Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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お久しぶりです


第22話 呪印の封印

新学期となった。1月7日に皆戻って来たのだ。再会を楽しむ者もチラホラ。翌日の8日から授業が再開された。震える様な1月の朝。そんな時は、中でゆっくりしたいものである。だが、よりによって最初に魔法生物飼育学がトップバッターだった。ホットドリンクを持ってる俺はそうでもないが、他の履修者からしてみれば悪夢そのものだろうな。

 

だが、ハグリッドは気を利かせてくれた。火トカゲ(サラマンダー)で焚火をしたんだ。珍しく楽しい授業になってくれた。他の授業もそれなりと言った所か。真脱狼薬の進行スピードは、パッタリと進まなくなったけどな。

 

新しい戦術の幅を作っている。凶嵐に魔力を纏わせて新しい技を作ろうと思っている。今思い付いたのが、対空中戦用に邪神の碧炎を付加させる。上空に跳び上がりつつ、切りつける技だ。天炎刃と名付けた。

 

空中戦にも慣れておこう。ゼロの奴、どうやら杖さえ持っていれば飛ぶ事が出来る飛行術を発明したらしい。全身が黄金の光に覆われるのだ。そんな物なんて無くても、自然物化能力で風そのものになって空中移動出来るだろうに、と心の中でツッコむ俺。

 

それに対抗して、俺なりに箒不要の飛べる手段を開発した。こっちの方が簡単だな。邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)炎よ我に従え(プロメス)勇賢の紅光(ブレイエンス・ディセルクス)、更に自分自身に暖かな光よ、生命を守りたまえ(カリルチェン・ケストディマム)を使う。これで、紺碧の炎の翼を作り出して、飛行を可能にした。

 

ミラクルガンナーは、邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)零界の翠氷(アブソリュス・グラキジェイド)天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)をそれぞれ纏わせたチャージショットを発射する事で、攻撃力を飛躍的に上げる。

 

これらの戦術は、ウイルスモードでのみ可能となる。通常モードは、体術を交えた魔法戦術だけになるわけだ。厳密には、使うだけなら凶嵐でもミラクルガンナーでも通常モードで使える。俺自身が編み出した新しい戦術が魔力を大量消費する。完全に使いこなすのであれば、魔力消費の半減、身体能力の急上昇や視力を中心に五感を超強化するウイルスモードでの使用が前提になってくるのだ。

 

しかも、スタミナの消費も初使用時より極端に緩やかになったとは言え、発生する。そこがネックだな。通常モードでもある程度、立ち回れる様にしておかなくてはな。

 

それと並行して、事実上の弟子となった2年生3人組の修行も最低CランクのNEWTレベルに到達した。しかも後半である。ジニーとエックスに至ってはBランクに到達している。他の国の魔法も教えているんだ。素養があったとは言え、この3人の成長は目覚ましいものだ。師としては嬉しい。戦闘能力だけなら、並大抵の魔法使いに勝てる程に。だが、まだ死喰い人やそれ以上の敵を相手にするには力不足だ。

 

「「「守護霊よ来たれ(エクスペクト・パトローナム)!」」」

 

馬、黒豹、海豚の守護霊が飛び出る。先に出ていた俺の守護霊であるメンフクロウと合流して、一緒に戯れる。

 

「見事。3人共、良く守護霊をモノに出来たね。継続時間以上に維持出来てるし。俺も鼻が高いよ。」

 

これは本当だ。この短期間で良くついて来れた方だ。次は、盾の呪文の応用版でも教えようかね。後、無言呪文も視野に入れるとしますか。数は少なくても良い。無言呪文が使えるというアドバンテージはかなり大きいからな。エリナも、武装解除呪文だけだが使えるし。ゼロは、俺以上に無言呪文を使いこなすしな。あやゆる分野の魔法の実力と才能において、あいつの右に出る奴なんていないだろう。

 

クィディッチの試合に向けての調整も順調だ。何しろ、ファイアボルト効果による練習の熱意。それが冷めるどころか、逆に熱くなったのだから。

 

そんな日が続いたある日の事だ。今日は久しぶりに何もせずのんびりする事にした。授業も休みだからな。食って寝てを繰り返せば良いだけの事だ。

 

大広間を出て、グリフィンドール塔に向かう。だが、ここで俺を歓迎してくれる者が現れたのだ。ドラコ・マルフォイ、ヴィンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイル、セオドール・ノット、ブレーズ・ザビニ、パンジー・パーキンソンの6人を始めとした30人前後のスリザリン生だ。大抵、マルフォイ家に付き従っている連中ばかりか。現に上級性もチラホラいるし。

 

「ほほう。これは何かの歓迎会でも始めるのか?」おどけた口調で聞いてみる。

 

「ポッター。いい気になるなよ。この人数を相手に流石のお前でも勝てないからな。」

 

「どうかね?生憎、碌に命懸けの戦いを経験した事の無い雑魚にやられる程、柔な鍛え方は鍛えていないよ。」

 

「無理矢理にでも、僕の痣の事を聞き出すまでだ。」

 

「何でそんなに焦っているんだ?スネイプから薬貰ってるんだろ?」

 

「……お前には関係の無い事だ。」苦い表情で呟くマルフォイ。

 

「ああ、そう言えば……クリスマスの時、終わりを生み出す者のリーダーから宣戦布告されたんだっけ?まあ、俺から言わせれば、そんな連中に目を付けられるほどの悪行を犯したお前らの親の自業自得としか言いようが無いけどな」

 

「取り消せ……」

 

「……何を?」

 

「今すぐ父上と母上の自業自得だっていう言葉を取り消せ!ポッター!!」

 

「フン。事実を言って何が悪い?それに、ぬるま湯に浸かってる奴等に負ける要素なんてありゃしないぜ、俺はな。」

 

その言葉が言い終わると同時に、誰かが俺の後ろへとやって来た。エックス・ブラックだ。

 

「やっぱり。先輩に何かをすると思って連中を監視してたら、案の定当たってましたね。先輩から教わった魔力感知呪文が功を奏しましたよ。」

 

「後を付けてたんだ。」怒るどころか逆に感心した。

 

「今でも先輩やエリナさんを殺せば、プリンアラモードが力を取り戻せると考えるバカげた連中がいてもおかしくありませんからね。特に闇の陣営は、去年の聖夜にて終わりを生み出す者に宣戦布告を受けたようですし。何とかポッター兄妹に手は打っておきたいと考えるのが妥当だと思います。」

 

「成る程ね。」

 

「それに、姉ちゃん以外で生き残っている唯1人の家族を救ってくれた先輩には、返したくても返しきれない位の恩がありますからね。」

 

「命を懸けてって言うのは無しだぜ。死んで恩返しなんて間違ってるからな。こいつら30人に負けると思っちゃいないが、少々面倒かも知れない。久しぶりにコンビを組んで切り抜けようぜ。」

 

「ええ。喜んで。」

 

さて。マルフォイ一味と戦う事になったわけだ。

 

『『武器よ去れ(エクスペリアームス)!』』

 

2人で一斉に武装解除呪文を無言で唱える。それぞれの閃光は、クラッブとゴイル、そして数人の1年生と2年生に命中し、そいつらは倒れた。

 

「な、何ですって!?早くも20人!?」パーキンソンが狼狽えている。

 

「ああ!だから無謀だって言ったんだよ!ポッターって確か、フィールドと同じく、あんおリドルと互角に渡り合えるんだからよ!」

 

ザビニが喚き散らしているが、理由はどうあれ、この俺に危害を加えようとしたんだ。遠慮も加減も慈悲もいらん。それ相応の代償は払って貰うとしよう。

 

「2年生の首席候補に30人か。」

 

「グリフィンドールの切札に30人ですか。」

 

「「足りねえよ!せめてその10倍は連れて来い!!!」」

 

10分後、パーキンソンもノットもザビニも、残りのモブ共も戦闘不能になった。クラッブとゴイルよりは歯応えはあったけどな。だけど所詮、申し訳程度だ。マルフォイ以外は全滅した。

 

「他愛も無かったが、妖刀凶嵐やミラクルガンナーないと少しばかり手こずるな。」

 

「仕方ないですよ。その2つの武器を使って連中を攻撃しようものなら、スネイプは口実が出来たと言わんばかりにグリフィンドールから大量の減点、酷ければ毎日先輩に拘束時間を作って胸糞悪い事をやるに決まってますからね。」

 

「それもそうだな。」

 

「たった2人で、30人を……」おや、マルフォイが狼狽えているな。

 

「諦めろ。お前じゃ何も出来ない。」

 

「先輩に何する気か分かりませんけどね。どうせ碌でも無い事に決まっている。」

 

エックスの言葉は流石に偏見も混じっている。それを言おうとしたが、やる事が全て空回り。しかもここ最近、理不尽な目に遭ってばかりのマルフォイ。それを覆せないヤケクソからか、大きな声で叫ぶように俺達に言った。

 

「ああそうだよ!お前達に僕の苦労が分かってたまるか!訳の分からない奴に呪いを刻まれて!その上、理不尽極まりない力を持つ連中に死を宣告されて!!!」

 

「恨むなら、第1次魔法戦争時に、死喰い人として悪事を働いた父親でも恨む事だな。」

 

冷たく返しとく。

 

「身から出た錆だ!逆切れするな!!」

 

エックスが冷酷にそう言い放つ。マルフォイは怒りの余り杖を抜こうとするが、即座にエックスが武装解除呪文で杖を遠くに弾き飛ばした。

 

「うるさい!お前みたいな裏切り者がいるからこうなるんだ!」

 

「裏切ったって。僕は別に、お前の仲間になった覚えは一切ないけれどね。」

 

「おいおい。お前ら、ちょっと落ち着けよ。」流石に空気が悪いと思い、必死に止める。

 

「……もうどうだって良いや。」マルフォイが異様に落ち着いた様子で言った。

 

ん?様子がおかしいな。顔をよく見て見る。目がイッた状態で笑っている。

 

「何もかも、全部壊れてしまえ。」

 

その言葉が言い終わると同時に、漆黒の痣がマルフォイの体中に広がった。そして、彼の杖がひとりでに右手に収まった。

 

「……」エックスは本能的な恐怖を感じており、言葉が出ない。

 

「それが、リチャード・シモンズに付けられた呪いの印って奴か。」

 

「ど、ドラコ?」パーキンソンが起きたか。だが、おぞましい何かを感じ取っている様だ。

 

「そうか。あいつが僕にこれを与えた理由がよーく分かったよ。これで邪魔な奴を、そして僕の言う事を聞かない奴をぶちのめす為の力だったんだ。」

 

物騒な事言ってんな。性格まで凶暴且つ残忍に変えるのかよ。

 

「力に溺れたレイシストには相応しい状態だな。そんなものに頼ってまで俺を排除したいのか。反吐が出るぜ。」

 

「僕はもう弱くない……まずはお前から血祭りにしてやる!!!武器よ去れ(エクスペリアームス)!」

 

マルフォイの杖から紅の閃光がエックス目掛けて発射された。が、大き過ぎる。いくら何でもこれは無いだろ。クソ。シモンズの野郎、厄介な力をマルフォイに与えやがって。アレを盾の呪文で防ぐのは到底無理だ。

 

「エックス!」

 

大き過ぎる力の前に何も出来なくなったエックスの近くまで駆け寄る。だが、閃光のスピードが速過ぎる。仕方が無い。

 

加速せよ(アクセレイド)!」

 

光の速さで安全な場所へ回避する。ついでに、倒れているスリザリン生30人弱も安置しておいた。マルフォイの放った武装解除呪文は、直撃した甲冑を粉微塵に粉砕した。

 

「せ、先輩。あれって。」

 

「エックス。話は後だ。誰か先生を呼んできてくれないか?俺一人じゃ手に負えない。」

 

「で、でも!」

 

「良いか。」俺は、エックスの両肩に自分自身の手を置く。

 

「正直言って、エックス。君を庇いながら今の状態のマルフォイと戦うのはとても難しい。下手をすれば殺されるかも知れない。でも、1対1なら勝機はあるさ。」

 

怯えさせない様に、出来る限り諭す様に言う。

 

「俺はまだ良いよ。何かしらの重傷を負ったとしてもだ。他の人よりも完治スピードは速いからな。寿命以外で死にやしないし、今死ぬつもりなんて微塵も無いからさ。それに。君まで何かあったら、イドゥンやシリウスに顔向けなんて出来ないからね。だからさ、頼んで貰って良いか?」

 

精一杯の笑顔でエックスに事を頼む。

 

「……分かりました。ですが、無茶はなさらないで下さいね。」

 

そう言うと、エックスは先生を探しに行った。

 

「臆病者の切札。ハリー・ポッター。僕の力の前に恐れ……」

 

「悪いな。逃げちゃいないさ。」マルフォイの前に立った。

 

ウイルスモードを発動し、アセビの杖を持ってても勝てるかどうか。封邪法印を使うべきなのかな。

 

「何を笑ってるんだ?ポッター。」

 

「そんな借り物の力に頼らないと俺と同じ土台に立てないとはな。つくづく哀れな奴だと思ってね。それじゃあ、始めますか。」

 

杖をそれぞれに向け合う。

 

反射の盾よ(プロテゴ・リフラート)。』

 

見えないバリアを無言呪文でマルフォイの周囲に張った。

 

武器よ去れ(エクスペリアームス)!」

 

武装解除呪文を唱えるマルフォイ。だが、バリアに防がれている。

 

「そんな小細工が……通用するかああああああ!!!」

 

マルフォイの言葉と同時に、閃光の大きさが更に膨れ上がる。それは、俺の改良した盾の呪文を打ち破ってしまった。しかも、閃光はまだ生きている。

 

万全の守り(プロテゴ・トタラム)!』

 

武装解除呪文を更に高ランクの盾の呪文で防ぐ。

 

「何とか防ぎ切ったな。」

 

「安心して良いのか?麻痺せよ(ストゥーピファイ)!」

 

失神呪文を使ってきやがった。これも特大規模になっている。ならば……次はこれだ。

 

神の怒り(デイ・デイーラ)!!」

 

最高出力に調整した虹色の破壊光線を発射する。

 

「どうしたポッター。防戦一方じゃないか。僕みたいに力を思いっ切り使えばちょっとはマシになるのに。」

 

「心を持たない力なんて要らねえよ。俺にはな。」

 

そう会話している内に、互いの呪文は相殺された。

 

「…………」

 

「さあ。次は……」

 

「やめて!」

 

声がした。マルフォイの後ろから。下級生のスリザリンの女子生徒がいたのだ。確かあいつは、グラスの妹だ。

 

「もうやめて!」

 

「アステリア?」

 

「こんな事は間違ってる!そんなやり方で、呪いの印の事を聞き出そうとするなんて!」

 

「下がってろ。素直に僕の要求を吞まなかったポッターが悪いんだ。」

 

「どかない!」グラスの妹は、必死に拒絶してから俺の方に向き直った。

 

「お願いします。マルフォイさんの呪印の事を知ってるだけ教えてください。後、止める手段があったらそれも……」

 

俺は、グラス妹もといアステリア・グリーングラスを見る。赤の他人なのに頭を下げている。

 

そもそも俺自身、スリザリンの連中が嫌いってわけじゃない。寧ろ才知や合理性に関しては素直に評価している。本当に嫌いなのは、血筋だけで自らの優位性を誇示する今の純血主義だ。特に、サラザール・スリザリンの意識が内装されたバジリスクから真意を聞いてからは、その傾向が強くなった。

 

さてと。話は変わるが、封邪法印を施したメリットでも考えてみようかね。マルフォイの奴を弱体化させる事が出来るし、術の性能を試せる。しかも、奴が侮蔑していると思われる東洋の魔法技術を刻み込んで屈辱も与えられるしな。何だ、一石三鳥じゃん。

 

「……分かった。丁度、試したい事もあるしな。マルフォイよ。今回は、プライドを捨ててまでお前の為にこの俺に対して頭を下げたアステリア・グリーングラスに免じてやってやろうじゃないか。呪印を最小限に抑えられるかもしれんしな。」

 

杖を下ろしながら言った。

 

「出来るの!?」パーキンソンが歓喜の声を上げた。

 

「成功確率35%。俺も始めてやるから上手くいく保証はない。それに、術を施したとしても呪いの持ち主がその力を積極的に望めば無意味になる。どうする?」

 

半分以下の確立だと脅しをかけておく。3人共、分かりやすく動揺してやがる。上手くいかない方の確率が高い可能性なんてこいつらが懸けられるか分からんしな。それに、マルフォイが死んで責任なんて取りたくないしね、俺は。

 

その時、エックスが先生を連れて来た。フィールド先生を。パーキンソンが逃げた。逃げ足が速いな。よっぽど先生の事がトラウマになってるんだな。

 

「良かった。間に合った。大丈夫かい?」

 

「はい。何とか。」

 

「ま、不幸中の幸いと言った所だね。この程度の物の崩壊なら、割と完全に直せるから。それで、呪印を封印するんだろう?」

 

「ええ。ですが、完全に上手くいくとも限りませんし、下手すると死にますからね。躊躇しますよ。」

 

「分かった。私が証人となろう。ドラコ、死ぬ事になっても文句は言わない事だ。約束出来るかな?」

 

「……はい。覚悟が出来ました。」

 

「決まりだ。ではハリー。準備を。」

 

結界が書かれた大きな紙と術式を取り出す。紙の上にマルフォイを移動させる。杖は要らない。印さえ正しく繋げられるなら、それで理論上は成功するからだ。

 

「良いかマルフォイ。これから、お前に刻まれた呪いの印を封印する。」

 

印を正しい順番で結ぶ。

 

「行くぞ……封邪法印!!!」

 

術式の文字が、マルフォイの首筋の痣を中心に収束していく。マルフォイは激痛の余り、絶叫を上げる。

 

「お。やれば意外に出来るもんだな。」

 

封邪法印の儀式は終了した。成功しちゃったよ。

 

「ぽ、ポッター。成功したのか?」

 

「まあな。それでも完全にってわけじゃない。マルフォイよ、この封印術はお前の意思がその中核を担ってるのさ。」

 

「どういう事ですか?」アステリアが質問してきた。

 

「本当に使いたくないと思うなら、呪いの印は二度と発動しない。ただし、自分の力を信じないでその力を渇望した場合、再び呪いの印は発動する。」

 

それを聞いたマルフォイは倒れた。でも、その表情は何処か安らかだった。

 

「さてと。この一件は極一部を除いて秘密にしとくから、さっさと医務室に運ぼうか。」

 

「はい。エックス。君にも手伝って欲しいんだ。」

 

「言われなくともそのつもりです。」

 

2時間後、事の全てを先生方に話した。フィールド先生がフォローしてくれたので、お咎めは無かった。まあ、マルフォイ一味もだけど。

 

「凄い。これは強力な術だ。我輩の薬の効果を遥かに上回る程の封印が施されている。」

 

「そ、それ程なのですか、セブルス。そしてポッター。どこでこの術を?」

 

「日本の魔法界でも滅多に市場に出回る事が無い陰陽術の薦めという本に書いてありました。最終巻の達人編に記載されています。」

 

陰陽術の薦め全5巻を見せる。入門編、初級編、中級編、上級編、達人編の5冊をね。日本語で書いてある。平仮名と片仮名、漢字で書かれている。その3つをある程度使いこなさないと学べないのさ。

 

「ハリー。1つ聞いて良いかね?」校長が口を開く。

 

「……」開心術をかけてくるジジイ。俺には無意味だな。

 

「何故、ミスター・マルフォイを救ってくれたのかね?」

 

「何故、ですか。今思うとどうしてなんでしょうかね?助ける義理なんてこれっぽっちも無かったのに。じゃあ、今ここで理由を付けしましょうか?」

 

「良いじゃないですか。ダンブルドア校長。理由なんて。たまに直感で動くって時もあるんですから。」

 

フィールド先生が助け舟を出してくれた。正直言うと、何でなのかは分からん。アステリア・グリーングラスの言葉がきっかけになったのは間違いないのだが。

 

「何はともあれハリー。君は今まで敵視していたドラコを助けたんだ。君にどんな理由や思惑があってもね、呪印の暴走を最小限に抑える手段を施した。もっと極端な事を言うと、彼を過酷な目から救い出した事になる。」

 

「実感が湧きませんね。」

 

「まあね。分かるよ。これは複雑な魔法だから。『助けられた』という意識は、どんなに忘れようと彼の深層心理で深く覚えている。もしも本格的に敵対する関係になっても、どこかでそれが生きてくるものさ。ハリー。君にとって良い方向にね。」

 

「気色悪いなぁ。」

 

「悪縁も縁だと思って割り切るんだ。」

 

その言葉を渋々だが受け入れて、俺は医務室を後にする。

 

エリナ視点

「この事件の判例はどうかな。」

 

「う~ん。難しいわ。」

 

「これはマンティコアだから引用は不可能だな。」

 

「これはどうでしょうか!……駄目ですね。有罪になってます。この事件の後味が悪過ぎです。」

 

「パンクしそうだぜ。」

 

「やっぱりハリーが取り寄せたこれを使うしかなさそうだね。ハーミー。」

 

「そうね。調べてみる価値はあるわ。」

 

ロン、ハーミー、ゼロ、グラント、ルインと一緒にバックビークの無罪を証明する手段を探しているんだ。途中でジャスティンも、事情を聴いてくれて快く協力してくれたんだ。そう、バラバラに分かれている4つの寮が協力し合う。それが後々、これからの未来で大きな役割を果たす事になるんだけど、それはまた別の話になるんだ。

 


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