絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。 作:ラビリンス・ペンギン
運動会の後片付けが終わり校門へと向かって歩いていると、門に寄り掛かるようにして立っている男と出会った。
いや、出会ったという表現はここでは適していないだろう。この男と俺は約束していたのだから。
京子ちゃんは家族と一緒に帰ってしまったから良かったものの…門を抜ける人々を睨み付けるようなその視線は、耐性がない人にとっては辛いだけだろう。
俺は昔から殺気浴びてきたからなぁ…不可抗力だけど。
この男…雲雀さんの視線は殺気だらけというわけではなく、単純に群れが多くイラついているだけだろう。
「雲雀さん、来ましたよ。」
「遅い。」
「すみません。」
きっと、明日からは友人が増えるか減るかどちらかしかないんだろうけど…絶対後者だ。京子ちゃんはわりと大丈夫そうだけど、他の子たちが離れていきそう…馴染んできてたのになぁ…。
雲雀さんは、俺が来たことがわかると壁から身体を離し、歩き出した。
…これは着いてこいという意味なのか、戸惑っていると早くと声を掛けられ慌てて後ろを着いていく。
運動会では他の子たちより少し勝るくらいで動いたため体力はあり余っているが、気力はかなり減っている。
主に担任の先生と雲雀さんのせいで…。まあ、雲雀さんは筋違いなんだろうけど。
「君、前に会ったよね。………並盛山で。」
「そうですね。その節は大変失礼いたしました。」
心に思っているわけではなくとも、この人には言っておくべきだろう。後ろについて歩いていると周囲から感じる視線。…お~い!そこのあわれみの視線を向けてくる人、そんなことしてると雲雀さんに気がつかれて咬み殺されちゃ…ったね。
なんとなくだが、今日の雲雀さんは“運動会”という人混みの中にいたために大分機嫌が悪いらしい。…気に入らなければ発散のために咬み殺される。唯我独尊、まさにこの言葉が似合う。
「ここ、来客口から入って。」
「…あ、はい。」
「案内は着けるから。」
辿り着いた先にあったのは、並盛中学校。
並盛中学校は、並盛第一小学校と第二小学校の卒業生または黒曜小学校の一部の卒業生が通う中学校だ。
そういえば、雲雀さんはこの学校の風紀委員長だ。家柄や実力も相まっていい感じなのだろう…。
思いっきり部外者である自覚はあるため、職員室の先生へ声を掛けてから靴を履き替えると、そこには見事なまでのリーゼントが並んでいた。
最近町で見かけるリーゼントが何かと不思議に思っていたが、納得した。
この人たちが風紀委員だったのだと。
「応接室へご案内します。」
「あ、ありがとうございます。」
案内されるがままに着いていくと、応接室へ到着。…雲雀さんの気は分かりやすいから案内がなくてもいいとは言えなかったが、なぜ俺の案内にリーゼントが3人も来たのだろう…?
応接室が近づいてくると離れていったが、もしや…呼ばれた俺が危険人物なんじゃないかとか思われていたとか…?いや、冗談じゃない!
たとえそうだったとしても、風紀委員が群れたと判明したら他の人よりもボコられそうだ…。
3回のノックのあと入った応接室。…さてはて、いったい何が起きるのだろう…。
「遅いよ。どれだけ待たせるつもり?」
「すみません。私は部外者ですから、職員室へとご挨拶に伺ってました。」
「そう。」
…本当に、何が起きるのだろうか……。