Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
10月31日。夜。レイブンクロー寮。
俺は、信頼の出来そうなレイブンクロー生と共に、エリナとグラントの無実を訴えた。
「ゼロ。余り芳しくないわ。」シエルが呟く。
「エリナの方はどうにか出来そうだが、グラントはどうやっても無理だな。錯乱の呪文、それも極めて強力な物はあいつらに使える筈が無いのに!」
「元々レイブンクローって、学業を優先する寮よ。だから、比較的冷たかったり、捻くれた人が集まりやすいのよ。全員がそうじゃないにしても、エリナやグラントに近付きたくない人が大勢ですもの。」
「そういう意味では、俺は異端かも知れないな。」
「確かに、あなたはグリフィンドール向けの性格をしてるわよ。でも、異端だからこそ他とは違う何かが出来たり、予想以上の結果を生んだりするんじゃないかしら?」
「シエル…………ありがとう。」
その時、俺を呼ぶ声がした。テリーが来たわけだ。
「どうした?」
「フィールド先生が今すぐ来てくれって。事務室に。」
「兄さんが!?どうして。」
「とにかく、早く行った方が良い。」
「分かった。ありがとう。すぐ行くよ。」
俺は、兄さんのいる所まで一直線で行った。
「失礼するよ、兄さん。」
「ゼロか。夜遅くにゴメンね。ちょっと話をしたいと思ってさ。」
「それは別に構わないけど、何?」
「ホグワーツの代表選手の件だ。ゼロ、お前も知っての通りエリナとグラントに決まったわけだ。ムーディ教授は、誰かが2人を亡き者にしたい者の陰謀だとお考えだ。」
「?」
「最近、何か変化は無かったかい?」
俺が隠し事をしているのがバレているのか?ムーディがクラウチ・ジュニアだと確実に知っているのは俺を含めて3人。我が親友、ハリー・ポッター。学年1の才女、イドゥン・ブラックだけ。3人だけの秘密にしておこうとしたわけだ。
「ううん。何にも。」
「そうか。」手掛かりがつかめないなという顔を兄さんはしている。
「ただね。」
「?」
「ハリーが妙な事を言ってたんだよ。」
「ハリーが?」
「あいつ、魔力感知が優れてるじゃん。特に、1度知り合った魔力を持った存在はより正確に把握出来るって。」
「確かに。」
「夏休みに、1度ムーディ先生と出会っているんだってさ。」
「シリウスの新しい職場が闇払いだからな。それは有り得る話だ。」
「学校に来てからの魔力が根本的に違うって。」
「!?本当か?」
「本当だよ。嘘を言ってるとは思えない。でも、中々尻尾を出さないんだ。」
「そうか。私の方でも調べてみよう。そうそう。レイブンクローでのエリナやグラントへの態度を改めるように働きかけてくれるか?生徒という軽いフットワークを持つ者でなければ務まらないんだ。」
「もうやってる。エリナはどうにか出来そうだけど、グラントは無理そうなんだ。」
「やはりな。スリザリンを悪く思っている者は少なくない。幾分か他の寮との衝突も少なくなってきてはいるけど、どうしても1000年続いた因縁を扶植するには時間を掛けるしかないからな。出来るだけ抵抗してくれ。」
「分かったよ。それじゃ、失礼。」
「お休み。ゼロ。」
扉を閉めて、俺はレイブンクローの談話室へ帰っていった。
エリナ視点
11月1日。日曜日。何でこんなに惨めな思いで過ごさないといけないんだろう?ボクが起きてくると、また拍手が起こった。皆、ボクが入れたって思ってるんだ。そんな状況に耐え切れず、ボクは談話室を出た。
湖の畔で1人佇む。パパ、ママ。どうして、どうしてこんな事になったんだろう?誓って入れてない筈なのに、選ばれるなんて。それでも、数は少ないけど味方がいるだけまだ幸せかもしれない。
11月2日。月曜日。学校の皆は、少しはこの状況に慣れたかなって思った。でも、その認識が甘かった。スリザリンの半数以上から悪感情を抱かれ、グリフィンドールからは敵意を向けられ、レイブンクローから軽蔑の眼差しを送られる。でも、あらかさまにそうしてくるのは本当にボクを快く思ってない人だけだった。後は、睨み付けられたり口を利かないとかだった。ハリーやハーミー、ネビル、ジニーちゃん、エックス君がグリフィンドールを、ゼロとシエルがレイブンクローを何とか説得してくれているので思ったほど状況は悪くなかった。スリザリンでもイドゥンやルインはやってないって信じてくれてる。それでも、最悪の状況じゃないだけで良い状態じゃないのは変わりないけど。
グラントは特に気にしていない。暴君な性格は知れ渡っていたし、何を今更と言った感じだった。でも、同時にアホの子の一面を持ってるので完全に嫌われているわけではない。そして、スリザリンでは英雄扱いされていた。よって、相対的に状況は良くなってるらしいとの事。
スリザリンと合同となる呪文学。パーキンソンがボクをますますからかってきているけど、その度にフィールド先生から雷を落とされていた。ついでにスリザリンが減点された。最初からそうなる事は分り切っているだから、よせばいいのにと思う。
「良いじゃないですか!この穢れた血が入ったポッターは、ズルをして代表選手になったのに!」
それを言い終えた瞬間、パーキンソンがハッとなった。フィールド先生が怒っている。静かだけど、尋常ではない程の怒りの感情を仮面の中に隠していた感じだ。それが剥がれようとしていた。どうやら、パーキンソンは過ぎた事を言ってしまったと悟ったようだ。
「まだそんな事を抜かしているのかお前は!!いい加減にしろ!!それに加えて差別発言までしやがって!!!スリザリン100点減点!!!次は無いと思え、パンジー・パーキンソン!」
やけにパーキンソンに厳しいのは既に分かっていた事だけど、めったな事が無い限りは今まで減点までは決してしなかった。パーキンソンはもう耐え切れないと言わんばかりに教室を出て行ってしまった。これは流石に気まずい空気となった。
「う~ん。これは。パンジーが悪いけど。難しいなぁ。」
「あの差別用語は流石に言い過ぎですよ。寧ろ、100点だけで済んでよかったと考えるべきでしょうか。」
「パンジーもさ。エリナに突っかかるとフィールド先生から怒りを買う事位そろそろ覚えた方が良いのに。フィールド先生って、エリナをこのクラスで誰よりも気に掛けてるし。どうしてなんだろう?」
「単純にゼロと交流が深いという理由が考えられますね。それと、ハリーの今の家はロイヤル・レインボー財団です。そこの会長のお孫さんとフィールド先生が同期且つ良きライバルだったそうです。」
「ハリーから聞いたの?イドゥン。」
「ええ。そうですよ。ルイン。」
その時、扉が開いた。グリフィンドールの3年生、コリン・クリービーが呪文学の教室に入って来たのだ。
「どうしたんだい?コリン。」
「フィールド先生。授業中にごめんなさい。代表選手は、すぐバクマンさんの所へ来て欲しいとの事です。荷物も全て持って。」
「了解。エリナ。グラント。行っておいで。君達に関しては出席扱いにしておく。パーキンソンは無断欠席だ。」
何も言わないでグラントと一緒に教室を出る。
「凄いよね。2人共。ハリーが目に掛けるだけの事はあるよ。」
「うん。どうもね。」
「あいつに宜しく言っといてくれ。」
「頑張って。」
写真撮影の前にインタビューがあった。でも、それが最悪だった。リータ・スキーター。いつかハリーが言ってた人の名前だった筈。内容がインチキだった。でっち上げの記事を書くんだよ。お陰で後日、ボクの肩身はますます狭くなったんだ。
インタビュー終了後、次は杖調べとなった。オリバンダーさんが担当してくれる事に。ここで、オリバンダーさんにお孫さんがいる事を知った。既に独立していて、杖の製作や販売、修復のみならず、魔法道具の修復も行っていると聞いた。
「マドモアゼル・デラクール。まずはあなたから、こちらに来ていただけませんか?」
デラクールさんは軽やかにオリバンダーさんの所まで行き、杖を渡した。
「フゥーム……そうじゃな。24センチ。しなりにくい。紫檀の木に……何とこれは…………」
「ヴィーラの髪の毛でーす。わたーしのおばーさまのものでーす。」
へえ。ヴィーラの血が入ってたのは本当だったんだ。後でハリーに教えてあげようっと。
「そうじゃな。ヴィーラの髪の毛を使って杖を作った事は無いが……わしの見たところ、少々気まぐれな杖になるようじゃ……しかし、人それぞれじゃし、あなたに合っておられると言うのであれば……」
オリバンダーさんが杖に指を走らせた。傷や凸凹を調べているみたいだ。呪文を唱えると、杖先から花がワッと咲いた。
「よーし、よし。上々の状態じゃ。」
オリバンダーさんは、杖をデラクールさんに返した。
「お次はクラムさん。あなたが来てください。」
クラムさんは杖をぐいと突き出した。ローブのポケットに両手を突っ込んで、しかめっ面で突っ立っていた。
「フーム。グレゴロビッチ製と来たか。わしの目に狂いが無ければじゃが。優れた杖職人ではある。ただ製作様式は、わしとしては必ずしも……それは良いとして……クマシデにドラゴンの心臓の琴線とみて間違いないかの。」
オリバンダーさんがクラムさんに尋ねる。彼は、ゆっくりと頷いた。
「あまり例のない太さじゃ。そして、かなり頑丈……26センチ……エイビス!」
小鳥が数羽出て来た。
「よろしい。これはお返しします。」
杖が返された。
「リドルさん。よろしいかな。」
一瞬、オリバンダーさんの表情が怯えた様に感じたのは気のせいかな?
「おお。これは。確かに覚えておるよ。トネリコの木にドラゴンの心臓の琴線。50センチ。荒くれ者にしか従わない。この杖ほどあなたに相応しいものはない。」
「へへっ。ありがとうございます。」
グラントが感じよく笑った。オリバンダーさんも、幾らか表情が和らいだようだ。
「最後にポッターさん。」
ボクは杖を差し出す。この杖は、3年前の夏休みに買った物なんだ。中々杖が見つからずに、永久にそうなのではと思ったんだ。そんな時に出会ったのがボクの愛用の杖。柊の木に不死鳥の尾羽。28センチで、良質且つしなやか。滅多に無い組み合わせだって言った。
この杖が不思議と言われているのは、それだけじゃないんだ。何と、兄弟杖が存在するって聞いた。それを持ってるのは、ヴォルデモートなんだ。
オリバンダーさんは、念入りにボクの杖を調べた。ついでに、垢も取ってくれた。杖からワインを出し、今も完璧な状態だと言ってくれた。思わず嬉しくなった。
その後に、写真を撮った。何の支障も無く物事が進み、解散となった。もう授業は終了してるので、大広間に直行した。後で呼び寄せ呪文の宿題やんないと。その前にご飯を食べよう。
ハリー視点
エリナとグラント。2人への風辺りが強くなる前に、早急に対処した甲斐があったな。エリナについてはどうにか分かってくれたけど、グラントは無理だった。それどころか、何でスリザリンを擁護するんだとか、スパイとか言いやがった。
最近、ロンの様子がおかしい。2人に敵対的な態度を取っている。あいつらに出来る筈が無いだろと強く言い聞かせても、分かろうとしない。
「頭では分かってるの。でもね、ロンは嫉妬してるのよ。周囲の人間が特別な存在ばかりだから。」
「どういう事だよ?俺は、好きでそうなったわけじゃないがな。そこまでしないといけないから。今度はヴォルデモートよりも厄介な存在までいるんだからな。」
「あなたはそう思うでしょうよ。あのね、ハリー。よく聞いて。ロンはいつもお兄さん達と比べられながら育ったの。それだけじゃなくて友達もそうなのよ。ゼロは幅広い知識を身に付けてるし、グラントは異常な身体能力を持ってる。エリナは生き残った女の子。そしてハリー、あなたはロンの親友なのに、いつもロンの何歩先をも歩いてる。彼はいつでも添え物扱いなのよ。今までそれに耐えて来られた。でも、今度ばかりはそうも言ってられないの。」
「…………」
ハー子とのやり取りの記憶が蘇ってくる。嫉妬…………か。
魔法薬学の授業。既に解毒剤の調合が完了し、グラントと会話している。
「スマネエな。余り力になれなくてさ。」
「気にすんなよ。気持ちだけで十分だ。薬草学の授業の時によぉ、ゼロが面々的にサポートしてくれって言ってくれたんだ。それによぉ、グリフィンドールに1人でも俺の味方がいるだけでも十分心が落ち着くんだぜ。ハーミーちゃんもな。」
「そういって貰えると助かる。今は、特にロンがな。」
「仕方ねえ奴だな。ハリーはアレだろ?ロンと決闘をやった罰則で、エリナちゃんをサポートするんだろう?」
「ああ。選手が禁止されているのは、先生からの支援全般。他の生徒の力を借りるというのは禁止になってないからな。」
「ポッター。君も随分と大変なんだな。今の状況、僕も思わず同情するよ。それにしても、全く。ウィーズリーの奴は。あいつはガキだね。」
ドラコも何とか終わらせ、俺とグラントの会話に参加する。
「終わったのか。」提出用の瓶に解毒剤を入れながら聞く。
「君から教えて貰った例の裏技を使ったらすぐにね。」
「成る程な。」ラベルに名前を書き、いつでも提出出来るようにする。
「第1の課題、分かったのか?」
「まだ分からねえんだ。早く、俺の編み出した新戦法を使いたのによぉ。」
「お得意の肉体強化呪文か?」
「それはよぉ、企業秘密だぜ、心の友よ。」
「当日までお楽しみってわけか。」
魔法薬学の授業も終わり、俺は教室を後にした。