世の中に たえて光のなかりせば 藤の心はのどけからまし   作:ひょっとこ斎

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第44手 プロ1年目 その4

 病院で引退の話をした日の夜、電話で明日美さんと情報交換を行った。

 

「びっくりしたよ、塔矢先生が辞めるとか言うから」

「うん、ごめん。塔矢先生はなんて言ってたの?」

「塔矢先生、saiとの碁が凄く充実していたとかで、棋戦にこだわる必要はないって。最善の一手を今まで以上に追究したいっておっしゃっておられたわ」

 

 塔矢先生は凄く忙しい立場だから、面倒なことも多いのは確か。引き止めた私が言うことじゃないけど、もっと研究に時間を費やしたいのは当然だと思う。

 

「それでね、全部辞めて気楽になれたら、っていう気持ちが出ちゃったみたい。それを進藤が勘違いしたって聞いたわ。でも、十段戦はきちんと打つけど、その後はちょっと考えていることがあるんだって。家族のお話になってくるから、それ以上は私が聞くことじゃないし、先に帰ったの」

 

 なるほど。引退したら、収入や今後の生活にも影響してくるもんね。

 

「色々とフォローしてくれてありがとう」

 

 気にしなくていいよ、という明日美さんとの電話を置いて、大きく伸びをした。

 まさか、塔矢先生が辞めると言い出すとは思わなかった。前世では、ヒカルがタイトル戦で打っていた頃には塔矢先生はタイトルホルダーじゃなかったけど、いつ頃引退したんだろう?

 覚えていないから、考えてもしょうがない。軽く首を振って意識を切り替えて、気分転換に詰め碁でもやろう。

 

「あかり、電話終わった? じゃあお風呂入っちゃいなさい」

「はーい」

 

 詰め碁をやり始めると、時間を忘れて没頭する。お母さんに怒られないうちに、先にお風呂入っちゃわないと。

 

 

 月曜、午後からの約束だったので、午前中だけ授業に出て、昼から指導碁に向かう。

 白川先生が開いている囲碁教室のように、定期的に囲碁の交流会を行っているみたいで、私以外にもう1人、年配のプロの方が呼ばれていた。

 責任者に挨拶して、来ている人に紹介される。

 

「本日、指導碁をやらせていただく藤崎あかりです。今日は1日、よろしくお願いします」

 

 棋院主催のイベントではなく個人主催のイベントだけど、平日のわりに20人近く集まっていて、かなり盛況だ。

 ほとんどが定年退職しているだろう年代。主催者はそれより少し若いかもしれないけれど、それでも50より上だろう。女性は少なく、2、3人いる程度。

 もう1人のプロは何度も顔を出しているようで、来ている人の大まかな棋力を教えてくれるという。

 本来なら私ではなく、そちらも普段から顔を出す人がいたらしいけど、用事が入って来られず、棋院に相談したそうだ。

 事前に何人同時にいけるか聞かれて4人までと伝えていたので、私のために用意された席には、碁盤が4つ置かれている。

 

「さっそくですが、お願いできますか?」

「はい、分かりました」

 

 席に座り、碁盤を挟んで座り、棋力を聞きつつ、置き石を置く。

 

「いやあ、こんな可愛いお嬢ちゃんが来るとは思わなかったな」

「ちょっと頼りないかもしれないけど、せいいっぱい頑張りますね」

 

 和気藹々と楽しむ人ばかりで、ちょっとした会話をしながら指導碁を打つ。

 大手合いで一局打って勝ったのを褒めてもらったり。打ち筋について説明しては感心されたり。

 もう1人のプロは実力ではトップには遠く及ばないと自ら認めていたけれど、物腰は柔らかくて親切な方だった。ほとんど全員と指導碁を打ち、夕方のお開きの時間になったので、片付け始める。

 

「これから晩ご飯でも食べに行こうかって話なんだけど、藤崎さんは……誘わない方が良いよね?」

「あー、そうですね。家でお母さんが用意してくれてるので」

 

 成人していたら、せめて高校を卒業するくらいの年代なら、一緒に行っても良いかもしれないけれど、中学生で夜遅くまで出歩いていてたら、親もだけど警察の補導対象になっちゃう。

 

「まだ中学生だもんねぇ、いやはや、しっかりしててうちの孫とは大違いだ」

「お孫さん、何歳くらいなんですか?」

「今年から中学1年でね。女の子なのに柔道やるって言ってて、心配なんだよ」

「へぇ、凄いですね。やりたいことを決めていて、十分にしっかりしてるじゃないですか」

 

 柔道とか怖くて、私はできないよ。むしろその子の方が凄いかもしれない。

 私の言葉に、その人は照れたように笑う。口ではそんなこと言いながら、孫が可愛くてしょうがないって感じがする。

 話しながら外に出ると、横から声がかかった。

 

「あかり」

 

 びっくりして見ると、そこにはヒカルが立っていた。

 

「ヒカル! どうしたの、こんなところで」

「たまたま近くを通りかかったから。そういえば今日指導碁だって話してたからさ」

 

 やだ、嬉しい。周りの人が首を傾げたので、慌てて紹介する。

 

「あ、私と同期にプロになった進藤初段です。家も近くなので、彼と一緒に帰りますね」

「え、ああ。そうだね、その方が安心、かな。じゃあ、今日は一日お疲れ様」

「ありがとうございます、お疲れ様でした」

 

 ぺこりと頭を下げて、ヒカルと並んで一緒に外に出た人たちが帰るのを見送る。

 

「びっくりしたよ、急に声をかけてくるんだもん」

「まあな、別にわざわざ来なくてもいいと思ったんだけど、佐為がうるさくてよ」

 

 言った途端、耳に手をやる。佐為が何やら騒いでいるらしい。

 仲が良いのはいいけど、往来で騒ぐことじゃないよね。

 

「まあ、そういうことにしておく。ヒカル、ありがとね」

 

 優しい人ばかりとはいえ、緊張していたのは間違いない。ヒカルの手を取っても振りほどかずに握り返してくれたので、そのまま歩き出す。

 

「む、そろそろ背が抜かれそう」

「へっへっへ。俺だって伸びてんだぜ。今に三谷より高くなってやるさ」

「今も似たような高さだよね?」

「ああ。でもちょっとだけ負けてんだよなぁ」

「そっか。夏目くんより高くなるとは言わないの?」

「あいつとは差がありすぎるからなぁ」

 

 確かに、夏目くんは10センチ以上ヒカルや三谷くんより高い。和谷くんよりも高いし、もしかしたら小宮さんより高いかも。

 電車でも続けて話しているうちに、家に着く。1人だと移動時間も長く感じるけど、ヒカルと一緒ならあっという間だね。

 

 

 その週にあった十段戦で塔矢先生は緒方さんに敗れ、緒方十段が誕生した。

 新聞では、不戦敗がなければどうなったか分からないと書かれていたけど、塔矢先生自身は緒方さんの実力だって言ってるみたい。

 さらに十段戦で緒方さんに負けた数日後、名人位のみ残して、残りを返上した。

 

「引退じゃないけど、お前の言ってた通り、いくつかタイトル返上するんだな」

「うん。実際、どれだけ負担だったか分からないし、やっぱり引退を止めるのは無茶だったかな?」

「大丈夫じゃねえの? 本当に体調が悪くて無理なら、そんときは辞めるだろうし、自己管理ぐらいするだろ」

 

 ヒカルにそう言ってもらったけど、やっぱり心配。研究会が再開したら、直接塔矢先生から話を聞きたい。

 

 

 そして4月末、退院してから初めての、塔矢先生の研究会。

 みんな集まったところで、塔矢先生が事情を説明してくれた。

 

「棋戦に縛られて、なかなか研究の時間が取れなかったものでね。緒方くんとの十段戦は非常に楽しかったが、その気になればタイトル戦でなくとも、本気の碁が打てるからね」

「まあ、塔矢先生が望むのでしたら、いつでも」

 

 塔矢先生にちらりと目を向けられて、緒方さんが頷く。それを見て満足した様子で、説明を続ける。

 棋院で関係者と相談して、現時点でタイトルを持っている棋戦のスポンサーとも話をして納得してもらったらしい。

 

「今は韓国や中国が力を付けてきている。だから、ずっとというわけではないが、あちらに行って研鑽を積みたいと思っているのだよ」

「名人戦の防衛だけなら、3ヶ月ほどで済む、というわけですか」

 

 納得した様子で、緒方さんがため息を吐く。

 

「じゃあ、もし名人戦で負けたら、もしかしてその時は引退ですか?」

「どうかな、状況によるが。そう簡単には負けんよ」

 

 芦原さんの言葉に、自信を込めて宣言する。そして、病室でかわした話を意識してくれたんだろう。

 

「そんな心配するより、芦原は早く二次予選を突破しないとな」

「そうだな。今のところ緒方くんだけだが、この研究会の若いメンバーも挑戦者になってくれるのを期待してるよ」

 

 塔矢くん、私、明日美さんを見ながら、塔矢先生が笑う。

 顔が向かなかった芦原さんが首を傾げる。

 

「あれ、僕は?」

「どうにも詰めが甘いからな。芦原がアキラくんよりも先にリーグ戦に上がる気がしないな」

「そりゃ、アキラの快進撃は凄いですけど、俺だって頑張ってるんですよ」

「どうだかな。アキラくんはもちろん、藤崎か奈瀬の方がお前より先にリーグ戦にも参加してきそうだな」

 

 緒方さんってば。でも、芦原さんをからかう目的にしても、明日美さんや私の名前を挙げてくれるのは嬉しい。

 塔矢先生も緒方さんも、私たちが女だからと無下にしない。

 私も明日美さんも、まだプロになってすぐだし、棋戦も始まってない。一歩ずつ、でも確実に進めるように頑張ろう。

 

「おかしいな、この中じゃ一番リーグ戦に近いと思うんだけど」

「二次予選を突破できない以上、何を言っても説得力はないぞ」

 

 塔矢くんみたいに、1年目が終わった時点で名人戦以外の一次予選をすべて突破している人なんて、そうそういない。芦原さんは2つか3つは一次予選で負けてるし、塔矢くんの方が明らかにリーグ戦に近い。

 

 

 塔矢先生の研究会が終わって家に帰り、明日から行われる泊まりがけのイベント準備に取りかかる。と言っても、大盤解説や記念対局をするわけじゃなく、指導碁を打つだけ。ヒカルも来週のゴールデンウィークに、指導碁でイベントに参加する。同じイベントなら楽しめたのに、別々になっちゃって残念でしょうがない。

 でも、そのうち一緒のイベントに参加する機会もあると思うし、今は楽しみに取っておこう。

 

 

 そしてイベント当日。会場へ向かう前に、ヒカルの顔を見ておこうと思って家に寄る。

 

「あかり。昨日、じいちゃんの家に泥棒が入ってさ。じいちゃんの家に行ってくる。佐為が、碁盤がどうなったかって心配しててさ」

「うん、行ってあげて。夜に電話するね」

「おう。あかりも気をつけて行けよ」

「ありがと。行ってきます」

 

 うう、私もヒカルと一緒に行きたい。こんな時に限ってイベントがあるなんて。指導碁を楽しみにしているお客様もいるだろうし、まさかすっぽかすわけにもいかない。

 後ろ髪を引かれつつ、イベントへと向かう。

 都内から新幹線でおよそ1時間ちょっと、会場の最寄り駅にたどり着く。

 

「あれ、藤崎さんかい?」

「一柳先生! おはようございます」

「はい、おはよう。今日は藤崎さんもいるのか。じゃあ、俺の大盤対局、変わってもらおうかな」

「何をおっしゃるんですか。一柳先生の碁、楽しみにしているお客様ががっかりしますよ」

「代わりに藤崎さんが打ったら、喜ぶお客さんの方が多そうだけどね」

 

 相変わらず、口が達者だ。一柳先生の軽口に、特に今は癒やされる。でもヒカル、大丈夫かな。

 

「ん、何かあったのかい? ちょっと元気なさそうだけどさ」

「えっと、実は昨日……」

 

 かいつまんで事情を説明する。

 

「へえ、そりゃ大変だね。まあ、俺にできることはないけど、イベント中に何か困ったことがあったら、相談してくれよ」

「ありがとうございます」

 

 一柳先生、誰にも気軽な態度なのは良いけど、本当に相談する人がたくさんいたら、手が足りなくなるよね。棋聖の一柳先生に気軽に相談できるような人、たくさんいるわけがないけどね。

 一柳先生と一緒に会場へ入り、スタッフの説明を受ける。荷物を部屋に置いてから、オープニングセレモニーに参加する。

 指導碁を始める。東京から離れたから、知っている方はまったくいない。

 それはいいんだけど、意外と若い男性も多くて驚いた。

 

「藤崎プロって、今年のプロ試験で全勝だったんですよね。凄いな」

「ありがとうございます」

「1年目から、女流タイトル狙ってるの?」

「いえ、そこまでは。1つでも多く勝てるように頑張りますけど」

「同年代は相手にならないって思ってたり?」

「いえいえ、まさか」

 

 うーん、なんだろう。素直に褒めてくれる人もいれば、少しとげがある人もいる。まあ、しょうがないのかな。

 昼の休憩を挟んで、午後からは大盤を使った棋譜解説の手伝いを行う。

 八段の方が解説をして、私は大盤に大きな碁石を貼り付けていく係。たまに話を振られて、頷いたり言葉を返したり。

 途中、佐為なら違う手を解説するだろうなって思ったりもしたけど、顔に出さないよう注意しながら問題なく終わった。

 

「藤崎さん、お疲れ様」

「桜野さん。お疲れ様です」

 

 たまたま同室になった桜野さんが、晩ご飯に誘ってくれた。他にも仲が良い人を集めて、10人くらいで動く。

 居酒屋で、成人になっている人がお酒を頼む中、私を含めて3人くらいはジュースやウーロン茶。

 

「皆さん九星会なんですか?」

「ううん、違う子もいるわよ。そうそう、九星会と言えばね、来月、主宰の成澤先生が中国への親善試合を任されていて、それに慎ちゃんも来るのよ」

 

 慎ちゃん? 誰だろう。

 私が首を傾げると、桜野さんが口に手を当てる。

 

「ごめんね。伊角慎一郎だから、慎ちゃん」

「ああ、伊角さん。え? 中国?」

「そうなのよ。九星会も辞めちゃったけど、成澤先生は慎ちゃんに期待していて」

 

 へえ。なかなかプロになれない年度が続いてるみたいだけど、伊角さんは十分にプロとしてやっていけるだけの実力がある。

 九星会の先輩達も、歯がゆいだろうな。

 

「去年も、ほんの僅かな差というか、運というか」

「そうなのよねぇ。私なんて、慎ちゃん相手に結構負けてるんだから」

 

 あはは。桜野さんは、プロになった後も、碁の勉強をするというよりは生活できればいいって思ってる節がある。だから、プロになるために切磋琢磨している伊角さんの方が、やる気は高いだろうね。

 

「今年どうなるか分かりませんが、年齢を考えると、伊角さんも受かりたいですよね」

「うーん、まあ、私もプロになったのは20歳を越えてからだからね。一概に若くて合格すれば良いってもんじゃ……あ、ごめんなさい」

「いえ、そんな」

 

 本当に思っていることを口に出しただけで、私に対する当てつけって感じもない。桜野さんは、良い意味で裏表がない人だと思う。思ったことがすぐに口に出るというか。ふふ、ヒカルと一緒だね。

 

「さて、私たちは二次会に行くけど、あかりちゃんはどうする?」

「ごめんなさい、私、家に電話しないと」

「そうよねぇ、中学生だもんね」

 

 私以外の未成年の2人と一緒に、ホテルまで歩く。2人は仲が良いみたいで、雑談に花を咲かせている。

 私は囲碁絡みの話が上がった時にちょっと話に混ざるくらいで、ずっとヒカルのことを考えて歩く。碁盤、無事だったら良いんだけど。考え出すと、早く連絡したくてうずうずしてきた。急に走り出すわけにもいかないし、気持ちを落ち着けながら歩く。

 

「お、あれ、一柳棋聖じゃねえか?」

「ほんとだ」

 

 2人の言葉で目を向けると、一柳先生が何人か連れて歩いている。

 すれ違いざまに、3人でぺこりと頭を下げると、一柳先生が手を上げて応じてくれた。

 

「よっ。もう食べてきたのかい?」

「はい、九星会の桜野さんに誘っていただいて」

「そりゃ良かった。知り合いがいないと辛いからね。あ、その時は俺に声かけてよ」

「あはは、ありがとうございます」

 

 話しかけてくれるのは嬉しいけど、一緒に歩いている2人がびっくりしている。一柳先生の方には記者らしき人もいて、何やらメモを取っているんだけど、大丈夫かな。

 

「まあ、機会があれば行こうか。棋聖戦の記録係とか、やる時があればね」

「そうですね、その時には是非」

 

 なるほど、知り合いの子に声をかけた程度に済ませてくれるらしい。記者の人も、少しだけ気が抜けたように、メモを取ろうとしていたのを止めた。

 完全に声が聞こえないくらい離れてから、2人が興奮気味に声をかけてきた。

 

「藤崎さん、一柳棋聖と顔見知りなの?」

「はい、新初段シリーズでお相手をしていただいて、ちょっとお話をする機会があって」

「へえ。良いなぁ。俺、桑原本因坊だったけど、あっさり負けちまってさ、それでおしまいだよ」

 

 あらら、それは残念だね。明日美さんは勝って顔と名前を覚えてもらったから、桑原先生にも判断基準があるんだろう。

 

 

 ホテルに戻り、2人と別れて、早々に電話をかける。

 

「こんばんは。ヒカルいますか?」

「ええ、ちょっと待ってね」

 

 おばさんが出たので、ヒカルに変わってもらう。

 

「おう」

「ヒカル、どうだった?」

「んー、明日、帰ってくるんだよな? 詳しいことはそれから言うけどさ」

 

 ちょっと困ったような感じで、珍しくヒカルが言いよどんでいる。

 

「碁盤は盗まれてなかったし、大丈夫なんだけどさ、最初の時に、血の染みが見えるって言ってただろ?」

「うん、私には見えなかったけど」

「それが、消えてたんだ」

 

 消えてる? 染みが?

 

「それで、佐為も不思議がってさ。どう思う?」

「うーん。何だろう。でも、不思議がってるってことは、佐為も原因は分からないし、影響もなさそうなんだよね?」

 

 それが心配。ずっと残っていた染みが消えるなんて、一大事だと思う。

 

「……。ああ、佐為は何も問題ないってよ。だから余計に意味がわかんねえんだよな」

 

 そうだろうね。考えても埒が明かなそうだし、ヒカルの言うとおり、明日帰ってから詳しく聞こう。

 

「明日は、午前中の指導碁と、午後からちょっと手伝いがあるだけで、最後までいなくてもいいから、終わり次第帰るね」

「おう、明日も特に用事はないから、佐為と打って待ってるよ」

 

 時間潰しが佐為との対局なんて、塔矢くんや和谷くんが聞いたら怒るよ。

 さて、そうと決まれば、今日は早く寝よう。夜更かしは健康にも悪い。

 

「じゃあ、明日ね。おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

 

 挨拶を済ませて部屋に戻ってから気付く。お母さんに電話するの、忘れてた……。


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