絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。   作:ラビリンス・ペンギン

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穏便に済ませたい…(願望)!

「単刀直入に言うよ。────卒業したらここ(並中)に入って。」

 

 

俺に視線を合わせることなく、さらりと言ってのけた雲雀さん。たしかに、並盛の小学校に通っているのであれば並中に通うというのが一般的だ。京子ちゃんをはじめとしたクラスメート達は並中に通う予定らしいし…。

だが、ここからそう遠くないところに中学校が2校ある。

そのうちの1校は偏差値が高く、全国模試でも高成績者を輩出することで有名な私立女子中学。俺は、義父母からその中学校を勧められていたし、俺自身も受験勉強をしていた。

 

 

「…何故ですか?私、卒業後は緑中の予定なんですけど…。」

 

 

緑中は並中より遠いがそこまで気にするほどでもなく、学校案内パンフレットを読んだり見学に行ったとき、人間関係が苦手な俺でも大丈夫そうだと感じた。

今日の運動会によって、俺は雲雀さんから目をつけられたと思われていてもおかしくはない(現在進行形で行われているこの状況はよくわからないので思考放棄)。それなら、知り合いの少ないであろうところで心機一転頑張るぞ!の方が良いかと思ったんだが…。

そういう意味を込めて、俺は雲雀さんに目を向ける。暫くして、雲雀さんは口を開いた。

 

 

 

「成績優秀・スポーツ万能・人間関係に難あり…並ではないけれど、そういう生徒がいた方が他の生徒のやる気も上がる。…そして、僕の獲物が増える。

 

「人間関係はさておき、そんな生徒は他にもいらっしゃるかと思いますが…。」

 

 

人間関係に難があるのはともかくとして、最後笑みを浮かべた際に聞こえた小声については触れず、諦めてくれないかなんて思いながら話す。

 

 

「君より学力も運動もできない、ただの小動物ならいるけど、僕は群れるのが嫌いだ。そういう輩は群れる。」

 

 

獲物が増えるなんて少し喜びながら言ってた人の台詞とは思えない。変わり身が早すぎる。いや、変わってはいないのかもしれないが、俺を小動物のくくりから外している気がしてならない。小動物のくくりにいれてくれ。そして俺を緑中に通わせろ。

 

 

「笹川了平の妹と共にいることが多く、群れることはほぼ皆無。…別に、風紀委員に入ってって訳じゃないんだからいいでしょ。」

 

「何がいいんですか…。」

 

 

 

というか、雲雀さんの中での群れの人数は3人以上か。

お茶を一口飲み、出された和菓子を口に運ぶ。…今さらだけど、これ飲食した代わりに入学解かねぇよな?

 

 

「なんでここ(並中)じゃダメなの?……返答によっては咬み殺すよ。」

 

 

それを言うなら、何で俺なの?だから…。返答によっては咬み殺すよ。なんて殺気を放ちながら言われたが、加減してあるのかそこまで強くはない。

ダメな理由か…、別にダメって訳じゃないけど、並中よりは緑中の方が俺が志望する進学先に向いているのではないかと思っただけだ。

 

 

 

「私は医者になりたいんです。…そのためには、緑中の方が良いかと思っただけです。」

 

「そう。…なら、入学したら保健委員長に任命してあげるし、並盛病院の医者と会談も設けてあげる。それならどう?」

 

 

 

それはそれでどうなんだろうか…。というより、何故俺にここまで構う?俺はその辺に転がっている女子と同じような感じにしてきたはずなんだけど…。やっぱ、山中で会ったのが悪かったんじゃ…。

 

 

「何故、私にそこまでしようと?理解できません。私が入学したからといって、そう簡単に周りが向上するとは思えませんが。」

 

 

そう。そもそもでの話だが入学してくる人間の約半分が同小出身。変化があるとは思えない。そう伝えると、雲雀さんは立ち上がり、俺に銀色に光る何かを降り下ろしてきた。

俺は斜めに下がり、その攻撃を避けた。

…銀色に光る何かの正体はトンファー。その後も仕掛けてくる雲雀さんに反撃すべきか動きを止めるべきかわからず、ただただ避けることを繰り返す。

 

 

「君、本当は強いんでしょ?在校生なら、いつでも戦咬み殺せる!」

 

「私は戦いは好きではありません。それに、避けることで精一杯ですから咬み殺そうとしないでください!」

 

 

 

 

避けるだけで精一杯ではないが、戦いが嫌いなのは本当だ。本当に必要なときだけしか力を使いたいとは思わない。だから、雲雀さんと戦うなんてしたくなかった。

でも、断り続けるにも限界がある。義父母に迷惑がかかるのも嫌だ。…ここは、俺が折れるしか道はないだろう。反撃でもすれば、さらに目をつけられるだろうからな。

 

 

 

「…ッ、わかりました!入りますから!戦うことに関しては承諾しかねますが、並中に入ります!それでは、これで失礼致します!」

 

 

 

隙をついて鞄を持つと応接室から抜け出す。不服そうな顔をされたが、逃げるが勝ちだ。

 

そうして、俺の進学先は並中へと決まったのだった…。




雲雀さん、実は前々から目をつけてたんですよね。
主に、群れようとしないところに。

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