食戟のソーマー小さな龍の物語ー   作:タオ

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本編、突入しまーす。


一皿目 ヤキメシ

3月中旬 遠月学園

 

「キャ───────────!!!!!」

 

パッシ─────ン!!!

 

「へぶぅっ!!」

 

ゴチン!!

 

「あ、あわわわわ…。」

 

ガラッ!!

 

「緋沙子(ひさこ)!!大丈夫!?」

 

「え、えりな様…。」

 

「…緋沙子?…この子は??」

 

「それは…。その…。」

 

「…とりあえず、この倒れている子を起こしましょう。それから、事情の説明を…。」

 

「はい…。」

 

 

 

主人公side

 皆さん、初めまして!ボクの名前は恵姫 優と言います。遠月學園の92期生であり、現在は中等部の3年生。両親、ボク自身含め東京生まれの東京育ちで、愛媛県とは全く関係ない生い立ちです(笑)何で自己紹介みたいな事をしているかというと、間を持たせる為!ボクは今、絶賛気絶中だからです。何で、気絶しているか分からない?実はボクもなんだけど…。ボクからの視点だけで言えばこんな流れ…。

 

学校から場所を借りて料理の試作→作り終わり、調理道具の片づけ→試作品の味見…の前に、お手洗いに…→戻ってきたら、一人の女生徒が→声をかける→女生徒が大絶叫→振り向き様に腕をフルスイング→ボクが頬に衝撃を受け倒れる→更に頭に衝撃を受け気絶←今ココ。

 

では、ここからはもう一人の当事者の方にバトンタッチします。

 

 

 

緋沙子side

『ううう…。私は何て事を……。』

私の頭の中を後悔や、自責の念がもの凄い勢いで駆け巡っています…。腰が抜けていて、身動きが取れないし、自分のした事が事なので…えりな様のお顔も見れません………。

「あなた、大丈夫?起きなさい?」

えりな様が、倒れている生徒の頬をペチペチとたたきながら、声をかけています。すると、少しして倒れていた生徒が目を覚ましたようです…。

『よかった…。』

あっ!はい!説明ですよね?

私、もう一人の当事者こと、新戸 緋沙子(あらと ひさこ)です。それは私が今日の最後の授業が終わり、講師の方に頼まれた片づけの手伝いを終わらせ、えりな様のもとへ向かっている最中の事でした。

 

 

 

『すっかり、遅くなってしまった…。えりな様のもとに急がないと…。』

そう考えながら、少し速足でえりな様の向かっていた私の足が急に止まる…。

『この、香りは…?』

どこかからか漂ってくる、素晴らしい香り…。何故かはわからないが、今の自分に絶対に必要なもの…。そんな予感さえする…。匂いのもとを探すために、私の体は無意識に動いていた…。

『この匂いはここから…。』

そこは少し奥まった所にあり、あまり使われていない調理室であった。中に入ると、誰もいない…。そして、あまり使われていないはずなのにとてもキレイにされている事に驚く…。

『流石は遠月学園…。普段使われていない所でも、手を抜かないという事なのだろうか…。いや…。使われていない感じがしないな…。』

と、そこでついに匂いのもとを見つける…。

『これは、炒飯か…?』

そこには全体的に赤というか、オレンジ色にそまった炒飯らしきもの…。具はネギと卵に葉物らしきもの…と、大量の削り節…?

『何だこれは…?しかし…この匂いをかいでいると…何やら抑えがきかなくなってくる…。』

何故ここにポツンとこの料理がおいてあるのか?と、疑問に思いつつも…。いけないとは思いつつも、レンゲですくい。思わず一口…。

「______!?」

こ、これは…。

 

「そこで、何をしていらっしゃるんですか?」

 

少し前まで誰もいなかったはずなのに、不意にかけられた声…。

 

 

「キャ───────────!!!!!」

 

絶叫しながら、振り向いた先にいた一人の生徒に、反射的に腕をフルスイングしてしまった。

 

パッシ─────ン!!!

 

「へぶぅっ!!」

 

ゴチン!!

 

私に頬を叩かれた生徒がバランスを崩して倒れ、調理台に頭をぶつけて気を失ってしまう。そして私は腰が抜け、思わずその場にへたり込んでしまった。

 

「あ、あわわわわ…。」

 

ガラッ!!

 

「緋沙子!!大丈夫!?」

 

 

 

えりなside

「緋沙子、遅いわね…。」

私の名前は薙切 えりな…。【食の魔王】と呼ばれるこの学園の総帥、薙切 仙左衛門の孫であり、【神の舌】と呼ばれている…。いつもなら、付き人の緋沙子に予定を聞き、行動を共にしている所なのだが今は緋沙子がいない。今日、最後の授業でクラス分けが別になり、授業が終わったのに私と合流していない…。同じ授業を受けた子に聞いたところ、講師の方に片づけの手伝いを頼まれていたとのこと…。

『あの子は真面目だから、仕方が無いかもしれないけれど…。』

この私を差し置いて、勝手に私の付き人に用を頼まないで欲しいものである。

『まあ、いつも頑張ってくれている緋沙子の為にも、今日は私が迎えに行ってあげましょう!』

そんな事を考えながら、緋沙子が最後の授業を受けていた教室を目指して歩いていると…。

 

「キャ───────────!!!!!」

 

『!!この声は、緋沙子!?』

 

思わず、私は駆け出していた。そして、緋沙子の声がしたであろう教室に飛び込み…。

 

「緋沙子!!大丈夫!?」

 

「え、えりな様…。」

 

部屋に入ると同時に声をかけ、状況の確認をするため見回す…。そこには気を失っているのか床に倒れている一人の生徒と、腰が抜けたのか床に座り込み、力のない声で私の名前を呼ぶ緋沙子…。

『なんでこの状況で、緋沙子は手にレンゲを持っているの?それに、この子は誰?あと、ここに充満しているこの香りは…?』

色々な疑問が頭を駆け巡ってはいるが、まずは、緋沙子に問いかける。

「…緋沙子?…この子は??」

「それは…。その…。」

『?』

何故か、言いよどむ緋沙子を不思議に思いつつも…。

「…とりあえず、この倒れている子を起こしましょう。それから、事情の説明を…。」

「はい…。」

私は声をかけながら、軽く頬をペチペチとたたく。

「あなた、大丈夫?起きなさい?」

すると、少しして倒れていた子が目を覚ました…。

 

 

 

 

主人公side

 誰かに頬をかるくたたかれて目を覚まし、体を起こす。目の前にはボクの顔を覗き込む美少女が2人…。

「??薙切 えりなさんと、新戸 緋沙子さん…?」

『うちの学年きっての美少女が2人もなぜ、ここでボクの顔を覗き込んでいるんだろう?それに、ヒリヒリする頬と、ズキズキしている頭はいったい…?』

とりあえず、状況を把握しようと周りを見回して、考える。

『とりあえずここは、ボクがよく試作に使う調理室で…。今日は調理と片づけを終わらせて…。お手洗いに行ってから…試食を…。』

ボクが思考の中に没頭しそうになった所で、薙切さんに声をかかえられた。

「あなたは誰?ここで何をしていたの?私はここの近くを通りかかった時に、緋沙子の叫び声が聞こえたから、ここに来たのだけれど…?」

「ボクは恵姫 優って言います。ここで料理の試作をしていました…。調理が終わり、調理器具を片づけ、食べる前にお手洗いに行って戻ってきたら、知らない人がいたので、声を「あのっ!その…。」…。」

ボクの話に被せるように声を上げた新戸さん…。

「緋沙子?」

「いえ…。その…。」

『何だか新戸さん、言いにくそうだな…。ん?新戸さんが持っているのはレンゲ…。!!あ~!頭や頬の痛みの理由とか、全部わかったかも…。』

ボクの中で現状を理解できたので、新戸さんに迷惑がかからないようにフォローをしながら、薙切さんに説明しましょう。

「あの~…薙切さん。現状の把握ができたので、ボクから説明してもいいですか?」

「え?ええ…。」

「と、その前に…。」

「「???」」

「どうぞ!」

自分のカバンの中から出した水筒に入っていた玄米茶をコップに注いで2人に出し、椅子を3つ持ってくる。

「「ありがとう…。」」

それぞれ、椅子に座りお茶を一口飲んで、一息つく。

「「美味しい!!」」

【神の舌】に美味しいと言われ、頬が緩む。早速ボクは話題を切り出す。

「まずは、簡単な流れから…。いいですか?」

「ええ。」

薙切さんが頷き、2人が落ち着きいたのを見計らって話はじめる。

「先程も言った通り、ボクはここで試作をしていました。試作を食べる前に調理器具の片づけをし、お手洗いにいき、試食しようと戻ってきたら、知らない人がいたので、声をかけました。そうしたら、その人は驚いて絶叫し、振り向きざまに振った手がボクの頬にあたり、ボクは倒れた拍子に頭をうち気絶した…。おそらくそこに、薙切さんが入ってきたのでしょう…。端的に言えば、こんな感じだと思います。どうですか?新戸さん?」

「あ…。あぅ…。」

新戸さんは言葉につまり、顔を青くしている。そんな、新戸さんにジト目という感じの言葉がぴったりの目を向ける薙切さん。

「緋沙子!あな「まぁ、たまたま通りがかった人が、思わず調理室の中に入って食べてしまうくらいの香りがする料理になった…。これは試作としては上出来でしょう!」……えっ?」

声を荒げそうになった薙切さんは薙切さんの言葉に被せて言ったボクの言葉に驚いていた。そして、新戸さんも…。

「お詫びをうけるような事はされていませんが、どうしても気になるのでしたら、薙切さんも試食していただけませんか?いつも、味見してくれる先輩が今日は都合つかなかったんですよ。」

「「………。」」

戸惑っているであろう、2人に更にたたみかけるようにボクは言う。

「意見や感想は多ければ多いほど参考になりますし、こんな事でもないとボクなんかの料理を【神の舌】と呼ばれている薙切さんに食べてもらう機会なんかありませんから…。ね?」

そして、笑顔でお願いをしてみる…。どうだろうか…?

『ん?何だか、薙切さん達の顔が少し赤いような…。』

 

 

 

 

えりなside

「「………///」」

私はその可愛い笑顔に思わず見とれてしまった。その事を自覚し、自分の顔が赤くなるのがわかる。チラリと横目で緋沙子の様子を窺うと、同じ様に顔を赤くしていた…。

『顔がアツいわ…。』

一度、深呼吸をして考える…。

『一度、落ち着いてから、感じるようになったこの香り…。思わず緋沙子が匂いのもとを調べたくなってしまったのがわかるくらい、素晴らしいモノね…。申し出はありがたいことは間違いないんだけど…。笑顔と話のテンポに押し切られている感じがどうにも…。』

「どうでしょうか…?」

私が考えていると、さっきまでの笑顔が一転して不安そうな顔に…。

「わかったわ!この私が試食してあげる…。」

「本当ですか?やった!!」

また、輝くような笑顔…。

『うん…。この笑顔は反則だわ…。』

「では、お願いします。」

早速という感じで渡されたレンゲで一口…。

「「______!?」」

私はその味に驚いた…。具材はネギと卵に野沢菜の漬物と、大量の削り節。最初にきたのは漬物の塩分と炒飯らしい油の旨味。その次に具材の食感と、口の中いっぱいに広がる削り節、陳皮(ミカンの皮)、山椒等の混じった複雑で素晴らしい香り。そして飲み込むと喉に辛味が残る。

『こんな、レベルの高い料理をこの子が…?恵姫 優…。聞いたことのない名前…。こんな逸材が、まだいたなんて…。』

色々な疑問が頭の中を駆け巡る。緋沙子は驚いた表情をしながら、必死にこの料理の分析をしているようだ…。

『と、いうか緋沙子…。もしかしてそのレンゲずっと持ちっぱなしだったの…?』

あまりの驚きに頭が混乱し、どうでもいい疑問が頭をよぎってしまったようだ…。と、そこに…。

「ボクのヤキメシはどうですか?」

「え?ええ!とても美味しいわ」

少し不安そうな顔をされ、思わず少しどもりながら答えてしまう。

「よかった~。」

さっきの笑顔とは違う、安堵したという感じの微笑み…。

「「………///」」

また、わたし達の顔が赤くなる…。

『ころころ変わる、かわいい表情…。うん…。卑怯だわ…。近くでずっと愛でていたい…。』

私は思わず…。

「あなた、私のモノにならない?」

「はい?」

「え、えりな様!?」

自分で口走ってしまった事にさらに赤面してしまう…。

「ち、違うの!!いえ!違くはないんだけど…。そういう意味じゃなくて!!私の派閥に入らない?」

自分でもアタフタしているのがわかる…。恥ずかしい…。

「お誘いはとても光栄なんですけど、今のボクは派閥とかそういうのに関わりたくはないですし…。なにより…。」

「「???」」

「ボク、男なので薙切さんの派閥に入ると色々と大変な事になりませんか?」

 

「「…え?えええええええ───────────!!!!!????」」




と、いうわけでえりな、緋沙子との出会いのお話でした~。
しかし、次のお話もそのまま、えりな&緋沙子の続投してもらいます。というか、このお話の続きなんですけどね。実は(笑)

読んで頂けたり、感想等を頂けたりすると、小躍りして喜ぶことうけあいです(笑)
では、また…。

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