絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。 作:ラビリンス・ペンギン
今回もよろしくお願い致します。
「ですから、(1)の答えを(2)の式に当てはめるんです。」
「ぬぉー!!極限わからんぞ~!!」
「教科書の…この公式です。」
「花ちゃん、ここがよくわからないんだけど…。」
「それは────」
俺と京子ちゃんは小学5年生。京子ちゃんのお兄さんは小学6年生となった。
お兄さんは、初対面時には既に額に傷痕があった。でも、それを掘り返してわざわざ聞くのもよくないと思うため、スルーしていたが…。
お兄さん、その傷を負ったときに理解力を落としてきたんですか?
…………いや、これは失礼すぎる。
今は3月。さらに言うと卒業式は終わり、春休みを迎えている。1つ上の学年であるお兄さんは来月から中学校に通う。そんな人に何故俺が勉強を教えているかというと…並盛中学校は入学するにあたり、春休み中に新入生を集めて基礎学力診断テストをするらしい。それに向けての勉強を
そんなとき、偶然春休みの宿題を一緒にやろうとやってきた俺に白羽の矢が当たったらしい。
…純粋に、嫌なものを放置したり逃げたりせずに解こうとする姿勢は凄いと思うが…1問も解けてない、というより空欄なのはどう説明するというのだ!!分からないときは飛ばして次の問題にいくというてもあるんだぞ!?
「三角形の面積の公式は極限に何だ!!」
「今手に持っている教科書の、ちょうど左手の位置にありましたよ。」
「なぬ!?」
三角形の面積の公式って、そんな難しくないと思うんだよな…。ここは比較的早く終わりそうだと京子ちゃんから貰ったお茶を飲もうとして……止めた。
「えっと…了平さん。さっきのページですよ!?何故右側のページ捲っているんですか?!」
「フフフッ、お兄ちゃんったら。」
何故だ、何故なんだ!!わざとボケて突っ込みを待ってるのか?それともただ単にこれが素なのか!?というか京子ちゃんは“フフフッ、お兄ちゃんったら。”で済ませて良いのか!?
……………あ、ダメだ。頭痛くなってきた。
俺は二人のことは好きだが、この兄妹が同時にいるときにはちょくちょく頭を抱えることがある。見た目は美形であるというくらいで似ていないこの兄妹は、揃って天然だ。天然というものがよくわからなかった俺でも周りの子に言われて納得したんだよな…。一人と話す分にはまだいいんだが…どうも二人となると俺の頭は活動停止を訴えてくる。
ここ二人の両親と、結婚する人は大変だ…。きっと、根気強い人でないと難しいかもしれない。
「少し必死になりすぎです。一度机から離れて休憩しませんか?」
きっと、この場にいる全員の頭がオーバーヒート気味なのだということにして休憩を促す。…どうやらそれは正解だったらしく、休憩後はペースが若干上がった。いくら本人がやる気をだしてやっていても、頭は疲れるだろうし適宜に休憩は必要だということを俺は学んだ。
「あ、お母さんが皆で食べなさいってケーキを…。」
そういえば昔、俺が兄さんと机に向かっていたときはお母さんが差し入れを程よく持ってきてくれていた。色々あったなぁ…。
京子ちゃんが手に持ってきたケーキの箱の中には、色とりどりのケーキが鎮座していた。どうやらこの時期にフルーツケーキがあったらしい。それを美味しそうに頬張る京子ちゃんを、俺とお兄さんは本人に気づかれないよう然り気無く眺めていた。
このときはまだ知らなかった。
京子ちゃんが月1でケーキをたくさん食べる日を作ろうと考えているなんて…。