Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
翌日。朝食をササッと食べ、授業に臨む。今日は金曜日、午後の授業は無い。ムーディの正体を暴くのに絶好の機会というわけだ。呪文学と古代ルーン文字学だけで終わる。
呪文学は呼び寄せ呪文をやり始めている。フィールド先生が、多くのページ数が少ない本を用意して早速実践しようという事になった。俺とゼロは早々に出来た。それも、無言呪文を使った上でだ。
だから、それぞれ25点ずつ貰った。今の所、グリフィンドールとレイブンクローの点数がトップで拮抗している状態なのだ。
課題が終わったので、会話をする。ハー子が怖い視線でこちらを見ている。俺、何かやったっけか?逆鱗に触れる様な事なんてしてないし。
「ハー子の視線が怖いんだが。」
「どうせ、早々に出来て、その上無言呪文でこなした俺達に嫉妬しているんだろうよ。絶対、どうやったのか聞いて来るぜ。」
「午後予定があるんだけなぁ。」
「まあうまく逃げ切れよ。そう言えば、1年生のマリア・テイラーって娘はかなり授業スピードが速いんだよな。」
「ロイヤル・レインボー財団で予習復習してるからな。人と関わるのは苦手な分、それを勉強や知識に費やしているんだ。もう少し他人と関わって欲しんだけどなぁ。」
「ハリー。やけにいつも、マリアを気に掛ける発言をしているかと思えば、保護されている場所がそれなら分かるな。」
「俺やロイヤル・レインボー財団に保護される前に、何か人間関係でトラウマになる程の心の傷を負っているようでね。俺みたいに親しい人以外には、心を閉ざすんだ。」
「…………彼女に何があったのかは聞かない。そんな嫌な記憶は呼び覚ましちゃいけないからな。」
「難しいぜ。あいつの心を開くって言うのは。未だに他人に対して恐怖心を持っているんだ。ゼロ。これだけは言っておく。中途半端な気持ちであいつの心を引きずり出すのはよした方が良い。余計心を閉ざすからな。」
「分かっている。俺達レイブンクロー生から無理矢理開かせるんじゃなくて、マリアの方から歩み寄りの姿勢を見せるまでそっとしておけって事だろう?」
「そういう事さ。」
「分かったよ。後で兄さんにも言っておく。」
呪文学が終わり、古代ルーン文字学へ。これも2時限分、合計90分やり過ごす。昼食を食べ、
ムーディとすれ違った後に、地図を開く。
「ビンゴだな。やはり、本物ではなかったか。」
ムーディがいる筈の場所に示されているのは、『バーテミウス・クラウチ』だ。父親か息子かは分からんが、奴を襲撃してやろう。
地図をしまい、偽ムーディのいる場所に向かおうとする。
「ハリー。お前、何かすんのか?」
「見えましたわよ。地図に何が示されていたのかを。」
振り向くと、ゼロとイドゥンがいた。
「お前ら……関わんない方が良い。下手をすれば退学になるぜ。そう言う最悪の事態に陥るのは俺だけで十分だ。」
「1人で行くよりも3人で行った方が成功しやすいんだろ?」
「いつもあなたは言っていたではないですか。チームワークこそが最も大切だと。」
「今度は魔法省の役人か死喰い人だ。今までとは事情が違う。」
立ち去ってくれ。俺のやろうとする事に首を突っ込んで後悔はして欲しくないんだよ。
「相変わらず我が身だけを犠牲にする気か。それがお前の良い所でもあるけど、同時に悪い所でもあるんだよな。」
「少なくとも、成績に関してはあなたよりも上の私達です。戦闘能力はあなたには一歩劣るかも知れませんが、大抵の魔法使いに勝てる自身はありますよ?」
「…………」
「もう少し周りを頼ったって良いんだ。」
……目の辺りが熱く、滲んできた。俺は、それをローブで拭った。
「…………ここから先は自己責任だ。それでも良いならついてきてくれ。」
俺は、歩き出した。ゼロとイドゥンも歩き出した。目的地に向かう場所で事情を話す。
「偽物の可能性か。」
「そして、初めて出会ったような言い方ですか。もう出会っているというのに、それは妙ですわね。」
「これから化けの皮を剥がしに行くのさ。俺は。」
ムーディ?視点
「ふう。相変わらず酷い味のこれを飲む時間か。余り慣れないものだな。」
そう。今はあのお方の命令として表向きの任務をこなしている。さあ、あいつも引きずり出してやるとするか。それが、あの方の真の目的なのだからな。そう思いながら、薬の入ったゴブレットを手に取ろうとした。
突然、ゴブレットを持とうとした手を何かに刺された。
「な、何だ!?」
それは、黄金の電撃だった。それは、扉を跨いでいる。だ、誰がやったんだ。
「誰だ!出てこい!」
その言葉と同時に、扉がバラバラにされた。何かに切り刻まれて。
「ムーディ。いいや、汚らわしい偽物。アンタの前でも、俺は非情になれそうだ。」
言い終わったと同時に、電撃の力が強くなった。そこにいたのは、ハリー・ポッターとゼロ・フィールド、イドゥン・ブラックの3人だった。どういう組み合わせなんだ、こいつ等は。91年度生の成績最優秀者という共通点しか見当たらないが。
しかもだ。ポッターは右手に剣、正確には東洋の刀を、左手で杖を持っていた。電撃は、左に持っている杖から出ている。
「な、何故分かった?」完璧な筈だ。筈だった。ボロは出していないのに。
「授業初日にドラコをケナガイタチに変えていた時の事だ。アンタは俺に、『お前はポッターだな。初めましてになるか。』と言った。」
「そ、それがどうした!?初対面だろうが!」
「フン。夏休みに1回だけ出会って、俺の作った飯まで食った癖にそう言うのか?」
し、しまった。完全に予想外だった。こんな落とし穴があったなんて。
「それにだ。以前出会った時に、ムーディ本人の魔力を感知しておいた。お前の魔力は根本的に違う。ポリジュース薬って言うのは、姿形を似せる事が出来ても、魔力の量と質まではごまかせないのさ。元の人間に依存するのだから。」
「知りませんでしたわ。初めて知りました。」
「スネイプも知らないだろうな。その事実。」
ポリジュース薬にそんな落とし穴があったなんて。
「ゼロ、イドゥン。やってくれ。」
「「
2本の麻痺呪文が、俺目掛けて飛んできた。
『私との関係はブロックしておくわ。ヴォルデモートとの関係は敢えて漏らしておきなさい。』
『しかし!』
『大丈夫よ。あの子達、あなたは差し出さない筈だから。事実を知って、あなたを利用しようって考える筈よ。それに、ヴォルデモートには大いに苦しんでもらわないとねえ。』
『分かりました。』
ハリー視点
「化けの皮が剝がれるぞ。」
ムーディの姿が変わる。見た事も無い男に。少しそばかすがあり、薄茶色の髪をしている。
「バーティ・クラウチ・ジュニア!!!」ゼロが言った。
「まさか、生きていたとは。」イドゥンも驚いている。
「情報を引きずり出すぞ。」
開心術で、ジュニアの心を探る。
そこから分かった事は以下の通りだ。まずは脱獄の方法。死期の近い母親と入れ替わった。成る程、これならシリウスの証言とも辻褄が合うな。シリウスが見たのは、ジュニアの姿となったクラウチ夫人だったという事だ。次に、ワールドカップの騒動だ。娯楽として見ていたのだ。透明マントを使って。あの時、ウィンキーだけがいたのはその理由か。その後にジニーの杖を強奪して、闇の印を打ち上げた。程無くして、ヴォルデモートがワームテールと共にクラウチ邸に訪問。クラウチを服従の呪文に掛け、ジュニアは解放された。
そして、今回の目的。ムーディに成りすます手段。直前に本人を襲撃し、ポリジュース薬を使っていく事だ。大胆不敵だな。ジジイが聞いたら驚くだろう。
肝心の目的はエリナ。今年、久しぶりに開催される三大魔法対抗試合でエリナを存在しない4校目の選手として参加させ、優勝させる。優勝杯は移動キーに変える。そのままリトル・ハングルトンに来させる。『父親の骨』、『しもべの肉』、『敵の血』を使い、ヴォルデモートを復活させる。
何故、エリナの血なのか。それは、エリナに宿った母様の護りの魔法を突破する目的の為にだとの事らしい。その魔法を取り込む事で、エリナに触っても大丈夫なようにする為だそうだ。
「おい。これ先生に言って止めようぜ。」俺がが言った。
「いいや。ハリー。ちょっと待ってくれよ。聞きたい事があるからな。イドゥン。護りの魔法が宿った人間の血を復活材料として取り込んだらどうなる?」
「そうですわね。断言は出来ませんが、取り込んだ者の存在そのものが、元の血の持ち主をこの世に留まらせると考えられます。エリナの場合、母方の伯母といた時でさえ、護りの効果が増幅されますから、その血を取り込んだ者であれば尚更です。」
「つまり……復活した死の飛翔は、もう2度とエリナを殺す事は出来ない。奴の存在自体が、エリナをこの世に繋ぎ止めるから。」
つ、つまりこうも言えるのか。
「変態ヘビが生きている限り、エリナは決して死ぬ事が無い…………か。一方が生きる限り、他方は生きられぬ。前者がエリナ、後者が変態ヘビだな。」
「どうしましょうか?2人共。」
「突き出そうと思ったが、このまま泳がせよう。破滅の原因となった人間は、自分が生きている限り、死ぬ事は決してない。不死鳥の騎士団以外の強大な敵対組織に目を付けられている。逆にこっちが哀れだと思う位には、闇に陣営には大いに苦しんで貰おうじゃないか。」
そう。滅びという地獄と、虚空より来たりし者と言う究極の地獄をな。
「そうですわね。死喰い人の1人は、私の父を間接的に殺しました。なのに何の罰を貰ってもいない。それに、学校に入ってきてから出来た繋がりは断ち切りたくありませんし。」
「ここでジュニアをアズカバンに戻したとしても、変態ヘビは、今度はエリナが死ぬまで待つだろうな。それこそ最悪の結末だ。奴に英国魔法界が、下手をすれば世界が支配されるかも知れない。」
最初は反対の姿勢を見せていた俺も、この考察と、平和を維持する為に賛成の姿勢を示した。
「他にも敵対勢力はいるから一概には言えないけどな、闇の陣営にとっては。」
「だがハリー。お前、ヴォルデモートと死喰い人に復習と完全抹殺を成し遂げたいんだろう?ダンブルドアやアランさん、エリナにTWPF、シモンズ率いるアルカディアも健在な状態で復活させた方が手っ取り早いだろうし。」
「ああ。復活させようか。それに、ドラコとも同盟は組めたしな。それに、スピカも何故かエリナを慕っているし。」
「それを言うなら、コーヴァスも俺に勉強で分からない所を聞きに来るしな。だが、我らが親愛なるドラコの方はどうなんだ?」
ゼロが言った。
「問題無い。去年起きた出来事の数々が、今までの考えを払拭出来たらしい。」
「マルフォイ家をハリーやロイヤル・レインボー財団のターゲットから外す代わりに、他の死喰い人の情報を売る事と、他の敵対勢力への殲滅の協力をさせると言うものですよね。他にも、メリットがありますのでしょう?」
分霊箱を手に入れる目的もあるんだろう、と俺に視線を送るイドゥン。
「レストレンジの金庫には、ヴォルデモートの預かっている品がある。レストレンジを全員皆殺しにし、その遺産をマルフォイ家に相続させる。それで、ヴォルデモートの品を受け取るのさ。」
俺が2人に説明した。分霊箱を安全且つ確実に手に入れるには、それが1番現実的だからだ。続いて、ゼロが考察する。
「ルシウス・マルフォイだって、死の飛翔の大切な物を預かっていた位だ。狂信的な信者のレストレンジ共にだって、何かしら預ける程の信頼はある筈だ。」
「確かに。それに、ベラトリックス・レストレンジとナルシッサ・マルフォイは姉妹ですもの。レストレンジ全滅後における相続の可能性は、マルフォイ家が一番高いですわね。」
方針は決まった。このままエリナの血を使って、ヴォルデモートには復活して貰う事にした。他の魔法使いの血を使うか、危険な存在が全員いなくなるまで待っていれば良かったのさ。そうすれば、世界征服(笑)も夢じゃなかったのに。
「このやり取り、どうしようか?」
「そうですわね。記憶を消去し、成績優秀者を交えて楽しくお茶会、と言う偽の記憶を入れるのはどうでしょうか?」
「そうしよう。後は……」
トランクを開ける俺。本物のムーディが眠っていた。
「ムーディ先生。この紙を渡します。」
口寄せの術式の書類を1枚渡しておいた。
『食事用の口寄せの術式です。手に触れると厨房から食事が出てきます。食べ終わると、食器が消えます。』
思念術でそう伝える。
俺達は、ジュニアの記憶を改竄して、その場を離れた。そして、それぞれの談話室へと戻った。そして、この出来事はロイヤル・レインボー財団に報告する事にした。ナイロックに手紙を渡して。
ジュニア視点
俺は、早々に復活した。記憶もバックアップを予め掛けておいたので、偽の記憶は消え失せた。それにしてもあの3人、敵に回すと本当に恐ろしいな。あんな奴らと無謀にも戦おうとする偉大なるヴォルデモート卿(笑)は、さぞ頭が空っぽな奴なんだろう。
だが、あいつら俺を泳がしてくれるのか。そこは、感謝をしよう。尤も、あのお方が植え付けた本物の様な偽りの記憶を掴ませたわけだが。本当に漏らしたくない情報は、あの方がしっかりとガードしてくれたからな。それに、嬉しい誤算も出来た事だし。今まで以上に、教師として振舞ってやろう。
『手に入りました。ポッターの作った口寄せの術式を。ムーディのトランクから1枚回収しました。』
『良くやったわ。今度のミーティングの時に提出して頂戴。』
『はい。喜んで。1年前にあなた様に助けて頂いたこのご恩を、ようやく返せます。』
『良いのよ、別にそんな事はね。あなたとヴォルデモートとの今の関係なんて、早かれ遅かれバレるだろうし。あの老いぼれなら、気づくかもね。その前にあの子達が早かっただけの事よ。』
『それでは、手筈通り――』
『頼むわよ。』
あの方との会話を終わらせる。そろそろ、俺の方でも仕事をしなければ。やっておく任務は達成出来そうだ。後はあいつを、俺の心酔するあの方の色に染めてやらねばな。