元紅魔館の執事は転生者   作:土岐宙

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出逢い

旅に出てから、慌ただしい3日間が過ぎた。

今日で幻想郷を出る予定だ。

無縁塚から外の世界へ旅路を拡げる。

魔法の森や人里、地底に天界、妖怪の山、迷いの竹林など、様々な場所を巡ったが、良いと思えるヒトは居なかった。

漸く無縁塚が見えてきた………

 

「………やめッ!」

 

「ッ!呪縛……砕閃!」

 

即行の陰陽術だったが、下級妖怪には十分だったみたいだ。

しかし、こんなところに来るような者は早々いないはずなんだけど………。

見た感じ外の世界からやって来た人間ではないようだ。

外見を表すならば、くすんだ銀髪を腰の辺りまで伸ばしている、背丈160㎝前半の女性。母性の象徴などと言われる胸も、人並み以上には在るようだ。

種族は、長命種(エルフ)と人間のハーフみたいだが、氣が淀んでいる。暫くの間マトモな生活をしていないのだろう。

 

「……ありがとう」

 

「礼を言われることをした訳ではないが、素直に受け取っておくよ。しかし、こんなところまで何をしに来たのか聞いても良いかな?」

 

「……趣味を探求しに来ていただけ」

 

恐らくだが、この人は趣味に埋もれるタイプだろう。

対人関係を良くするつもりが無いところを見ると、何か抱えているモノがありそうだが、私としてはこの人を放ってはおけない気がする。

まあ、簡潔に言えば、好意を持ってるという話だが……。

現状からすれば、一目惚れじゃなく、(異性として)気になる程度のものだが、何やら神の意思を感じるものがある。

 

「……そうだね。私が護衛しよう」

 

「何故?」

 

そうなるだろう。当たり前だ。

偶然助けられただけで、本来ならば喰われていたとは言え、本来ならばそのままサヨナラだろう。

何か目的があることを想定し、警戒をするのは当たり前だ。

特に、長命種と人間のハーフなんて、マトモな人生など全うできる筈がない。

そろそろ答えなくては本格的に警戒されてしまいそうだ………。

 

「出会ってすぐに言うものじゃないけどね、私は君のことが異性として気になるんだ。私は元々結婚相手を探すために外へ行こうとしていたんだが、ちょうど今、良い人を発見したのでね。まあ、簡単に言うと関係を築きたいわけだよ」

 

「……そう」

 

「……貴方からは義姉さんと同じ気配がする。

……たぶん、貴方は信頼できると思う」

 

私と同じ気配、か。

恐らくは超越者のことを言ってるのだろうけど、義姉さんとはどっちのことを言っている?

凪は気分次第で保護するから判断をし難いが、聖ならばほぼ確実に助けるだろう。

しかし、聖はここ1000年姿を眩ましてるが、目の前の女性は明らかに2000年以上生きている。

現状からは判断が出来ないので、聞いてみるようか……。

 

「義姉さんとは誰のことか聞いても良いかな?」

 

「……鬼子母神」

 

「答えてくれてありがとう」

 

凪に気に入られたハーフエルフかぁ。嫁にもらうとしたら絶対に面倒が起きるだろうなぁ。

とは言え、嫁さん候補をみすみす逃すのは戴けないので、付いて行くことにするが……。

 

「何をするか聞いても良いかな?」

 

「……ん?」

 

この人は天然なのだろうか?

いやまあ、可愛いとは思うけども………。

 

「分かり難かったかな。この無縁塚で何をするのかを聞いたんだ」

 

「外の世界から流れ着いた物を探す」

 

趣味に関してだけは間があまり無いところを見るに、趣味に熱中して、衣食住を疎かにしているから氣が淀んでたのだろうか?

 

「ひとつお願いして良いかな?」

 

「……構わない」

 

「私を君の家に住まわせてくれないか?」

 

流石に会って早々に『家に住ませてくれ』とは急すぎただろうが、これは見過ごせないよ。

紅魔館の元執事兼ヒトの親として、衣食住を欠いて趣味に浸るのは人として正さなくてはいけない。

なにより、この人は明らかに年単位でお風呂に入っていない。つまり、お風呂の掃除もしていないということ。

住居内が様々なもので溢れているのは確定的明らかだ。

 

「……………構わない」

 

何を考えて、どの様な答えを出したのかは知らないが、家に着いたならば、即座に掃除を開始するとしよう。

まあ、どうして許可を出したのは想像できるが。

 

「私は君に付いて行くから、好きに動き回って構わないよ」

 

「わかった」

 

******

 

一刻程歩き回った末に、様々なものを拾った。

中には、前世の記憶を元に復元できる物や電気を充電すれば使用できる物、どうやっても修復できない物、どこから流れ着いたのか、神剣なども収集できた。

 

「運ぶの手伝って」

 

「構わないけど、この巾着に全部入れて運んで良いかな?」

 

「…………」

 

「魔法で創った素材を使った物に、魔法を付与した物だから心配は要らないよ」

 

「わかった。

 ……ありがとう」

 

「家に住まわせてくれるんだから、このぐらいはやらないとね。喩え、ゴミ屋敷みたいな有り様の家だとしても」

 

「……何故?」

 

これは、『ゴミ屋敷だとわかってるならば何故住もうとするのか?』という意味だろうか。

 

「私は元執事でね。

 掃除や家事、炊事などは得意なんだよ。

 お嫁さんを探すために退職したのさ」

 

「うぅ」

 

顔を真っ赤にしてると言うことは、恥ずかしがってるのだろうか?

家事などろくに出来ない女性などは沢山居るのだから、そこまで気にするものではないと私は思うのだけど。

凪は家事万能だったし、聖も同様に得意だ。

そう考えると、現在の超越者組の中で家事ができないのは巌蔵爺さんだけ………否、巌蔵爺さんも万能とは言えないが、十分家事が出来るんだったね。

 

「家まで案内してもらえるかな?」

 

「……わ、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




執筆開始時からみて、この先凡そ数話分の話構成は完成していますので、前回の更新時にタイトル変更にしたのは、元々の予定でした。
解りづらいあらすじを書いてしまって、この場でお詫びします

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