Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第27話 第三の課題

エリナ視点

遂に始まった第三の課題。そのテーマは、迷路。最初に行く順番は、前の2つの課題の合計点数の高い程決まるんだ。ボクは、課題の前に食事をした。グリフィンドールの席も見たけど、ハリーにロン、ハーミーは何故かいなかった。

 

クィディッチ競技場跡地に向かう。最初に、88点のボクとグラントが同時に出発した。その時に、シリウスとリーマス、キットさんにアドレーさん、ウィーズリーおばさんとビルさんが手を振ってるのが見えた。ボクも、手を振った。

 

「じゃあね。」グラントに言った。

 

「おう!エリナちゃんもな。」

 

グラントとは別方向を歩き出した。ボクが進んでいる道は、特に何もないようだ。右に曲がり、急ぎ足で、杖を頭の上に高く掲げて、なるべく先の方が見えるようにボクは進んだ。でも、見えるものは何も無かった。

 

ホイッスルが鳴った。恐らく、クラムさんが入場したんだろうね。急ごう。

 

ちなみにだけど、ボクは今までよりは最も、そして1番落ち着いていた。自分の力に自信があった。補助呪文の適性の方が高いけど、攻撃呪文の適性も決して低くないんだ。

 

それでも障害物や怪物は、それなりにいるだろうしね。だけど、ボクはそれ以上の怪物との戦闘経験もちゃんとあるんだ。それを生かせばいい。そして、ハリーやロイヤル・レインボー財団でのトレーニングも思い出す。

 

またホイッスルが鳴った。フラーかな?これで、代表選手は全員参加している事になっているわけだね。

 

その時、轟音が聞こえた。

 

「わっ!?何なに?」

 

音が聞こえた方向に向かってみる。グラントが、尻尾爆発スクリュートに襲われていた。

 

「ぐ、グラント!?」

 

「エリナちゃんか!エリナちゃんも逃げろ!ハグリッドさんのスクリュートだぜ!ユニコーンとかニフラーばっかりやってたからよぉ。ちょっと見ない間に小山くらいに大きくなってやがるぜ!!」

 

「うわ!本当だ!方角示せ(ポイントミー)。」

 

逃げる手段を取りながらも、正しいルートに行ける様にする。南東を通った。

 

「ハア……ハア……ハア……何とか撒いた様だね。やっぱりあの生き物、好きにはなれないや。というか、ハグリッドの言うプロジェクトって、こういう事だったんだね。」

 

それでも、かなり距離は詰められた。さあ。引き締めて進んでいこう。

 

「大分歩いたなぁ。でも、優勝杯には未だ辿り着けず……か。グラントは大丈夫かなぁ?……!?これって……」

 

寒気がした。去年のあの時みたいな感覚だ。この、もう幸福な気分になれないんじゃないかという感覚。吸魂鬼だ。また、あの光景が――

 

『この子だけは!この子だけは!』

 

『どけ!どくのだ小娘!お辞儀をするのだ!』

 

「もう、これで喜んだりするボクじゃない!まだハリーが!シリウスとリーマスが!皆がいるんだもの!」

 

また声が聞こえた。メガネを掛けて、髪をクシャクシャしている。ハリーにそっくりな男の人だ。目は、ボクと同じハシバミ色をしている。パパだ!

 

『フン。お辞儀?この年になってまだ厨二病をこじらせてるのか?お前こそ、僕に跪くが良いさ!』

 

「そうだよね?パパ。行くよ。守護霊よ来たれ(エクスペクト・パトローナム)!」

 

牡鹿が、吸魂鬼を撃退する。

 

「でも、去年までと違うような……あ!いくらなんでも、ここに吸魂鬼なんて置かないよ!ダンブルドアが怒るもの!という事は!あなたは、まね妖怪ボガート!!」

 

本物なら、滑るように動く。だけど、この吸魂鬼は守護霊と衝突した時に転んだ。今更だけど気付いた。

 

「それだったらこれだよ!馬鹿馬鹿しい(リディクラス)!!」

 

招き猫に変えた。ボガートは消えてしまった。

 

「行こう。進まなくちゃ。方角示せ(ポイントミー)光よ(ルーモス)!」

 

再び歩き出した。四方位呪文、光を出す呪文を唱えて。

 

10分後。…………右……左……右。袋小路に行き詰まっちゃった。

 

「だったら、意味ありげな金色の霧が漂ってる横道を行くしかなさそうだね。不思議と誘ってくる様な感じだけど。」

 

ボクは、道を進もうとした。すると、女の人の悲鳴が聞こえた。

 

「フラー!?ボクが行こうとしている道の先に!?」

 

霧の中を走った。その瞬間、天地が逆さまになった。

 

「うわっ!?宙吊り……違う!ちゃんと足はついてるのに、それは!ああっ!スカートが!って誰もいないから騒がなくて良いんだよね。」

 

でもフラーが危なさそうだよ。早く対処しないと。ハリーから、天地が逆さまになった時の対処呪文を教えて貰えば良かったよ。今更後悔しても遅いんだけどさ。

 

「考えよう。勇気ある一歩を踏み出すしか……!!」

 

天井から右足を引き抜いた。途端に、世界は元に戻った。

 

「これ良かったんだ。今までの苦労って?でもまあ、霧も晴れたみたいだね。まだキラキラしてるけど……もしかして、あの状態にして棄権を促したかったのかなぁ?まあ良いや。フラーを助けに行こう。」

 

先を歩くとフラーが見えた。

 

「フラー!」ボクは叫んだ。

 

「え、エリナ?」何か混乱してるみたい。

 

「どうしたの!?何があったの!?」

 

「クラーム、クラーム。気を……つ…………け…………」

 

フラーは意識を失った。

 

「クラムさんが?でもあの人、協議の公正さを求める人だもん。クィディッチの話をしてて分かったもの。プラチナイーグルを更に乗りこなす方法だって、教えて貰ったんだ。何か事情があるんだよ。」

 

フラーの杖を少し借りて、赤い火花を打ち上げた。

 

「よっこらせっと。うわあ、軽いなぁ。羨ましい。」

 

ボクは、フラーを壁にもたれかけさせた。

 

「じゃあね。クラムさんと、出来たら話をするから。」

 

フラーに別れを告げて、ボクは突き進んだ。四方位呪文をまた発動させて、今度は北西に進む。新しい道を見つけて、急ぎ足で歩いていると、何か声が聞こえた。早速行ってみよう。

 

「クラムさん!どうしちまったんだよぉ!」

 

それからクラムさんの声が聞こえた。

 

苦しめ(クルーシオ)!」

 

「グワアアアアアア!」

 

グラントの悲鳴が聞こえた。そこへ向かう。到着すると、グラントが地面でのた打ち回っていた。クラムさんは、覆いかぶさる様に立っている。

 

「グラントから離れて!麻痺せよ(ストゥーピファイ)!」

 

クラムさんの背中に、失神呪文を当てた。その場でピタリと動かなくなって、芝生の上にうつ伏せになって倒れた。

 

「大丈夫!?グラント?」

 

「ああ。大丈夫だぜ。でもよぉ、前に話した感じだとこんな真似はしない人なんだぜ。まるでよぉ、3年前のハーミーちゃんみたいだ。」

 

「フラーもクラムさんがやったみたいな言い方をしてた。だけど、許されざる呪文を簡単に使う人じゃないのは確かだよ。」

 

「だよなぁ。取り敢えず、杖を借りて赤い火花を打ち上げようぜ。」

 

「よろしくね。」

 

そう言って、クラムさんの所にすぐ救援が来る様にしたグラント。

 

「そんじゃ、俺は右行くぜ。エリナちゃんも頑張れよ。」

 

「グラントもね。ボクは左!」

 

グラントは右に行った。ボクは、左へ進んだ。脱落者は2人。ホグワーツに所属する、ボクとグラントだけに絞られた。これで、ホグワーツの優勝は決まったようなものかな?誰も脱落しなきゃだけど。

 

四方位呪文を使いながら、先へ先へと進むボク。袋小路に捕まる事はあったけど、段々闇が濃くなってくようだね。これって、中心に近付いてるって認識で良いのかなぁ?それはともかく、やる事は変わらないんだけど。

 

しばらく歩き続けるボク。杖灯りが何かを照らした。蠢いている。生き物みたいだ。

 

「あれって!試合前にビルが話してくれた生き物だ!ハグリッドがくれた本にも載ってた、スフィンクス。砂漠の賢者!そして……猫さん?」

 

「よくぞ見抜いたな。あなたは、ゴールの近くにいる。私が塞いでいるこの道こそ、1番の近道だ。余談だが、猫は余計だ。私の名前は、けつあご。」

 

名前が酷かった。

 

「通して。」

 

「それには、謎々を解いて貰う。正解すれば通す。間違えたら、お前の身ぐるみを全て剥がして、全身を舐めまわしてやる。立ち退くならば、私の所から返そう。無傷で。」

 

「わ、分かった。謎々出して。」

 

「本当は襲えと言われてるのだが、私とて君のような淑女を襲うのは不本意。ロリこそ至高の、私にとってはね。だから、謎々も随分と簡単にする。では、行くぞ。」

 

「何時でもどうぞ。」

 

「『注射の道具にもなり、泳ぐ為の道具にもなり、逃げる時の生贄にもなる。また、感情を表現する手段にもなっている。人間は、絵を描く時の道具にもしている。殆どの動物が持っているこれは何?』」

 

『う~ん。注射の道具、泳ぐ道具、逃げる時の生贄、感情表現、絵を描く時の道具、それは殆どの動物が持ってる…………あ!そういう事か!』

 

「分かった!答えが!」

 

「聞こう。」

 

「答えはね……」

 

スフィンクスだけに聞こえる様に囁いた。それを聞いて、ちょっぴり残念そうだったけど、それでも微笑んでくれたスフィンクス。立ち上がって、前足をグーンと伸ばし、脇に避けてボクに道を開けてくれた。

 

「ありがとう!」

 

「君の健闘を祈る。」

 

杖の方位を確認する。このまままっすぐで大丈夫そうだ。でも、また分かれ道があった。

 

方角示せ(ポイントミー)!」

 

杖はくるりと回って、右手の道を示した。その道を大急ぎで進んだ。

 

「優勝杯だ!台座の上で輝いているよ!綺麗!」

 

全力でダッシュした。手で掴めば届く距離まで近付いた。

 

「フウ。何とか間にあ……うわぁっ!?エリナちゃんか!?」

 

「あ、グラント同じタイミングで来たんだ。意外に早かったね。四方位呪文を使ったの?」

 

「いんや。一応ゼロに教えて貰ったけどよぉ、あんま芳しくなかったんだぜぇ。」

 

「今までどうやって来たの?」

 

「野生の勘って奴かなぁ?」逆に凄過ぎるよ。

 

「グラントの能力が関係ありそうだけど。どうする?もう、どっちがとってもホグワーツが勝つよ。」

 

「だよなぁ。エリナちゃんが取りたければ取れば良いと思うぜぇ。」

 

「折角だからさ。元々同点じゃん。一緒に取ろう。ね?」

 

ボクは、グラントにそう提案する。

 

「おっし。そうしよう!3つ数えたら触ろうか!」

 

「うん!1――2――3!」

 

ボクとグラントは、一緒に優勝杯の取っ手に触れた。その瞬間、ヘソの裏側の辺りがグイッと引っ張られる様に感じた。両足が地面を離れる。手が離せない。それはグラントも同じだった。風の唸り、色の渦の中を、優勝杯はボクとグラントの2人を引っ張って行く。

 

*

 

今頃、第三の課題は始まっているのだろう。だが、俺達は見に行かない。それどころではない事態が発生しているからだ。

 

ロナルド・ウィーズリー。俺と同じグリフィンドール生で、談話室のルームメイト。俺の親友だ。だが、いつからか折り合いが悪くなり、THPEの手引きを受け、ホグワーツを抜けようとしている。

 

それを止めようとしているのは、俺を含む5人の生徒。4年生3人。3年生1人。6年生1人。その内訳は、この俺ハリー・ポッター、ゼロ・フィールド、イドゥン・ブラック、エックス・ブラック、セドリック・ディゴリーだ。

 

俺達は、箒に乗って追跡をしている。

 

「姉ちゃん。しっかり掴まってて。」

 

「お願いしますよ。エックス。」

 

エックスとイドゥンは、ブルーボトルと呼ばれる箒に乗っている。2人乗りで、安全且つ信頼出来て、しかも防犯ブザー付きだ。セドリックは、クリーンスイープ10号。ゼロは、親父さんが生前愛用していた箒のシルバーアロー。俺は、プライベートで使っているレッドスパークに乗っている。

 

「ロンは、誰かと一緒みたいだな。」俺が全員にそう言った。

 

「どこにいるんだい?」セドリックが聞いていた。

 

「禁じられた森をゆっくりしたスピードで歩いてるよ。徒歩なのか?一緒にいる誰かの方はケンタウルス達と交戦したらしくて、少し弱ってるみたいだ。」

 

感知結果を伝えた。ゼロ、エックス、イドゥンは相変わらず凄いなと言う顔をし、セドリックは大変驚いている。

 

「セドリックさん。先輩の感知能力を侮らない方が良いですよ。最大範囲は半径5000キロ。しかも、一度感知した魔力は、2回目以降はより詳細な動きが手に取る様に分かるんですから。まして、その対象が4年近くも一緒にいたルームメイトであれば尚更です。」

 

セドリックは、エックスの言葉を聞いて苦笑した。

 

「アハハハ。ハリーが規格外過ぎるのは、よーく分かったよ。主にクィデッチの話になるけど、敵に回ると本当に恐ろしいや。そしてそれ以上に、味方だと本当に心強いね。」

 

他愛もない会話をしながら禁じられた森に入っていった。

 

しばらく箒で追跡をしていると、ある事にゼロが気付いた。

 

「おかしいな。」険しい顔になりながら、そう呟くゼロ。

 

「どうしたんですか?ゼロさん。」

 

「奴らPWPEもバカじゃない筈だ。追っ手が来る事なんて分かり切っている筈なのに。」

 

「え?それはどういう……」

 

エックスが聞こうとした事を遮って、イドゥンが間髪入れずにゼロにこう言い出した。

 

「つまりゼロ。あなたはこう言いたいわけですわね。足止めがいないのはおかしいと。」

 

「ああ。舐められているのか、取るに足らない存在だと認識してるのか。」

 

「ゼロの言う通り、不自然過ぎるな。その気になれば、1人でこちらを全滅させる事だって出来るのに。まあ、どちらにしてもだ……」

 

ゼロの考察に賛成の態度をしつつも、俺なりの認識を4人に教える。

 

「何をしてくるか分かったもんじゃない。たった1人だけでも、魔法界どころか国1つ地図の上から消せる奴らだからな。PWPEってのは。」

 

「それは誇張し過ぎなのでは?ハリー。」

 

「1度でも対面すれば分かる。まともにやりあって、勝てるような連中じゃない。抵抗出来るとしたら、ダンブルドアか変態ヘビ、ロイヤル・レインボー財団の上層部か特殊戦闘部隊位のものだよ。」

 

「抵抗出来る?倒せるや勝てるじゃなくてか?」

 

怪訝な表情でそう聞いて来るセドリック。

 

「ああ。どうやら奴らの、その桁違いの戦闘能力の秘訣はな。どうも、『覚醒』がキーワードになっている様なんだ。」

 

「先輩。覚醒ってなんですか?」

 

俺が言おうとする。だが、何処からか声が聞こえてきた。

 

「おやおや。その境地にまで達してない方々が、気安く『覚醒』の2文字を出さないでいただきたいですね。」

 

「ティファレト。そう言うな。何人かそこまで到達する奴がいるのだからな。」

 

「ティファレトだと!?」ゼロも叫んだ。

 

この声。1人は知らんが、もう1人は知ってる。ホグワーツに来てから2回目の夏休み、8月に入ってすぐに接触して来たんだ。

 

「やはりお前が絡んでいたのか!!」

 

俺は、箒から降りた。口寄せを解除した。他の4人もそうした。

 

「ハリー。何があった。謎の声が聞こえた瞬間、感情的になって叫ぶなんて。いつもの君らしくも無い。」

 

セドリックが心配そうに俺に声を掛ける。

 

「…………」どこだ。どこに居やがる。ゼロも何か言ってるが関係ねえ。

 

「そうカッカすんなよ、ハリー・ポッター。」

 

「どこだ!隠れてないで出て来やがれ!ゲブラー!!」

 

「ティファレト!俺と戦え!」ゼロ。あいつも誰かと因縁があるみたいだ。

 

俺の怒声が鳴り響いた瞬間、俺達5人の目の前に2人の人物が現れた。病人の様に青白い肌、全てが常人よりも鋭利な歯を持つ男。背中に刀を背負っている。

 

そしてもう1人。決して忘れられない顔の奴がいた。厚ぼったい瞼をしている。艶やかな黒髪をなびかせながら、茶色の目で俺達を見つめている男。その名は、ゲブラー。

 

「久しぶりだな。約2年ぶりになるか。あれから更に腕も上げたようだな。ケテルが褒めてたぜ。」

 

ウイルスモードを発動し、左手にアセビの杖を持った俺。今すぐにでも、コイツを潰さないと。

 

「それと、ゼロ・フィールド君ですね。お久しぶりです。どうやら、2年前よりも腕を上げて、ポッター君と同じ実力を誇っていますね。削りがいがあるじゃないですか。」

 

「闇の陣営が動き出した最初期に滅ぼされてしまったフィールド家の末裔だ。ティファレトよ。最強の戦闘一族のな。まあ、フィールド兄弟とローマの古代遺跡でやりあってるから分かるか。」

 

ティファレトって言うのか。もう1人の方は。こいつもかなりヤバいな。それに、何か隠し持ってやがる。

 

「あのゲブラーって奴。どこかで見た事がある様な…………」

 

エックスがゲブラーを見てそう呟いた。

 

「エックス。知ってるのか?」

 

「この男に出会ったのは、本当に今日が初めてなんです。ですが、屋敷のどこかでこいつの顔を見た様な感じがします。」

 

「帰ったら家系図を見て見ましょうか、エックス。」

 

エックスの言葉に対し、イドゥンが返した。

 

「ロンはどこにいる?」ゼロが2人を睨み付けながら口に出した。

 

「裏方のメンバーが付き添ってるぜ。歩きながら校門から出ようとしてる。予定外の襲撃に遭ったらしくてな。魔力を大量消費したんだ。あいつの摩訶不思議な術はしばらく使えない。」

 

「ゲブラーさんの言う通りですよ。皆さん。ケンタウルス達の連続弓矢攻撃には、流石の彼も、少々の傷を負いましてね。ですが、彼1人で何とか対処出来ましたよ。」

 

「ケンタウルス達はどうなったんだ?」セドリックが質問した。

 

「今はもう……無事では済まされてないでしょうねぇ…………我々の作戦の邪魔をしたんですから。」

 

その言葉を聞いて、思わずゾッとした。皆もそうだった。

 

「とにかくだ。ここから先に、足止め役がいる。1人1殺の覚悟で行かないと、お前ら死ぬぞ?」

 

足止め役はやっぱりいるんだな。

 

「口でロンが止まらないなら、今度は力づくであいつを連れ戻してやる!」

 

俺は、ゲブラーとティファレトを睨み付けながら力強くそう宣言した。だが2人は、その俺を見て逆に感心したような態度を取った。

 

「出来やしないとは言わないさ。この世には、完全や絶対という言葉が存在しない様に、不可能と言う言葉も何1つ存在しないからな。」

 

「あなた方が何処までやれるか、じっくりと拝見させていただきますよ。」

 

俺達とは逆方向に背を向けたゲブラーとティファレト。歩こうとした。

 

「敵を目の前に逃げる気か?」

 

エックスが問いただした。

 

「違うな。お前達は俺達の情けにより、そしてチャンスの為に生かされただけに過ぎない。今は、ロナルド・ウィーズリーを引き入れる事を最優先しているだけ。そして……」

 

「闇の帝王の勢力を、この世から1人残らず消し去る事も兼ねてですが。」

 

「死の飛翔をか!?」ゼロが驚いた。

 

「目障りな連中でな。今頃リーダーが、奴の下へ向かっている。さて、そろそろドロンさせて貰うぜ。」

 

「皆さんには、期待していますよ。」

 

2人の姿が見えなくなった。まるで消失したように。

 

「あいつら、細胞分身を使ってたのか。」

 

「ハリー。行こう。ロンに追いつけなくなる。」

 

セドリックが言った。俺はコクりと頷いた。

 

「行くぞ。奴らの思惑が何であれ、ロンを連れ戻す。ここで立ち止まってたら、本当に俺達は役立たずのカスに成り下がる。」

 

「そうですわね。」イドゥンが同意した。

 

「皆。行くぞ!」ゼロが叫んだ。

 

「ああ。」と、セドリック。

 

「はい。」エックスが続いた。

 

「皆にとっては、ロンは何の関係も無いかも知れない。イドゥン。君にとっては罵倒される始末だ。」

 

「ダンスパーティの時ですわね。腹は括っていましたけど、ある程度交流のある人間から言われたら多少は傷つきます。」

 

「だけど、俺にとっては友だ。そして同じ、ホグワーツの仲間だ。だから俺は、友を助けに行く。仲間を1人も救えない位なら、死んだほうがマシだ。」

 

皆、黙って俺の言葉を聞いている。

 

「皆。やろう。1人では無理かもしれないけど、5人なら何処までも行ける。何せ結束こそ、本当の力だからな。」

 

その言葉を聞き、ゼロが、セドリックが、エックスが、イドゥンが頷いた。

 

「当たり前だ。ここに来てから、命を張るって覚悟はしていたんだ。進もう。」

 

俺達5人は走り出した。森の生物と出会わない様に、感知能力を駆使しながらひたすら進んでいく。

 

10分後、やけに広い空間に辿り着いた。そこから通じる道は5つ。入ってすぐに、看板がある。

 

「1人1殺ってこういう事なのか。」俺が呟いた。

 

「1つの道には1人しか行けない。30分経たなければ、他の人間の侵入も不可能。時間も押してる。」

 

「ここは、1人で1つのフロアを担当しよう。その方が、効率が良いからね。」

 

セドリックが提案した。俺達4人は、それに賛成した。誰が何処の道に入るかを相談し合った。恨みっこ無しで、クジで決めたけどな。

 

結論からして、エックスが真ん中。セドリックが、入り口から見て左から2番目。ゼロは右端。イドゥンは左端。俺は、右から2番目になった。

 

「皆、健闘を祈る。」

 

ゼロがそう言って突き進んでいった。俺達も互いを見やる。それを終えたら、すぐさまそれぞれの道を進んでいった。

 

*

 

真ん中の道を進んだエックス。そこは、僅かな床しかない。下には、即死トラップの鋭利なトゲが存在する。辺りを見渡すと、人型ではあるが人間とは似ても似つかない存在の壁画が2体存在していた。壁画の文字には、古代ルーン文字で『パンテオン・エース』と書かれていた。

 

「死にそうなトラップに、奇妙な壁画。これで何をするんだろう?取り敢えず……」

 

口寄せ呪文で、箒を取り出した。先程のブルーボトルとは違い、スリザリンのクィディッチチームが使っているものと同型の別機体であるニンバス2001を口寄せ召喚したのだ。

 

「箒の準備をしておいた。後はこの壁画を調べて……」

 

突如、壁画に描かれた物体が動き出した。体色は紫色。さっそう人間とは思えない。顔がV字型のゴーグルになっていて、背中にオレンジ色の飛行パーツが搭載されている。それが2体。こいつ等が、エックスの相手なのだ。

 

*

 

セドリックの進んだ道。そこには、直立したヘラジカ型のモンスターがいた。青を基調としているあたり、冷気とかを使ってきそうな相手だなと言う印象を受ける。

 

「ふむー。こんな奴が俺様の相手かー。中々やりそうだが、ここでこの世からリタイヤして貰うぞー。このブリザック・スタグロフ様のブリザードで氷漬けにして叩き壊してやるー。じゃー行くぜー。ふむふむー!」

 

「悪いけど、ここで死ぬつもりは全く無いんでね。」

 

セドリックが静かに返した。

 

*

 

イドゥンの相手は、エジプトの神アヌビスに良く似た奴だった。地形は、砂漠と化している。

 

「我が名は、アヌビステップ・ネクロマンセス3世。砂漠の死の王……お前達の目的の者は、この先にいる。」

 

「つまり先に行きたければ、あなたを倒せと。そうおっしゃりたいわけですか。」

 

「それ以外に何がある。ゆくぞ。滅びを宣告されし、黒き王の末裔よ!!」

 

アヌビステップが宙に浮き上がる。杖を構えるイドゥン。

 

*

 

ゼロが進んだ先。そこは、巨大なブロックがたくさん存在していた。その真ん中に、白い猿を思わせるモンスターがいた。

 

「これはこれは。噂はかねがね、ティファレト様からお聞きしていますよ。古き時代の最強の戦闘一族の末裔、賢者の異名を持ちしゼロ・フィールドさん。そうですよね?」

 

「だったらどうした?そして賢者だと?この俺が……」

 

「私、ハヌマシーンと申します。とっくに滅びた一族の末裔、その身印を頂戴いたしますよ。我が組織、PWPEの威信にかけて。さあ、いざ尋常に勝負と行きましょう。」

 

ハヌマシーンが手持ちの棍を伸ばした。リーチと威力の底上げの為に。ゼロも杖とバトルシャフトを構えた。

 

*

 

俺が進む。大きな空間に辿り着いた。そこには、緑のゲル状の物体が存在した。虹色とも言うな。良く見ると、何かある。顔は赤いレンズ状で、メットは円を三方から囲むような形の頭部の様なものがある。

 

「雑魚にしては図体がデカいな……邪魔だ。すぐに叩きのめしてやる。」

 

口寄せ呪文で、凶嵐とミラクルガンナーを取り出した。いつでも使える様に、常に装備 出来る様にしておいた。

 

ゲル状は俺の存在を確認するや否や、人型を象った姿となったのだ。俺の倍の身長位だな。まるで悪魔だ。そう感じた。奴は、いいや。コードネームとして、これからは『虹の悪魔(レインボーデビル)』と呼ぶとしよう。

 

そんな訳の分からない物体もとい、レインボーデビルとの戦いが、今火蓋を切って落とされた。

 


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