ファンタシースターオンライン2~Stardust Dreams~   作:ぶんぶく茶の間

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 みなさん初めまして! Ship5にて活動しております、チーム《夜桜》副マスターのぶんぶく茶の間(IDネーム)ことLudger(ルドガー)と申します!
 チーム小説上げるよりも先にこっちを挙げてしまうという暴挙お許しください……。すまぬ……すまぬ……ッ。
 とまあ、こんな感じにテンションあげあげ↑↑かつまえがき・あとがきにて最近のPSO2内での出来事なども載せて参りたいと思いますので、どうかよろしくお願いします!


序章 ~走り出す運命~
人物紹介と第一話


『仲間が信じてくれるのなら、仲間の想いに応えなければなりません。それが今、私のすべきたった一つの事です』

 三刀屋(上條) 祈(16)

 血液型:A型

 誕生日:6月10日

 容姿

 髪色:銀灰色/黒色

 瞳の色:翡翠色

 身長:158cm

 W/B/H:教えませんっ!?

 好きなもの・こと:家事全般・読書・音楽鑑賞(アニソン、ゲーソン大目※歌わない・鼻歌大目)

 本作主人公の少女。

 嫌いなもの・こと:罵詈雑言など

 

 数週間前、家の事情により母方の実家のある神奈川へやってきた。

 落ち着いた性格だが、親しい間柄の人間には明るい面も見せる。しかしその反面家族以外の人間関係には確立した自分の思想においての発言や行動で後悔してしまうなどとことんまで悩みやすい(憂人曰く“考えすぎ、超真面目なカタブツ”)。

 しかし周囲からの信頼はとても厚いものの(本人は無自覚)、自身の評価がかなり低く常に劣等感を抱いている。

 

 

 

『自分を戒めてきたもの全部に、棘があるとは限らないんだよ』

 上條 憂人(16)

 血液型:B型

 誕生日:10月6日

 容姿

 髪色:黒

 瞳の色:黒

 好きなもの・こと:カラオケ(バンド大目)など(多すぎるため省略)

 嫌いなもの・こと:間違った事全般

 

 本作の主人公の一人。祈とは従兄妹同士(憂人の方が早いため)。彼女の引っ越しと共に同居している。

 豆腐メンタルの持ち主であり、平時はどうしようもないほど(祈いわく“介護”)だれているが、こと好きな事においては驚異的な集中力を見せる。

 

 

 

 

 序章 走り出す運命

 第一話 だらけている従兄はお嫌いですか?by憂人

 

 

 春休みが始まって数日。特に予定もない私、三刀屋(みとや)(いのり)こと上條(かみじょう)祈は母の実家のリビングのソファでごろごろとテレビ、そしてケータイとにらめっこしている従兄(いとこ)、上條憂人へと声をかける。

「憂人さーん? お昼は何にします?」

「ん~? なんでもいいぞ」

 それが一番困るんだけどな、なんて苦笑交じりに呟きながらアイランド型のキッチンへ向き直って、底の深い鍋を足元の棚から取り出す。

「パスタだけでもいいですか?」

「あいよー。野菜の量は少し控え目で」

 ソファからにょきっと手が生えてきて、ぷらぷらと振られる。その手にはタッチ式の携帯電話が握られていた。

 私はわかった、と答えながら冷蔵庫の野菜室を開けると、丁度トマトが買ってあった。

(トマトでも使おうかな。麺も余っていたはずだし)

 だとしたらパスタにしようと考えて、調理器具のハサミを手に私は憂人くんの後ろを通って庭へサンダルを履いて出る。

 すぐ左手には、自分が育てているバジルのプランターがあり、六枚ほど摘む。

(ベビーリーフもまた摘めそうかなぁ)

 数時間前に水をやったばかりなのでそうそう変化はないけれど、自分で育てたものを食べられるという楽しみはやってみると面白い。

 閑話休題。サンダルを脱いで綺麗に並べると、ぺたぺたとキッチンへと戻り、先ほどのトマトなどの食材を取り出して調理を開始する。

 先に麺を茹でるために深底の鍋へお水を入れて沸騰させるので、一緒にまな板や包丁も洗っておく。

 玉ねぎと先ほど摘んだバジルをみじん切りにして、ブロックベーコンを短冊切りに。

 フライパンを用意して先にベーコンを焼き、その間にトマトの皮をむいて(皮があると彼女が嫌がるので)ざく切りにして、お皿を用意。焼き色が十分ついたベーコンを一度お皿に取り出し、オリーブオイルを引いて玉ねぎと唐辛子をちょっとだけ入れてあめ色になるまで炒めた後、トマトとトマトジュースを投入。

 煮立ってきたらベーコン、バター、みじん切りにしたバジル、調味料の塩こしょうを入れて弱火で十数分煮込む。

 その間に麺を作ろうと沸騰加減を見ながらオリーブオイルとお塩を入れて、そのあと麺を入れる。……なんというか、小学生みたいな感想だけど綺麗に広がると嬉しい。

 小さい笑みを浮かべながらゆで加減を調整して、アルデンテ? というのかは分からないけれど、ぷつぷつとした食感が楽しめる程度にまで茹でる。

 トングで円状にお皿へ盛りつけて、その上に出来上がったソースをかければ完成!

 クック○ッド先生いつもありがとうございますっ!

「憂人さん、お飲み物はどうします?」

「麦茶がいいなぁ」

「はーい」

 プレートに二人分のパスタの盛られたお皿、二人分のグラスと飲み物を乗せて持って行く。もちろんフォークとスプーンも忘れずに。

 テレビ前はカーペットが敷かれて座卓になっているので、お昼はそこで食べる事にする。

 普段はキッチン横に据え付けているテーブル席で食べるのだけれど、移動させるのも可哀想だし、という彼への配慮からそう決めた。

 座卓のテーブルにぐでーと突っ伏している彼に、私は「どうしました?」と配膳しながら訊ねる。

「あかん、俺だけじゃクリアできぬ……」

「何の話ですか?」

 苦笑いを浮かべながら正座して「いただきます」と呟くと、手を付け始める。

「祈さぁ、《PSO2》って知ってる?」

「名前くらい……なら。テレビのCMとかでよく見るゲームですよね」

 ぶっ飛ぼうぜ、超現実へ。とか、声優さんをたくさん使ったCMを色々やってたはず。

 結構私としてもざっくり胸にくるCMだったので、覚えてる。

「そうそれ。結構人気のゲームなんだよ。ARとかVRもあるし」

「そうなの? 携帯(エスカ)だけだと思っていました」

「まあな。幅広くやれるんだよ。ケータイの方が外伝で、ARとVRは原作で登場するキャラクターと遊ぶ事もできるんだ」

「携帯とは連動しないんですか?」

「するする。レベルとか武器の強化もできる」

「へえ……、そうなんですか」

 くるくるとスプーンでパスタを纏めて一口食べながら相槌を打って行くと、どうしてか憂人くんが徐々に真顔になっていく。

「ど、どうかしました?」

 反応が薄かったかな、なんて反省しながら伺うと、彼は唐突に「そうだよっ!」と何か閃いたようにいきなりばぁんっと座卓を叩きながら膝立ちになった。

 その音にびっくりして、私は両肩を軽く竦めながら、麦茶が溢れかけたグラスを素早く押さえる。

「と、とりあえずご飯食べましょうよ……びっくりしました」

「ああ! 祈にはあとで話さないといけない事がある!!」

「そ、そうですか……。まずは落ち着いて食べてくださいね……」

 私は再び苦笑いを浮かべながら彼を説得すると、憂人くんは軽く頬を膨らませながら「いっつもそうやってかわすんだよなぁ」とボヤきながらもフォークにまとめたパスタを頬張るのだった。

 

 

 ……一通り食器を片づけて洗っていると、憂人さんが近づいてきて、携帯電話を操作しながらシンクに身体を預ける。

 私はそういえばさっきの話がまだだったな、なんて思いながら「そういえばさっきの話、何だったの?」と尋ねた。

「そうだよ、おまえもPSO2やれば解決じゃん」

「さっきのゲームのですか? 憂人さんからそういう話を聞くからには楽しそうだと思いますが……」

 でも、私はゲームについては殆どやってこなかったし、興味はあったけれど手が出せない事が多かった。

 そういった話は聞くだけに留めておいた方が、自分がやったあとの感覚のずれといった、“思ったのと違った”なんて失敗もないと幼いながらにそう考えていたのである。

 だから結局家事にいそしむ中で片手間にできる読書や音楽(殆どがアニメ)を聴く事が多いのだ。

「祈もそろそろゲームやろうぜ~ほんとにつまんない大人になっちまうぞ?」

「かといって、私は住まわせて貰っている身ですからね……? 大人になってゲームに熱中するのも……」

 これといった目標は見えていないので、公務員や銀行員でもいいと思っている反面、夢を持ってそれに邁進したいという子供のような気持ちもあった。

 食器を拭きながら天井についている蛍光灯を眺め、ふよふよと未来の自分を想像していると、憂人くんが「そ・こ・で、PSO2だよ」と意味不明な締めくくりで携帯情報端末のエスカを見せてくる。

 私は苦笑いを浮かべながらそのプロモーションビデオを見た。

 ARでは色々な人達と協力してボスを倒すことを目的としたゲーム。VRはアークスと呼ばれる組織? に在籍して、色々な惑星を調査するRPGのようだった。

「これって、結局自分の欲しいキャラクターが当たるまで課金したりとかリセマラ? というやつをしなきゃいけないんじゃ……?」

 一応平日の朝とお昼の食事は自分が担当しているので、余分なお金は一切入らない。今のところ唯一の収入源が週末にやらせて貰っている企業のアルバイトくらいだ。

「うぉ、お前夢もなんもないな……。ひょっとしてリアリストなのか?」

 げんなりした様子で憂人くんが自分の眉間に皺をよせながらみあげてくる。

「とにかく、そう言うのはないない。ガチでやってる人もいるけど、遊び目的でやってる人も少なくないから。あと、ウチの学園ではむしろPSO2を強制されてるし、コミュニケーションツールとしても役立ってるんだよ」

「そうなんですか。アイテムなどを課金する必要は?」

「遊びでやるくらいなら全然必要ないよ。携帯の方で外伝のストーリーとか進めれば強化用の武器なんかも手に入るから、ずっとやってられる」

 それから憂人くんに色々と力説されて、洗い物を終えた私はタオルで手を拭いて頷いた。

「そういう事でしたら、やってみようと思います」

 軽い気持ちで言うと、その言葉を聞いた途端、憂人くんは飛び上がりそうな勢いで喜ぶ。

「よっしゃー! 仲間ゲット~っ!!」

 ガッツポーズをしながら私の腕をとって、「んじゃっ、俺の部屋に来いよ! 渡したいものがあるんだ!」と興奮冷めやらぬ様子で二階にある彼の部屋まで通される。

 いつも掃除の際に入るため、その行動に私はそれほど抵抗を感じる事はなく、すんなりその年頃の男の子らしい部屋へ入ると、彼はマンガなどがずらっと並んでいる棚の一番上にあった大きな箱をおろした。

「これ、お前のデバイスな」

「ああ~……最初からやらせるつもりだったんですねー……」

 彼がお小遣い制なのは知っていたけれど、その使い道に私は苦笑いを零しながらそれを受け取ると、設定などについて訊ねてみる。

(うち)の回線で潜れるから、それ被ってケーブルつないで潜ればOK。俺先に入ってるから、お前も自分の部屋で寝転がって入りな」

「はい、わかりました」

 VRゲームについては初のダイブになる。私は申し訳なさの反面、ドキドキしながらそれを自分の部屋へ持ち帰って配線などをつなぎ、頭に装着しながらベッドに寝転がった。

 そして目を閉じながらデバイスのスイッチを入れてダイブを試みる。

「えーっと……」

『起動音声コードをお願いします』

「わっ」

 唐突に耳元から聞こえたデバイスの機械音声に私は飛び起きながら驚いて、激しく鼓動した心臓をなだめた。

 呼吸を整えて再び寝転がり、その単語を呟く。

「えっと……リンク・スタート?」

『音声コードを認証しました』

 瞬間、私の世界は一転した。

 

            †

 

「……おっ、いらっしゃい」

「お、お邪魔します?」

 私は小首をかしげながら、家のリビングに似た内装の部屋へと入る。

 そこには鬼の角のようなものをつけた憂人くんがソファに座っていた。

 彼は軽く手を振ってウィンドウを出すと、何やら操作し始め、恐る恐る私も彼の隣の一人掛けソファへと腰かけた。

「……これでよし、っと」

 なにやら準備をしていたらしい憂人くんは私へそのウィンドウを投げてきて、窓を見ると「PSO2」のダウンロード画面になっており、それがそろそろ100%に成ろうとしていた。

「で、こっちが会員登録な。お前の携帯のアドレスでいいから登録しちゃえよ」

「携帯で良いんですか?」

「もち。セットアップにもうちょっとだけ時間がかかるから、キャラネームまで入力すればオッケー」

「りょうかいで、す」

 それから彼に色々と教えてもらいながら会員登録を終えて、希望するキャラクター武器の選択画面まで進む。

「祈は武器、何を使いたいか決まってるのか?」

「えっと……これといって特には。どんなものがあるか分かりませんし。ただ軽くて扱いやすいのが望ましいかと思います」

 包丁とか、と小さく呟くと憂人くんはやや呆れた様子で溜息をついてしまう。

「なら刀とか双剣でどうだ? リーチも選べるけど比較的扱いやすいぞ」

「刀や双剣、ですか……。こう、両腕を交互に動かすのは難しそうですが」

「慣れればいいんだよ。お前の場合は料理で両腕別々の事に使ったりするし、すぐ上手くなりそう」

 そういうものですか? と小首をかしげながら、結局武器のカテゴリを選択する。

 すると頭上から金色の角ばった結晶のような、後光が虹色に発光したものが出てきて、私はそれに小さく声を上げながら驚いてしまった。

「まじか!? レリック武器かっ!!」

「これが武器なんですか?」

「いや。これは会員登録を終えて、ダウンロードが完了した時にできる武器ガチャ。まさかそれでレリックウェポン出すとは思わなかったけど。都市伝説だと思ってた……」

 つついてみな、と憂人くんに言われて私はウィンドウを操作する手を止めて、おそるおそるその結晶石に触れると、粉々に砕け散った。

 すると、システムメッセージなのか承認ボタンを要求されて、私は恐る恐るそれをクリックする。

 現れたのは、ナックルガードのついた双剣。柄の長いスレッジハンマー。スライドが銀色、グリップが黒という色合いの、フルオートが可能な二挺の拳銃という三種類の武器に目を丸くした。

「………あの、憂人さん……これで一つの武器なんでしょうか……?」

「いやあ……。詳しくはわからないけど……ひとつの武器、だと思う。その辺りについては追々調べていくからさ」

「よろしくお願いしますね」

 こうして、私は憂人くんに相談に乗って貰いながら……。

 ――文字化けした武器を手に、その世界へと降り立つのだった。

 

            ◇

 

 ――風が吹いて、上を向いて瞳を開けば真っ青な空がある。

 手を伸ばせば、すぐそこに届きそうなほど。

「――………」

 すうっとひとつ深呼吸すると、風と土の香りがした。

 さくさくと辺りを見回しながら前へと進んでいくと、

 唐突にくいっと右腕がひかれる。

「へぁ?」

「よっ」

 振り向けばなんだか気障ったらしいジェスチャーをしながら、黒髪に真っ白な騎士制服を着込んだ男性が立っていた。

 目は金と藍色といったオッドアイで、その声を聞くまで私は彼が憂人くんだとは全く気付かなかった。

「ひょっとして憂人さんですか?」

「ああ。ま、お互いその名前はリアル以外じゃ禁止な。このゲームだと『カミト』で通ってるから」

 そっか、ネチケット……と呟いた私は苦笑いを浮かべて「すみません。それでは、カミトさん、と」と頷く。

「頼むわ。……で、お前は」

「えーっと……」

 私は自分のキャラクターネームを見ようと、ウィンドウを開いて自分のステータス情報を調べていると、カミトくんも同じようにウィンドウを操作していた。

「ルドガー、か。良い名前じゃないか」

 そう言ってくれた彼は朗らかに苦笑いを零すと、背中に携えた自分の身長ほどはある大剣を片手で持つ。

「クラスはハンターか。無難なクラスだな」

「バランスがいいと仰っていましたので、その方が良いのかと思いまして」

 ちょっと照れくさい。それにカミトくんのレベルはかなり高いみたいだし、ちょっとした劣等感も感じる。でも、自分を苛むほどのものではない。

 そこで、私の後ろからどたんっという大きな音が聞こえた。

「っと……チュートリアルだもんな。俺らとは違ってマルチプレイの状態で入ってるから、システムアナウンスがないだったか」

 カミトくんは私の隣へ寄りながら背中の大剣を抜き放つ。その先を見れば、猿のようなキャラクターが三匹ほど跳ねたり横飛びしながら私達を睨み見ていた。

「しすてむあなうんす?」

「ああ。ソロで作った時は必ずNPCとの会話があるんだけど……。俺が操作して二人で行けるようにしたんだ。――っと、来るぞ!」

「へぁっ!?」

 すると猿っぽいキャラクター……ウーダンは私へと前のめりにダイブしてきて、カミトくんが私の袖をぐっと引きながら無理に回避させてカウンターの一撃を見舞う。

 一発の攻撃でそのウーダンは倒れ、光の粒子となって消えていった。

「あれがエネミー……簡単に言うと俺達の敵ってとこだ。フォローはするから、自分なりに戦ってみな」

「わ、わかりました」

 私は腰から一本の銃剣を取り出し、射撃モードにしながら、一番近い敵に攻撃していく。

 一発目で私に目標が向いて、地を蹴りながら接近してきたところで剣モードに切り替えて、攻撃を避けながら脇腹に刺突を放つ。

 二体目のウーダンが脇腹を突かれたことで地面を転がりながら再び距離を取ったので、もう一度射撃モードに切り替えて銃を撃っていると――ガンッ! という激しい金属音が右後ろで唐突に響いた。

 そこにはカミトくんが三体目のウーダンの攻撃を大剣で防いでいる。

「敵は一体だけじゃないんだ。まずは周りを良く見て、回避してから攻撃、ってイメージでやらないと危ないぞ」

「っは、はい……!」

 二体目のウーダンを射殺(すごい言い方だ。でも間違ってない……)し、すぐさまカミトくんが攻撃を防いでいた最後のウーダンへと彼の陰から剣モードにしてすれ違いざまに脇腹を切り裂く。

「ナイス!」

 ウーダンが怯んだことで攻撃が止み、カミトくんはガードを解きながら袈裟切りにウーダンを切り裂く。

「最後のはいい感じだったな。影から攻撃すると相手もびっくりするから」

 カミトくんは再び大剣を背中に背負うと、「さ、次へ行こう」と言って奥へ歩いていく。

 私は彼を追うようにして足を速めると、浅い池が目立つ開けたところへ出る。

「――気を付けろ。本命だ」

 彼の隣に立とうとしたところで彼がそれを腕で制し、再び大剣を抜く。

 前を見れば黒い霧のようなものが突如出現して、そこからアメンボのようなエネミーが現れる。

 それにしては、なんだか雰囲気にミスマッチしていて……なんというか、禍々しいというか。

「あれはダーカー。エネミーとは違って、アークスの本当の敵だ。惑星調査をすることが仕事のアークスは、その惑星を蝕んでいくダーカーを殲滅、その浸食具合を観測する事が主な仕事なんだよ」

「あ……では、どこにでも居る敵なんですね」

「そういうこと。攻撃はさっきのより素早いから気を付けろよ」

「はい」

 カミトくんはそう言って、四体のうち一体へと斬りかかる。

 私は彼の背後に迫ったダーカーを射撃モードで牽制しながら後ろへ割って入り、踏み込みながら剣モードで攻撃していく。

 弱冠怯んだダーカーは鋭い一撃を左の前足を上げながら繰り出すけれど、左へ回り込んだ私はクモの本体へ刺突すると、黒い霧となって霧散していく。

(――次っ!)

 振り返りながら背後から聞こえた音に警戒しつつ、バックステップを取ってその間の射撃モードへ切り替え、迫っていたダーカーの頭部へとまぐれでヒットさせると、一発で霧散した。

「お、ヘッドショット」

「なんといいますか、簡単に倒せました……?」

 最後のダーカーを倒したカミトくんに言われて、ぼーっと私は自分の銃剣を見る。

「ヘッドショットだとか、弱点部位に攻撃を当てるとダメージが上がるんだよ。今回のヘッドショットはそれだな」

「おお……そうなんですか」

 そして軽快な音が鳴り、転移装置のようなものが現れた。

「ミッションクリア。お疲れさん」

 帰るか、と言ったカミトくんは少し嬉しそうで、私もそれにつられて頬を緩めるのだった。

 それから少しだけクエストをやった後、記念すべきオンラインゲーム初日は終了となった。

 

 




 お読みいただきありがとうございました! この後すぐに序章の第二話をあげさせていただきたいと思います!(まだ第一章までしかできてない)
 いやあ、憂人くんはぶっちゃけツンデレという方向性で考えていたんですけれども、どうやらクーデレになりそうで……。
 とりあえず主人公兼ヒロインの祈ちゃんから! この子最初はFGOのマシュちゃんみたいにシールダーというクラスでやっていこうと思っていたのですが……チムメンの意見から「シールダーとか(防衛でしか)あまり活躍できなくね?」というものがあり、結局ルドガーさん安定になりました(原作未プレイ・動画にて拝聴)!
 これからは動きまわる祈ちゃんを前に出していきたいと思いますので、よろしくお願いします!

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