Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
エリナ視点
遂に始まった第三の課題。そのテーマは、迷路。最初に行く順番は、前の2つの課題の合計点数の高い程決まるんだ。ボクは、課題の前に食事をした。グリフィンドールの席も見たけど、ハリーにロン、ハーミーは何故かいなかった。
クィディッチ競技場跡地に向かう。最初に、88点のボクとグラントが同時に出発した。その時に、シリウスとリーマス、キットさんにアドレーさん、ウィーズリーおばさんとビルさんが手を振ってるのが見えた。ボクも、手を振った。
「じゃあね。」グラントに言った。
「おう!エリナちゃんもな。」
グラントとは別方向を歩き出した。ボクが進んでいる道は、特に何もないようだ。右に曲がり、急ぎ足で、杖を頭の上に高く掲げて、なるべく先の方が見えるようにボクは進んだ。でも、見えるものは何も無かった。
ホイッスルが鳴った。恐らく、クラムさんが入場したんだろうね。急ごう。
ちなみにだけど、ボクは今までよりは最も、そして1番落ち着いていた。自分の力に自信があった。補助呪文の適性の方が高いけど、攻撃呪文の適性も決して低くないんだ。
それでも障害物や怪物は、それなりにいるだろうしね。だけど、ボクはそれ以上の怪物との戦闘経験もちゃんとあるんだ。それを生かせばいい。そして、ハリーやロイヤル・レインボー財団でのトレーニングも思い出す。
またホイッスルが鳴った。フラーかな?これで、代表選手は全員参加している事になっているわけだね。
その時、轟音が聞こえた。
「わっ!?何なに?」
音が聞こえた方向に向かってみる。グラントが、尻尾爆発スクリュートに襲われていた。
「ぐ、グラント!?」
「エリナちゃんか!エリナちゃんも逃げろ!ハグリッドさんのスクリュートだぜ!ユニコーンとかニフラーばっかりやってたからよぉ。ちょっと見ない間に小山くらいに大きくなってやがるぜ!!」
「うわ!本当だ!
逃げる手段を取りながらも、正しいルートに行ける様にする。南東を通った。
「ハア……ハア……ハア……何とか撒いた様だね。やっぱりあの生き物、好きにはなれないや。というか、ハグリッドの言うプロジェクトって、こういう事だったんだね。」
それでも、かなり距離は詰められた。さあ。引き締めて進んでいこう。
「大分歩いたなぁ。でも、優勝杯には未だ辿り着けず……か。グラントは大丈夫かなぁ?……!?これって……」
寒気がした。去年のあの時みたいな感覚だ。この、もう幸福な気分になれないんじゃないかという感覚。吸魂鬼だ。また、あの光景が――
『この子だけは!この子だけは!』
『どけ!どくのだ小娘!お辞儀をするのだ!』
「もう、これで喜んだりするボクじゃない!まだハリーが!シリウスとリーマスが!皆がいるんだもの!」
また声が聞こえた。メガネを掛けて、髪をクシャクシャしている。ハリーにそっくりな男の人だ。目は、ボクと同じハシバミ色をしている。パパだ!
『フン。お辞儀?この年になってまだ厨二病をこじらせてるのか?お前こそ、僕に跪くが良いさ!』
「そうだよね?パパ。行くよ。
牡鹿が、吸魂鬼を撃退する。
「でも、去年までと違うような……あ!いくらなんでも、ここに吸魂鬼なんて置かないよ!ダンブルドアが怒るもの!という事は!あなたは、まね妖怪ボガート!!」
本物なら、滑るように動く。だけど、この吸魂鬼は守護霊と衝突した時に転んだ。今更だけど気付いた。
「それだったらこれだよ!
招き猫に変えた。ボガートは消えてしまった。
「行こう。進まなくちゃ。
再び歩き出した。四方位呪文、光を出す呪文を唱えて。
10分後。…………右……左……右。袋小路に行き詰まっちゃった。
「だったら、意味ありげな金色の霧が漂ってる横道を行くしかなさそうだね。不思議と誘ってくる様な感じだけど。」
ボクは、道を進もうとした。すると、女の人の悲鳴が聞こえた。
「フラー!?ボクが行こうとしている道の先に!?」
霧の中を走った。その瞬間、天地が逆さまになった。
「うわっ!?宙吊り……違う!ちゃんと足はついてるのに、それは!ああっ!スカートが!って誰もいないから騒がなくて良いんだよね。」
でもフラーが危なさそうだよ。早く対処しないと。ハリーから、天地が逆さまになった時の対処呪文を教えて貰えば良かったよ。今更後悔しても遅いんだけどさ。
「考えよう。勇気ある一歩を踏み出すしか……!!」
天井から右足を引き抜いた。途端に、世界は元に戻った。
「これ良かったんだ。今までの苦労って?でもまあ、霧も晴れたみたいだね。まだキラキラしてるけど……もしかして、あの状態にして棄権を促したかったのかなぁ?まあ良いや。フラーを助けに行こう。」
先を歩くとフラーが見えた。
「フラー!」ボクは叫んだ。
「え、エリナ?」何か混乱してるみたい。
「どうしたの!?何があったの!?」
「クラーム、クラーム。気を……つ…………け…………」
フラーは意識を失った。
「クラムさんが?でもあの人、協議の公正さを求める人だもん。クィディッチの話をしてて分かったもの。プラチナイーグルを更に乗りこなす方法だって、教えて貰ったんだ。何か事情があるんだよ。」
フラーの杖を少し借りて、赤い火花を打ち上げた。
「よっこらせっと。うわあ、軽いなぁ。羨ましい。」
ボクは、フラーを壁にもたれかけさせた。
「じゃあね。クラムさんと、出来たら話をするから。」
フラーに別れを告げて、ボクは突き進んだ。四方位呪文をまた発動させて、今度は北西に進む。新しい道を見つけて、急ぎ足で歩いていると、何か声が聞こえた。早速行ってみよう。
「クラムさん!どうしちまったんだよぉ!」
それからクラムさんの声が聞こえた。
「
「グワアアアアアア!」
グラントの悲鳴が聞こえた。そこへ向かう。到着すると、グラントが地面でのた打ち回っていた。クラムさんは、覆いかぶさる様に立っている。
「グラントから離れて!
クラムさんの背中に、失神呪文を当てた。その場でピタリと動かなくなって、芝生の上にうつ伏せになって倒れた。
「大丈夫!?グラント?」
「ああ。大丈夫だぜ。でもよぉ、前に話した感じだとこんな真似はしない人なんだぜ。まるでよぉ、3年前のハーミーちゃんみたいだ。」
「フラーもクラムさんがやったみたいな言い方をしてた。だけど、許されざる呪文を簡単に使う人じゃないのは確かだよ。」
「だよなぁ。取り敢えず、杖を借りて赤い火花を打ち上げようぜ。」
「よろしくね。」
そう言って、クラムさんの所にすぐ救援が来る様にしたグラント。
「そんじゃ、俺は右行くぜ。エリナちゃんも頑張れよ。」
「グラントもね。ボクは左!」
グラントは右に行った。ボクは、左へ進んだ。脱落者は2人。ホグワーツに所属する、ボクとグラントだけに絞られた。これで、ホグワーツの優勝は決まったようなものかな?誰も脱落しなきゃだけど。
四方位呪文を使いながら、先へ先へと進むボク。袋小路に捕まる事はあったけど、段々闇が濃くなってくようだね。これって、中心に近付いてるって認識で良いのかなぁ?それはともかく、やる事は変わらないんだけど。
しばらく歩き続けるボク。杖灯りが何かを照らした。蠢いている。生き物みたいだ。
「あれって!試合前にビルが話してくれた生き物だ!ハグリッドがくれた本にも載ってた、スフィンクス。砂漠の賢者!そして……猫さん?」
「よくぞ見抜いたな。あなたは、ゴールの近くにいる。私が塞いでいるこの道こそ、1番の近道だ。余談だが、猫は余計だ。私の名前は、けつあご。」
名前が酷かった。
「通して。」
「それには、謎々を解いて貰う。正解すれば通す。間違えたら、お前の身ぐるみを全て剥がして、全身を舐めまわしてやる。立ち退くならば、私の所から返そう。無傷で。」
「わ、分かった。謎々出して。」
「本当は襲えと言われてるのだが、私とて君のような淑女を襲うのは不本意。ロリこそ至高の、私にとってはね。だから、謎々も随分と簡単にする。では、行くぞ。」
「何時でもどうぞ。」
「『注射の道具にもなり、泳ぐ為の道具にもなり、逃げる時の生贄にもなる。また、感情を表現する手段にもなっている。人間は、絵を描く時の道具にもしている。殆どの動物が持っているこれは何?』」
『う~ん。注射の道具、泳ぐ道具、逃げる時の生贄、感情表現、絵を描く時の道具、それは殆どの動物が持ってる…………あ!そういう事か!』
「分かった!答えが!」
「聞こう。」
「答えはね……」
スフィンクスだけに聞こえる様に囁いた。それを聞いて、ちょっぴり残念そうだったけど、それでも微笑んでくれたスフィンクス。立ち上がって、前足をグーンと伸ばし、脇に避けてボクに道を開けてくれた。
「ありがとう!」
「君の健闘を祈る。」
杖の方位を確認する。このまままっすぐで大丈夫そうだ。でも、また分かれ道があった。
「
杖はくるりと回って、右手の道を示した。その道を大急ぎで進んだ。
「優勝杯だ!台座の上で輝いているよ!綺麗!」
全力でダッシュした。手で掴めば届く距離まで近付いた。
「フウ。何とか間にあ……うわぁっ!?エリナちゃんか!?」
「あ、グラント同じタイミングで来たんだ。意外に早かったね。四方位呪文を使ったの?」
「いんや。一応ゼロに教えて貰ったけどよぉ、あんま芳しくなかったんだぜぇ。」
「今までどうやって来たの?」
「野生の勘って奴かなぁ?」逆に凄過ぎるよ。
「グラントの能力が関係ありそうだけど。どうする?もう、どっちがとってもホグワーツが勝つよ。」
「だよなぁ。エリナちゃんが取りたければ取れば良いと思うぜぇ。」
「折角だからさ。元々同点じゃん。一緒に取ろう。ね?」
ボクは、グラントにそう提案する。
「おっし。そうしよう!3つ数えたら触ろうか!」
「うん!1――2――3!」
ボクとグラントは、一緒に優勝杯の取っ手に触れた。その瞬間、ヘソの裏側の辺りがグイッと引っ張られる様に感じた。両足が地面を離れる。手が離せない。それはグラントも同じだった。風の唸り、色の渦の中を、優勝杯はボクとグラントの2人を引っ張って行く。
*
今頃、第三の課題は始まっているのだろう。だが、俺達は見に行かない。それどころではない事態が発生しているからだ。
ロナルド・ウィーズリー。俺と同じグリフィンドール生で、談話室のルームメイト。俺の親友だ。だが、いつからか折り合いが悪くなり、THPEの手引きを受け、ホグワーツを抜けようとしている。
それを止めようとしているのは、俺を含む5人の生徒。4年生3人。3年生1人。6年生1人。その内訳は、この俺ハリー・ポッター、ゼロ・フィールド、イドゥン・ブラック、エックス・ブラック、セドリック・ディゴリーだ。
俺達は、箒に乗って追跡をしている。
「姉ちゃん。しっかり掴まってて。」
「お願いしますよ。エックス。」
エックスとイドゥンは、ブルーボトルと呼ばれる箒に乗っている。2人乗りで、安全且つ信頼出来て、しかも防犯ブザー付きだ。セドリックは、クリーンスイープ10号。ゼロは、親父さんが生前愛用していた箒のシルバーアロー。俺は、プライベートで使っているレッドスパークに乗っている。
「ロンは、誰かと一緒みたいだな。」俺が全員にそう言った。
「どこにいるんだい?」セドリックが聞いていた。
「禁じられた森をゆっくりしたスピードで歩いてるよ。徒歩なのか?一緒にいる誰かの方はケンタウルス達と交戦したらしくて、少し弱ってるみたいだ。」
感知結果を伝えた。ゼロ、エックス、イドゥンは相変わらず凄いなと言う顔をし、セドリックは大変驚いている。
「セドリックさん。先輩の感知能力を侮らない方が良いですよ。最大範囲は半径5000キロ。しかも、一度感知した魔力は、2回目以降はより詳細な動きが手に取る様に分かるんですから。まして、その対象が4年近くも一緒にいたルームメイトであれば尚更です。」
セドリックは、エックスの言葉を聞いて苦笑した。
「アハハハ。ハリーが規格外過ぎるのは、よーく分かったよ。主にクィデッチの話になるけど、敵に回ると本当に恐ろしいや。そしてそれ以上に、味方だと本当に心強いね。」
他愛もない会話をしながら禁じられた森に入っていった。
しばらく箒で追跡をしていると、ある事にゼロが気付いた。
「おかしいな。」険しい顔になりながら、そう呟くゼロ。
「どうしたんですか?ゼロさん。」
「奴らPWPEもバカじゃない筈だ。追っ手が来る事なんて分かり切っている筈なのに。」
「え?それはどういう……」
エックスが聞こうとした事を遮って、イドゥンが間髪入れずにゼロにこう言い出した。
「つまりゼロ。あなたはこう言いたいわけですわね。足止めがいないのはおかしいと。」
「ああ。舐められているのか、取るに足らない存在だと認識してるのか。」
「ゼロの言う通り、不自然過ぎるな。その気になれば、1人でこちらを全滅させる事だって出来るのに。まあ、どちらにしてもだ……」
ゼロの考察に賛成の態度をしつつも、俺なりの認識を4人に教える。
「何をしてくるか分かったもんじゃない。たった1人だけでも、魔法界どころか国1つ地図の上から消せる奴らだからな。PWPEってのは。」
「それは誇張し過ぎなのでは?ハリー。」
「1度でも対面すれば分かる。まともにやりあって、勝てるような連中じゃない。抵抗出来るとしたら、ダンブルドアか変態ヘビ、ロイヤル・レインボー財団の上層部か特殊戦闘部隊位のものだよ。」
「抵抗出来る?倒せるや勝てるじゃなくてか?」
怪訝な表情でそう聞いて来るセドリック。
「ああ。どうやら奴らの、その桁違いの戦闘能力の秘訣はな。どうも、『覚醒』がキーワードになっている様なんだ。」
「先輩。覚醒ってなんですか?」
俺が言おうとする。だが、何処からか声が聞こえてきた。
「おやおや。その境地にまで達してない方々が、気安く『覚醒』の2文字を出さないでいただきたいですね。」
「ティファレト。そう言うな。何人かそこまで到達する奴がいるのだからな。」
「ティファレトだと!?」ゼロも叫んだ。
この声。1人は知らんが、もう1人は知ってる。ホグワーツに来てから2回目の夏休み、8月に入ってすぐに接触して来たんだ。
「やはりお前が絡んでいたのか!!」
俺は、箒から降りた。口寄せを解除した。他の4人もそうした。
「ハリー。何があった。謎の声が聞こえた瞬間、感情的になって叫ぶなんて。いつもの君らしくも無い。」
セドリックが心配そうに俺に声を掛ける。
「…………」どこだ。どこに居やがる。ゼロも何か言ってるが関係ねえ。
「そうカッカすんなよ、ハリー・ポッター。」
「どこだ!隠れてないで出て来やがれ!ゲブラー!!」
「ティファレト!俺と戦え!」ゼロ。あいつも誰かと因縁があるみたいだ。
俺の怒声が鳴り響いた瞬間、俺達5人の目の前に2人の人物が現れた。病人の様に青白い肌、全てが常人よりも鋭利な歯を持つ男。背中に刀を背負っている。
そしてもう1人。決して忘れられない顔の奴がいた。厚ぼったい瞼をしている。艶やかな黒髪をなびかせながら、茶色の目で俺達を見つめている男。その名は、ゲブラー。
「久しぶりだな。約2年ぶりになるか。あれから更に腕も上げたようだな。ケテルが褒めてたぜ。」
ウイルスモードを発動し、左手にアセビの杖を持った俺。今すぐにでも、コイツを潰さないと。
「それと、ゼロ・フィールド君ですね。お久しぶりです。どうやら、2年前よりも腕を上げて、ポッター君と同じ実力を誇っていますね。削りがいがあるじゃないですか。」
「闇の陣営が動き出した最初期に滅ぼされてしまったフィールド家の末裔だ。ティファレトよ。最強の戦闘一族のな。まあ、フィールド兄弟とローマの古代遺跡でやりあってるから分かるか。」
ティファレトって言うのか。もう1人の方は。こいつもかなりヤバいな。それに、何か隠し持ってやがる。
「あのゲブラーって奴。どこかで見た事がある様な…………」
エックスがゲブラーを見てそう呟いた。
「エックス。知ってるのか?」
「この男に出会ったのは、本当に今日が初めてなんです。ですが、屋敷のどこかでこいつの顔を見た様な感じがします。」
「帰ったら家系図を見て見ましょうか、エックス。」
エックスの言葉に対し、イドゥンが返した。
「ロンはどこにいる?」ゼロが2人を睨み付けながら口に出した。
「裏方のメンバーが付き添ってるぜ。歩きながら校門から出ようとしてる。予定外の襲撃に遭ったらしくてな。魔力を大量消費したんだ。あいつの摩訶不思議な術はしばらく使えない。」
「ゲブラーさんの言う通りですよ。皆さん。ケンタウルス達の連続弓矢攻撃には、流石の彼も、少々の傷を負いましてね。ですが、彼1人で何とか対処出来ましたよ。」
「ケンタウルス達はどうなったんだ?」セドリックが質問した。
「今はもう……無事では済まされてないでしょうねぇ…………我々の作戦の邪魔をしたんですから。」
その言葉を聞いて、思わずゾッとした。皆もそうだった。
「とにかくだ。ここから先に、足止め役がいる。1人1殺の覚悟で行かないと、お前ら死ぬぞ?」
足止め役はやっぱりいるんだな。
「口でロンが止まらないなら、今度は力づくであいつを連れ戻してやる!」
俺は、ゲブラーとティファレトを睨み付けながら力強くそう宣言した。だが2人は、その俺を見て逆に感心したような態度を取った。
「出来やしないとは言わないさ。この世には、完全や絶対という言葉が存在しない様に、不可能と言う言葉も何1つ存在しないからな。」
「あなた方が何処までやれるか、じっくりと拝見させていただきますよ。」
俺達とは逆方向に背を向けたゲブラーとティファレト。歩こうとした。
「敵を目の前に逃げる気か?」
エックスが問いただした。
「違うな。お前達は俺達の情けにより、そしてチャンスの為に生かされただけに過ぎない。今は、ロナルド・ウィーズリーを引き入れる事を最優先しているだけ。そして……」
「闇の帝王の勢力を、この世から1人残らず消し去る事も兼ねてですが。」
「死の飛翔をか!?」ゼロが驚いた。
「目障りな連中でな。今頃リーダーが、奴の下へ向かっている。さて、そろそろドロンさせて貰うぜ。」
「皆さんには、期待していますよ。」
2人の姿が見えなくなった。まるで消失したように。
「あいつら、細胞分身を使ってたのか。」
「ハリー。行こう。ロンに追いつけなくなる。」
セドリックが言った。俺はコクりと頷いた。
「行くぞ。奴らの思惑が何であれ、ロンを連れ戻す。ここで立ち止まってたら、本当に俺達は役立たずのカスに成り下がる。」
「そうですわね。」イドゥンが同意した。
「皆。行くぞ!」ゼロが叫んだ。
「ああ。」と、セドリック。
「はい。」エックスが続いた。
「皆にとっては、ロンは何の関係も無いかも知れない。イドゥン。君にとっては罵倒される始末だ。」
「ダンスパーティの時ですわね。腹は括っていましたけど、ある程度交流のある人間から言われたら多少は傷つきます。」
「だけど、俺にとっては友だ。そして同じ、ホグワーツの仲間だ。だから俺は、友を助けに行く。仲間を1人も救えない位なら、死んだほうがマシだ。」
皆、黙って俺の言葉を聞いている。
「皆。やろう。1人では無理かもしれないけど、5人なら何処までも行ける。何せ結束こそ、本当の力だからな。」
その言葉を聞き、ゼロが、セドリックが、エックスが、イドゥンが頷いた。
「当たり前だ。ここに来てから、命を張るって覚悟はしていたんだ。進もう。」
俺達5人は走り出した。森の生物と出会わない様に、感知能力を駆使しながらひたすら進んでいく。
10分後、やけに広い空間に辿り着いた。そこから通じる道は5つ。入ってすぐに、看板がある。
「1人1殺ってこういう事なのか。」俺が呟いた。
「1つの道には1人しか行けない。30分経たなければ、他の人間の侵入も不可能。時間も押してる。」
「ここは、1人で1つのフロアを担当しよう。その方が、効率が良いからね。」
セドリックが提案した。俺達4人は、それに賛成した。誰が何処の道に入るかを相談し合った。恨みっこ無しで、クジで決めたけどな。
結論からして、エックスが真ん中。セドリックが、入り口から見て左から2番目。ゼロは右端。イドゥンは左端。俺は、右から2番目になった。
「皆、健闘を祈る。」
ゼロがそう言って突き進んでいった。俺達も互いを見やる。それを終えたら、すぐさまそれぞれの道を進んでいった。
*
真ん中の道を進んだエックス。そこは、僅かな床しかない。下には、即死トラップの鋭利なトゲが存在する。辺りを見渡すと、人型ではあるが人間とは似ても似つかない存在の壁画が2体存在していた。壁画の文字には、古代ルーン文字で『パンテオン・エース』と書かれていた。
「死にそうなトラップに、奇妙な壁画。これで何をするんだろう?取り敢えず……」
口寄せ呪文で、箒を取り出した。先程のブルーボトルとは違い、スリザリンのクィディッチチームが使っているものと同型の別機体であるニンバス2001を口寄せ召喚したのだ。
「箒の準備をしておいた。後はこの壁画を調べて……」
突如、壁画に描かれた物体が動き出した。体色は紫色。さっそう人間とは思えない。顔がV字型のゴーグルになっていて、背中にオレンジ色の飛行パーツが搭載されている。それが2体。こいつ等が、エックスの相手なのだ。
*
セドリックの進んだ道。そこには、直立したヘラジカ型のモンスターがいた。青を基調としているあたり、冷気とかを使ってきそうな相手だなと言う印象を受ける。
「ふむー。こんな奴が俺様の相手かー。中々やりそうだが、ここでこの世からリタイヤして貰うぞー。このブリザック・スタグロフ様のブリザードで氷漬けにして叩き壊してやるー。じゃー行くぜー。ふむふむー!」
「悪いけど、ここで死ぬつもりは全く無いんでね。」
セドリックが静かに返した。
*
イドゥンの相手は、エジプトの神アヌビスに良く似た奴だった。地形は、砂漠と化している。
「我が名は、アヌビステップ・ネクロマンセス3世。砂漠の死の王……お前達の目的の者は、この先にいる。」
「つまり先に行きたければ、あなたを倒せと。そうおっしゃりたいわけですか。」
「それ以外に何がある。ゆくぞ。滅びを宣告されし、黒き王の末裔よ!!」
アヌビステップが宙に浮き上がる。杖を構えるイドゥン。
*
ゼロが進んだ先。そこは、巨大なブロックがたくさん存在していた。その真ん中に、白い猿を思わせるモンスターがいた。
「これはこれは。噂はかねがね、ティファレト様からお聞きしていますよ。古き時代の最強の戦闘一族の末裔、賢者の異名を持ちしゼロ・フィールドさん。そうですよね?」
「だったらどうした?そして賢者だと?この俺が……」
「私、ハヌマシーンと申します。とっくに滅びた一族の末裔、その身印を頂戴いたしますよ。我が組織、PWPEの威信にかけて。さあ、いざ尋常に勝負と行きましょう。」
ハヌマシーンが手持ちの棍を伸ばした。リーチと威力の底上げの為に。ゼロも杖とバトルシャフトを構えた。
*
俺が進む。大きな空間に辿り着いた。そこには、緑のゲル状の物体が存在した。虹色とも言うな。良く見ると、何かある。顔は赤いレンズ状で、メットは円を三方から囲むような形の頭部の様なものがある。
「雑魚にしては図体がデカいな……邪魔だ。すぐに叩きのめしてやる。」
口寄せ呪文で、凶嵐とミラクルガンナーを取り出した。いつでも使える様に、常に装備 出来る様にしておいた。
ゲル状は俺の存在を確認するや否や、人型を象った姿となったのだ。俺の倍の身長位だな。まるで悪魔だ。そう感じた。奴は、いいや。コードネームとして、これからは『
そんな訳の分からない物体もとい、レインボーデビルとの戦いが、今火蓋を切って落とされた。