今回も難産だったぜ……
感想評価本当にありがとうございます。
お気に入り1600人にランキングにも載ったなんて信じられん。
これからもこの作品を是非ともよろしくお願いします。
では、どうぞ。
レベルの矛盾を修正しました。
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俺の現状レベルは89だったよな、少し防御面も考えて職業を取った方が良いか。まあ先ずは
そして此処に拠点があるってことは、元々あったダンジョンを攻略したっていうわけでしょ?開いた口が塞がらないとはまさにこの事。
そして眼前に広がる神殿の様な建築物がギルド拠点なのであろう。一見した感想では、どうも貧相過ぎるというか拠点にしては小さすぎる様な気がする。と言っても、大抵こういうのは地下に超広大なダンジョンとしての本来の姿を隠しているものだが。
一部ネタに走ってはいるものの、俺はレベル80台後半の天使種プレイヤーだ。
地形、環境、デバフ等への対策はバッチリ………とは言いがたいが、それなりの用意は出来ているし生半可なものなど歯牙にかける必要すらない。それに加えて最小限であるものの常時回復の効果を持つスキルだって取得している。
それで漸くダメージを相殺するのが精一杯だというのに、その上ダンジョンまで突破したとなると驚嘆を隠し切れない。
『Welcome to ナザリック!』
その神殿(仮)の端から端にかけて掛けられている『アインズ・ウール・ゴウンへようこそ!』とでっかく書かれている横断幕と、ざっと数えただけで少なくとも三十人ほどは居ると分かる異形種のプレイヤー達がクラッカーの爆音と共に俺たちを出迎えてくれた。
「おお、急な連絡だったのに案外ちゃんとしてんじゃん。さては前から用意してたなー?」
「へっへっへ、さっきまで散々騒いでた二人が率先して設置してくれてたんだよ」
「いつも喧嘩してるのにこういう時だけは息が合うんだから、仲裁する俺の身にもなってくださいよ」
「まあ、モモンガさんもそう言わないで」
茶釜さんの言葉に鎧武者の巨人が反応する。
続くモモンガさんの愚痴には俺の背後に立つペロロンチーノさんが宥めるようにして答えた。
「んで、そこのお嬢さんがお客さんってことで良いのかい?」
「そ、私の友達のジブリールちゃんです。ほら、皆拍手!」
「ど、どうも。ジブリールと申します。どうぞよしなに」
天撃の反動で幼女化してしまった身体でペコリと頭を下げる。
大勢の目の前で自己紹介などユグドラシルでは碌にしたことなど無かったので緊張したが、反応はどうだろうか。
「かわええ……」
「てんすや、てんすがおる……」
「ハイエースしなきゃ(使命感)」
成功したと言って良いのだろうか、なんか途轍もない悪寒を感じたのだが。
「ふむ、ジブリールというと四大天使ガブリエルのアラビア語読み。神の叡智と天啓を管理する天の使い、か」
「貴方は?」
「私はタブラ・スマラグディナ。なに、しがないブレインイーターだよ。神話を少々嗜んでいるだけの、な」
蛸頭のプレイヤーが俺の名前について何か呟いていたので話しかけてみた。
タブラさんという名で、なにやら含みがあるというか……
しかし、
「ではタブラさん。私をあのような
「ほう?」
<漆黒の殺意>を発動する。どす黒くタールの様に粘り付く
周囲のメンバーは即座に散開し戦闘態勢に移行するが、そんな事はどうでもいい。
「私は
「……これは失礼した。非礼を詫びよう
やや大袈裟に儀礼がかった、されど確かに謝罪の念を含んだ動作でタブラさんが
「いえ、先に説明していなかった私が悪かったので。こちらこそ唐突に怒りをぶつけてしまい申し訳ありません」
……さて、今の状況を説明しよう。俺と向き合った状態のタブラさん、そして円形に包囲して俺を警戒しているナザリックの皆様方。
うん、やらかした。どうすんだよコレ、歓迎ムードを一気に台無しにした挙句敵対行動まで取っちゃったよ。
だが、そこに救いの手が差し伸べられた。……随分と棘のある、的確な一言が。
「ああ、そんなに警戒しなくて良いですよ。この人今デメリットで解除不能のステータス減少が掛かってるので此処に居る誰も傷つけられませんし」
異形の輪を引き裂いて現れた
「なっ、離してくださいモモンガさん!?ちょっ、ま、やめっ、振り回すのはやめ、やめっ…ヤメロォー!」
「はっはっは、目の前で危なっかしいスキルを発動した人になんで容赦する必要があるんです、かっ!」
そのままぐるんぐるんと空中で平衡感覚がズタボロになるまで回転を繰り返され、結局モモンガさんに掴まれたままナザリック見学ツアーが幕を開けたのだった。
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「いやぁ、あそこで切れるとは思ってもみなかったわ。まさかここまで『ジブリール』って娘に愛着を持っていたとはね」
「けけけ、これまた一癖ありそうな客だなぁぶくぶくの姉さんよ」
「まあねー、モモンガさんの同類って言えば分かるかな?」
「うひゃひゃ!そりゃあいいな、思ったより仲良くなれそうだぜ」
「モモンガさんには感謝しないとな。今の寸劇で無害アピールと何かあっても直ぐに鎮圧できるってのを証明してくれた」
「モモンガちゃんのステでも抑えられるって、どんな状態よソレ」
「なんでも、時間経過でしか解除できない強烈なデバフが何個かあるらしいよ。それと幼女化」
「幼女化だぁ?オイオイ、俺ちゃんの事を笑い殺す気かよ!」
「本当は凄い美人の天使なんだよなぁ、今は今で可愛いけどさ」
「それに喧嘩売ったのは誰だっけ?弟よ」
「ハイハイ、その件はもう十分に反省してますから……」
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「―――どう見る?」
「タブラが虎の尾を踏んだだけだろ。今のはどっちかと言えば警告の無い地雷みたいなもんだがな」
「そもそもこのギルドになんの目的があって潜伏するんだ?言っちゃなんだが俺らはまだ拠点の仮組みが済んだだけのギルド初心者だぜ?」
「それもそうだな。現状は最低限の警戒で構わないか?」
「異議なし」
「右に同じく」
「しかしあの幼女ほんと可愛いな!是非ともうちの華になって頂きたいものだ」
「禿同」
「ロリよりメイドのお姉さんだろjk」
「待てよ、ロリメイドというのは……?」
「なんということだ。私は今、新たな光を得た!」
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ぞろぞろと大人数で霊廟の中へと入り、俺たちが先ず目にしたのは地表とさして変わらないエリアだった。違うのは、そこら中に多種多様なアンデッドモンスターが動き回っている事だ。
「第一階層『墳墓』。見ての通りアンデッド達が闊歩するまさに墳墓といったエリアです。第三階層までは全て墳墓ですが、階層ごとに仕掛けてある罠やエリアエフェクトが若干異なります」
モモンガさんが自慢げにこの階層の事を説明してくれている。それはまるでお気に入りの玩具を友達に見せびらかすかのようで、なんだかとても眩しく見えた。ああ、彼は本当にこのユグドラシルを、そしてこのギルドに居る事を楽しんでいるのだと、そう思った。
「二階層には女性の外装をしたプレイヤーを苦しめるとある策を考えていましてね、いずれ数多の怨嗟の声をこのナザリックの地に轟かせることでしょう」
「……それ、女性キャラの彼女の前で言うの?モモンガさん」
各々がかなり好き勝手に喋り合いながら墳墓を進んで行き、第三階層から何故か第二階層に一旦上りそこにある半ば風化しているように見える吊り橋の先にある巨大な聖堂の前に到着した。
「ここが地下聖堂です。このなかに第四階層への転移門が設置されていますが、第四階層こと地底湖は名前の通り地底湖しか存在しないのでとっとと先に進みましょう」
「一転して随分雑になりましたね」
「それだけ語ることも無いので、何か置くべきでしょうかね?」
「なら、巨大ロボットでも置こうぜ!」
「ロボットこそ男の浪漫よ。ドリルは必須」
「変形合体出来ると尚良いですね」
「おお、アンタ男の浪漫が分かるのか!」
「ほら、そろそろ行きますよ」
地底湖を早々に通り過ぎてその先へ。あ、第四階層は本当に地底湖以外何も無かった。殺風景ここに極まれりって感じで、精々白い蝙蝠の様なモンスターが飛び回っている程度でした。
第五階層は一面銀世界の雪原と聳え立つ氷河がお出迎えをしてくれた。極寒の冷気と荒れ狂う吹雪が合わさって視界まで遮られるというオマケ付きでだったが。
無駄なところまで細かく再現するユグドラシルの運営は頭可笑しいんじゃないだろうか。顔を存分に叩きつけてくる猛吹雪の感触を堪能しながらそんなことを考えていた。
「ここが第五階層の『氷河』です。……誰ですか、わざわざ何時もは使っていないフィールドエフェクトを作動させたのは」
「はーい、俺ちゃんでっす☆」
「誰か、そこの愉悦駄天使を拘束してください。今すぐ」
「また貴方ですか、本当に問題児なんですか、らっと!」
「あーっ!困ります!!警察官さま困ります!流れるように合気道で拘束するのは困りまアーッ!」
「あの、何ですかアレ」
「うちの名物ギャグです。気にしないでください」
銀色の鎧を身に纏い赤いマントをはためかせた騎士が道化師の様な外装の男をいとも容易く捻じ伏せて白色の大地に叩きつけていたが、これが良くある光景らしい。アインズ・ウール・ゴウンというギルドはどんな魔境なのだろうか。
フィールドエフェクトが解除されただ吹雪が舞うだけとなった雪原をモモンガさんに吊るされながら先に進んで行く。
「少ししたら合流しますねー」
「分かりました、よろしくお願いしますねたっち・みーさん」
説教を開始した二人と別れ、転移門を使って第六階層へと足を踏み入れた。いや、俺は地に足を付けている訳ではないのだが。
鬱蒼と茂る樹海、極太の巨大樹、青く澄み渡る空、燦々と照らす太陽、そして古代ローマの剣闘士が互いの命を懸けて戦い合ったと言われる
今までの階層とは一線を画す程の圧倒的な存在感。
「ええ、素晴らしいでしょう?言わなくてもわかりますよ。流石はブルー・プラネットさん、何度見ても色褪せない感動を与えてくれる」
「―――天国は、現実世界ではなくユグドラシルにあったんですね」
「此処が第六階層『大森林』。ある一人の男が夢想し、そして実現した理想の世界です。ちょっと休憩にでもしましょうか、少しすれば良いものが見れますよ」
モモンガさんが歩くのを止めてその場に留まる。他のメンバーも適度に散ってはいるものの、次の階層に向かおうとする人は誰一人として居なかった。
時間の経過と共に、辺りがゆっくりと暗くなっていく。空を見上げると太陽が大地の淵に沈み始めていた。やがて太陽はその姿を完全に消し去り、大森林は闇夜の帳に包まれ―――
―――そして、満天の星が夜空を彩る。
天蓋を埋め尽くす無数の星々。空が公害排気によって覆い尽くされ日の光すら射さない現実では最早見ることなど出来ず、広大なネットの海に画像としてしか残っていない星空がそこにはあった。
襤褸切れのみを身に纏う変態が延々とループを繰り返す原作がR-18のアニメの台詞に『究極に近くなるほど、形容する言葉は陳腐になるもの』というものがあったが、正にその通りだ。
この星空を飾る言葉など、長くなるほど不粋にしかならないだろう。故に、俺が口に出すのはほんの一言で良い。
「なんて綺麗な」
「うちのギルド自慢の星空です。ブルー・プラネットさんが一切の妥協を許すことなく、丸々一月は掛けて作り上げました。凄いでしょう?」
「ええ、夜空はこんなにも美しいものだったのですね」
日が沈み夜が来るのなら、夜が明け日が昇るのも道理である。
沈んだのとは反対側の淵からゆっくりと太陽がその姿を現し、それと時を同じくして明るくなってゆく空に溶けるように星達は消えていった。
「行きましょうか」
「ええ、少し名残惜しいですが」
「どうせ何時でも見れるようになりますよ」
んんん?何時でも見れるようになる、だと。それはどういう事だ。俺はこの先もここに自由に来れる……訳は無いか、ギルドの安全面から考えてもそれは絶対に無い。なら茶釜さんに頼めば連れてきて貰えるといった程度の事なのだろう。
次なるは第七階層『溶岩』、灼熱の溶岩と紅蓮の大地が地獄のような光景を作り出している。実際にこんなところに居たら全身火傷では済まないだろう。最早空気が仄かに赤く染まっているかのようだ。遠くに見える神殿は無残に破壊されており、乱立する白い柱と砕かれた人型の像らしき欠片だけがその姿を残している。
「流石にここのエフェクトまでは起動していませんか、少しだけ安心しました」
「赫灼たる大地、滅び去った神殿、まさしく地獄よ。この光景こそ我らがギルドに相応しい。どうかね?」
「私は九層のアレも好きですけどね。ゲーム上では無意味な食堂やら美容院やら、確かスパリゾートなんかも作る予定なんでしたっけ」
「自由に生きてますねぇ……ああ、こういう退廃とした雰囲気は嫌いではないですよ」
先程一悶着あったタブラさんと、スーツにマントを着用した山羊頭の悪魔が話しかけてきた。
「そうか、趣味が合うな。俺はウルベルト。ウルベルト・アレイン・オードル。よろしく頼むぞ、
「ええ、こちらこそ。……ん?」
なんか今、変な言葉が聞こえたような。気のせいか、一応今日は見学に来てるんだよな……?ちょっと茶釜さんを近くに呼んで話しかけてみる。なにかお互いに勘違いをしている気がしてならない。
「あの、私の今の立場ってどうなんですか?私はただ誘われて見学しに来た程度なんですけど」
「え、私としてはほぼ新規メンバーって感じで考えてるよ?さっき話聞いたときに誘われてるギルドも入ろうかと考えてるところも無いって言ってたからさ、だったらウチのギルドに入ってほしいかなーって」
「ああ、そうでしたね。貴女はそういう人でしたね……弟君が苦労するのも分かります」
今の一言が聞こえたのかその場に居る男勢三人が小さく頷く。まあ、茶釜さんの強引な部分に引っ張ってもらう事も多々あるのであまり強くは言えないのだが。
「ええ、これも何かの縁です。宜しければ皆様のギルドに入れさせてはいただけませんか?」
その瞬間に目の前の景色が切り替わった。灼熱の地獄は白亜の宮殿の如き一室に変貌し、ギルドの紋章らしきものが中央に刻まれた巨大な円卓の一席に私は座っていた。他の席には全てのギルドメンバーが集結し、私の向かいの席にはモモンガさんが鎮座している。今までは各々が好きなように和気藹々と話していた筈だというのに、そこはただ静寂が支配するのみだった。
「
「汝、我らが同胞となることを望むか」
モモンガさんの骸骨の赤い眼光が私を見定めていた。即座に理解する。この時この場において、一切の嘘偽りは許されないと。
「―――ええ、私はこのギルドに入団することを望みます」
たかがゲーム、その筈だというのに現実の俺は喉が渇きを訴え冷や汗をかくほどに緊張していた。これ程緊張したのは今の会社に入社するときの面接試験以来ではないだろうか。
変わらぬ静寂が数秒の時を刻み、遂に停滞を打ち砕く一石が投じられる。
「承認27名、否認4名。過半数の賛成を持って可決とする。―――歓迎しよう。32人目たる新たなる同胞よ」
パァンと鳴り響くクラッカーの音と色とりどりの紙吹雪が舞い散る中、私はアインズ・ウール・ゴウンの一員となった。なんか無理矢理な感じが否めないが良しとしよう。第一部完ッ!
「やったああああああああ!良かったねジブリちゃん!!!これでやっとボッチ解消だよ!」
「ギルド長、あのピンク肉棒女膾切りにしてやりたいんですけど構いませんか?」
「入団早々に内部分裂はよしてください」
「……(スッ」(無言で嫉妬のマスクを被る)
「……(スッ」(同じく嫉妬のマスクを被る)
本当は今回でアインズ・ウール・ゴウンの一員にまでする予定だったんですよ。
でも途中で加入の理由が弱すぎるってことに気付き、なんとかしようとぶくぶく姉貴を動かしたら主人公に精神ダメージをクリティカルしちゃってました。
キャラが勝手に動くとはこういう事か。(多分違う)
約二万七千字書いて未だに異世界どころかギルド入りすらしてない作品があるそうですよ?信じられねぇよな!この作品なんだわ。
あ、天使とジブリールを一緒にすんなってのはこの主人公の意見です。ノゲノラのジブリールとは一切関係していない一ジブリールファンの考えに過ぎません。
一番書いてて楽しかったのはるし★ふぁーさん。キャラは完全に愉悦型。
独自設定でピエロというか道化師みたいな外見にしました。許して。
2017/12/31
ジブリールがアインズ・ウール・ゴウンの一員になるように変更しました。
途中からかなりの変更、しかも雑な作りになってしまい申し訳ございません。