Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第25話 第二の課題(後編)

エリナ視点

1995年2月24日。第二の課題当日。ボクは昨日、夕食を食べてからすぐに眠ったんだ。特訓の疲れが来たからね。夜の8時くらいになるかと思う。だから、朝は早かった。5時に起きたから。我ながら早いなと思ったのが、ボクの感想なんだ。

 

食事をしたら、すぐに湖に行ける様、準備をしておいた。ローブの下には、ビキニタイプの水着を着用した。色はハッフルパフと同じ、カナリアイエローにした。

 

朝食を食べている時、ハッフルパフ生を中心に励ましの声が送られた。レイブンクローからはシエル、スリザリンからはイドゥンとルイン、グリフィンドールからはネビルとフレッジョの双子からね。ロンからは、棘のある視線を送られてる様な気がする。そして何故か、ハリーとハーミー、ゼロの姿が見当たらなかった。グラントも何故かいない。

 

それを疑問に思いながらも、ボクは湖へ直行した。時間を見ると8時だ。どうやら、1番乗りみたい。バクマンさんは、とても喜んでいる。どうしたんだろう?やけにボクに好意的だけど。

 

ローブを脱いで、下から水着姿を晒した。ハリー曰く、普通は競泳水着の方が適しているとの事。でも、ボクのやる方法ならビキニの方が断然良いんだって。

 

試合開始は9時20分。その55分前にクラムさんが、40分前にデラクールさんが来た。それぞれ、ランニングシャツに短パンの水着、競泳水着を着用している。

 

グラントは、10分前になっても来てない。それには大勢の人が疑問に感じ始めていた。特にスリザリン生は、戸惑いの声が隠せない。カルカロフ校長とマダム・マクシームはチラチラと時計を見ている。病気がちのクラウチさんに代わって審査員を務めているパーシーは、落ち着きなく歩き続けている。バクマンさんはどうしたんだろうという表情をしていたし、ボクも心配になって来た。

 

2分前になって、グラントが到着。ローブだけみたいだね。それに、寝坊したってコッソリと教えてくれた。自分が取り返すのはゼロだって事も教えてくれた。あれ?という事は、朝に見かけなかったハリーやハーミーもひょっとして……

 

それでも、試合は開始される。バクマンさんの声が聞こえる。

 

「さて、全選手の準備が完了しました。第二の課題は、私のホイッスルを合図に始まります。選手達は、1時間以内に奪われたものを取り返さなければなりません。では、3つ数えます。1……2……3!」

 

ホイッスルの高い音が鳴り響き、一気に湖へと飛び込む。グラントが直前にm何かを口に入れたのを、ボクは見逃さなかった。湖へ入ると、その途端に突き刺す様な冷たさが肌を覆っていく感覚が、ボクに襲い掛かって来たんだ。まだ顔だけ水の上にあるので、周囲は不思議そうにしていた。

 

『……まずは落ち着こう。この、肌が焼ける様な感覚の中で、冷静さを欠かない様にしなくちゃ。早速手筈通りにしよう。』

 

泡よ覆いたまえ(パースプマム・アワーズ)防暑・防寒せよ(フリグシェ・トレランティア)圧力を減らせ(レーデュシュラ・プレスラ)暖かな光よ、生命を守りたまえ(カリルチェン・ケストディマム)。」

 

一気に4つの呪文を使った。空気を確保し、寒さから身を守り、水圧による身体の負荷を少なくした。そして、その効果を増幅する為に環境適応呪文を使用した。最後は、水中を素早く動く手段。変身術を使おう。

 

「我が身体を人魚へ変えたまえ《リメルク・カーパミウム・シレーナ》!」

 

今度は、ボク自身の身体を人魚にした。下半身は、魚になった。ママやハリーと同じ、綺麗なエメラルドグリーンの鱗がある。これで準備万端。早速行こう。ダイビングした。魚の尻尾となった下半身を一瞬だけ水上に晒した。

 

氷の様な湖の水は、命の水みたいに感じられた。冷たさが、逆に心地良くなった。さっきまでは、肌が焼ける様な痛みを齎してたのにね。

 

ある程度進んでいくと、グリンデローが襲い掛かって来た。だけど、去年のリーマスの授業で散々習ったから、今のボクにとっては敵じゃない。難なく撃退出来た。

 

また深く進んでいく。すると、声が聞こえた。金の卵の歌声だ。内容も全く一緒。

 

「この声に沿って、進めば良いんだね?」

 

聞こえる方向へ向けて出発した。すると、藻に覆われた荒削りの住居の群れが、薄暗がりの中から突然姿を現す。水中人(マーピープル)。童話で見る人魚には似ても似つかない。尤も、童話通りの人魚も、この世界をじっくりと探せば見つかるかもなと、ハリーが前に言ってた気がするんだ。

 

水中人は、じっくりとボクを見つめていた。さっさと通り過ぎてしまおう。

 

もっと奥へ進む。大岩を削った巨大な水中人の像が見えた。コーラス隊と思わしき水中人数人が歌っている。像の尾の部分には、4人の人間が縛り付けられていた。

 

「ハリー!ゼロ!ハーミー!」

 

思わず叫んだ。知らない女の子は、8歳位。髪の色からしてデラクールさんの妹だろうとすぐに分かった。朝見かけないと思ったら、こうなってたんだ。口寄せ呪文で、シリウスから貰ったペンナイフを取り出す。全員を助けなくては。

 

まずは、ボクの近くにいたハリーを解放した。続けて他の人質を解放しようとする。

 

「自分の人質、その少年だけを連れていけ。他の者は放っておけ。」

 

水中人の1人が、ボクに冷たくそう告げた。そんな事出来ないよ。

 

「見逃せないよ!ゼロもハーミーは、ボクの大事な人だもん!その子だって……」

 

知らない女の子を指差すボク。でも、水中人達はボクを押さえつけ始めた。何で皆来ないんだろう?時計は使えなくなってるし。

 

突然、水中人達は離れて行った。どうしたんだろう?水中人達は指をさしている。見上げてみると、グラントが来た。耳の下に鰓が出来ている。手には水かきがあった。さっき口に入れた物がそうなんだろうか?

 

「エリナちゃんが一番か!やるじゃねえか!って、それどころじゃねえんだ。あのフラーって人、途中で脱落しちまったんだ。水魔に襲われてよぉ。」

 

「ええ!?それじゃ、デラクールさんの妹さんは誰が助けるの!?」

 

「とにかくよぉ。それについては、協力するしかねえよなぁ。」

 

「グラント!ゼロを先に連れて行って!ハーミーは、クラムさんが来るかも知れない!ボク、ハリーとあの女の子を救出するから!」

 

グラントと会話をするボク。

 

「分かったぜ。ゼロを水の上まで引き上げたら、エリナちゃんの応援に行くからよぉ。すぐ戻って来るぜ!」

 

「はい、これ。」ナイフを手渡す。

 

「すまねえ!恩に着る!」ゼロの縄を外すグラント。すぐに上へと上っていった。

 

また水中人達が騒ぎ出した。水泳パンツを履いた胴体に、サメの頭。あれは……クラムさんしか考えられないね。変身術を使ってる様だけど、動物もどきを習得しているボクからしてみれば、やり損ないだという印象だよ。

 

「ハーム・オウン・ニニイ!」ゴボゴボ言いながら、ハーミーの名前を言うクラムさん。

 

「え?その牙じゃ、ハーミーまで傷付けちゃうよ!このナイフを使って!」

 

ペンナイフを手渡した。

 

「ヴぉくは敵だぞ?」

 

「あなたが助けようとしてる人は、ボクの大事な人なの!今はあなたに預けるけど、傷付けたら許さない!」

 

目に力を入れて、ボクはクラムさんに言った。もう、この際敵とか味方とか関係無いんだ。

 

「……」

 

クラムさんは、ナイフでハーミーを縛る縄を解き、ナイフはボクに返した。そうして、上へと立ち去って行った。

 

しばらく時間を待った。デラクールさんも来ない。グラントも戻ってこない。あのグラントが約束を破るなんて事は無い筈だから、恐らく誰かに止められてるかも。行動しなきゃ。

 

「まだ邪魔をする?ボクは戦うよ。」ボクは、杖を水中人達に向ける。

 

「それで良いんだよ。」女の子の縄を解いた。

 

「グラントは来そうにないから、ボク1人で2人を担ごう。」

 

時間なんて関係無い。人の命がかかっているんだから。水中人達も来た。悪戦苦闘している傍らで、優雅に泳いでいる。

 

段々息が苦しくなってきた。ボクの環境適応呪文の持続時間は2時間。本当なら最大12時間は持続する。でも、そこまでの訓練はしなかった光が薄くなっていく。泡頭呪文、防暑・防寒呪文、圧力軽減呪文も消えかかってるし。人魚の姿は、当分は問題なさそうだけど。

 

光に向かって突き進み、ようやく頭が水面を突き破る音がした。思わず空気を吸い込んだ。気持ちが良い。ボクは、ハリーと女の子を引き上げた。水中人達は、一斉に水中に現れた。皆、ボクに笑いかけている。

 

スタンドから歓声が上がった。叫んだり、悲鳴をあげたり、総立ちになっている。ハリーと女の子は、目を開けた。女の子は混乱して怖がっていたけど、ハリーは水を吐き出し、ボクの方を見た。

 

「エリナ。デラクールの妹も連れて来たのか。人助け癖は相変わらずだな。」

 

助けて貰って嬉しそうだけど、どこか呆れた表情にもなってる。

 

「この子も残しておけなかったんだ。」ボクは、ゼイゼイ言った。

 

「ジジイがこのまま死なせるとでも思ったのか?あの歌はな、代表選手が戻って来られるようにする為のものだったんだよ。」

 

「そうだったの……」自分のバカさ加減に嫌気がさした。

 

「俺がデラクールの妹を連れて行く。自分で戻って来れそうか?」ハリーが聞いた。

 

「そうして。この子、あんまり泳げないみたいだから。」

 

「分かった。今度こそ遅れるなよ。」

 

ハリーは、デラクールさんの妹をおぶって、一足早く戻って行った。ボクも行こう。

 

マダム・ポンフリーがせかせかと、ハーミー、クラムさん、ゼロ、グラントの世話をしているのが見えた。厚い毛布に包まっている。ダンブルドアとバクマンさんは、岸辺に立っている。ボクとハリーが近付いて来るのが見えて、ニッコリと微笑みかけて来た。

 

マダム・マクシームに押さえつけられているデラクールさんは、半狂乱になっている。ハリーがおぶっている女の子、妹のガブリエルちゃんが無事かどうか心配で心配で仕方なかったようだ。

 

ハリーがガブリエルちゃんを先に引き上げ、ボクがデラクールさんに心配ないと伝えた。水魔に襲われたのは本当だったようだ。

 

上がってすぐに、マダム・ポンフリーがボク達に毛布をに包ませた。熱い煎じ薬を一杯飲まされて、耳から湯気が飛び出した。ボクは、まだ人魚の姿のままなんだ。

 

あの後、ハーミーがボクとグラントに激励の言葉を送ってくれた。

 

「どうやら点数を付ける前に、協議が入った。」

 

ダンブルドアが立ち上がって、審査員全員にそう告げた。秘密会議に入った。

 

「あなた達、ガブリエルを助けてくれました。」デラクールさんが言った。

 

「礼ならエリナに、あいつに言ってくれ。俺は大した事はしてない。最後に運んだだけだからな。」

 

ハリーが、ボクを親指で指しながら言った。それでも命の恩人に変わりないって言った。また、ボクにもお礼を言った。これからは、フラーって呼んでと言って来たんだ。ボクはフラーに抱き付かれ、ハリーは2回位キスされた。両頬に。ちょっと顔が赤くなったハリー。女性への関心はちゃんとあるみたいだね。良かった良かった。あ、ボクの身体も元に戻った。最初のビキニ姿へと。

 

バクマンさんが、魔法で拡張した声で協議の結果を告げた。

 

「それでは、審査の方が終わりましたので結果を発表したいと思います。50点満点で、次のような結果となりました。」

 

バクマンさんが言葉を一旦切った。そして、また話し始める。

 

「まずは、第1位。グラント・リドル君。」

 

スリザリン生が主にいるスタンドから歓声が上がった。

 

「彼の使用した鰓昆布は、極めて効果が大きい。唯一、時間制限内に人質を助け出す事に成功しました。得点は、文句無しの50点!」

 

ボクは、ちょっぴり落ち込んだ。先に戻ったグラントでこれだから、ボクはビリの可能性が極めて高いなと感じたから。

 

「そして次は、エリナ・ポッター嬢。」

 

さっさと終わらせて。もう分かり切ってる事だから。ビリだってこと知ってるから。

 

「彼女の使った魔法は素晴らしいものでした。本来4年生では習わない泡頭呪文呪文に防暑・防寒呪文、圧力軽減呪文を使いこなしました。また、高度な変身術を用いて高い水中移動能力を獲得したのです。現に、最初に人質の所へ辿り着きました。ですが、水中人達の証言によると全ての人質を安全に戻らせようと奮闘して、結果的に1時間の制限時間を倍以上オーバーしたのです!!」

 

スタンドがざわついた。

 

「よって、この道徳的な行為に敬意を評し、エリナ・ポッター嬢を……第2位とし、45点を与えます!」

 

周りから歓声が上がった。

 

「う、嘘だよね?」ハリーに聞いた。

 

「やったなエリナ!お前がやって来た事は決して無駄じゃなかったんだよ!道徳的な力を見せたんだ!もっと自分を誇って良いんだぜ!」

 

ハリーがボクを励ましてくれた。

 

「とーぜんの結果でーす!エリナ!」フラーが褒め称えてくれた。

 

「……ヴぉくも、そう思います。」クラムさんも言った。

 

「第3位は、ビクトール・クラム君。効果的な変身術を使いましたが、先程のエリナ・ポッター嬢に比べて中途半端だった事。そして僅かに、時間をオーバーしました。得点は40点です!」

 

カルカロフ校長が得意顔で、特に大きな拍手をしていた。

 

「第4位はフラー・デラクール嬢。完璧な泡頭呪文を使いましたが、水魔に襲われてリタイヤしました。得点は25点です。」

 

「わたーしは零点のいとでーす。」

 

見事な髪の頭を横に振りながら、フラーは喉を詰まらせた。

 

「皆さん、良く戦い抜きました。もう1度、盛大な拍手を!」

 

観客も、代表選手も、審査員も全員が拍手をした。

 

「第三の課題、最後の課題となるわけです。これは4ヶ月後の、即ち6月24日の夕暮れに行われます。」

 

引き続き、バクマンさんの声がした。

 

「代表選手には、そのきっかり1ヶ月前に課題の内容を知らせる事になります。皆さん、代表選手への応援ありがとうございます!」

 

ようやく終わったんだ。マダム・ポンフリーは、代表選手と人質に濡れた服を着替えさせる為に、皆を引率して城へ歩き出した。やった。通過した。4ヶ月後まで、何も心配はいらないんだ。ぐっすり眠れそうだね。

 


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