天翼の淑女と不死者の王   作:ヤクサノイカヅチ

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っつっしゃあ!年内セーフっ!

えー、お待たせいたしました。ちゃんと十二月以内に投稿したからセーフッ……圧倒的セーフッ……

あ、お年玉の用意はさすがにできていません。
では、また来年にお会いできればいいなぁ……

いつも閲覧感想評価誤字報告とありがとうございます!もっと下さい!
皆様の温かいお言葉が私の燃料となる……筈です。多分。



輝ける至高達の軌跡/二度と届かぬ理想郷

 「さて、まずは自己紹介といきましょうか。ジブリールさん、どうぞ」

 

 割と唐突にモモンガさんから自己紹介をしろと命じられる。いや、命じるなんて堅苦しいものではないのは分かっているが、先程までの空気と現状が乖離しすぎていてなんとも。というか皆さんの視線が私に集中して自信のジブリールボディを誇らしく思ったりでもやっぱりそんなに見られると羞恥が少なからずあったり。

 ええい、あまり待たせるのも良くないし一度落ち着くんだ。息を大きく吸って、ゆっくり吐き出す。何も問題は無い。

 

 円卓の席から立ち上がり、宙に軽く浮いて静止する。本来の姿なら格好がついたのだろうが、正直幼女が背伸びをしているようにしか見えない。

 

 「私はジブリール。戦神アルトシュに創造されし天翼種(神殺しの兵器)の末端、……という設定を演じている者だ。趣味は知識と首級の収集。好きなものは未知、嫌いなものは無知。ああ、言い忘れていたが……俺は男だ。以後、どうぞよろしく。そうそう、基本はジブリールとして行動するので、その辺は考慮していただけると助かります♪」

 

 一気に円卓の間の空気が死に絶える。事情を知っていたモモンガさんに茶釜さんとペロロンチーノさんは問題ないが、その他の皆様方は動揺を隠しきれていない。実はネカマであることをカミングアウトした時の、この衝撃を受けた姿がそれなりに好きだったりする。大抵の友人からは性格悪いなと苦笑されるのだが、実害がある訳でもないし後に引く訳でもないならいいと思うんだけどなぁ。

 

 ガタリと音を立てて鎧武者の巨人が崛起し驚きを隠さぬままに私に怒鳴り立てる。とは言えその声音からは悪感情は感じられず、只々目の前の現実が信じられないだけの様だ。

 

 「どういうことだ!?外見はともかく、中身が男なのに何故違和感のない女性の声を出せる!三人目の女性プレイヤーだと期待してたんだぞ!」

 

 「そうだそうだ!俺たちの純情を返せ!ぷーくすくす」

 

 「そんな事を言われましても……ああ、この声は多少作っていますが人工声帯等のものではありませんよ?ちょっとした発声法と努力の賜物です」

 

 途中に一部男性プレイヤーからの野次が飛んできたが、華麗にスルーする。どうせ向こうも冗談で言っているのだろうし、というか最後には笑いを噴き出していた。

 

 「……まあいい、俺も男か女かだけで入団を認めたわけではないしな。そういえば名乗っていなかったな、俺は武人建御雷だ。よろしく頼むぞ、ジブリール」

 

 「そう、それです。何故に私は入団を許されたので?」

 

 インパクトが大きく流されがちではあるが、私はこのギルドと知り合ってまだ一日と経っていない。電撃入団にも程があるのだが、何か理由でもあるのだろうか。個人的にそこが気になった。

 

 「まあ、身内の知り合いって点も大きいな。茶釜さんとそれなりに長い付き合いなんだって?彼女のお墨付きならそこまで悪い輩では無いだろうってな」

 

 「……瞳。我々が丹精込めて造り上げたこのギルドを見た時の反応。実に曇りなき澄んだ瞳であった。俺が推すにはそれだけで充分だ」

 

 「天使種だって異形種には変わりねぇよ。それと、あのクソ『セラフィム』の奴らにも意趣返しになるかと思ってな!」

 

 「なんにでも理由を求めるのは疲れるぜ?もう少し気楽に考えようや、俺たちがアンタを気に入った。その程度の話だろ?」

 

 ……うん、暖かい。近年稀にみる超絶良ギルドなのではないだろうか。リアルでの自分の涙腺が緩むのを感じる。こんなに暖かい空気に包まれたのは両親がいた頃以来ではないだろうか。

 

 「では自己紹介の続きを。戦闘スタイルは素手と魔法での近接戦を主体としています。古いRPGで言うところの『魔法剣士』に近いところがありますね。基本は『ジェノサイダー』のスキルで畳みかけますが……」

 

 ゴトリ、と音を立てて虚空から私の背後にある椅子に処刑人の剣(Richtschwert)がその姿を現す。

 

 刃渡りは私の身長と大差なく、一切の歪みもない刀身の幅は一般的な大剣程にもある。柄の頭には洋ナシ状であり、刀身の切っ先は丸く潰されている。幾多の罪人の血を吸い続け、刃が錆ついて尚斬首刑に使われたギロチンを素材として鍛えられた自慢の処刑刀。()()()()への攻撃時にダメージを増大させるデータクリスタルをふんだんに注ぎ込み作成した、首を刈り取る為だけの剣。その銘を―――

 

 「『黒円卓の(ヴェヴェルスブルグ)―――ではなく、『死命目録(メメント・モリ)』。私が『首を刈り取るべき相手』と見做した者にのみ振るう一抜絶殺の処刑大剣。これを用いた近、中距離戦が私の本領です」

 

 「あとは一応天使なので、基本的な信仰系魔法は習得しています。一人で回復もこなせるアタッカーと考えていただければ」

 

 さて、皆様の反応は如何に……?

 

 モモンガさんは……うわ、すっげえ目キラキラさせてるよあの人。ユグドラシルのアバターは表情も変化しない筈なのに分かってしまう程だ。ギルドの纏め役でしっかり者ではあるけど、中二病を患っていたり妙に子供っぽいところがあったりと面白い人だ。

 

 他は、面白い反応をしてるのは数人か。ペロロンチーノさんはまた色物が増えたか……という目をしている。誰が色物じゃコラ、それを言ったらこのギルドそのものが最大級の色物だっての。異形種も入団を認めているギルドならいざ知らず、異形種オンリーのギルドは聞いたことが無いわ。

 

 コテコテの忍者装束に覆面と忍者以外の何者でもない人(弐式炎雷)はうんうんと頷いている。なにか共感できるような要素があったのだろうか。後で話しかけてみよう、仲良くなれると嬉しいのだが。

 

 水蛸が頭の水死体みたいなタブラさんはぶつぶつと何かを呟いている。耳を澄ますと「天使……アズラー……死を司る……生者の名を記す……」といったワードが微かに聞こえてくる。成程、神話についての造詣が深いのだろう。ジブリールの名を聞いて即座に天使と結びつけてくるだけのことはある。

 

 後は、山羊頭の悪魔であるウルベルトさん位かな。この人はこの人でモモンガさんと負けず劣らずの反応だ。特に反応しているのはこの大剣の銘にだろうか。なんだかこのギルドは中二病患者が多い気がする。かく言う私も中二病と言われれば否定できないのだが。そも異形種をわざわざ選んでいる時点で中二病なのでは?

 

 「そういえば、さっき信仰系魔法を修めていると言っていましたけど俺との戦闘で使っていた〈万雷の撃滅(コール・グレーター・サンダー)〉は魔力系の魔法じゃないですか。信仰系を修めたうえで魔力系の魔法を、しかも第7位階のものを使えるなんてどういうことなんですか?今の説明だとゴリゴリの戦闘職で魔法職をそこまで取得していないようだったので」

 

 ペロロンチーノさんが疑問を問いかけてきた。何故信仰系と魔力系を、しかも純粋な魔法職以外が高い水準で両立できているのか、といったところか。

 中々にお目が高い。そうだよなぁ、そういった職業選択をしていないか、或いは装備を変更でもしない限りはそんなこと出来ない。それは間違っちゃあいない。だが、俺が得た職業はその不可能を可能に変えたのさ。

 

 「ふふ、『唸る獣(Questing beast)』をご存知ですか?私が取得した職業の一つなのですが、それには数種類のみと限られますが、異なる系列の高位魔法を使用可能になるという特性があります。それを利用して幾つかの魔法を習得しました。回答はこんなものでしょうか」

 

 唸り吼える魔性の獣、それは異なる獣の特性を身体に持ち、その唸り声は数多の動物の鳴き声を混ぜ合わせたものだと言う。異なる系列の魔法を扱えるようになるという特性には正にうってつけの職業だ。

 しかし、同時に弱点もまた存在する。この職業によって習得した魔法は一律燃費が本来の魔法よりも悪化しており、更に本職のものと比べると幾分か威力も弱体化している。

 

 「そうそう、天使種なのは見ればわかるんだけどさ、どの天使種の種族を取ったの?特に最高位の三つの熾天使はどれを取得したかで使えるスキルや対応できる範囲が変わるからなるべくなら頭に入れておきたいかな」

 

 「ああ、私は栄光の主天使(ドミニオン・グローリー)原動天の熾天使(セラフ・ジオセントリック)、それと―――」

 

 

 

 

 

 この日、アインズ・ウール・ゴウンに新たな一員が誕生した。

 ジブリール。後にユグドラシルにて最も邪悪にして悪辣なる天使と謳われる事となる、至高の四十一人の一角である。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 とまあ、次回に続くなんて感じのモノローグが入った訳だが、そんなことは知ったこっちゃないとばかりに話は進むのである、まる。

 

 あれから少し経ち、何人かの新メンバーが加入してから。

 遂に待望(私はそれほどでもないが)のNPC作成について話し合うことになったのである。因みに司会はギルド長のモモンガさんが担当。どことなく威厳が出てきたように感じたり感じなかったり。

 

 「えー、皆さんちゃんと集まってますね?前々から告知していた通り、今迄の簡略としたものでは無く、しっかりとしたNPCの作成について話し合おうと思います!」

 

 場所は何時ぞやの円卓の間にて。なんと41人にもなったアインズ・ウール・ゴウン全員がこの円卓に腰を預け並んでいる。いや、ここまでくると壮観である。途中から参加した私ですらこう感じるのだから、話に聞いたクラン時代からのメンバーはどれ程の感銘を受けたのやら。

 

 「まず、全員から少しづつ徴収した金額で仮決めのNPCを全てリセットしました。私たちにはナザリック初見攻略等も合わせて2750レベル分の作成権限があります。今日は誰がどれだけNPCを作成するか、そのレベルはどうするかについて決めようと考えています。最低でも一人一体は必ず作成してもらいます。それと、話し合いで決まったことは後で蒸し返さない事、最悪はこのくじで公平に決定しますからね」

 

 モモンガさんが左手に籤箱を持って高く掲げる。

 殆どの人は興奮しているのだが、私はNPC作成にそこまで興味を抱いていない。

 というのも、私がユグドラシルをプレイしている理由がジブリールの為だけであり、正直他者であるNPCなど、人が作ったものを見るのならまだしも自分で作ることに必要性を感じていないのである。

 

 必ず一人一体、とモモンガさんは言っていたが、どうしようか……

 脳内に空白たちをNPCとして作成するのはどうかと一瞬よぎったが、即座に掻き消した。

 あの空白コンビだぞ?幾ら同じような設定を組み立て、職業を与えたとしても模造品にしかならないだろう。というか、あれを再現できる気がしないしあの二人に失礼だ。

 最悪、適当にロリリールでも作ろうかと考えている中、茶釜さんに話しかけられる。

 

 「どーしたのジブリちゃん。なんかだかぼーっとしてるけど」

 

 「いや、NPCをどうしようかと」

 

 「あー、悩むよねぇ。私はもう決めてるんだけどさ。双子の闇妖精(ダークエルフ)でね、アウラとマーレって名前にしようと思うんだけど……」

 

 と、そんな感じの茶釜さんを右から左に受け流しつつ話は進んで行き、とうとうモモンガさんから聞かれる順番になった。

 

 「ジブリールさんはどうします?幸いまだレベルには全然余裕がありますから、100レベルでも問題ないですよ?流石に複数体で全員100レベルだと皆さんからストップがかかると思いますけどね」

 

 むむむ、本当に本っっっ当にどうしよう。

 そう考えていたその時、ふと頭に彼女の姿が浮かんできた。

 そうか、確かにあまり頭が良いキャラでもないから設定上でも上手く再現出来そうだし、かつ私との関係も少なからずあって好都合だ。レベルも、30かそこらあれば足りるだろう。アホの子可愛い要素も美味しいしね。

 

 「では、一人作成させていただけますか?レベルは30位もらえればそれで十分ですので」

 

 「もちろん問題ないですけど、本当にそれだけで大丈夫ですか?ジブリールさんはこのギルドにちゃんと貢献していますし、もう少し我儘を言っても許してもらえると思いますよ」

 

 「いえ、彼女にそこまでレベルを与えると強くなりすぎてしまうのでこれぐらいが丁度いいんです。お気持ちだけ頂きます」

 

 ふっふっふ、ようこそ()()()()()。この素晴らしき世界へと、ね。

 

 では種族はどうしようか。単純に人間種で創ってもいいが、どうせなら人犬(ワードッグ)にしてあげても面白いかもしれない。職業は課金が必要だがプリンセスに、一レベルだけギャンブラーを与えてあげようか。でも彼女もそれなりにゲームの腕はあるのだし……ああ、内政面に強い子にしてあげよう。お菓子作りが上手かった筈だから、コック辺りの職も必要になりそうだ。

 

 なんだ、思ったよりも楽しくなりそうじゃないか。

 多分その時の私の笑みは、ユグドラシルの表情固定が無かったのならきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と て も 邪 悪 な も の だ っ た の だ ろ う 。




感想での悪ノリからステフがナザリック入りすることが決定しました。拍手!

ほら、ね?ステフが何でもするって言っちゃったからね?

クエスティング・ビースト、ジェノサイダー、栄光の主天使、原動天の熾天使などオリジナルが山盛りの今回ですが、大目に見てください。

え?何でジブリールに大剣持たせたのかって?その方が恰好いいやん。

大剣の見た目は、黒円卓の聖槍とシャルル君の持つ剣辺りを上手い事合体させたイメージです。
ほら、やっぱり首を刈るんだからその為の道具は必須だよね。ちかたないね。

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