本編、突入の前に…。
キャラ設定的な物をどうぞ。
3月初旬 遠月学園会議室
「ふむ…。こんなとこですね…。」
「そうですね…。皆さん、お疲れ様です。」
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
ここは日本屈指の料理学校、遠月学園のとある会議室。超絶エリート校と名高いこの学園では中等部3年生が高等部に進級する際、学年末試験と、高等部進級試験の試験結果に、実技や座学の成績に加え、食戟(しょくげき)の戦績等も考慮した成績の順位を出し、年度末に上位陣を発表、掲載する。その格付けの会議がたった今、終わったところである。
「では、私はこれを総帥に提出してきますので、これで…。」
一人の講師が、そう言って席を立ち会議室を出ていく。そして、残った講師達は本日最後の仕事を終え、それぞれの帰り支度をするために移動しながら思い思いに話を始める。
「やはり、薙切 えりな(なきり えりな)さんは不動の一位でしたね。」
「さすがは、薙切の一族…。【食の魔王】のお孫さんだ!」
「まさに、【神の舌】…。」
「でも、この学年の上位陣は面白い素材がかなり多い…。」
「いやいや!それでもえりなさんとは差があり過ぎるでしょう!」
「確かに、現段階では差は大きい…。しかし、上位に食い込んできた生徒達は皆、覆す可能性を秘めていると思いますよ?」
「そうですね…。それに、二位の生徒は現状唯一、薙切さんと同格…。いえ…、もしかしたら、上回っている可能性もありますし…。」
「そんな!ばかな!!確かに食戟戦績は全勝となっていますが、回数はたったの5回!しかも、十傑評議会(じゅっけつひょうぎかい)の議題に上った事すら無いそうじゃないですか!」
「あら?ご存知なかったんですか?その子、十傑評議会の実務作業とか手伝っているんですよ?」
「えっ?」
「具体的には小林 竜胆(こばやし りんどう)さんや、茜ヶ久保 もも(あかねがくぼ もも)さんの書類の手伝いをしているそうです…。」
「「「「「………あ~~~~…。」」」」」
「その縁で司 瑛士(つかさ えいし)くん、女木島 冬輔(めぎしま とうすけ)くん、 斎藤 綜明(さいとう そうめい)くん、紀ノ国 寧々(きのくに ねね)さんとも知己であり、一緒に試作をする仲とも聞いてます。」
「「「「「………。」」」」」
「…げ、現状の力関係はともかく、実に先が楽しみですね…。」
「本当に…。」
などと、話をしながら講師達はそれぞれの帰路に着く。
仙左衛門side
資料に目を通し、一息つく。
「ふむ…。」
遠月学園の総帥、薙切 仙左衛門(なきり せんざえもん)。即ち、自分の仕事は今、目を通した資料の承認をし、上位陣の発表、掲載をする事。不動の一位に孫娘がいる事を確認し、活躍を幾度と耳にしてきた名前が連なっている上位陣の名前を確認していく。しかし、その中に一名、気になる名前を見つける。
『確か、この名前は…。』
先日、電話で話した伝説のOBと呼ばれる卒業生がその生徒の事を気にかけ、様子を教えて欲しいと言っていた事を思い出しながら、資料を持ってきた講師に指示をだす。
「脇屋、恵姫 優(えひめ ゆう)についての資料を…。」
「こちらに…。」
脇屋から渡された生徒情報の纏めてあるファイルを受け取ると『恵姫 優』を探す。五十音順に纏められている為、然程時間を掛けずに資料を見つけることが出来た。
「…ぬぅ?」
そこには、予想の斜め上を行く情報が書かれていた…。
92期生
氏名 恵姫 優(えひめ ゆう)
性別 男
生年月日 8月29日
身長 149.5cm
体重 51kg
血液型 B型
講師評価
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テスト成績
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食戟戦績 5戦5勝
特記事項
下記の店舗の非常勤スタッフ
イタリア料理店「リストランテ エフ」
フランス料理店「SHINO'S」
鮨店「銀座ひのわ」
オーベルジュ「テゾーロ」
日本料理店「霧のや」
スペイン料理店「タキ・アマリージョ」
洋食専門店「春果停」
十傑評議会のメンバー数名と知己であり、書類の作成等を陰ながら手伝っている模様
各講師の評価は殆どがA、テストの成績も上位なので優秀なのは間違いないのだろう…。しかし、食戟の戦績は全勝とはいえ、回数は5戦と少ない…。また、十傑評議会のメンバー数名と知己でありながら、十傑評議会の議題に名前が上がっていない…。さらには、元十傑である卒業生の店…超一流店の非常勤スタッフという異彩を放つ経歴を持ちながら、先日まで名前を聞いた事がない…。
『確実に玉の集っているこの学年の中で、他の者の名声の中に埋もれ、今まで目立たなかっただけなのだろうか?確かに食戟を積極的に行ってはいないようだが…。それにしても…。』
色々な考えが浮かんではくるが、つまるところ疑問は一つである。【神の舌】を越えてはいないが、実技、座学の評価はほぼ同等…。肉の専門家、香りの専門家、イタリア料理の専門家、それらを抑えての上位…。この資料を見る限り、元十傑の卒業生達に認められるだけの腕を持っている事は明白であるにも関わらずなぜ、今まで無名であったのか…。
『まるで【潜龍(せんりゅう)】だな…。』
かつての日本や中国での戦国の世に於いて、才を隠し潜む英傑を評してそう呼んだという。正に、この生徒の現状を言い表すのにピッタリな言葉ではないか?などと考えながらその他の上位陣の資料にも目を通し、順位付けの資料に承認の判を押す。これで仕事は終わりではあるが、どうにも違和感がある。卒業生に聞かれた事もあり、疑問をこのまま放置しておく気にはならない。
「脇屋、愛媛 優は何処に住んでいる?」
「葉月寮です。」
「ふむ…。調理の腕を見てみたい所ではあるが…。とりあえずは過去の食戟の映像を集めておけ。それと、普段の様子や授業中の様子もそれとなく調べておくように…。卒業生達も気にかけている…。」
「はい。」
「後は彼の今までの事を経歴や家族の事も含め、あらゆる情報を集めておけ。どうにも、引っかかる…。」
「畏まりました。お任せください。」
脇屋は一礼すると去って行く。その姿を見送った後、ふと自分の頬が緩んでいる事に気付く…。
何か大きな流れのようなものが動き出したような…。そんな予感がした…。
とりあえずは書き始めてみました…。
なので、この先どうなるか、自分でもわからなかったりします…。
もし、よろしければまた見て下さい。