天翼の淑女と不死者の王   作:ヤクサノイカヅチ

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衝動に身を任せ初投稿です。

内容を少し改変しました。
具体的に言えば戦闘シーンの追加と、モモンガさんとの出会いの部分です。
戦闘の表現が難しい。


ジブリールに俺はなる!(なりました)

 おっすおっす、俺の名前は天野使堂。

 ちょっと昔のライトノベルやアニメが大好きなだけの一般的なサラリーマンだ。

 

 一般的とは言え、昔の馬鹿共が散々地球を開発したせいでおちおち外も出歩けないこの時代にそれなりに健康で、かつ比較的残業も少ない会社に就職している俺は恵まれていると言っていい……筈だ、うん。

 彼女?嫁?隣の家に住んでいる可愛い幼馴染?馬鹿野郎、それを言ったら戦争だろうが……!

 

 一応、とあるゲームで知り合った女友達はいたりするんだからな!?

 声優さんで、めっちゃ可愛いロリvoiceを出せる人だ、後素の声は結構怖かったりする。

 

 さて、少し話は変わるが俺はとあるキャラがとっても好きだ、大好きだ、愛している。それは―――

 

 『ジブリール』、百数年程前のライトノベル、『ノーゲーム・ノーライフ』に登場する天翼種(フリューゲル)の可憐な少女で……ああ、天翼種ってのは天使の様な種族だって思えばいい、厳密には違うが詳細な説明をする時ではないしな。

 

 仕事の無い休日に日課である昔のアニメの探索で見つけたこれは、一世紀も前の作品だというのに色褪せることのない面白さがあった。

 アニメ一期二期と休日を潰して徹夜で視聴し、そのまま目の下にクマを作って出社したのはいい思い出だ。

 

 そのアニメに出てきたキャラで一番のお気に入りがそのジブリールだ。

 もーね、超絶可愛い、俺の好みにドンピシャリです、素直に射○です。

 

 アニメでも良かったがライトノベルのカラーイラストだと更にイイ、特にあの七色のグラデーションの髪が素晴らしい。

 特徴的な頭の輪っかもナイスだし、思いっきり露出しているあの腰の括れが何とも言えない。

 

 あまりに入れ込み過ぎてメラニー法等の特訓をした結果、俺はジブリールの声を出せるようにまでなった。

 あの田村ゆ○りvoiceをである。もう一度言う、あの田村ゆ○りvoiceをである。

 自分の口からあの声を出せたその瞬間は忘れられない程の感動があった。

 

 ちなみに、今ではたまに会社の同僚に不意打ちで使うなどのドッキリに使っている。

 

 そう、声は出せるようになった。

 ではその次は容姿の再現だ。

 

 しかし、俺も二次元と三次元を混合する程馬鹿ではないし、コスプレという妥協策を使う気もない。

 さて、どうすればいいかと思い悩んでいた時に、先程ちらと挙げたとあるゲームが目に留まった。

 

 DMMO―RPG 『YGGDRASIL』

 

 なんでもプレイヤーの自由度が他のゲームとは段違いであると有名で、なんとアイテムや武装、自分の外装さえも自由自在に設定することが出来るというのだ。

 

 つまりは、ゲームの中でとは言え、あのジブリールを再現できるということに他ならない!

 声は出せる、外見は作れる、思考は頑張ってロールプレイすればいい。

 どこにも問題は無いな!

 

 というわけで、速攻でゲームを起動してジブリールの外見を作り上げる。

 幸い広大なネットの海にはジブリールの資料もあった為、試行錯誤しながらその肉体を仮想現実で構築することが出来た。

 

 ジブリールの種族は『天翼種(フリューゲル)』、まんま天使なので異形種である『天使(エンジェル)』から始めようと思ったのだが、異形種でのスタートでは最初からジブリールの様な人間に似た姿は出来ないようなので、泣く泣く人間種からのスタートを切った。

 

 どうやらあるアイテムを使用することで後天的に天使になることは出来るらしく、とりあえず強くなりやすいという人間種でアイテム等を集め、それから天使になって完璧なジブリールになるのだ!

 

 ……ゲーム開始から少しして、ギルド、NPC作成、といった単語を聞いたときは自分の苦労は何だったのかと少し泣きたくなったが、自分自身がジブリールになれたのは確かなのでまあ良しとする。

 そもそも事前に情報を収集しなかった自分が悪いのだし。ですしおすし。

 

 そうして、なんやかんやあって無事天使系統の最上級である熾天使(セラフ)の一種にもなり、職業も天使と相性のいい信仰系のものを取得したり、ロールプレイの一環でやらかしてしまった人間種大虐殺で、ある隠し職業を習得してしまったり、一部の掲示板でヤバい天使が居ると小規模ながら騒がれたり、趣味の合うプレイヤーとフレンドになったり、魔導書や貴重な本をダンジョンに潜ってゲットしたりと俺は結構楽しくこのゲームをプレイしていた。

 

 そんなある日、フレンドのピンク肉棒さんから死霊系の素材が欲しいと頼まれたので、ヘルヘイムの森林部にやって来たのだが……

 

 なんというか、ローブを纏った骸骨が複数人の人間種プレイヤーに包囲されて殴られてる。

 骸骨の方はどうやらプレイヤーらしい、つーとアレか、プレイヤーキルってやつ。

 

 うわぁ、人間種共はアンデッド対策してるらしく殆ど一方的だわ、あそこまで露骨なPKは久し振りに見るな。

 ちょっとムカついた。

 

 数で群れ知恵を絞り強者に立ち向かうのが人間の、いや人類種(イマニティ)の戦い方だ。

 それ自体は悪いことじゃあない、だが目の前で行われているソレは、数の暴力で弱者を潰しているだけの浅ましい行為だ。

 

 人類種(ヒト)の誇りを知る俺が、それを貶める行為を認めてはならない。

 あとはどう見ても悪そうなのが人間種のほうだしね。

 かすかに聴こえただけでも、

 

 「そのレアドロップを寄越せ!」だの、

 

 「異形種の骨野郎がしぶといんだよ!」だの、

 

 頭悪そうな台詞を連呼するような奴等だし。

 

 では、<業の開示(カルマ・サーチ)>

 おやおや、随分とカルマ値の低いプレイヤーだな。

 

 一番低いのはあの骸骨さんなんだけどね!

 極悪とか久し振りに()()()()()見たわ。

 

 ともかく、ここは割って入るしかあるまい。相手のカルマ値が全体的に低いので<善なる極撃(ホーリー・スマイト)>ブッパでも良かったが、この際久し振りに人類種(イマニティ)を煽るのも良いだろう。

 

 どんな反応をするのだろうか。ああ、どうか()を楽しませてくれ!

 

 「複数人で一人を囲むとは余程余裕が無いのですね、脆弱な人類種(イマニティ)のお三人方?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ああ、本当に今日は厄日だ。

 

 今日は特にすることもなかったので、ぶくぶく茶釜さんに頼まれてある死霊系のドロップアイテムを探しにこの森にやってきた。

 

 それは運良くそれほど時間もかからずに入手出来たのだが、かなり粘着質で面倒な高レベルの人間種プレイヤーにレアアイテムがドロップしたのを目撃されてしまい、延々と追い続けられている。

 

 自分もそれなりに高レベルではあるのだが、向こうは死霊系に特に有効な装備で身を固めており、複数人で弱点の炎ダメージの攻撃を連続で放たれてはどうしようもない。

 

 炎に耐性を持っているように演技してはいるが、どうやら無駄な足掻きになりそうだ。

 隠れる木々の少ない場所に出てしまい、後ろからは奴らがニタニタと嘲笑うアイコンを出しながらゆっくりと近づいてくる。

 

 こうなったら目の前で強制ログアウトでもしてやろうか。

 ドロップアイテムも消えるし、再ログイン時に運営から警告が入るが奴らを悔しがらせることは出来るだろう。

 

 そう考えるとなんだか久し振りにワクワクしてきた。

 まだだ、まだ押さえろ。奴らを最高にイラつかせるにはまだ早い。

 

 「よォ、さっきドロップしたアイテムを渡してくれるんなら見逃してやってもいいぜ?」

 

 「さもなくば此処で火葬してやろうか?異形種のカスが!」

 

 「は、何故貴様ら下賤な野盗共に渡さねばならぬ。脳みそまで獣なのか?」

 

 何時もの魔王ムーブで可能な限り相手をおちょくってやる。

 そして最後は手を出せないまま地団駄でも踏んでいろ!このPK野郎が!

 

 こっちはかなりボロボロだが、ヘルヘイムはアンデットにとって相性の良い世界だ。

 世界に漂う負の瘴気を吸収することで、俺の様なアンデッドの異形種やモンスターは僅かな量だがHPの自動回復が出来る。ちなみにこれは人間種のプレイヤーでは何らかの対策を施さない限り逆に体を蝕む毒と化す。

 始めて知ったときは意外とよく考えられてるなと感心したものだ。

 

 「テメェ、今の状況が分かってんのか?こっちは偶然だがお前のようなアンデッドに有効な装備で固めてんだよ。経験値だってレベルを90以上に上げるのは馬鹿にならねぇくらい必要になるんだ、死ぬよかマシだと思うぜ?」

 

 「あーもうめんどくせぇ!とっととぶち殺そうぜ!どうせ奪うんだから問題ねぇしな」

 

 もう少し、あと、あと少しだけ……

 奴らのスキル発動の瞬間を見極めろ、どんな兆候も見逃すな、この一瞬に全てを賭けろ!

 

 相手との距離は僅か5~6メートル、戦場の状態は多少草が生い茂るものの木々は生えていない、よって視界を遮るものは無く、俺の身を守るものもまた存在しない。

 相手プレイヤーは恐らく3から4人。全員が炎ダメージを与える武装、及びアンデッドからのダメージ、魔法の効果を軽減若しくは無効化する防具で身を固めている。

 

 前衛が三人、後衛が一人。前衛三人は俺を包囲しているものの、若干固まっていてその範囲は精々扇形程だろう。

 

 一人は巨大な炎の意匠が彫られているハンマーを両手で持っている、正直今の俺では一撃でHPが全部吹っ飛ぶだろう。

 こいつが主力の男で、殆どの状況で的確に指示を出していた。

 全身の鎧は獣や竜の死骸を組み合わせたような物で、確かアンデッド系モンスターからのダメージを70%も軽減すると豪語していた。それに即死にも抵抗を持っているようで、何度か<(デス)>を唱えてみたがピンピンとしている。

 

 残りの二人は片手にそこそこ大きな盾を装備し、もう片方の手で小型のメイスを握っている。

 この二人が牽制と防御、サポート役を担っており、なかなか手馴れていて強敵だ。

 装備の質は主力の男には劣るものの、それでもこちらにとってはかなり効果的な耐性を持っている。

 

 後衛の一人は森の中で弓矢で援護を行ってきた。

 当たる当たらないではなく、こちらの行動を潰すように矢を放ってくるいやらしいタイプだ。

 こいつも恐らくはアンデッド対策の装備をしているだろうし、なぜこんな奴らと一人きりで戦っているのか泣きたくなる。

 

 そんな事を考えていたその時―――

 

 

 

 

 「複数人で一人を囲むとは余程余裕が無いのですね、脆弱な人類種(イマニティ)のお三人方?」

 

 

 

 

 ―――天使が、空から舞い降りた。

 

 いや、どうやら天使種のプレイヤーの様だ。一般的な天使種モンスターの外見とは全く異なる、しかし天使としか思えないその外見。

 

 桃色の頭髪はその途中から七色のグラデーションが掛かっている。

 腰から生えた一対の白翼には汚れが一切無く、清浄な雰囲気を纏っている。

 そして、頭上に浮遊する天使の輪。

 

 追い詰められた状況だというのに見惚れてしまいそうだ。

 男の夢、とも言うべきか。人の欲望が具現化したかのような、その麗しく美しい姿。

 確かペロロンチーノさんが「二次元の女の子には、人の理想(欲望)が詰め込まれている」と言っていたが、アレがそうなのだろう。

 

 「ああ?何しにきやがった天使のねーちゃんよォ!?」

 

 「邪魔してんじゃねぇぞ、ミンチにしてやろうか!」

 

 「俺たちはそいつとお話があるんだよ、とっとと消えてくれねぇか?それともなんだ、まさかそいつを助けに来たとでも言うのか?」

 

 「いえ、そこのアンデッドとは何の関係も御座いません。ですが……三、いえ四人ですか。多数で一人を、しかも装備からして魔法職を甚振る貴方達が気に食わなかったので」

 

 台詞からすると、どうやら俺を助けに来てくれたのか?いや、これは結果的にそうなっただけでただあの四人と戦いに来ただけか。

 

 なんにせよこちらとしては有難い。今のうちに回復と防御をしておかねば。

 

 「どなたか知らないがありがとうごさいます!<光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジエントベリル)>!」

 

 俺の身体が薄緑色の光に包まれる。これは第10位階の防御魔法で、殴打ダメージの完全無効化と一定時間殴打ダメージを減少する<光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジエントベリル)>。

 

 メイスやハンマーといった殴打系の武器を持っている相手には効果的だろう。まあ、課金アイテムで即座に武器を交換されては意味が無いが……

 

 「けっ、邪魔するならお前から叩き潰すまでよ。オイ!相手は天使だが問題ねぇ、俺たちのコンビネーションでぶっ潰すぞ!」

 

 「はい!兄貴ィ!」

 

 「了解でさぁ!」

 

 「では、どうか私を楽しませて下さいまし?<舞い散る刃羽(ブレイド・フェザー)>」

 

 その闘争の初手を取ったのは天使さんだった。その場で白翼を羽撃かせ、その白い羽根を高速で撃ちだした。それはまるで白い弾幕。攻撃の範囲と数が膨大で、とても回避できるものではなかった。

 

 だが―――

 

 

 

 

 「その程度効かねぇよ!<堅牢なる守護の壁(ガーディアン・ウォール)>」

 

 「まるで痛くねぇな!<堅牢なる守護の壁(ガーディアン・ウォール)>」

 

 

 

 それを双璧が防ぎきる。その大きな盾が大半を受け止め、残る少数は盾を持つ二人に突き刺さるが大した痛手にはなっていなそうだ。

 そして、その後ろからは全くの無傷である男がハンマーを振り上げ、目の前の天使を文字通り叩き潰そうと突進してきていた。

 

 「ぶっ潰れろ!<炎陽の撃墜(プロミネンス・ドロップ)>」

 

 男の頭上に振り上げられたハンマーは炎の様なエフェクトを纏い、目の前に迫った天使さんを叩き潰そうとする。

 二人が攻撃を的確に防ぎ、そうしてできた相手の隙を主格の男が捻じ伏せる。

 かなりの完成度のコンビネーション、余程息が合っているようだ。

 

 「そんな大振りの攻撃に当たるとでも?―――おや、これは」

 

 避けようとした天使さんだったが、回避しようとする動作を止めてしまった。何故だ?それでは命中してしま……アレだ、あの影だ!

 天使さんの影に黒く塗られた矢が突き刺さっている。動こうとしても影の形は変わることが無く、それに影響されて肉体も満足に動かすことが出来ないのだろう。

 恐らくあの弓兵の仕業だ、この様に相手を拘束するスキルで攻撃を補助してくる。攻撃を自分から行うことは殆どないが、これだけでも十分キツイ。

 駄目だ、これではモロに一撃を受けてしまう!今の俺はまだ回復の途中で、目の前の戦いに干渉することなど夢のまた夢だ。

 

 「なるほど、移動不可ですか。確かに今の様な状況なら効果的でしょうね―――

  

 

 

 

                         それが私にでなければ、ですが」

 

 「<光あれ(フィアト・ルクス)>、<空間転移(シフト)>」

 

 一瞬の輝きが目を焼き、それが消えた時にはその姿はハンマーの着弾地点には存在していなかった。

 しかし地面は痛々しく刻まれた罅を残して陥没し、その周囲も含めて炎の海と化していた。

 

 なんてスキルだ、ハンマーでの一撃に炎の追加ダメージ、まさにアンデッド殺しと言っていい程だ。まともに受ければ<光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジエントベリル)>込みでも軽くはないダメージになるだろう。

 

 そして、あの天使さんは一体何処に……?

 周囲を見回してみるが辺りに居るのは三人組だけで、天使さんの姿はない。

 

 「なんだァ、今のでやられたのか?」

 

 「散々大口叩いといてこれかよ!ギャハハハハハ!」

 

 「てめぇら、油断すんな……ログに記録されてねぇ、まだ生きてやがる!」

 

 主格の男は警戒を解かないが、盾役の二人は軽く考えているのか既に構えを解いていた。

 多数で囲んで一方的に殴る戦法を多くとっていたのか、高レベルの割にはプレイヤースキルはそこまでないようだ。敵を倒した確証もなく警戒を簡単に解くなんて、随分と甘い。

 

 「何してんだ!まだ気を抜くには早ぇぞ!」

 

 ほら、そんな甘い考えだから……

 

 「でも兄貴、どうせ逃げ出したんじゃないですかい?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 「まずは一人、その首を刈らせていただきますね?<魔法抵抗難度強化(ペネトレートマジック)血塗られた断頭の処刑台(ボア・ドゥ・ジュスティス)>」

 

 唐突に大楯を持った一人が膝を折り、まるで地面に這いつくばる様な姿をとった。

 そして、その首に空から落ちてきた刃が吸い込まれて―――

 

 ―――その頭を胴体から断ち切った。

 

 「な、てめぇ!」

 

 「申し訳ございません。余りにも隙だらけでしたので、つい―――もう一人もこの通りにございます」

 

 男たちのすぐ横にいたにも関わらず、一切気付かれることもなく天使さんは魔法を発動し男の首を刈り取った。戦場全体を確認できていた自分ですら、魔法を発動するまで姿を視認できていなかった。

 

 もう片方の大楯を持った男も、何時の間にか光の杭にその身を貫かれて大地に倒れ伏していた。

 そして、その杭による拘束から解放されることなく―――

 

 「もう少しレベルではなく技量を上げてみてはいかがでしょう?<魔法抵抗難度強化(ペネトレートマジック)血塗られた断頭の処刑台(ボア・ドゥ・ジュスティス)>」

 

 もう一人の男も同じ末路を辿ることとなった。

 

 「クソがッ、こうなったらてめぇだけでもぶっ殺す!<炎弾打連(フレイム・シュート)>!」

 

 男が持つハンマーを掬い上げるように振りまわすと拳大の炎の弾が現れ、それを弾き飛ばし天使さんに命中させようとする。

 

 それを天使さんは片手でなんのスキルも使わずに受け止め、握り潰した。

 

 「まあ、この程度でございますか。コンビネーションは中々のものですが単独での戦闘力はイマイチ、といったところですね。では、<尊き白の拘束(ホワイト・ジェイル)>」

 

 淡い光と共に現れた純白の鎖が男の身体を縛り付け、その場から動けないように拘束する。男はどうにか外そうともがいているが、その戒めが解けることはなかった。

 

 「ちっ、相手が悪かったみたいだな。今度からは、喧嘩売る相手は考える事にするぜ……」

 

 「それなりには楽しめました、とだけ言っておきますわ。<善なる極撃(ホーリー・スマイト)>」

 

 

 光の柱、そうとしか形容することのできない極大の閃光が視界を埋め尽くす。

 確か、このエフェクトは第7位階魔法、対象のカルマ値が低いほど威力が増大する<善なる極撃(ホーリー・スマイト)>。

 

 その光柱は最後の男を容易く呑み込み、その光が途絶えた時には何も残ってはいなかった。

 それを確認すると同時に、森の中に潜んでいた一人の気配が遠ざかっていくのを感じたが、無視することにした。

 

 万全とは言えないが、アイテム等も使ってMPも回復してある。どうにか拠点まで帰れそうだ。

 頭を上げてみると、目の前に天使さんの顔があった。

 

 「んえあ!?」

 

 「おや、思考はナイスですが場を考えた方が良いかと。今のミーが敵でしたらそのままデッドでしたよ?」

 

 急いで一旦距離を取った。なんであんな近くに顔があったのかはともかく、確かに現状あの天使さんが味方である保証はない。

 敵の敵は味方かもしれないが、その敵がいなくなった今味方であるとは限らないのである。

 

 「といっても、ミーも今貴方と戦う気はナッシングですが。ボーンの首というのも中々面白そうではあるのですが、この世界ではコレクション出来ないですし」

 

 なんというか、随分珍妙な話し方をする人だ。なかなかに面白い話し方だと個人的には思う。どこかで聞いたことがあるような、確か……百数年ほど前の日本にそんな話し方をする人がいた気がする。

 

 「ええと、先程はどうも。おかげで助かりました」

 

 取り敢えずは感謝を、どういう考えがあったのかは分からないけど、俺が助けてもらったのは変わりようのない事実だ。

 

 「いえいえ、かまいま―――あ、ノーセンキューですよ。こちらもアレが気に入らなかっただけですので」

 

 あ、これつくってるんだ。だって今誤魔化したし。

 ちょっと和んだが、そういえば目の前にいるのは自分の天敵たる天使だと思いなおし気を引き締める。

 

 「あの、その話し方が地でないのなら無理にしない方がいいと思いますよ?それとも、何かのロールプレイの一環ですか?」

 

 「いえ、正直難しいので助かりました。ついでに言いますと、この流れそのものがお約束なので個人的には大満足でございます」

 

 「そ、そうですか……」

 

 これが、これから()()()()()()長い長い付き合いになるジブリールさんとの始まりの瞬間であった。

 

 




天野使堂……僕らのオリ主。ジブリール好きが極まってゆ○りvoiceが出せるようになった真性の変態。なおすぐに異世界にシュゥゥゥーッ!!されるので名前は覚えなくていいです。

ジブリール……天使、以上。究極に近くなるほど、形容する言葉は陳腐になるものであり、実際その通りである。異論は認めん、断じて認めん、私が法だ黙して従え。

メラニー法……男でも女声が出せるようになる発声法。実際に田村ゆ○りvoiceが出せるとは言っていない。

業の開示……オリジナルスキル。一定時間の間、視認した対象のカルマ値を確認することができる。

光輝の聖印……オリジナルスキル。次に発動する信仰系魔法の威力を強化する。クールタイム六時間。

砕け散る錫杖……オリジナル?スキル。分かりやすく言えばニグンさんが召喚した威光の主天使の持つ一度のみ使用可能な魔法威力強化のスキル。砕いているのが笏だと言ってはいけない。一日に二度まで発動可能。

神聖なる加護……オリジナルスキル。信仰系魔法の威力を強化する。クールタイム十五分。

聖なる極撃……属性が悪に偏った存在に特攻効果を持つ第7位階の魔法。実際異世界でモモンガ様に痛手を与えた唯一の魔法である。

恒星天……恒星天の熾天使のこと。モモンガ様すら警戒する最高位天使。

至高天……至高天の熾天使のこと。モモンガ様でさえアルベドと二人で全力で相手する必要があるやべーやつ。

追加したスキル、魔法は後日で。
ちょっと戦闘があっさり過ぎるかな?でもあまり膨らませるのも辛い。

続き?今頑張ってます。

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