最大の罰となる。千年、いや万年先を見据えたアインズ様だからこそ思いつく策略。そして、これを完遂するには、私の働きが必要となる)
ぶるりと身が震えた。
主に頭を下げさせてしまったという許されざる失態。シャルティアと異なり、一体如何にして償えばいいのかすら分からなかったが、今理解した。
主はそれを償う術すら、既に提示していたのだ。
(なんという。ああ。なんということだ!)
言葉にすらならない歓喜が全身に漲り、それはサングラスに隠されたデミウルゴスの宝石の瞳から、涙となって溢れ出す。
皆に気づかれないようにそっと、目を押さえる。
主があの場で口にしなかった以上、この話は主と自分の中だけに収めておかなくてはならないからだ。
「……セバス」
サングラスを戻し、デミウルゴスはシャルティアとアルベドの言い争いを止めるべきか、悩んでいる様子のセバスに声をかけた。
「はっ。如何なさいました。デミウルゴス様」
硬い口調と態度からは、セバスがこちらを警戒していることが分かる。
デミウルゴスの行動で、アルベドとシャルティアも一旦争うのを止め、こちらに意識を向けている。
そんな彼らを安心させるようにデミウルゴスは小さく笑うと、手を差し出した。
「以前も言っただろう。デミウルゴスで構わないよ。先ほどは申し訳なかったね。君の力は私も信頼している。アインズ様のこと、改めてよろしく頼むよ」
差し出された手を見て、セバスを初め全員が驚愕しているが、これは本心だ。
この感情は本能的なものであり、自分たちの創造主の気持ちが宿ったものである可能性が高いが、この気持ちも封印しよう。
「いえ。私の方こそ失礼な態度を取りました。ご安心下さい。必ずやアインズ様をお守りいたします」
セバスは、その言葉と共に差し出した手を握る。
この握手はデミウルゴスなりの、主に対する決意表明でもあった。
ただ一人ナザリックの未来を考え、不甲斐ない自分に償いの機会を与えてくれた主に、全身全霊をかけて報いてみせる。そんな意志を込めるように、デミウルゴスは握った手に力を入れた。
後半のデミウルゴスは例によって深読みによる勘違いをしていますが、自分で読み返しても少々理解し辛いと思ったので、デミウルゴスがどんな勘違いをしたのか纏めておきます
蜥蜴人の集落の際、アインズ様はナザリックの利益を最優先にするように命じる
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しかしデミウルゴスは、今回の戦争で利益よりアインズ様の身の安全を考え、利益重視ではない作戦を立てる
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それに気付いたアインズ様が、フィリップの暴走による不可抗力を装って利益重視のアベリオン丘陵での戦いに舵を切る
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フィリップの件と合わせ、責任者としてデミウルゴスが皆に責められないように、自らが謝罪することで追求を抑える
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加えてデミウルゴスが責任を感じて気を病まないように、デミウルゴスのみに分かるように、失態を挽回する方法を伝える
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その慈悲深さと、遙か未来まで見通す叡智に改めて驚愕し、一層の忠誠を誓う
デミウルゴスの中では大体こんな勘違いが起こっていますが、これはあくまでデミウルゴス視点なので当然アインズ様はこんな事は考えていません