Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第6話 新学期始動

「ヒャッハー!汚物は消毒だーーーー!!!」

 

純血の名家。ノット家の屋敷。マルフォイ家程では無いが、十分に大きい屋敷である。しかし、その屋敷は悪霊の火と爆撃によって全壊しかけていた。

 

「何が起こっておる!?」

 

セオドールと、かなり年を食った彼の父親が狼狽えながら破壊される屋敷を外から見つめている。

 

「親父!あいつらだ!空から俺達の家を攻撃している奴がいる!」

 

「何じゃと!?」

 

ノット親子は、上空を見つめる。大きな鳥に乗った2人組が屋敷を攻撃しているではないか。

 

「おお!素晴らしい!!!おい見てくれよホド!この綺麗な花火をよ!!」

 

女性と見間違いそうな容貌の青年が、狂った笑顔を浮かべながらバディを組んでいる15歳位の少年にそう言い放つ。

 

「フン。きたねえ花火だ。」同意を求められた少年、ホドは酷評した。

 

「この美しさが分かんねえのかよ、お前。ホント、もったいねえ性格してやがるぜ。」

 

「違うな。一番美しいのは、人間が完成される時。即ち死だ。」

 

そのやり取りを聞いているノット親子。

 

「く、狂ってやがる。あの2人の会話。」セオドールは、本能で原始的な恐怖を体感した。

 

「まるで、わしの力が通用しなかった。何なんだ。こいつらは?」

 

その時、少年の方が降り立つ。指先から何かを出して、人間に酷似した人形の様な何かを自在に操っているのだ。

 

「容姿そのものは欠陥品だが、俺のサイボーグコレクションにするのも悪くは無いな。魔法力を持った奴をサイボーグに作り替えるのは初めてだぜ。」

 

ノット氏を指差す少年。

 

「サイボーグじゃと!?何を言って……」

 

言い終わる前に、体の至る所を針で刺されたノット氏。

 

「電光石火の早業って所か?言っておくがそれは、時間の経過と共に効果が強くなる致死性の高い猛毒でね。複数種類を調合したから、解毒は無理だ。」

 

「親父!」セオドールがノット氏に駆け寄ろうとする。

 

「来るな!」

 

「どうしてだよ!」

 

「良いか。奴の言葉が本当なら、私はもう長くない。意識が遠くなっていく感覚だ。お前だけでも生き延びろ!必ずやノット家を再興するのだ。」

 

「……」セオドール、何とか頷こうとした。それを嘲笑うかのように見つめるホド。

 

「熱い最期の親子会話をしているのか。ガキの方は殺す価値も無いがな。」

 

「……」事切れるノット氏。

 

「さて。こいつの死体は回収するか。コレクションに加えたら、記念すべき5000体目になるからな。」

 

「ホド!終わったか!コレクション収集は!」

 

「ああ。ビナーよ。記念すべき5000体目は、このジジイだ。本意ではないがな。魔法力を持たなきゃ、欠陥品として処分してやりてえくらいだよ。」

 

「さっさとずらかろうぜ。」

 

大きな鳥に乗って、ノット邸跡地を去るホトとビナー。それをセオドールは、呆然と見ているしかなかった。家も、財産も、家族も、全てを失ってしまった。

 

「何で……何で……ううぅ。」

 

余りにも理不尽極まりない状況に、セオドールは思わず号泣した。その後ろでは、家が轟々と燃え盛っていた。鎮火の気配は、全く無い。

 

ハリー視点

1994年9月1日。2ヶ月あった休暇が終わりを告げた。外を見渡すと、激しい雨が窓ガラスを打っている。ジーンズはそんなに好まない。チノパンとスカイブルーの長袖Tシャツに着替えた。特急の中で制服に着替えると決めているからだ。

 

5時半に起床し、朝食用にベーコンエッグにジャガイモのマッシュ、トーストを作り、昼食用にサンドイッチを作った。エリナとシリウスの分も入れて3人分。メリンダは、朝から刑事の仕事があるのでいない。

 

作り終えたと同時に2人共起きてきた。7時に。支度は前日にしてあるので、多少の準備が出来ればすぐにでも出発する。

 

「お早う。おお。いい匂いだ。」

 

「お腹空いた~」

 

「今日は早いから、ささっと食べちゃって。」

 

テーブルに用意した食事とミルクを指差す。早速、シリウスとエリナは飯にがっついた。

 

9時。一応の支度が終わる。何か、マッド‐アイ・ムーディが襲撃されたとか言ったが、ウィーズリーおじさんとディゴリー氏によって無事に解決したとの事。シリウスは向かう必要は無いとの事だった。

 

マグルの新聞を持っていこう。そもそも、まともに読むの俺だけだし。それに、何やらニュージーランド沖で世紀の大発見の記事が半分を占めているみたいだし。

 

瞬間移動(テレポーテーション)』でキングズ・クロス駅まで行く。

 

「そう言えば……いや。まだ言わなくて良いかな。」

 

「どうしたのシリウス?」

 

?何が言いたいんだろうか。

 

「学校に着いてからのお楽しみだよ。」シリウスは、どこか楽しそうだった。

 

「何?何が起こるの?」エリナが知りたそうにシリウスに聞く。

 

「今年は楽しくなるさ。じゃあね。」そう言うや否や、姿くらましで消えてしまった。

 

「行っちゃった。」

 

「楽しくなるって言ってたが一体?」

 

シリウスの意味深な発言に首を傾げながらも、9と3/4番線に突入した。ローガー家の面々とマリアに出会った。マリアは、美しいシロフクロウを籠の中に入れていた。マリア曰く、名前はヘドウィグだそうだ。

 

「久しぶりだな。マリアを頼む。」

 

「分かってるよ。義祖父ちゃん。行って来ます。」

 

「気を付けてな。」

 

義祖父ちゃんと挨拶をして別れた。乗り込む直前で、ウィーズリー家の人達と出会った。見た事の無い2人がいる。この人達、ロンの長兄のビルと次兄のチャーリーという人だった。名前は聞いていたが、会うのは初めてだ。簡単な自己紹介をした。

 

チャーリーは、職業柄なのか火傷の跡が絶えない。ビルは、最初の俺のイメージだとパーシー路線かと思った。だけど違う。ジニーを男性にしたらこうなるのではという風貌をしていた。それでいて銀行務めだから、スペックは原点であり頂点といった感じだ。

 

そう言えば銀行で話がある。ポッター家の金庫についてだ。ポッター家の始祖であるリンフレッドが良薬を作って稼いだ金を保管した金庫、アイオランシーという人物が嫁いで来た時に実家からの相続で受け取った財産を保管した金庫、俺の父方の祖父フレーモントが会社経営で中身を増やした金庫の3つだ。

 

いずれも、余程バカな使い方さえしなければ数世紀は大丈夫な規模となっている。俺は全く手を付けてないが、エリナは学用品を買う時に3つ目の金庫を主に使っているのだ。

 

俺自身で所有しているのは、クヌート用、シックル用、ガリオン用、口寄せ契約した物品とこれからの人生を生きていく為の活動資金が入った金庫、ローガー家からの遺産相続する予定のものを入れる金庫の5つだ。全部、ロイヤル・レインボー財団が準備してくれた。生まれる前から存在していたポッター家の金庫3つを足して、合計8個持っている事になる。ここまで金があって良いのかな?まあ、金銭感覚は鍛えられたし、何かしらの職業には就く予定だけどね。

 

汽車に乗り込み、細胞分身にコンパートメントを確保させた。人除けの札も貼り付けさせておくように命令した。早速、トイレで制服に着替えた。コンパートメントの場所に向かう。

 

そこには、ドラコ・マルフォイが立っていた。1人らしい。俺を待っていたようだ。

 

「手紙で了承の返事は送ったがな。」

 

「知っている。本当に本当か、確かめたかっただけなんだ。」

 

「本当だ。お前の家族の命と安全は保障する。だが、優先順位が存在する。」

 

「優先順位?」

 

「最初が弟と妹とお前自身、次に母親、最後が父親だ。」

 

「理由を聞かせてくれ。一応、そうなるだろうとは思ってはいたけど。」

 

「何も知らない、或いは何もしてないお前と妹と弟なら、特に理由も不要で助けられる。母親は純血主義者だが、特にこれと言った所業を起こしていない。だが、夫の悪事を知りながらもそれを支持していたから優先順位はお前達兄妹よりも低い。父親は言わずものがな。それに、それを差し引いても俺の大切な人や仲間に危害を加えた。それだけでも許せん。命を奪わないだけ、そして何も手出ししないだけありがたいと思ってほしいがな。」

 

「わ、分かった。それで良い。何も知らず、特に皆平等に暮らせればいいと思っているスピカとコーヴァスを最初に助けてくれるならそれで。あいつらの方が、僕よりも人間が出来ている。2人を巻き込まない為なら、何でもしよう。それが、僕のスリザリンとしての理念だからな。」

 

やはり、変わったようだな。憑き物が落ちた感じだし。その表情は、どこか安らかだった、

 

「じゃあ、取引成立だ。マルフォイ……いいや。ドラコ。」

 

手を差し出す。

 

「そうだな。3年前のあの時の……話だ。今度こそ……」

 

取引が成立した。俺とドラコは、握手した。同時に、確かに関係も修復出来た。

 

「それじゃ、またな。危なくなったら、俺を呼べ。」

 

「ふ、フン。そうさせて貰うさ。」

 

ドラコと別れ、コンパートメントへ。到着してすぐに、マグルの新聞を読む。出発まで30分もあるな。じっくり読むとしよう。

 

『発見!超古代遺跡!

ニュージーランド沖の海底から謎の超古代遺跡が浮上した。これは、8月の上旬に太平洋で起こった海底直下地震が原因と考えられる。詳細は分かっていないが、年代は3000万年前のものと思われ、現代よりも優れた文明を誇っていたと考えられる。詳しい事が分かれば、人類の歴史に新たな事実が分かる事が期待されるだろう。』

 

その3000万年前の時点で、人類はまだ類人猿どころか存在すらしてなかった筈なんだがな。だけど、久しぶりに興味深い記事を読めたので、俺は大変満足した。

 

エリナはハッフルパフ生と一緒のコンパートメントに行った。今は俺1人。時間に関する本を開く。ふと切れ端が落ちる。

 

「そう言えば、この紙の切れ端を栞代わりにしてたんだっけか。おぞましい肉体生成魔法が書いてあるこれを。」

 

この切れ端に書いてある魔法はこうだ。『父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん。しもべの肉、喜んで差し出されん。しもべはご主人様を蘇らせん。敵の血、力ずくで奪われん。汝は敵を蘇らせん』と書いてあったのだ。これは、古い手法のホムンクルスの創造である。

 

「これはもう要らねえな。燃えよ(インセンディオ)!!!」

 

紙切れを燃やした。こんなのは、ヴォルデモートレベルのカス野郎にお似合いなのさ。話は変わるが、どこかで新しい魔法を試したいな。小さな重力の弾を発射する重力弾(グラビボム)を。

 

コンコンとノックがした。扉が開く。入って来たのは、腰まで伸びているダーク・ブロンドの少女だ。眉毛は薄く、目は灰色でビックリ顔のように飛び出している。バタービールのコルクで作られたネックレス、オレンジ色のラディッシュに似たイヤリングを身に付けている。雑誌を逆さまにして持っているではないか。傍から見れば変人そのものではあるだろうが、俺からしてみればこういうセンスもあるんだなぁと逆に感心した。

 

「空いてる?」

 

「ここには俺1人。だから空いている……というか、日本由来の人除けの札を貼っておいた筈なんだがな。どうやって突破した?」

 

「なんとなく手順を踏んだら、解除されたんだもン。」

 

凄え。こいつ、陰陽術の素質あるかも。

 

「どうぞ。あまり大勢ではしゃぐのは好きじゃないんでな。また札をドアに張り付けておかなくちゃ。」

 

「ありがとう。ついでに着替えるから。」

 

「分かった。終わったら、何かしらの合図を送ってくれ。」

 

一旦外に出て、新しい札を貼っておく。今度はより複雑にしておくか。ちなみに、中から開けると自然に解除される仕組みになっているし、札を貼った者であれば自由に出入り出来る代物なのだ。車内販売の人は、その対象外にする。菓子類は頂きたいしね。

 

10分くらい時間を掛けて、札の貼り付け作業を終えた。それと同時に終わったという合図がきた。俺はコンパートメントに戻る。

 

「それ、マグルの本?」

 

俺の持ってきたグリム童話とクトゥルフ神話、イソップ寓話、千一夜物語の本と、ドラゴンボールにジョジョの奇妙な冒険の漫画を指差す。

 

「ああ。うち2つは漫画だけどね。」

 

「読んでいい?」

 

「一部日本語で書いてあるから、この薬を飲んでくれ。」

 

錠剤型の魔法薬、翻薬を少女に差し出す。少し時間の間隔がありながらも、ちゃんと飲んでくれた。

 

「ありがとう。あたし、ルーナ・ラブグッド。レイブンクローの3年生だよ。」

 

「次は俺だな。俺の名は……」

 

「あんた、ハリー・ポッターだ。グリフィンドールの切札。マーリン勲章受章者の。ジニーが言ってた。」

 

「それはご丁寧にどうも。つーか、ジニーと知り合いだったのか。」

 

「知り合いどころか親友なんだもン。」

 

ジニーと親友……か。まるで、俺とゼロの関係そのものじゃないか。

 

「ザ・クィブラー……」あの電波的雑誌か。興味はあるが、読む機会無かったんだよな。

 

「ナーグルはいるんだよ。」

 

「いる?」

 

「本当だもン。今、私の傍にいる。でも大きな声を出しちゃダメ。気付かれて、逃げちゃうんだもン。」

 

「へえ。いるかどうかはともかく、夢やロマンを追い求めるその姿勢、俺は嫌いじゃないぜ。人がいる限り、人の夢は終わらないからな。」

 

「本当?」

 

「ああ。だから応援してるぜ。で、俺の持ってきた本を読みたいんだっけか?ほら。」

 

本や漫画を差し出した。俺は、ザ・クィブラーを読ませてもらった。内容は少々胡散臭いが、娯楽物として読む分には十分面白かった。対して、ルーナの方はというと、本は面白かったようだが、それ以上に漫画で爆笑していた。

 

「アハハハハハハハ!!!」

 

「そんなに面白い?」

 

「言い回しや戦いの表現の仕方が面白いんだもン。」

 

ジョジョの奇妙な冒険をいたく気に入ったようだ。

 

12時になり、昼食を摂る事にした。自作のサンドイッチを食べようとする。ルーナが羨ましそうに見つめている。

 

「食べる?」1つだけなら良いかな?

 

「いただきます。」ルーナにサンドイッチを渡した。

 

その後、車内販売が来た。百味ビーンズ以外をある程度購入した。1ガリオンも掛からなかった。今に始まった事ではないが、それで良いのか魔法界、と思ってしまう。

 

「どうぞ。」買った菓子を食べないかと誘う。

 

「良いの?だってこれ……」

 

「気にしないでくれ。俺からのおごりだと思って。」

 

蛙チョコレートは、連続でホグワーツ創設者のカードが出て来た。

 

「スリザリン、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローだ。」

 

「計り知れぬ英知こそ、我らが最大の宝なり~」

 

ルーナが高らかに叫んだ。あれ、その言葉。どこかで聞いた事があったような……無かった様な……初めて聞く言葉ではないのは確かだ。

 

その後、時間に関する本を読む事で時間を潰した。大鍋ケーキを食いながら。

 

「そう言えば、選択科目って何にした?」

 

「う~ん。古代ルーン文字学と魔法生物飼育学かな?」

 

「俺と同じじゃん。同じ選択科目を受講した先輩としてアドバイスと注意点を教えるよ。前者はともかく、後者は相当危険だ。気を付けた方が良い。ハグリッドは、怪物ばかりを授業で取り扱う。一説によれば、ドラゴンやアクロマンチュラを飼っているっていう噂だ。」

 

「案外本当だったりするかも。」

 

「さあな。でもまあ、噂の中に真実が潜むって事も有り得るからな。」

 

これは、強ち嘘ではないんだよなぁ。そう言った会話をしていると、そろそろホグズミード駅に着くというアナウンスが流れた。

 

「じゃ、そろそろ行こうか。」

 

「うん。」

 

ルーナとはここで別れ、出口に向かう。と、誰かにぶつかった。クィディッチの決勝戦で見たドラコの弟か。

 

「怪我は無い?」

 

「すみません……あれ、あなたは。」

 

「俺か?俺は、ハリー・ポッターだよ。」

 

「あなたが!?ぼ、僕はコーヴァス・マルフォイと申します。以前、兄の首筋の痣の悪影響を最小限に抑えていただき、ありがとうございました。母は、随分と喜んでましたよ。」

 

「そっか。まあ、そんな気にしないで。あ、そうだ。雨が降ってるから、防火・防水呪文をかけておくよ。」

 

「あ、大丈夫です。僕、それは使えますから。」

 

「そうなのね。じゃあ、気を付けてね。」

 

「はい!」コーヴァス・マルフォイとは、ここで別れた。

 

すると、ロン、ハー子、ネビル、ゼロ、グラントと出会った。ロンがカンカンであったので話を聞いてみる。

 

「ドラコにローブが古いってけなされたのか。」

 

「あいつ死ね!」

 

流石に死ねは言い過ぎだ。しかし、あいつもあいつでちょっかい出してるしな。俺からいわせりゃ、どっちもガキだ。

 

駅に着くと、雨は激しさを増した。こりゃ、1年生には苦痛だろうな。そう思っていると、マリアが俺達6人の方へ向かってきた。もう1人を、ドラコの妹を連れて。

 

「ハリー!」マリアが、俺に手を振って近付いて来る。

 

「マリアか。そこの子は?」

 

「スピカって言って、マルフォイ家の出なんだって。」

 

その言葉を聞いてロンが何か言おうとしたが、ゼロがロンの肘を蹴って止めた。小声で、自分の私情と確執を、まだ何も知らない1年生に吹き込むなと説教している。

 

「あの。ハリー・ポッターさんですよね?」

 

「そうだよ。」

 

失礼のないように言葉を返しておく。マリアに純血主義を吹き込んでいたら、それ相応の報いを受けさせようかな。

 

「去年、兄を救っていただき、ありがとうございました。」

 

俺にお礼をしてきた。

 

「いいや。別に、礼には及ばないよ。」

 

「とんでもありません。父と母は、大喜びをしていました。このご恩は、一生忘れません。」

 

「別に構わないって。そうだ。この雨の中での移動はきつ過ぎる。」

 

マリアとスピカに、防火・防水せよ(インパービアス)を唱えてやる。これで雨の中でも、問題無くやり過ごせる様になった。

 

「さあ。あのデカい人に付いて行くと良いよ。」ハグリッドを指差す。

 

「うん。行こう、スピカ。」

 

「はい。」

 

2人は、他の1年生と一緒にハグリッドの下へ行った。

 

「俺達も行くか。」

 

「おう!」グラントが威勢よく言った。

 

見えないが、セストラルの馬車に乗って学校へ向かった。

 

「マルフォイに何をしたんだ?」ゼロが聞く。

 

「あいつの首筋に痣があるのは知ってるよな?」

 

全員に説明を始める。

 

「ええ。リチャード・シモンズがどうとか言ってたけど。」

 

ハー子、そう言えば聞いてなかったから教えろという視線を送っている。

 

「良いか。あの痣は、魔法を使おうとすると反応する呪いの印だ。普通よりも戦闘能力を高めてくれる。」

 

「それなら良いんじゃないの?ハリーやゼロ、グラントにイドゥンと同じ土台で戦えるようになるんだからさ。」

 

これを言ったのがネビルだ。

 

「確かにな。でも、そういうわけにもいかなんだよ。発動時に凄まじい激痛を伴うんだ。それに、使い続けると呪印の邪悪な力に侵食される。そして、どうなると思う?ハー子。」

 

ハー子に答えを振ってみよう。

 

「まさか……マルフォイは死んじゃうって事?」

 

「ご名答。」

 

「マルフォイにそんなものを刻み込んだリチャード・シモンズ。どんな奴なんだ?」

 

「元々、ロイヤル・レインボー財団に所属していた研究員だ。だが、不老不死の手段を求める余りに禁じられた魔法に手を付け始めた。何とか後始末をしようとして、逃げられたんだ。その時のアクシデントで、俺はW-ウイルスに感染し、適合者になったのさ。」

 

その言葉が言い終わると同時にウイルスモードを発動する。夜になりかけている暗闇を照らす赤い瞳をロン、ハー子、ネビル、ゼロ、グラントに見せる。

 

「そうだったのね。その人、何をやってるのかしら?」

 

「俺も詳しい事までは知らん。だが、世界各地にアジトを持ち、人間を拉致しているそうだ。人体の改造だけでなく、人間そのものを作り出した事があるって言うのは聞いた事があるけどな。」

 

「人間そのものを作るだと!?」ゼロが大きな声を出した。

 

「ホムンクルスじゃない。遺伝子操作や組み換え、クローンで作っているかもな。奴ならやりかねん。」

 

「人道的に許されないわよ!」

 

「ねえ。ハーマイオニーにゼロ。どうしてそこまで怒ってるんだい?」

 

「良いか。ロン。クローンって言うのはまだデリケードな分野なんだ。マグルの世界でも製造禁止を出すくらいにな。認めたら、臓器や他の移植用の部位だけを取り出す為に量産する輩もいるんだよ。それにだ。折角奴隷は禁止とされているのに、ある種の奴隷制度復活って事も言える。」

 

「ゴメン。やっぱり分かんないや。」

 

まだ早過ぎたか。ネビルとグラントは思考回路がついて来れておらず、ショートしかけている。そもそもロンの奴、マグルに寛容な割にはマグルの事情に詳しくなろうとはしてないんだよな。

 

「ま、俺でも詳しくは知らない事ばかりだから、この手の話はまたの機会にしようぜ。それよりも飯だ。」

 

「そうだよな!沢山食うぞー!!!」

 

「ハリー。グラント。その前に、組み分けの儀式の方が重要なんだけどね。」

 

ネビルのボソッとした声が聞こえた。馬車に乗っていた全員が大爆笑した。もうすぐ城が見えてくる筈だ。

 


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