絶望に反抗した結果、生まれ変わりました。 作:ラビリンス・ペンギン
明日、ついに運動会が始まる。
俺をはじめとしたリレーメンバーは放課後に居残りで練習していた。
アップをしてバトンの繋ぎ練習をする。
「花ちゃん、もう少し後ろで受け取ってもらってもいい?」
「構いませんよ。」
明日に疲れを残さぬようにと練習は軽く終わり、更衣室で着替えをしようと荷物を置いた場所に行き、気が付いた。…俺の私服がない。
今着ているのは、学校指定のジャージだ。この格好で帰ることもできるが、汗をかいた服をそのまま着続けるなんて嫌だ。
「あれ?誰か間違えた?」
どうしようかと悩んでいると、俺の後ろで着替えようとしていた女子が声をあげた。俺の服は、その後ろで着替えようとしていた子の使っていた棚に入っていた。…意味がわからない。俺は荷物は綺麗に纏めるタイプだ。何故、自分の鞄が棚に置いてあるのにわざわざ反対側の棚を使う必要がある。
そう考えると、誰かが俺の服を動かしたことになるが…。
「あ、それ私の服です。間違えてしまったみたいで…。」
「あ、確かに今日着てたやつだね。」
はい、と渡された服を受け取り着替える。…そのとき、私服のホットパンツのポケットに違和感を感じた。ティッシュが普段なら入っているはずだが、妙にゴソゴソとする。
人がゾロゾロと更衣室から出ていく中、俺はポケットの中に入っていた
────早く走る方法、教えて。
紙には短くそれだけ書かれていたが、これではっきりした。…最初は俺がボケてしまっただけなのではと考えたが、多分真実は、この紙をいれるためにホットパンツだけ取ればいいものを、全部服を取ってしまったために何処から取ったか分からなくなり、適当な場所に置いたのだろう。
まぁ、それはいいが…名前も書いてなければ誰も待っている気配はない。校庭に1度行ってみたが誰もそこにはおらず、ただのイタズラだったということで完結した。
翌朝、俺は京子ちゃんと登校しながら昨日のことについて考えていた。もし、あれがイタズラではなく本気だったとしたら…1度そう思ってしまうと申し訳なさが溢れだす。
「次、障害物競争だよ!」
「そうですね。」
競技開始からあっという間に時間は過ぎ去り、チャンスレースとなった。今年の障害物競争は3年生がやっているらしいが…ネズミ捕りがないことにこうも感動する日が来るとは思わなかった…。今年は天気に恵まれたお陰で障害物がダメになるなんてことはないようだ。…羨ましい。
4年生、5年生と競技をやっていき、ついに俺たち5年生の番となった。運動会で家族が見ている、という緊張でなく…
うん、社会的地位まで考えねぇとなんて思ってた頃が俺にもあったよ…。
「第1着!お題の確認をさせていただきます!お題は…車イスに乗った人、でした!」
先生?好きで車イスじゃねぇかもしれないだろ?というか、よく車イスに乗った人いたな…。やらせなのか?
「次に2着!お題は…扇風機です!」
せ、先生?いやホントに何でそうなるんですか!?2着の人、コードつきの扇風機持ってたけど、観客席で誰も使ってないし…校舎内から拝借してきたのかな?
一度に5人の人が走るが、俺の番はそう早くは来なかった。…理由は、借り物が見付からずに途方にくれる自動が続出したからだ。ぜひとも言いたい。…当たり前だと!!
虫のオモチャを持ってくる、や卒業生で制服を着ている人、等といったお題が出たが、この2つはありそうでなかった。とくに、卒業生で制服を着ている人、というのはまさかの誰もいないという結末に陥り、借りるものがなかった、ということで終わった…。
そして、ついに俺の番がやってきた。