絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。 作:ラビリンス・ペンギン
「花ちゃん、なんか最近雰囲気変わった?」
「気のせいじゃない?…それより、そのピン似合ってる。」
「え~、やっぱり変わってるよ!」
廊下をそんな話をしながら歩く。俺が元の花と融合してから1週間。雰囲気が変わったやらイメージがきつくなったと言われることが増えた。
誉められてんのか貶されてるのかわからないというのは俺だけではないだろう。
「なら、誉め言葉として受け取っておきます。」
「うん!」
ぽわぽわと花を飛ばしてくる京子ちゃんにそう伝えると、俺たちは遅刻しないよう歩くペースを上げた。
歩く度に人が離れる。
歩む先から人が避けていくのだ。…泣いていいですか?先生が借り物競争に雲雀さん関連のことをやったせいで、俺の平凡ライフが終わりを告げようとしている。
いや、皆さん…?ただ雲雀さんと話すことになっただけですからね?群れてる奴は咬み殺すつもりないし、だからちょっとその足を止めろください。
「?どうしたんだろう、皆。」
「京子ちゃん、他の人がいるとき、それ言っちゃダメだからね。」
「どうして?」
「どうしても。」
俺と一緒にいるってのも可哀想に感じてくるが、俺か悪い訳じゃない。悪いのは先生だ。このスタンスは変えちゃいけない気がする。
それにしても、俺の前の“花”が気にかける少女。
顔は整っていたと思うが、情報がリンクするまでに時間がかかりすぎてダメだ。
少女についてのこと以外はあらかた繋がったっていうのに、記憶にないんじゃなんともできない。
昔住んでいた孤児院の場所などって、実は気にしてなくて覚えていなかったりする。だからこそ困っていた。
隣の県だというのはわかるが、そのどこだったのかが思い出せない。俺にもパソコンがあればと思わないでもないが、とりあえず、今日は家に帰ったら地図を買おうと思う。きっと、索引とか使って探せば見つかると思うからな。
俺は、空を見上げた。
飛行機雲が1つ、浮かんでいた。
この世界の空が綺麗に感じるのは平和だからだろうか、それとも俺の心の持ちようが変わったからだろうか、それとも元から綺麗だったのか…。
“花”の記憶では変わりがない空。
何処までも透き通るような空。まるで、何かにたとえでも出来そうだ、なんて考えて一人笑う。
「面白いことあったの?」
「ええ。でも、ちょっと笑いが込み上げてくる思い出し笑いね。」
「思い出し笑いって、突然起きるから困るよね。」
「静かなときとか、不意にくる笑いって辛いよね。」
俺は、そんなことを言いながら京子ちゃんと学校へ入った。