とある青年ハンターと『 』少女のお話   作:Senritsu

16 / 20

それは、龍に立ち向かう英雄(ヒト)の物語ではない。
龍に仇なす竜の叛逆劇でもない。

千年の時を経て。世界の片隅で、静かに行われた、
最初で、最後の。

龍と、龍を討つ兵器の再戦(第二次竜大戦)





第16話 転:千年の時を経て / 決別

 

 

 言い終わるまでもなく、雪に埋もれた地を蹴った。

 火竜の双剣リュウノツガイを両手に持ち、真っすぐに駆ける。刀身に当たった雪がそこに宿る熱によって一瞬で溶け落ちていく。

 少女の知識によれば、角の折れた風翔龍はその身に風の鎧を纏うことができなくなるが──。

 

「──ッ」

 

 ごうっという音と同時に叩きつけられた風に、文字通り少女は水平に吹き飛ばされた。あえて磁力で抗わずに後退することで崩れた体勢を持ち直す。

 やはり、風の鎧は消失していない。むしろこれまでよりも強くなっているか。

 

 クシャルダオラが正面に立つ少女へ向けて身構える。突進か、ブレスか。見てから回避することはできないと判断した彼女は、素早く回避行動に入った。

 直後に放たれたのは、彼が風の砲弾と呼んでいたブレス。しかしそれは──明らかにこれまでのそれよりも大きくなっている!

 

 辛くもその風の砲弾から逃れ、舞い上がる雪を被らないようにさらに後退し、空中に砂鉄の剣を生成させる。

 この龍に限っては、角が折れてもその力が衰えることはないのか。……いや、そんなことはないはずだと彼女は自らの推測を否定する。

 

 風翔龍クシャルダオラに限らず、炎王龍テオ・テスカトル、霞龍オオナヅチといった種の龍はその能力と角に密接な関係がある。これは過去の戦争で常識とされていた。その摂理には種として抗えない。

 必ず何か変化がある。この猛吹雪が、力の制御がきいていないことを表している。少女は先ほど立っていた地面を見た。

 そのブレスが抉り取った雪の範囲は、これまでの二倍近くという想定外の大きさとなっている。しかし、今までは遥か遠くまで貫くようにその跡を残していたのが、途中で解けるように消えてなくなっていた。

 

 クシャルダオラが少女の方へと向き直り、それと同時に砂鉄の剣を射出した。これへの対処を優先させることで、更なる追撃を遅らせる。

 そんな少女の見立てを──これまでの戦闘と自らとの因縁を鑑みて確実と判断した──かの龍は容易く覆していった。

 

 彼女の僅かに見開かれる。

 ()()()()()()()。ちらっと目線を向けただけだ。

 砂鉄の剣が初めてかの龍を捉える。ほとんどはその金属質な甲殻に弾かれ、いくつかは冷水河に落ちたときにできたであろう傷口に刺さって血を噴出させる。

 それらをすべて無視して、クシャルダオラは後ろ足を大きく蹴り出した。

 

 突進だ。反応が遅れる。回避がぎりぎりで間に合わない──。

 

「ぐっ……!」

 

 前脚に引っ掛けられた。蹴り飛ばされ、毬のように地面を転がる。沈み込む雪が緩衝材となると同時に、全身から容赦なく熱を奪い去っていく。

 しかし、少女は息を整えるまでも立ち上がるまでもなく、即座に低い姿勢でその身を弾き出した。体温で溶けた雪の雫が、風に当てられて瞬く間に凍り付いていく。

 

 雪に足を埋めながら地面すれすれに走り、横薙ぎに振るわれた前脚を掻い潜り──腹へと一閃。その直後に風の鎧に捉えられる。その勢いを逆に利用して距離を取ってから、今度こそ確信を持って少女は龍を見据えた。

 

 ブレスを放つとき以外は常に纏っていた風の鎧は、不定期に周囲を吹き飛ばすものへ。

 自らの内に閉じ込めることができなくなった風は周囲の環境に影響を及ぼし、この吹雪を引き起こしている。

 

 身を翻すと同時に少女に向けて放たれた旋風も、今までのそれより遥かに規模が大きい。だが進路は真っすぐで追尾してくる様子はなく、少女はまた辛くもそれを避け切った。

 ブレスはこれまでのようにその威力を集中させ一点を穿つものから、なりふり構わずただ全力で放つものへと変化した。ひとつひとつに過剰な力を込めている。

 

 旋風に巻き上げられて降ってくる雪を、リュウノツガイを振るって空中で溶かす。空中で迸った炎と蒸気が一時的に少女の姿を龍から見えにくくする。その間に双剣を納刀して手に砂鉄の投げナイフを創り出し、あえてその投擲の様子がクシャルダオラに見えるようにして投げた。

 そしてそれも、やはり解かれずにかの龍へと届き、僅かに血を滲ませる。

 

 砂鉄の剣を解く風を、この龍はもう使えない。

 それは少女の強力な武器がかの龍に使えるようになったということを意味するが──それを差し引いても、状況は悪いと判断せざるを得ない。

 

 今のクシャルダオラは角が折れて力の制限がきかなくなったのを逆手に取って、消耗を度外視した戦い方に切り替えている。視野が狭くなり、ひとつひとつの攻撃に過剰な力をかけ、体力的な限界が早まることを鑑みていない。

 しかし、その体力的な限界が来るよりも先に少女が倒される可能性の方が圧倒的に高い。一撃の規模がこれまでよりも雑に、しかし格段に大きくなっていることがその可能性を跳ね上げている。

 

 これがもしも二人なら。隣に彼が立っていれば、連携してその隙をつくことで、危険ながらも渡り合うことができただろうが──。

 それは、この戦いを放棄する理由にならない。

 

 目の前に立つ龍を見据える。

 片翼は半ばから折れていて左右に対称性はない。空を飛ぶことはできなくなっているはずだ。

 それでもこの龍は彼と少女を諦めない。どこへ逃げても追いかけてくる。その瞳にはそれだけの執念、覚悟の気迫が籠っていた。

 

 そして、それは少女も同じだ。

 

 少女と視線をぶつかり合わせたクシャルダオラは、鈍色の空を仰いで大きく咆哮した。びりびりと空気が振動し、吹雪く凍土一帯に響き渡って反響させる。

 それはかつての少女を硬直へと追い込んだ咆哮だ。風翔龍の意志が、少女の内にある極龍の感覚器官を伝って彼女へとぶつけられる。

 

 しかし、今度こそ少女は怯まない。

 

 真正面からその咆哮を受けて立ち、それでも龍の瞳を見据え続け──、再び(何度でも)地を蹴って前へと踏み出していく。

 

 

 

 その吹雪は一向に収まる気配が見えなかった。

 極低温の強風は彼女の動きを妨げ、さらに張り付いてくる雪と相成って、そこに在る生物の熱を刻々と奪っていく。

 人が活動できる環境ではない。ホットドリンクを飲んで全身を防寒具で覆ってやっとといったところだろう。それでも凍傷の危険からは免れない。

 

 それでも、少女は未だその雪原に立ち続け、今まさに吹雪を生み出しているであろう龍との戦いを続けていた。

 

「──ッ!」

 

 あまり目立たない部位であるにもかかわらず、それでも丸太ほども太くしなやかな尻尾に打ち据えられ、少女は大きく吹き飛ばされる。

 頭から地面に衝突しかけたのを、咄嗟に手を伸ばして先に地面へと触れさせ、身体を捻って滑り込むような受け身へと持っていく。

 

 そのままさらに右に飛ぶように見せかけ、逆の方向へと大きく身を投げ出す。一拍置いて、彼女がフェイントをかけた方を巨大な旋風が走っていった。

 多量の雪と土が舞い上げられてその周囲に降り積もり、彼女はそれを甘んじて受ける。視界を妨げられる吹雪の中では、この土と雪を被るだけでもわずかな間相手の目から逃れることができる。

 それまでしてから、止めていた呼吸を再開して咳き込み、身体の損傷を把握する。

 

「……まだ、大丈夫」

 

 しかし、かの龍に与えているダメージと比較すれば、それは無駄なあがきにも等しい──その思考を振り払って、半ば無意識のうちにポーチから回復薬を取り出して一気に飲み干した。

 

 空になった回復薬の瓶を投げ捨てながら、今度は右方向へと跳んだ。少女の居場所をある程度突き止めたクシャルダオラが間髪置かずに放った旋風が、また少女のすぐ傍を駆け抜けていく。

 しかし、それとすれ違うようなかたちで少女は疾駆し、龍の懐へと潜り込むことに成功した。ブレスが凶悪化した分、放った後の隙も、再び風の鎧が纏われるまでの時間も増えている。その隙を突いていく。

 数秒前まで回復薬の瓶を手に持っていた右手には、細く鋭く黒い突剣が握られていた。左手に持ったリュウノツガイの片割れを、胸元にあった傷に重ねるようにして切り付ける。冷水河に落下したときにできたのだろうその傷が、火竜の剣が噴き出す炎によって溶かし出されていく。さらに続けて、少女は右手の突剣をそこへと勢いよく突き刺した。

 

 赤い血が吹き零れ、その場でクシャルダオラが暴れる。身体の周囲に風を纏わせて吹き飛ばし、さらに走り回って少女の追随を避ける。

 強力な遠距離攻撃を用いる相手には張り付き続けることが理想だが、機動力も高いこの龍にはそれすらも厳しい。滞空が封じられているから、かろうじてまだ何とかなっているという現状だ。

 

 そして、今の流れでクシャルダオラは一時的に彼女を見失っている。それを逃す手はない。クシャルダオラに見つからないようにしながら、砂鉄の長剣を新たに何本か造り出して自ら離れた空中へと展開させる。

 そして、その剣と自らとの位置を固定し、長大な剣を振り回す要領で楕円上の軌道を描かせ、少女がいる方向とは全く別の方向から剣を飛来させた。

 最初の剣は先に気付かれて避けられた。しかし、二本目、三本目の剣が首元と横腹へと突き刺さる。やはり、砂鉄の剣を自律的に解かれないというのは大きい。そうでなくては、彼女はまともにかの龍へ傷を負わせることもできない。

 

 四本目の剣は風の鎧とぶつかり、勢いを抑えられて傷をつけるには至らなかった。

 クシャルダオラがいよいよ少女を捉える。この方法が竜大戦のときにも使われていたことを思い出したのだ。剣が飛んでくる方向に彼女がいるとは限らないということを。

 唸り声をあげてかの龍が突進してきた。少女は肩で息をしながら、地面に両手をついて龍を見返すという奇妙な仕草を取る。

 かの龍は少女がどう避けても蹴り飛ばせるように少女を注視し──

 

 大きな音を立てて、大地に空いた穴へと飛び込んだ。

 同時に身体に粘着質の糸が多重に絡みつく。

 

 落とし穴!

 

 クシャルダオラは一瞬でそれを理解し、本能的に自らの真下に風を集め、強引にその穴から飛び出す。その間、僅か一秒にも満たない。落とし穴で龍を拘束することは不可能と言われる所以には、この判断の速さがあった。

 しかし、拘束することは不可能でも、落とすことそのものはできる。そして、目的が落とすことだけで達成できるものならば。

 

 落とし穴から飛び出したかの龍の傷だらけの下腹から、盛大に鮮血が噴き出した。そこには新たに、幾つもの太く深い穴が穿たれている。

 少女は両手で地面に手を突き、落とし穴に仕込んだ特大の砂鉄の針の補強に努めるだけでよかった。後は相手の方から突っ込んでくれる。

 

 その効果は絶大と言えた。彼のいない戦いを始めてから今に至るまでに与えた傷より、大きな損害を一度に与えることができた。噴き出した血は瞬く間に地面を赤色で染め、なおも止まらず流れ続けている。

 

 これが、少女の今できる最高の一手だ。

 

 それでも──まだ、倒れない。

 

 

 かの龍の眼光はまったく衰えることなく彼女に向けられていた。

 ふらつくこともなく、痛みに怯むことさえもせず、クシャルダオラは毅然とそこに立ち続けている。

 そう、かの竜大戦のときもこの龍はそう在り続けていた──

 

 呆然としている暇はない。これでも致命傷には全く届かないだろうことは予測で分かっていた。

 落とし穴に仕込んでいた砂鉄を崩し、細い円錐、槍のような形にしてかの龍へと飛来させる。

 クシャルダオラはその一部を風の鎧で強引に吹き飛ばし、もう空を飛ぶには使えない翼を広げて楯とした。翼膜をいくつもの砂鉄の槍が貫くも、出血は少ない。そしてその槍はそれ以上先へと進めない。

 

 さらに、クシャルダオラはそんな芸当を行いながら少女へと突進を仕掛けてきた。

 すれ違うようにしてそれを避け、さらに反撃で斬撃を加えていくが、今度のそれは執拗だった。少女を追いかけまわすようにしてクシャルダオラは突進を繰り返していく。

 

 そうなれば余裕がなくなるのは少女の方だ。そもそも体格差がかけ離れていることに加え、雪に塗れた地面は機動力をそぎ落としてくる。

 このままではあっという間に回避が間に合わなくなる。それならば強引に距離を取るしかない。

 操っていた砂鉄の剣を解き、手をかの龍が突進してきている方向へと向ける。かの龍の身体を覆う鋼の一部に強い磁力を持たせ、それに反発するように自分自身を定義。そして腕に力を込めた。

 

 途端、彼女の身体が後方へと飛ばされる。窮地に陥った彼を助け出すのにも使ったかの龍にのみ有効な力の使い方だ。

 今まさに蹴り飛ばそうとしていた少女が急に遠ざかっていく様を、クシャルダオラはじっと見つめている──

 

 

 ──はめられた。

 

 

 そう少女が予感したことこそ、直感という名の、彼との旅で得たもののひとつだったのかもしれない。

 このとき彼女の足が地面を捉えることができていたなら、あるいは避けられたかもしれなかった。

 

「──ッあ」

 

 いつの間にかその場に現れていた、空気の壁とも言うべき風の渦に少女は激突した。彼女自ら背中から突っ込むかたちだ。

 この吹雪の轟きと視界の悪さで、少女はその風の渦の存在に全く気付いていなかった。かの龍の遠方に竜巻を発生させる能力は未だ消えていなかったのだ。

 思いがけない衝撃に、一瞬だけ少女の身体が硬直する。その場に崩れ落ちそうになる身体を何とか立ったまま支えて──

 

 

 

 その胴体を、砲弾が真正面から捉えた。

 

 

 

「────」

 

 

 

 紫と赤色を基調とした頑丈な布を幾つも重ね合わせたユクモ装備。それがまるで紙のように破かれ、千切れ去って、風に飲み込まれていく。

 さらにそれを彩るように鮮血が舞った。首元、肩、腕、胸、腹、脚。風に刻まれた身体から夥しい量の血が噴き出す。四肢が切り取られていないことが逆に不思議なほどだった。

 悲鳴など出せるはずもない。喉と口は血に塞がれ、声は声にならない。

 

 

 ただ、それでも。それでも彼女の瞳から色彩は失われていない。意志の宿った深緑の眼光はクシャルダオラに向けられていて──

 

 

 

 絶対零度の白い吐息に、空間ごと縫い止められた。

 

 

 

 少女の身体から噴き出していた鮮血は空中で凍り付いて、白い霜を生やしてその場に落ちた。

 地面は罅割れ、雪は固められて氷の結晶となり、吹雪の風すらも静止する。

 何の比喩もなく、僅かな間、そこは時の止まった別の世界と化していた。

 

 その中心に、少女は一人佇んでいた。

 

 半裸の身体は血と氷の結晶で彩られ、布切れのようになった防具は霜の白に染め上げられている。

 その姿は正しく、全てが凍り付いた別世界の住人であるかのようで──

 

 

 

 それでも。

 

 

 

「…………ま…………だ……」

 

 

 

 それでも。倒れない。

 

 

 

「……まだ……あ、あ……!」

 

 

 

 それでも──瞳の奥に、光を宿し続ける。

 

 氷の割れる音と枝の軋むような音を立てながら、両手を背中へと回す。

 そして、背中に提げた──彼から貰った初めての狩人の武器──双剣リュウノツガイの柄を握りしめた。

 

 ごっ、と少女の背中から紅い炎が迸った。

 リュウノツガイの刃は強い衝撃が加えられない限り、その炎の力を開放しない。それを担ぐ狩人に被害を及ばせないためだ。

 

 ならば、その二つの刃を強引に強く打ち付け合えばいい。

 

 全力の一撃の反動でその場から動けなかったクシャルダオラは、油断なく息を整える。

 その少女を見る目は、かの大戦で彼女の本体である竜機兵と対峙したときのものと何ら変わりはなかった。

 

 凍り付いた世界で、彼女だけが紅色の炎と共に息を吹き返した。

 芯まで凍った体を火竜の炎で焼き尽くして、その急激な温度変化に耐えられなかった皮膚を黒く炭化させながら。

 

 たったの十秒でここまで追い詰められた。

 もう防具は防具としての機能を完全に失い、ほんの僅かに残っていた余裕は根こそぎ奪い取られた。

 

 それでも。

 それでも、まだ。

 

「終わらない……! 本機(わたし)はまだ死なない! 死ぬわけには……っ、いかない!!」

 

 

 

 それはおおよそ、今までの彼女からは考えられないほどの熱量を宿していて。

 金と黒の髪、そして黄色の髪飾りを吹雪の豪風に晒しながら。

 火の粉を散らす炎の剣を両手に持った彼女は、血の色に染まった一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 やはり、人という種族は恐ろしい。

 吹雪の只中に立ちながら、かの龍は改めてそう認識した。

 

 永い時を経てもなお思い返すことができる、人と龍の戦い。

 数多くの同胞があの戦いで討たれた。かろうじて生き延びた龍も、永い時の間に老いて力尽きていった。世代は移り変わり、今ではほとんどの龍があの大戦そのものを知らない。

 

 かの龍自身もそれは例外ではなく、いよいよ青き星に導かれる頃合いかと予感していた。

 そんなときだ。遥か空の彼方から、あの禍の兵器の気配を感じたのは。

 

 幾千年の時を経て、あの竜機兵が蘇った。

 かの龍が飛び立つ理由はそれだけで十分すぎた。

 

 あのとき、確かに竜機兵を討った。相打ち覚悟で放った竜巻は強固な外殻を打ち崩し、致命的な損傷を負ったかの兵器は地に伏せた。幾多の龍を薙ぎ払った存在に、初めて龍が勝利した瞬間だった。

 かの龍も全身を砂鉄の大槍と杭で穿たれ、長い間生死の境を彷徨った。しかし、今考えればあの傷によってしぶとい生命力が培われたおかげで、かの龍は今まで健在で居続けられたのかもしれなかった。

 

 あの生きた兵器は人が道を踏み外した証拠であり、禍を呼んだ。そしてそのことを知っている、つまりあの戦いの場にいた存在は、もう世界でかの龍のみだ。

 ならばとかの龍は空を駆けた。海を跨いで大陸を渡り、その気配の主を追いかけ続けて、氷に閉ざされた辺境の地まで追い詰めた。

 

 そこでかの龍が見たのは、記憶とは明らかに異なる容姿、しかしその内に潜む龍の気配は間違えようもない人の形をした生きた兵器だった。

 やはり予感は正しかった。かの兵器は今ここに蘇り、自身は人と龍との戦いを知る存在としてこれを討たなければならない。その決意を以てかの龍は戦いに臨んだ。

 

 

 

 そして、その戦いの結末がこれだ。

 

 かの龍は静かに目の前のそれを見た。

 

 そこには、かつて兵器であったものの残骸が転がっていた。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 長い戦いだったと、そうかの龍は思う。かの龍が話す言葉を持てば、よくここまで持ちこたえたと称賛の言葉を投げかけていただろう。

 特に、今ここにその姿はないが、以前までかの兵器と共にいた人間の狩人。彼には手を焼いた。まさか氷山の崩壊に巻き込ませてくるとは思わず、深刻な傷を受けてしまった。

 彼がかの兵器の傍に居続けたならば、この結末は変わっただろうか──いや、変わりはしない。埋めがたい体力の差をひっくり返すには、彼らが選んだ地は分が悪すぎた。

 

 ただ、とかの龍は逆接を付け加える。

 竜機兵の残滓程度のものかと考えていたが、その認識は全く間違っていた。大戦の頃の自らはこの目の前の存在に勝つことができたか、怪しいところだった。

 手加減など初めから一切なかったが、認識は改めなくてはならない。この兵器は狩人の業を覚え、相対的に見て以前よりも遥かに強くなっていた。

 

 なぜなら、この結末を迎えるまでの戦いは、本当に長かったからだ。

 

 時間にして、半日。

 

 あの必殺の一撃をぶつけてから、既に半日が経過していた。

 

 

 

 双剣の片割れは根元から折れている。上半身に傷のついていない部分はなく、かろうじて残っている腰回りの装備もぼろぼろになって防具としての機能はとうに失われている。

 雪原にうつ伏せに倒れこんだその身体は霜に覆われ、かろうじて動く腕はまた体を起こそうとして、しかしそれは敵わないようだった。

 

 対して、龍の側は身体の傷こそかの兵器と比べても遜色ないほどに多く刻まれていたが、角を折られながらも嵐を引き起こし、風の鎧を纏う程度の余裕は残されている。

 こうなることはかの兵器の方も予想していたはずだ。しかし、結局これは今ここに至るまでかの龍に挑み続けた。その理由は何だったのか。

 

 ……人という種族、ひいてはこの兵器と共にあった彼を守るためだろうか。

 

 幾千の時を経て思考することを学んだかの龍はそのような推測を立てる。人の営みは複雑で分からない。ただ、その推測は間違っていないように思えた。

 

 しかし、そんなものは考えるだけ無駄だ。悠長にしている暇はない。

 この兵器の命はまだ潰えていない。それに終止符を打ち、この兵器を使用していたと思われる狩人の方も探し出して殺すことで、やっと全てに決着がつく。

 

 もう何度目になるかも分からない。口元に風の力を集めていく。戦いを始めたことはそれこそ息をするように集めることができた風も、今の消耗具合では時間がかかってしまう。

 しかし、その一撃は彼女の命の灯を消すには十分だ──。

 

「──!」

 

 瞬間、腹部に鋭い痛みを覚えたかの龍は僅かに怯んだ。

 恐らく砂鉄の剣の飛来を受けた。数にして六本。横腹に突き刺さっている。風の力の制御に集中していたために気付かなかった。

 地に倒れていながら未だに足掻き続けていることに僅かな驚きを覚える。それと同時に気を引き締めた。最後まで諦めなかった狩人の策によって、地に墜とされたことを思いだす。

 

 砂鉄の剣は刺さったまま、それを無視して風の力を再び溜める。その力の主を排すればいいだけの話だ。

 今度こそ次はない。手早く、確実にこの兵器を倒し、遥かな過去から蘇った竜大戦の最後であろう戦いに、決着を──つけ……て…………?

 

 

 

 堂々と佇んでいたかの龍がふらつき始める。口元に集っていた特大の風の塊は解かれていき、悶え苦しむように立ち上がって首を前足で搔きむしって──地面へと倒れこんだ。

 全身の筋肉が硬直し、痙攣する。体の内は熱に浮かされ、風の力がうまく感じられなくなった。さらに強烈な睡魔すらも襲ってきて、思考すらもままならない。

 が、この状態には覚えがあった。──狩人の毒を撃ち込まれたのだ。

 やられた。こちらが砂鉄の剣を回避せず、放置して優先して止めを刺そうとすることを読まれていた。恐らく毒そのものはこれより前から打たれていて、あの六本の剣で以て引き金を引いたのだ──。

 

「よ、かった。……うまく、いき……ました」

 

 倒れこんだかの龍の頭は奇しくもその兵器の傍にあった。それが何か話しているのが龍の耳にも届く。

 その声は掠れて今にも途切れそうだ。このまたとない機会にありながら、まともに動けるようには思えない。

 

 ただ、もしこの兵器が健在で今の状況を迎えたとしても、恐らく自らを殺しきることはできない。それを成すには、もう一度氷山の崩壊に巻き込ませるくらいの手段が必要だ。

 この兵器はそんな火力を持っていない。持っているならとっくに使っているはずだからだ。

 

 この三重苦による拘束もそう長くは続かない。今まさにかの龍の身体の中では抗体が全力ではたらいている。毒で殺すなどもってのほかである。

 かの龍は朦朧とする意識を保ち続けた。睡魔に耐え、この拘束が解けたときが、目の前の兵器の終焉だ、と。

 

 

 

「よ、かった。……うまく、いき……ました」

 

 掠れた声でそう呟いた彼女は、自らの持てる力を振り絞って、腕を前へと押し出した。

 ざり、ざり、と這うようにその身体を前へと進めていく。脚はまともに動かず、もはや立ち上がることはできない。

 

 目指したのはかの龍の頭部だ。目の前に倒れこんでいたので、そう時間を駆けず辿り着くことができた。とても幸運なことだ。もし反対の方向にあれば辿り着くことはできなかっただろうから。

 口から熱い吐息を漏らし、苦しげな声を上げるかの龍の瞳だけが彼女を捉える。少女は一瞬だけそれに目を合わせた。

 

 このクシャルダオラはあの大戦を嫌っていただけなのだ。やっとその本質を理解する。

 人も龍も数えきれないほどに死んだあの不毛な戦いが、彼女の存在によって再び引き起こされてしまうかもしれないと恐れたのだ。

 

 そして──それを、少女は否定することはできない。

 少女はもしかすると、その引き金を引いてしまえる存在なのかもしれない。その可能性はどうしようもなく存在する。

 恐らくそれを断ずることができる存在はこの世界にいない。人にとっても、龍にとっても彼女は不安要素にしかなり得ない。

 

 

 

 ただ、そのことを知っていながら、なお少女の生存を願い続けた人がいた。

 或いはそれは多くの人や龍を敵に回す選択であることを分かっていて、それでもその人は笑ってこう言うのだ。

 

『お前の選択の、その先が見たい』と。

 

 

 

 クシャルダオラの頭はそれだけで人の胴よりも大きく、一際頑丈な鋼で覆われていた。

 

 少女はその頭をそっと包むこむように抱きしめた。

 

 そして、目を閉じる。

 

 ──言おう。

 

 

 

 

 

「──自己破壊処理、実行」

 

 

 

 

 

 かくして、その無機質な願いは──確かに聞き届けられた。

 

 

 

 

 

 なんだこれは。なんだこれは!?

 かの龍は激しい動揺と恐怖に襲われていた。堂々とした余裕は消え失せ、毒で身体が動かないことに焦りを募らせていく。

 

 いったい何が起こっているのか、全く理解できない。

 はじめは彼女が炎の剣を額に圧しつけているのかと思った。その程度ではこの鋼は貫けない。瞳を焼かれないように無理やり目を閉じていればよい。すぐに振りほどけるようになる。

 そう考えて耐えようとしたというのに。

 

 頭が熱せられていくのを感じる。まるで頭を守る鋼そのものが高熱を発しているかのようだ。

 凄まじい頭痛と共に、もともと毒に侵されていた意識がさらに曖昧になっていく。全く経験したことのない感覚だった。今まで炎の剣で頭を焼かれたり、燃える液体を投げかけられたことは何度もあるが、このようなことにはならなかった。

 

 このままではまずい──本能が訴える。すぐにこの熱の原因を取り除かなければ、取り返しのつかないことになる。つまりそれは、この戦いでは訪れないと考えていた、死そのもの──

 

 無茶苦茶に身体を動かそうとする。頭を振ろうとする。しかし、それらは全く反映されず、ただ僅かに四肢を動かしたのみだった。

 そうしている間にも頭部の熱はますます高まっていく。突然這い寄ってきた明確な死の感覚に、古の龍は絡めとられていく。

 

 

 

 

 

「自己破壊機構にエネルギーを集中。自己破壊処理、加速。加速、加速──」

 

 自らの内に宿った莫大な熱源を抱え込みながら、少女は歌うように呟き続ける。

 そのたびに胸の光点が赤々とした光を放ち、さらに熱を高めていく。周囲の雪がその放射熱によって溶け出して湯気を発する。

 段階など踏まずにひたすらに出力を上げていく。そうでなくては間に合わない。かの龍の毒による拘束が解けてしまう。彼女が振りほどかれたときが、敗北の瞬間だ。

 

 この状況を作り出せたのも彼のおかげだ。彼が氷山での戦いで結局使わなかった数々の毒瓶、それがなければどうしようもなかった。

 さらに、この作戦自体も彼を見習ったものだ。自己破壊処理は本来何かを巻き込むようなものではない。ただ自らを熱で融かし尽くすことに特化している。過去の本機(わたし)ならばこんな作戦は思いつきもしなかったはずだ。

 

 かの龍が呻き声を挙げ、四肢を痙攣させた。

 効いている。この熱は確かにかの龍に届いている。それを感じ取った少女はさらに加熱を続けていく。

 

 

 

 彼はこの状況まで予想していただろうか。もし予想できていなかったとしたなら、これを見てどう感じるだろうか。

 どうして彼の願いによって封じられていた自己破壊処理を実行に移せたのか、彼なら理解できるだろうか。

 

 自らの身体が熱によって溶け出していくのを感じながら、少女はそんなことを考える。

 きっと彼なら分かるだろうと、そんな予感がした。言葉で伝えることはもうできないのに、今は不思議とその予感に確信めいたものを感じていた。

 

 

 

 なぜなら、それはとても単純な理由に依るものだからだ。今自身が自己破壊処理を実行できているという事実から逆説的に考えれば、自然とその解へと辿り着く。

 

 彼は少女の選択のその(未来)が見たいと言った。何気ない日常の中で少女が選択を重ねていくのを見たいと願った。

 そのために自己破壊処理ができなくなっているのなら──ただ、少女がこう願えばいいだけの話だ。

 

 

 

「アトラに、生きてほしい。本機(わたし)のその願いを……あなたに託したい」

 

 

 

 本機(わたし)の選択を彼に示すために、()()()()()()()として自己破壊処理を用いる。

 願いを託すという方法で以て、その選択を未来へと生かし続ける。

 

 

 それは、テハヌルフという少女(兵器)が初めて口にした選択(願いごと)で。

 きっとそれは、決して手放すことのできない大切な感情だと分かったから。

 

 

 『存在の存続を願われている限り自死できない』という原則は覆せないと考えていた。しかし、それよりさらに上位の兵器としての原則に、『対龍兵器は人の代わりに龍を討つために在る』。

 そして、その上位原則を順守した果てに攻撃手段としての自己破壊処理があって、それ以外の方法が全くなかったなら。その攻撃によって(持ち主)が生き残ると少女の内の兵器が潜在的に判断したとき。

 

 その鍵は再び彼女の手へと戻ったのだ。

 

 

 

「アトラなら、分かる。きっと」

 

 

 

 胸部から全身に達し始めた熱に溶かされながら、一言を噛み締めるように少女は呟いた。

 かの龍の拘束はいつの間にか解けようとしていた。抵抗が激しくなる。しかし少女はしがみついたその身体を決して放さなかった。

 

 

 

 そんな攻防が数分間続いて、かの龍が大人しくなったとき、少女の身体はもう人の形を失いつつあった。

 

 

 

 熱によって溶けた皮膚が、ぼとり、ぼとりと零れ落ちていくのを感じる。

 感覚はひとつひとつ失われていき、いま目が霞んで見えなくなった。かろうじて残されているのは耳元の龍の感覚器官か。それだけで十分だ。

 赤熱化する身体は内部器官を融かしていき、不可逆の域に達していた。それはかの龍の鋼の甲殻も同じで、まるで融解した鉄のように真っ赤に染まって熱を放っている。

 

 自己破壊処理の完遂まで、もう十パーセントを切った頃合いだろうか。

 ここまでくれば意識を失っても最後まで処理は実行されるはずだが、かの龍の角を掴んでいるこの両手だけは死んでも放すわけにはいかない。

 

 だからあとは、できる限り意識を保ち続けることを目標にする。考え事をすればいいだろうか。

 

 

 

 ……本当は考えることを避けていたのだが、どうやら向き合いざるをえないようだ。

 

 流石に理屈が強引すぎた。結果的に自己破壊処理を実行できたものの、自らの内で納得したものが彼に受け入れられるかは別の話だ。

 今度こそ、彼に嫌われてしまうかもしれない。そう考えるとただでさえ苦しい胸がたまらなく苦しくなった。

 この期に及んでそんな感情を覚えるということは、それだけ彼の存在が自らの内で大きかったということだろう。この一年間は確かに本機(わたし)に変化をもたらしていた。

 

 

 

 …………この一年間は、本機(わたし)にとっての何だったのだろうか。

 あと数分で終えるだろう命、その全てを使って考えてみる。

 

 出会ったあの日、彼に抱かれて洞窟の出口から見た夕焼けに染まる渓流を見て、大きな衝撃を受けた。あの頃の記憶には鈍色の空しか残っていなかったから、同じ世界の光景であるということすら受け入れるのに時間がかかった。

 

 彼に連れられて初めてこの世界の食料を食べて、星空を見て、竜を狩った。彼を始めて殺そうとしたのもその日だった。この時点から彼がその殺気に気付いていたということには今も動揺を隠せない。

 

 村にやってきて、自らが人の社会に本質的に居つけない体質になっていることを知った。今はその理由が分かる。彼と加工屋が開発した髪飾りには大いに驚き、未知の領域へと自らが踏み込もうとしていることを感じ取った。

 

 旅を始めて、彼と本機(わたし)の旅の目的を決めた。この世界の仕組みについて多くを学んだのもこの時期だった。実は人と竜との関係性と狩人の倫理というものは未だによく分かっていない。しかし、彼は理屈が分かっていればそれで十分だと笑っていたことを覚えている。

 

 旅の間、幾多の村や街に立ち寄った。以前も旅人だったらしい彼はその地域の特産品や歴史に詳しく、話題が尽きることはなかった。依頼や買い物を通して人と話したりするうちに、感情というものを知った。それを積極的に得ようとはしていなかったが、どうやら知らない間に芽生えていたらしかった。

 

 砂漠の村で、自らの過去ついて大きな手掛かりを得て、存在に疑問を覚えた。このとき彼に問いかけをして、彼はそれに答えなかったが、否定は決してしなかった。これをきっかけに、本機(わたし)はさらに自分と向き合うことになった。

 

 そして、それから今この戦いまでの間に、本当にいろいろなことが明かされて。彼と初めて意見を衝突させ、話し合って、互いの答えを得るまでに至った。

 

 

 

 ──ああ。

 

 考えるというよりも、この一年間の記憶を辿るだけになってしまったけれど。もう十分だった。

 

 彼が本機(わたし)とどのように接しようとしていたのか、それが少しだけ分かったから。

 

 

 彼は、無機質な兵器である本機(わたし)の兵器としての在り方を尊重していた。

 彼にできる限りの手助けをしたうえで、本機(わたし)に関わることは全て本機(わたし)自身の選択に委ねていた。

 

 

 ただ、それだけだ。言葉にするだけなら造作もない。推測もできないほどに手間がかかるだろうそれを、彼はこの一年間やり遂げたのだ。

 これを彼に言えば、それが趣味だからなと笑いそうだ。

 もっと本機(わたし)をうまく運用する人物は恐らく数多くいる。彼のやっている方法は異端と言えて、兵器の使い方でなく話し方を模索しているようなものだ。

 

 しかし、だからこそ、この一年間を彼と生きた兵器の本機(わたし)は断言できる。

 

 

 千年越しに、人と、人が造った人ならざるモノの関係性を探り続けた一年間だった。

 

 

 もう後にも先にもないだろう、ただそれだけの物語だ。

 そして彼は、それに自らの命を賭けた。そして本機(わたし)も、今まさに命を賭けている。

 

 それはこの世界に比べればあまりにも小さく、意味の見出せないものであったとしても。

 

 彼と少女の二人にだけは、確かに命を賭ける価値があったのだ。

 

 

 

 

 

 ああ。やはり本機(わたし)は──兵器としてならばともかく、生き物としては不完全すぎる。

 この命が燃え尽きる間際になって、ようやくこの旅で彼が本当に目指していたものを垣間見ることになるなんて。

 そして、こんなことを考えてしまう──どうして、こうなっちゃったのだろう、と。

 ただ、もうそれを考える余裕は全く残されていなくて。

 

「アト……ラ…………アトラぁ……」

 

 煌々とした光の核を胸に抱いて、届かない、彼の名を呼ぶ。

 声帯もあと少しで焼き切れる。声は掠れて途切れがちになり、音にならない。

 届くはずもない。それでも、言わなくてはならない。

 

「……わたし……やっと、わかり、ました……」

 

 お礼の言葉すら彼に贈れていない。それだけでは足りなくても、それくらいしか考えつかないから。それを伝えることができたなら。

 彼に託すものも曖昧にしてしまった。何かのかたちがあるものとすれば、彼から貰った髪飾りくらいだ。せめて自分の手でそれを渡すことができたなら。

 話せていないこともたくさんある。この期に及んで気付いたものはあまりにもたくさんあって、そうでなくても、何気ない雑談でも十分だ。これから先も、彼と言葉を交わすことができたなら。

 

 そんな『もしも』をずっと描き続けてしまう、この感情の名前。

 

「……わたしは……あなたに、あえて──ほんとうに……しあわせで…………」

 

 今──それが明確に、わかったのだから。

 

 

 

「わたし──……──とう、の……──がい──は────…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






更新が遅れてしまい本当に申し訳ありませんでした……。
次話は2月中に投稿します。これだけは必ず。作者に何か起こらない限りは必ず投稿まで持ち込んで見せます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。