絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。 作:ラビリンス・ペンギン
俺は思い出した。
京子ちゃんがケーキをたくさん食べる日を作ろうとしていたことを。
ベイクドチーズケーキの5号をキラキラした目で見つめていたことを…。
それに対して、恐怖を抱いていたことを────!
目の前でケーキを頬張りながら幸せそうな顔をする京子ちゃんの向かいに座りティラミスを口に運ぶ。
ラ・ナミモリーヌというこの辺りでは知る人ぞ知る名店…ではなく、並盛付近の市町からも足を運ぶ人がいるほどのケーキが美味しい店に来ている。
量と値段が釣り合うどころか値段の方が安いのではないかと思うほどの美味しさをほこる名店であるそこの飲食スペースで紅茶と共に至高のひとときを過ごしていた。
「ねぇ、花ちゃん。1つきいていい?」
「え、はい。」
一口、もう一口と「美味しいです!」と顔に書かれていたが、はっきり言うと、それ見てるだけでお腹は苦しいです。おもに甘味で…。
まさか、こんな日が来るとは夢にも思わなかったが、今は普通の女の子なのだと実感した。
前世の俺はサイヤ人と地球人のハーフだったから、ご飯の量が多かったけど、今は一人前を食べることでやっとだったりする。…もともとがそういう体なのかもしれないな。
まぁ、そんな最中に京子ちゃんが突然意を決したかのような顔をして質問をしていいかと聞かれたら、まぁ断るわけにはいかない。
俺は、少し吃りつつも可と伝えると、言った。
「花ちゃんの話し方が最近変わってきてて心配だなぁ…ってお兄ちゃんが。」
「…確かに、話し方は変わってきてるわね。」
俺と前の花の意識は、徐々にリンクするようにしたため、短時間でリンクされない分、その二人の性格の狭間のような状態になる…ことが多いらしい。
俺は丁寧な言葉遣いをしていれば、男だろうが女だろうがなんとかなると思ったが、花の方はもとから女だった分その言葉遣いは女性らしさがある。…少し大人びすぎな気もするが、最近の子供はこんなものらしい。
「中学デビューに備えてるんです。まだ、慣れないんだけどね。」
「そうだったんだ!」
とりあえず、卒業が近いことから理由を適当に話す。
俺は別にデビューだとかそんなの全く考えてねぇ。これは断言できる。
少しこれはまずかったかな…と言ってから後悔したが、京子ちゃんがすんなりと受け入れていたので良しとしよう。
「ええ。目上の方には丁寧な言葉を遣っても、同級生に丁寧な言葉を遣うのは距離をおいているようですし、機会が良いので変えてみようかと…。」
「なら!…─────」
その流れから京子ちゃんが提案したことにより、俺達は御互いを呼び捨てしあうことになった。慣れないが、少し嬉しいと思った。が、俺は女児趣味ではないはずなんだけどなぁ…。