元紅魔館の執事は転生者   作:土岐宙

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吸血鬼異変①

秋が過ぎ、冬の気配が漂い始めた頃。新しい家族を迎えた紅魔館では何やら怪しい計画が練られていた。

 

私は世茂嗣(よもつぎ)東。紅魔館の主に仕える執事兼紅魔館の主の保護者というか、親のような存在をしている1000年以上生きている人間だ。

能力は【幅を操る程度の能力】。

距離を操ることを始めとし、寿命等様々なモノの幅を操ることができる。

私が生きているのは、最盛期の幅を永続的とも言える長さまで拡げたからだ。もちろん、寿命はそれ以上に永い。

 

紅魔館では、幻想郷に転移するという話が上がっており、そのための準備に私は駆け回っている。私が元々やっていた家事や炊事などは、私の後輩の咲夜ちゃんに任せている。最近では、私よりも家事が上達してきたために、私が今やっているのは農園などの管理のみなのだが、能力応用するだけで管理が終わるために私の仕事は殆どなにもない。その為に私は転移の準備に走り回ってるのだ。

 

「パチュリー。転移からの座標固定、周囲への環境適応を含めた魔法の準備終わったよ」

 

「ありがとう、アズマさん」

 

「なに、来月になるまで仕事がないからね。今月は自由に過ごしていいことになっているんだけど、流石に何もしないのは憚られてね」

 

私と咲夜ちゃんとで一ヶ月周期で家事炊事掃除などを交代で回している。私は一週間周期で良いと言ったのだけど、レミリアが、『お父様はこれまで私たちのために身を粉にして働いたのだから、暫くは一ヶ月周期で回します』と気遣いをしてくれて、嬉しくて陰で涙したのだ。

咲夜ちゃんもオフモードで、『東さんには恩返しがしたいので、私に任せてください』と可愛らしくも凛々しく発言したため、私は今月は特にやることがないのだ。咲夜ちゃんに従者のイロハを仕込んでいる期間も、咲夜ちゃんに懸かる負担を私が殆ど抑えていたことがバレていたらしい。

美鈴やパチュリー、小悪魔たちからも休むように言われているため、組手や魔道の研究も控えるように言われているが、フランは私と遊びたいようで、私の今月の仕事はフランと遊ぶことになりそうだ。しかし、今回のように唯大人しくしている訳には往かない状況もある。

今回の発端は、近年発達した科学が様々な妖などに型を嵌めた結果、妖怪などが弱体化後消滅という事態が起こる可能性が出たために、我が故郷日本に存在する幻想郷というところへ居を移す。それが今回の始まりだ。

 

「お父様。今月の十五夜に幻想郷に転移して、幻想郷をある程度支配する予定なのだけど、お父様にはあまり戦闘に参加しないでほしいの」

 

「それは構わないよ。レミリア。私が言いたいことはわかるよね?」

 

「わかってるわ」

 

「判ってたとしても一応言葉にするよ。もし、レミリアたちが危ないとわかった時点で私は直ぐに戦闘に加わるよ」

 

「お父様は本当に心配性なんだから」

 

わかってるよ。でもね、レミリア。私はレミリアたちの実力は把握してるし、どの程度が限界かはわかってる。だからこそ、それを越える存在とは対峙してほしくないんだ。

人間ならば限界なんて簡単に越えられるけど、妖怪が限界を越えるってのはそんなに簡単なことじゃないんだよ。

確かに、私の知り合いには限界を越えた妖怪は居る。けど、限界を越えるまでに何度も死にかけてたし、体がグチャグチャになってた。それでも、限界を越えるのには足りなかったんだ。

妖怪が限界を越えるには極限まで酷使した体で、何らかの強い思いが必要になる。その思いというのが妖怪には難しいんだ。誰かのために、自分以上に想える。その思いがなくては限界は越えられない。

限界を越える条件は人間と同じで、誰かのために極限まで酷使した結果なんだ。限界を越えるっていうのは。

人間はね、一人じゃ生きていけないからこそ、限界を越えられる。けど、妖怪は一人で生きていける。だからこそ、妖怪が限界を越えるっていうのは難しいんだ。

 

「頑張って勝ちなよ、レミリア」

 

「当然!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のことを忘れてない?」

 

パチュリーごめん。忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ええっと、本来ならこの話が執事長の一日(前編)だったのですが、編集と次話投稿が混ざってしまった結果。
この話が最新話へ置き換わりました

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