Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
どうしてこうなったんだろう。ダームストラング、ボーバトンが決まって、次はホグワーツの誰かだと思ったのに。何で、よりによってボクなの?
「エリナ。さあ……あの扉から行くのじゃ。」
ダンブルドアは微笑んでなかった。そうだよ。出来るわけがない。無理だ。仮の同じ状況に立たされたら微笑む事なんて出来るが無いもの。
教職員のテーブルに沿って歩いていく。ハリーと目が合った。心配そうな顔をしている。その時、声が聞こえた。
『俺はお前が入れたとは思ってない。とにかく、今は校長の言うとおりにしておけ。』
ハリーが思念術で励ましてくれた。ボクは、少し落ち着いた。大広間から出る扉を開け、魔女や魔法使いの肖像画がずらりと並ぶ小さな部屋に入る。クラムさんとデラクールさんが、既にそこにいた。
「…………」
「ふふーん。どーやら、このイベントもおもしろーい事になりそーです!」
その時、ドアが乱暴に開かれた。グラントも入って来た。
「エリナちゃんが呼ばれた時はどうすれば良いか分かんなかったぜ。でもよぉ、今度は俺まで何故か呼ばれたんだよぉ。」
「ボクもどうしてなのか分かんないよ。入れてないのに。」
「俺もよぉ。昨日はグラップとコイルをサンドバック代わりに殴ってて、今日はハグリッドさんの所にいたんだぜぇ。入れてねえよ。」
「グラップとコイルじゃなくて、クラッブとゴイルだよ。」
ボク達の背後からせかせかした足音が聞こえた。ルード・バクマンが入って来たんだ。
「こりゃ、驚いた。凄い!いや、全く以って凄い!ホグワーツから2人、しかも両者共に未成年とは。」
バクマンさんが暖炉に近付き、クラムさんとデラクールさんにそう説明した。
「ご紹介しよう――信じがたい事であるが――代表選手だ。3人目と4人目の。」
「でも、ボク。」
「俺は知らねえ!」
「驚くべき事ではある……が、知っての通り、年齢制限は今回に限って、特別安全措置として設けられたものだ。そして、その状態からエリナとグラントの名前が出て来た。こうなった以上は逃げも隠れも出来ない。規則であり、従う義務がある。エリナ。そしてグラント。君達は、とにかくベストを尽くさねばならない。」
後ろの扉が、再び荒っぽく開いた。ダンブルドアが先頭に立ち、すぐ後ろからクラウチさん、カルカロフ校長、マダム・マクシーム、マクゴナガル先生、スネイプ先生、スプラウト先生、フィールド先生が来た。扉が閉まる前に、何百人という生徒がワーワーと叫んでいるのが聞こえた。
「ダンブリー・ドール!これは、どういうこーとですか!?」
マダム・マクシームが、ダンブルドアに対して威圧的な口調で迫っている。
「私もぜひ知りたいものですな。ホグワーツの代表選手が2人?しかも、両方とも未成年じゃないか。開催校は複数の、それも年齢制限など関係無い状態で選出して良いとは、誰も伺っていないようですが――それとも、私が読み間違えていたとでも?」
意地悪い笑い声を上げるカルカロフ校長。
「
「失礼ですがマダム・マクシーム。そして、カルカロフ校長。」
フィールド先生が参加してきた。いつもの温和な表情ではなく、凛とした表情になっていた。でも、カルカロフ校長を見るその眼は軽蔑と憎悪で燃え上がっていた。
「羊皮紙から出て来たというだけで、エリナとグラントが反則をしたと、私は到底思えませんがね。後で、羊皮紙に書かれた筆跡を調べてみましょうか?」
皆沈黙した。すぐに、ダンブルドアがボクとグラントに近付いてきた。
「エリナ。グラント。炎のゴブレットに名前を入れたのかね?」
「「いいえ!」」
「上級生に頼んで入れて貰ったかね?」
「俺はやってませんって!!」
「いいえ。」
あれ?そう言えばこうも考えられるのかな?
「あの、校長先生。」
「何かね、エリナ。」
「さっきの言い方だと、上級生、下手をすると大人に頼めば参加出来るような言い方ですけど。そういう事なんですか?」
皆ハッとした顔になる。どうなんだという視線をダンブルドアに送っている。
「そうじゃの。そこに対する対策まで考えがつかなかったのは、わしの不備になる。」
ダンブルドアは、礼儀正しく答えた。そして、謝罪した。
「で、あればだ。ホグワーツから選手が2人出た以上は、ボーバトンとダームストラングからもあと1名ずつ選出すれば良いだけの事。炎のゴブレットをもう1度設置していただこう。ダンブルドア。」
「残念だがそう言うわけにもいかないんだ、カルカロフ。」バクマンさんが言った。
「炎のゴブレットは、たった今火が消えてしまったんだ。次の試合まで、火が付く事は決してないのだよ。」
「だからホグワーツは2人参加を潔く認めろというのか!ふざけるな!あれだけ会議や交渉、時には妥協までしたのにそんな不条理があってたまるか!!」
「私もです!そんなものは、とてーも認められませーん。ダンブリー・ドール。年齢線をまちがーえたのでしょう。きっと。」
カルカロフ校長、そしてマダム・マクシームが一緒になって声を荒げる。ボク達も見られたが、それは侮蔑の視線だった。
「全く!今までのやり取りを聞いていれば!実にバカバカしい事です!」
マクゴナガル先生が怒る様に話に割り込んできた。
「この子達に年齢線を超えられる筈がありません!そして、上級生に頼んで代わりに入れさせるような事も、エリナとグラントはしていないと、ダンブルドア校長は信じていらっしゃいます!私はこの子達の寮監ではございませんが、入れていないと信じています!!!」
「マクゴナガル先生。少し落ち着いて下さい。」フィールド先生が言った。
「ありがとうございます、フォルテ。ではポモーナ、そしてセブルス。この子達の寮監であるあなた方はどう思っていますか?」
マクゴナガル先生は、スプラウト先生とスネイプ先生に意見を求めた。
「我輩としては、ミスター・リドルは良くも悪くもバカ正直に生きていると認識しておりますな。彼に、ダンブルドア校長が敷いた幾つもの年齢の制限を突破出来る程の頭は持ってないと考えているのですが。」
「先生。俺の事、バカにしてます?」
「グラント、君は少々黙るという事を覚えていただきたいものですな。」
「私も、エリナが入れたとは考えていません。今学期初日からの彼女の様子を見ていましたが、名乗りを上げるような振る舞いはしてませんでした。それどころか、立候補する上級生を積極的に応援していたので尚更です。」
「スプラウト先生。」
「どうしましたか?」
「何か、必死だなとボク感じました。」
ボクとしては辞退した方が良いと思うんだよね。
「クラウチさん、バクマンさん。中立の立場であるあなた方の意見をお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
フィールド先生が、2人にそう伝えた。
「フォルテ。確かに今回に限って年齢制限はした。だが本来であれば、どんな年齢だろうが、それが例え未成年だろうが入れられたんだ。」
「本人の意思に関係無く、参加させるべきだ。炎のゴブレットから『エリナ・ポッター』と『グラント・リドル』の名前が出て来た。これこそが重要だ。つまり、2人はこの瞬間から競技に参加し、競い合う義務が生じた。これは明白なルールであり、魔法拘束だ。」
クラウチさんがキッパリと言った。何これ。何か、参加しろっていう雰囲気になりつつあるけど。
「いやぁ、バーティは規則を隅から隅まで知っている。」
バクマンさんがニッコリと笑っている。カルカロフ校長とマダム・マクシームを見ている。
「今すぐにでも、この胸糞悪い状況から帰りたい気分だがね!」
「それは出来ない事だな、カルカロフよ。選手が魔法契約で縛られている以上はな。都合に良い事に!」
「ひ、ヒィッ!ムーディ!?つ、都合だと!?そうか!ダンブルドアが、ホグワーツに有利に働く様に仕向けて…………」
「何故不自然にどもる必要があるのだ、カルカロフ。今すぐ呪いを掛けてやろうか!?え?……まあいい。聞け。良いか。炎のゴブレットを欺くには、強力な錯乱呪文が必要になってくる。そこの小娘と小僧にそんな芸当など出来ん!そもそも、小娘の兄でも越えられない様にダンブルドアが特別に調整したものだからな!」
「待ってくれよ、先生よぉ。何でハリーを基準にしたんだ?イドゥンちゃんやゼロ、ハーミーちゃん、5年生以上の成績優秀者ならまだしも。」
「リドルか。良かろう。ポッターも聞くと良い。ハリー・ポッターは入学時点でホグワーツのカリキュラムをあらかた終わらせていると聞く。それだけでなく、マホウトコロのカリキュラムもな。そしてあいつは、少なくとも幹部級の上級死喰い人と同等以上の戦闘能力を有している。ホグワーツの生徒でも、あいつに勝てる奴は殆どいないと言っても良い。そして、そのハリー・ポッターと互角の実力を持つお前やゼロ・フィールドでも不可能にしているとも言えるってわけだ。」
「そういう事じゃ。今回、2つの魔法学校の教育課程を終わらせ、尚且つそれを自らの力としているハリーを基準にした防衛線を作る事にしたのじゃよ。結果的に、それはゼロや君でも正攻法では決して不可能な防衛線になったわけなのじゃ。結構骨が折れたがの。」
自分の兄が実はとんでもない力量の持ち主という事を知ったボク。敵に回らなくてよかったよ。
「そして、ポッターとリドルを参加させて喜ぶ奴は誰になる!?こんな危険な状況に追い込んでまで!それはな、この2人を殺したくて仕方ない奴に決まっている。ポッターの方は容易に想像がつくがな。」
「死の飛翔ですね。アラスター。」
「そうだ。」
「では、グラントは?死の飛翔にとっては、メリットなどありませんが。」
「フン。このわしでも、リドルまでは分からん。」
フィールド先生とムーディ先生がそんな会話をしている。
「どうだ?クラウチ。わしの考えは戯言だと言い切れるか?闇の魔法使い、特に恥ずかしい名前の集団の奴らが考えそうな事は狂気じみている!そう言った連中のやり方を分析し、対策する事がわしの役目だ!カルカロフ、お前だって身に覚えがあるだろうが――」
「アラスター!」
ダンブルドアが静止させた。
「アラスターって誰だ?エリナちゃん。」
「ムーディ先生の事だよ。1度だけ出会ってるから、本名は分かるんだ。」
「助かるぜ。ありがとうよ。」
「何故このような状況になったのかは分からぬ。しかしじゃ、結果は受け入れなければならぬ。ルードやバーティの言った通り、炎のゴブレットの決定は絶対じゃ。それに、あれの炎はもう消えてしもうた。再び選びなおす事も敵わんじゃろう。それを聞いて尚、まだ何か明暗があればお聞きしたいのじゃが。イゴール、オリンぺ。」
「せんせーい。わたーし、思ーいました。オグワーツが何人だろうと、わたーしが勝てばいいのでーす。」
「フラー。わかーりました。良いでしょう。このまま進めてくださーい。」
「ヴぉくもあなた方に言いたい事があります。勝つのは1人だけ。ホグワーツが何人いようと構いません。ヴぉくの力を、1番だと周囲に認識させれば良いのですから!」
「よくぞ言ったなビクトール!そうだ。ちょっと考えれば何てことは無かった。ビクトールが勝つんだ。それは確定事項だ。」
渋々と言った感じだけど、他の学校の校長先生も同意した。
「それではバーティ。代表選手に指示を。」
「あ、あぁ……そうだな。指示。」
『あれ?夏休みの時より、クラウチさんがやつれている様な…………』
「最初の課題は、君達の勇気を試すものである。どんな内容かは教えない事にしよう。未知のものと遭遇した時の勇気は、魔法使いにとって重要な資質であり、なくてはならない要素だ。競技は、11月24日に行われる。どのような形であれ、教員からの援助を受ける事も、受ける事は許されていない。競技には、杖だけの所持が許可される。試合は過酷であり、また時間のかかるものである為、選手は今年度の期末テストを免除するものとする。」
クラウチさんは、ダンブルドアを見て言った。
「こんな感じでどうかな?」
「うむ。大丈夫じゃろう。バーティよ。少し疲れておらんかね?城へ泊ってはどうじゃ?」
「そうだぜバーティ。そうしなって。今や、全ての事がホグワーツで起こっているんだ!私は泊まらせて貰うよ、ダンブルドア。」
バクマンさんが陽気な口調でクラウチさんを説得している。
「そう言うわけにもいかない。若手の、直属の部下のウェーザビーに任せっきりにしている。大変熱心で、最近周りから声をよくかけられている。私から言わせれば……熱心過ぎる所がどうも…………」
クラウチさんは、部屋を出て行った。
「うむ。そういう事なら、皆。帰ってよろしい。グラント、エリナ。君達も早く寮に戻ると良い。スリザリンとハッフルパフは、君達を中心にドンチャン騒ぎをしたくてしょうがないじゃろうからのぅ。」
ダンブルドアが微笑みながら言った。
「アルバス。私はフォルテと共にやる事があります。ポッターとフィールドを呼び出して構いませんよね?」
「うむ。大丈夫じゃよ。アーガスには、わしの方からしっかりと言っておく。」
「ありがとうございます。ダンブルドア校長。」
マクゴナガル先生とフィールド先生が一緒に出て行った。どうやら、ハリーやゼロを呼ぶらしいけど。
大広間には誰もいなかった。いるのは、ボクとグラントだけ。蝋燭が燃えて短くなり、くり抜きカボチャのニッと笑ったギザギザの歯を、不気味にチロチロと光らせていたのだった。
「それじゃあよぉ。エリナちゃん。俺達、戦うってわけだよな。」
「うん。そうだね。」
「何でこうなったんだ?俺は見当つかねえや。」
「正直言うとボクもなんだ。」
「俺はよぉ。エリナちゃんはいれてないと思うぜ。ハリーやゼロ、ハーミーちゃんはそう思ってる筈だ。」
「ボクも、グラントは入れてないって思ってるよ。本当に。」
「ありがとうよ。お休み。エリナちゃん。」
「お休み。」
グラントと別れて、ハッフルパフの談話室へ帰っていった。寮の入り口へと到着して談話室への扉を開くと同時に、中から喝采が響いてきた。3年前はトロール、2年前はバジリスク、去年はシリウス。ホグワーツのハロウィーンって、何かの騒動の始まりなんだな、とようやく気付いたボクであった。