──大空を染める暗き墨。
──大地を照らす薄明の大岩。
──幻想の世界に恐怖を与える幼き悪魔。
────吸血鬼異変の始まりである────
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突然な話になるが、私の知り合いには超越者が数人居る。
超越者とは、種を越えた者達の総称である。例えば、夜桜をイメージした着物を纏った桃色の頭髪を始まりの鬼や悪鬼羅刹と戦い抜いた勇猛な山伏、人と妖怪の共存共栄を夢見て魔道に身を落とした末に悪魔との契約を破り捨て、悪魔を従えた尼さんなど、咄嗟に挙げられる人物の一人だけでも世界を破壊できる存在たち。それが超越者と呼ばれる者達になる。
私が何千年も生きているのには訳がある。
私は、生まれる前の記憶があった。今でも残っては居るが、あくまで誰かの記憶と言った程度だ。
それとは別に、私は生まれたときからとあるものを宿していた。
それは、荒ぶる神の集合体。その集合体と殆ど別存在でありながら融合したという、とある少女から助けを得て私はその集合体を下した。
その時から私は超越者となった。
いや、正確には超越者になったからこそ荒ぶる神々を下せたのだが。
そして、超越者となってから、その集合体に変化が起きた。人形へと姿を変えて、個性的な従者と化したのだ。その光景に少女……いや、そろそろ名前で呼ぶことにしよう──シオは驚愕した後、一頻り笑ってから涙を流していた。
私は事情を聴いたが、現在の状況へと繋がるものはないので、いつか語ろう。
私は超越者達からこう呼ばれている。
ゲートキーパー、と。
先程も述べた通り、超越者だからこそアラガミを倒すことができる。シオの世界ではゴッドイーターと呼ばれる、生体実験を行ったものしか倒せないらしいが、超越者は普通に倒せる。
この話の通り、超越者と認められるには私の元に参じてから、アラガミを倒す必要がある。
資格在る者のみを
眼前に居るのは、700年前に別れた我が弟子である風見幽香。度々求婚されていたが、1000年も生きていない子供と付き合うのは私の倫理観に反す為に断り続けていたが、まさか門前に立って再開するとは想わなかった。
二重の意味でも門前だが………。
具体的には、紅魔館の門前という意味と超越者としての門前の二つである。
(いやはや。今回は手を出さないでと言われていたが、流石に門前に立って居る者が複数人相手に若いあの子達を宛てるなんて出来るわけない)
「
私の体から周囲へ黒い霞のようなものが放出され、5つの人形を形成する。
最初に姿を現したのは橙色のオーラを纏っている。また、青髪を腰まで延ばした踊り子のような服装をした20代前半に見える女性。
次に姿を現したのは出現してから何処からともなく鋭い槍を出している。また、正体不明の金属でできた甲冑を身に纏う190㎝代の巨漢。
次に姿を現したのは火の粉を身に纏っている。狼の耳と尻尾を携えた白銀の髪を持つ少女。活動的なのか、髪は短く端整に纏まっている。しかし、着ている物を観れば全く違う印象を受ける。その風体は、神かナニかに仕える神聖なる装束を身に纏った18歳くらいの少女である。
次に姿を現したのは、柴電を纏った白髪の少女である。全体的に黒いセーラー服を身に付けていが、緋色のマフラーを軽く首に巻いており、仕組みはわからないがマフラーが同じ幅で7本くらいに分かれており、背面は殆ど黒色が見えない。
次に姿を現したのは猛毒の鱗紛を撒き散らしていた。その当人は知ったことじゃない、という態度をしている。淡い瑠璃色のフリフリの沢山付いたドレスを身に纏った10代半ばの少女。その髪色は富裕層を体現したような、見事な黄金を飾っている。
「皆来たね。これより任務を与える。今回の相手は門前に立った強者だ。しかし、相手を殺すことは許さない。もし、禁を犯した者はコアを砕き吸収する。いいね?」
『御意』
「ツバサは眼下に居る者と、カブトは地下に出現した巫を、ロウはエントランスホールに居る闇の主を、ヒレはダンスホールに居る賢者を縛せよ。私は山の主から受けた招待へと応じる。緋蓮は着いてきなさい。各自散開」
『御意ッ!』