Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
「…………」
新しい脱狼薬の開発が一向に進まない。ハア。諦めようかね。3月に入った。
まずクィディッチについて。レイブンクロー戦は問題無く勝てた。230対90で。だが、チョウ・チャンが強過ぎなんだ。持ってる箒の性能だけで勝てたようなもんだからな、あの試合。今年度は予測不可能だな。グリフィンドールは今の所全勝しているが、それでもギリギリだ。去年までのスタイルが全く通用しないぜ。
諦めの表情をしながら廊下を歩いていると、ゼロとシエルに出会った。
「2人共。こんにちは。」
「ハリーじゃないか。」
「何をしてたの?」
「実はさ…………」
事情を愚痴も交えて説明した。
「と、いうわけなんだよ。」
「確かに、開発出来ればそれは画期的だな。」
「そうね。善良な狼人間を救えるかも知れないわ。ハリー。私も協力して良いかしら?お祖父ちゃんが魔法薬に詳しいから、何かヒントを貰えるかも知れないわ。ゼロ。あなたはどうするの?」
「呪文の開発。兄さんと戦闘訓練。医者と癒者の勉強。そして、バックビークの件で忙しい。パスだ。」
「シエル。ありがとう。助かるよ。」
「気にしないで頂戴。早速お祖父ちゃんに手紙書くわ。」
新薬開発にシエルが加わった。呪文学や授業が無い時間はお互いのスケジュールが合い次第、打ち合わせをしたのだ。
シエルが手紙を出して1週間後、スラグホーン教授から手紙が届いた。呪文学終了後にだ。
「お祖父ちゃんの手紙によれば、ポリジュース薬の材料を追加してはどうかって事よ。」
「ポリジュース薬か。スラグホーン教授も、中々厄介なのを出してくるもんだな。」
「クサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギは簡単だわ。これって、生徒用の材料棚に置いてあるから。でも、二角獣の角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切りはそう簡単に置いてあるものではないわね。」
「スネイプの個人棚にはありそうだよな。」
「そうよね。くれるかしら。」
「さあ。『スネイプ先生。新しい脱狼薬の材料で欲しいものがあるんです。戴けませんか?』って言ってもくれねえだろうな。寧ろ、特に俺の場合だと嬉々として隠しそうだぜ。」
「それは分かり切ってるわね。せめてスネイプが、研究室から出て行ってくれれば取りやすいのだけれど。」
その時、「おーい!」という声が聞こえた。エリナがこちらに気付いて、近付いて来たのだ。妙な羊皮紙を持って。
「エリナ。」
「ハリー!シエル!ここで何をしてるの?」
「新薬開発をな。ただ、その材料の一部がスネイプの部屋にあるんだ。」
「へえ。それよりも、2人に見て欲しいものがあるんだよ。」
「その羊皮紙を見て欲しいのかしら?」
「ううん。新しい魔法をね。ボクなりに変身術を進化させたんだ。」
ほほう。それは面白そうだ。
「だから、空き教室で見て欲しいんだ。」
そして空き教室。俺、エリナ、シエルは場所を変えた。エリナが先に秋葉原で買ったメイド服を着用するそうなので、しばらく外で待機した。終わったので、教室に入った。
ちなみにさっきの羊皮紙は、フレッドとジョージからプレゼントされたものだそうだ。忍びの地図という。彼ら2人は、もう何部もコピーを作っておいたそうだ。
「ちょっと待った。
俺は呪文を唱えた。
「最初の呪文は分かるけど、2番目のは何なの?」シエルが怪訝そうな表情で聞く。
「もう1つは外に声が漏れないようにする為の耳塞ぎさ。」
「じゃあ2人共。良く見ててね。行くよ!
呪文を唱えると、エリナの身体が変化していく。エリナの代わりに、艶やかな黒髪ロングのメイド服を着込んだセクシーな体つきの美女がそこにいたのだ。これはヤバい。あいつ、何て術作りやがったんだ!
「……」ひ、必死になって自らを律する俺。シエルは唖然としている。
「ご主人タマ。おイタはいけませんわ。」
甘い声で言ってきやがる。胸を強調させて。もとからある癖に、更に胸を盛ってどうする気だよ。シエル、プルプルと震えている。
「私、ご主人タマの傍から離れたくありませんわ。何でもさせていただきます。体でご奉仕させてください。」
おい。嘘だろ!脱ぐつもりか!イヤ、流石にそれはマズいだろ!
「……もう無理だ!!!降参!」自らの敗北を認めて、ストップさせる。危なかった。
元の姿に戻ったエリナ。エッヘンという表情をしている。
「これが新しく作った呪文なんだ。名付けて『擬態呪文』だよ。人間限定だけど、性別、容姿、色素とかを何でも思いのままに出来るんだよ!」
「ハア。ある意味才能だわ。明後日の方向に突き進んでるけど。そう言う呪文を作る暇があるなら、魔法薬学と魔法史に力を入れなさい!」
シエルが叱る。しかも、怨みがこもった言い方をしている。シュンとするエリナ。でも、俺はある事を思い付いた。
「じゃあさ。これでスネイプの性欲を刺激するってのはどうだろう?ああ見えてむっつりスケベかも知れないしさ。鼻血を沢山出しながらぶっ倒れると思うけど。」
「ハリー。良くそんな発想が思い付くわね。何であなたがグリフィンドールなのか不思議だわ。まあ、これしか方法はないでしょうから、やってみる価値はある筈だけど。」
「それ良いね!普段女の子に興味すら示さないハリーでこれだから、スネイプ先生だとどうなるんだろう?」
「想像するだけでアカン事になりそうだな。」
こうして、翌日の金曜日に決行となった。地下牢の近くで待機する俺とシエル。とある魔法薬に関する考察という名目で行かせた。
「大丈夫かしら。」
「問題無いだろうさ。スネイプの奴、妙にエリナに甘いんだよな。どうしてだ?」
魔力感知呪文で会話のやり取りを聞く。
「
エリナは、十数人の分身を作った。
「ミス・ポッター。何をする気かな?」
「こうするんです。千変万化せよ《インナムス・マティオネ》!」
見た目は大きく変わってない。ある程度背を伸ばし、顔を大人っぽくした状態に変身した。目をハシバミ色から俺と同じグリーンの目にした。まさか。これは…………
「り、り、リr……」突然の出来事に動揺するスネイプ。
「これって……ハリーとエリナのお母様じゃない。」
『どういう事だ?スネイプの野郎、何故穢れた血と罵っていた筈の母様に……』
「セブ様~」
母様に変身した沢山のエリナが甘い声でスネイプに言い寄っている。スネイプ、どうすれば良いのか混乱していた。それにしてもこのエリナ、ノリノリである。
「うわああああああああああああああ!!!!」
スネイプが、鼻血を噴射させながら自室の扉をぶち破って、床に倒れ込んでしまった。
「まさかの正面突破でクリアしちゃうなんて。」
「シエル、行こう。ああなったスネイプはしばらく動けないだろうし。」
「そうね。今がチャンス。」
スネイプの部屋に突入し、材料をいただく。これはシエルに任せた。
「ん?」
ネズミの尻尾を団子にしたような灰緑色のヌルヌルした昆布が3つに、無色無臭で透明な薬1リットル、金色の液体2リットルのボトルを見つけた。
「取り敢えず、貰える物は貰っちゃおうか。」
折角なのでいただいた。シエルも、目的の材料を多めに確保出来たそうだ。
「この3つ、何か分かる?」
「鰓昆布に、真実薬、フェリックス・フェリシスね。どれも希少価値が高い物じゃないの。知っててくすねたの?」
「いいや。珍しそうだなって思ってさ。」
「……ある意味才能だわ。物の価値を見抜く力と言えばいいのかしら?」
「それは良いからさ。さっさとエリナと合流しよう。」
その後、エリナと合流した。ルインと遭遇したらしいが、スネイプについては勝手に自爆という形になったそうだ。医務室で週末を過ごす事になったらしい。
必要の部屋。早速、真脱狼薬βにポリジュース薬の材料を煎じて混ぜ合わせる。比率は真脱狼薬βを3、ポリジュース薬を1といった具合に。
「これで、21日経てば完成よ。」
3週間後。再び必要の部屋を訪れる。
「完成してますように。
鑑定結果が出た。エメラルドグリーンの光が出た。成功だ。
《真脱狼薬γ
真脱狼薬βの進化版。その効果は、人狼の本能を完全無効化し、服用回数が1回だけで済む効果に比べて変身前の人間の状態も維持される。満月の日の、どの時間帯でも良いので服用する事。従来の脱狼薬をそれ以前に飲んでいても、問題無く効果が発動する。但し、とても苦い》
第3段階の変身前の維持が成功したのだった。
「やった!成功したわ!」
「よっしゃー!やったぜ!!!」
ハイタッチして喜びを分かち合う。だが、味が更に酷くなったか。
「でも。途轍もなく苦いんだよなぁ。」
「そうね。苦い味がダメな人もいるし。これからは、味の克服をしましょう。」
新たな目標を胸に、本当の意味での真脱狼薬完成を誓う俺達であった。
次の投稿は1月8日を予定しています。