幼女がISに乗せられる事案   作:嫌いじゃない人

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 作中のXXXの部分は幼女戦記のネタバレ防止のための伏字です。一応ネタバレは避けたいなと思っていますが万全ではないので、どうしてもバレが嫌という人はスルーした方が吉でしょう。


プロローグ

 諸君、久しぶり。ターニャ・フォン・デグレチャフだ。

 いや。ターニャ・フォン・デグレチャフ()()()と言うべきか。()ターニャ・フォン・デグレチャフと名乗っても良いかもしれない。

 この際だ。

 諸君らが不必要に混乱する前に端的に言おう。

 

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 社会的に死んだとか存在を抹消されたとか、そういった類の比喩ではなく正真正銘の生物学的な死。

 私の経験上、二度目の死だ。

 一度目はサラリーマンとして平穏且つ順調な人生を謳歌していたとき、私が解雇を告げた元部下に駅のホームから突き落とされての轢死。

 そして今回、二度目は魔法軍人幼女として大戦の戦火を潜り抜けた挙句の、××××××××××××《検閲済》××××××××××××××。

 

 そんな波乱万丈な自身の経歴に思いを馳せつつ、私は自らが置かれた状況を確認する。

 目の前に見えるのは真っ白い天井。後頭部や身体の感触、傾いた平衡感覚から今の自分が布団或いはベッドの上で寝かされていることは分かる。億劫だが首を傾け横を見ると、まんまるとしたピンク色の物体が見えた。何故か焦点の合わない目でその物体をよく見ると、それは人の手の形をしていて、より正確に述べるなら赤子の手のようだった。

 よもやと思い自分の手に力を籠めると、その赤子の手もぎゅっと動く。

 

 

 

 

 

 ………。

 あれか、つまりはまた赤子からスタートか。転生したばかりだというに早速死にたい気分だ。

 

 

 

 

 しかし妙だ。あの忌まわしき存在Xの言葉を信じるなら『次の転生は無い』筈。何らかの手違いか、私自身の見落としが有ったのか。

 まあ此処が何処なのかの理解もせず、ろくすっぽ機能しない赤子の頭で考えていても仕方があるまい。そう気持ちを切り替え、何か見落としがないかもう一度辺りを観察する。

 

 そうして得た様々な情報から判断すれば、どうやら私は病院の様な場所のベビーベッドに寝かされているらしい。ベッドの両脇にはおそらく自分のと同じ型のベビーベッドが並び、その中では赤ん坊が寝ている。そのベッドは規格が統一されたガラス製で、中に清潔なシーツが布かれている。

 

 

 

 いやはや、大変素晴らしい。

 

 寝床の出来の話ではない。今世の衛生観念と生産技術が、前世のそれよりも遥かに先進的であるということについてだ。

 この世界の技術や文化の発展が私が知っている二つの世界のそれと大筋同じ流れだと仮定するなら、この時代はおそらく前前世と同じか或いはそれより先の未来に当たる。

 ()()()()

 未来が必ずしも良いものとは限らないが、少なくとも前時代的な価値観、環境下で誰にも相談できない鬱憤を溜め込む心配はない。SF小説の様なディストピアでもない限り、前世より悲惨ということもないだろう。

 

 ふと気が付くと、頭上で小さな手がぱたぱたと忙しなく動いていた。自分の腕だ。

 いくら頭の中の意識が大人であると言えど、体の構造と生理的な現象は赤子の制約から逃れられない。喜ぶにせよ悲しむにせよ、意図せずとも感情を吐露してしまうのが赤子というものだ。

 

 

 その腕の手首に、白い何かが巻かれているのが見えた。拙い視力で目を凝らすと、その正体が分かった。

 タグだ。

 文字と番号が振られている。文字はライヒの文字……いや、ドイツ語のようだ。腕を近づければ何とか読める。

 

 

 

『遺伝子強化試験体C-〇〇一一

 血液型:A  性別:f 出荷重量:2630g』

 

 

 

 ああ……。

 碌でもない単語が読める。そこはかとないディストピアの香り。全く以て泣きたくなるような事態だ。

 となれば泣かざるを得ないのが赤子の常。我ながら恥も外聞もない慟哭だが、こればかりはどうにもならん。同室の連中には迷惑をかけるが御互い様だと思って大目に見てもらおう。

 

 自分の泣き声がえらく耳に衝く。

 惨めさ以前に腹立たしい。腸が煮えくり返るとは正にこのコト。

 クソが。

 

 

 

 くそったれの存在X!!!   




 ぶっちゃけた話、今書いてる別作品のプロットが詰まったときに書き始めたものなので、全然書き溜めていません。
 更新頻度につきましてはご容赦ください。

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