Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

13 / 65
第11話 切り裂かれた「太った婦人」

 1993年10月。ここから11月のクィディッチに向けての練習も追加された。何しろここまで2回も優勝しているんだ。今年度で卒業するオリバー・ウッドの為に何としても3度目の優勝を手にしなければいけないのだから。

 

「ここまで俺達は2回優勝出来た。ここまで来たら3連覇をしたい!だが、今年は俺の知る限りホグワーツ始まって以来の最大のクィディッチ覇権争いが起こる!」

 

「今年もまた、今までとは違うスタイルを編み出さなくてはいけない。……オリバー。そう言いたいの?」

 

「そうだ。ハリー、俺の意図を読んでくれて大いに嬉しい。来年度からのキャプテンに推薦しようか?」

 

「人の上に立てる器量があるかどうかも分からないから、パスで。それに、3年後に向けてGCSEの勉強も並行してやっていくからね。」

 

「何それ?」アンジェリーナが聞いて来た。

 

「俺の家では、マグルの世界で生きる事になっても良いようにマグルの教育課程もやるんだ。こっちで言うところのフクロウ試験だよ。3年後は、フクロウ試験が2回あると思ってくれてば良い。幸い、どれも得意科目だから落ちる心配はないけど、油断は出来ないんだ。」

 

「ハリーも忙しいのね。」

 

 ケイティ・ベルはそう言いながらも、頭がパンクしそうになっている。

 

「とにかくだ。ハッフルパフは、新たにセドリック・ディゴリーがキャプテンとなった。奴は新たにチームを再編成し、去年とは比較にならない位の強力なチームを作り上げた。スリザリンは、ニンバス2001の性能を駆使した新戦法を編み出した。そしてレイブンクローは、今まで代理だったチョウ・チャンが正式にシーカーとなった。前任者など比ではない腕前だ。だが!こちらは素晴らしい箒と乗り手がいる!!3連覇を掛けて練習に励むぞ!」

 

 こうして、練習が始まった。週に3回というペースで。エリナもグラントも練習に励んでいるのを目撃した。グリフィンドールに3連覇と取らせてたまるかという意気込みで打ち込んでいたのだ。

 

 授業で出た宿題をその日のうちに終わらせる事は出来たものの、クィディッチの練習、マグルの教育課程の勉強をこなすのは流石の俺でも疲労が溜まっていった。そう言う時は、細胞分身に作業をやらせて俺は必要の部屋で睡眠を決め込んだ。だが、俺はまだ良い方かもしれない。分身を使って、休憩を取れるだけ。問題はハー子だ。あいつ、徐々に覇気が無くなっていくような感じであったのだ。そりゃそうだ。12科目も履修していて、一切休んでいないならなおさらだ。

 

 そんな日がしばらく続いたある日、第1回ホグズミード行きの日程が決まった。ハロウィーンの日だ。ちょっと行ってみたい所もあるし、今年は父様と母様の命日の黙祷は出来そうにないな。

 

 ジニー、コリン、エックスの修行の方は上々だ。3人とも、基礎は出来ている。特にエックスは、イドゥンから教わったのか実技はホグワーツ卒業レベルまで到達しているのだ。もう少しレベルの高い魔法を教えてもアリかな?でも、あの3つの魔法は危険過ぎるから教えなくてもいいか。

 

 ハロウィーンの日。ホグズミード村に行く日となった。他の人と行動しても良かったが、俺は確かめたい事があるから1人で行動する。そういう事なので、早速ホッグズ・ヘッドへ向かった。

 

 誰も居ないようだった。あの時の食料提供の時と同じくらい静かだった。イノシシの剝製があり、肖像画も飾ってあった。女の人のものだ。俺よりも少し年上の様な感じだった。

 

「フン。ここに未成年のガキが来るとは、物好きな奴もいるもんだ。」

 

 ホッグズ・ヘッドのバーテンダーが、俺に皮肉を言ってきた。

 

「先月食料を提供していただいたのに、今更疎むんですか?今日ちょっと確かめたい事がありましてね。ここに来たんです。バタービール1つお願いします。」

 

 俺は、近くのテーブルに座る。バーテンダーは不愛想な顔つきで、俺にバタービールを差し出す。

 

「いただきます。」

 

 グビッと一杯飲んだ。

 

「あなたに最初にお会いした時、ある人物を思い出しました。」

 

「俺を見てか?」

 

「目は明るいブルーだから、一瞬ダンブルドア校長かと思いましたよ。正直に言っちゃうと。」

 

「…………」

 

「校長とどんな関係なんですか?」

 

「ポッター。お前、知ってて俺に言っているのか?」

 

「自ら答えたくないなら、俺の方から言いますよ。ロイヤル・レインボー財団にあった不死鳥の騎士団の創立メンバーの集合写真。その写真は、アルフレッドさんが送って来た物ですけど、確かにあなたの顔も写っていた。先月出会って、ようやく確信しましたよ。ダンブルドア校長の弟、アバーフォース・ダンブルドアさん。」

 

 バーテンダーの名前を告げた。バーテンダーは沈黙している。沈黙という事は、肯定と受け取って良いわけだ。

 

「確かめたい事は何だ?」

 

「アルバス・ダンブルドアは果たして偉大なのかどうか。ホグワーツでは、殆どの者が彼を偉大だと称している。だったらどうして、2年前はクィレルに取り憑いてたヴォルデモートを始末しなかったのか。そして、奴に関係する日記を生徒から取り上げなかったのか。解決する手段なんて、早く出来た筈だ。それなら、12年前の父様と母様の時だって。だから、あなたの知るアルバス・ダンブルドアの姿からその答えを考察してみようと思います。」

 

「興味深い奴もいるもんだ。良いだろう、暇つぶしになるかも知れないが話してやる。」

 

「ちなみに俺、アルバス・ダンブルドアを妄信的に信じちゃいませんよ。寧ろ、妹のエリナを危険な状況に誘導するあのジジイなんて信じたくありませんし。」

 

「分かっている。そんな事は。両親よりもメイナードそっくりな性格だな、ポッター。さて、話を始めようか……これは、お前が生まれる100年も前の話になるが…………」

 

 アバーフォースさんから、ダンブルドアの半生を教えて貰った。それまで誰も知らなかったダンブルドアの真の姿、いや、知ろうとも思わなかった姿を聞けたのだから。

 

「成る程。失敗を恐れるあまり、自分で最善の手段を封じたのか。結局の所、ホグワーツで一番矛盾に満ち溢れているのは、あの爺さんだったってわけだ。」

 

「結果的にはな。それが、君の父や母の悲劇だ。そして、アルバスに従った奴のな。」

 

「だったら、尚更だ。ジジイの言いなりにはならない。俺は、やっぱり俺のやり方で目的を成し遂げる。」

 

「ポッター。それがお前の決断なら、俺は止めはしない。だがアルバスは、それでもお前に自分の手駒として動いてくれとこれからも言ってくるだろう。」

 

「それなら、ひたすら否定し続けてやりますよ。それに、所属するとしたら俺は、ロイヤル・レインボー財団にするって決めてますからね。」

 

 3時間くらいアバーフォースさんと話し込んだ。この人がダンブルドアをどう見ているのか、俺はどう思っているのかじっくり話し合った。バタービールを含めた飲み物の代金をカウンターに置いておく。

 

「それじゃ、また機会があったら来ます。今日は、ありがとうございました。」

 

「退屈しのぎには、なったがな。また何かあったら来ると良い。」

 

 俺は、ホッグズ・ヘッドを後にした。その後、ハニーデュークスでお菓子を、スクリベンシャフト羽根ペン専門店で新しい羽ペンを買った。コリン、エックス、ジニーへのお土産として。普段、こんな俺を師として修業を頑張っている3人にご褒美があっても良いだろうし。

 

 その後、ゼロとグラントの2人とバッタリ会った。折角だから3人で見ようって事になった。具体的には、郵便局で何百羽ものフクロウを眺め、叫びの屋敷の不気味さに震えた。俺にとっては、大変満足した1日となった。

 

「楽しかったぜ!サインしてくれたオヤジに感謝だ!」

 

「兄さんの言ってた通り、最高だったな。」

 

「今回行けなかった所を次行こうかね?」

 

 グラント、ゼロ、俺の感想はこんな感じである。

 

 ホグズミードから帰ってきた後、すぐにハロウィーンのご馳走が待っていた。俺はそうでもなかったけど、他の皆は腹がはち切れる程お菓子を食べていた。にも拘わらず、皆がおかわりをしていた。ゴーストの余興も楽しかった。サー・ニコラスは、しくじった打ち首の場面を再現した。これが、大受けしたのだった。

 

 宴会が終わって、グリフィンドールの談話室に向かう。しかし、何故かすし詰め状態になっていた。何があったんだ?パーシーが列をかき分けて、偉そうに肩で風を切って歩いて来る。

 

「通してくれ、さあ。何をもたもたしてるんだ?全員合言葉を忘れたわけじゃないだろう――ちょっと通してくれ。僕は首席――」

 

 そう言いかけた時、パーシーは絶句した。何と、太った婦人の絵はめった切りにされていた。肝心の婦人は、どこかに消え去っていた。

 

「誰か。ダンブルドア先生を呼んで。急いで!」

 

 パーシーが言った次の瞬間、ダンブルドアがすぐそこに立っていた。ダンブルドアは無残な絵を一目見るなり暗い深刻な目で振り返った。丁度マクゴナガル、ルーピン、スネイプ、フィールド、スプラウトの先生方が駆けつけてくるところだった。

 

「婦人を探さなければならん。ミネルバ。アーガスに婦人を見つけるように言ってくれんか?」

 

「見つかったらお慰み!」

 

 甲高いいすぁがれ声が聞こえた。ピーブズが、空中に浮かんでいた。大惨事や心配事が嬉しくてたまらないらしい。

 

「ピーブズ、どういう意味かね?」

 

 ダンブルドアが静かに聞くと、ピーブズは、ニヤニヤ笑いを引っ込めた。ねっとりした作り声で話しだした。いつものほうがマシと思えるほどの不快な声だったわけだが。

 

 どうやら婦人は、5階の風景画に向かって走っていったそうだ。ズタズタで、泣いていたそうだ。

 

「婦人は誰がやったのか話したのかね?」静かに聞くダンブルドア。

 

 ピーブズはその質問に対して、こう答えた。

 

「まったく癇癪持ちだねえ、あのシリウス・ブラックってのは。」

 

「先輩。」エックスが話しかけてきた。

 

「エックス。俺も今、同じ気持ちだ。」

 

 俺とエックスが、同時にこめかみを抑える。これじゃ、無実どころか有罪になってもおかしくない!俺達2人の心の声であった。シリウスが学校に来ていたのは予想外だったけど、想定していなかったわけじゃない。ダンブルドアとマクゴナガル先生は、困惑していた。あれ?あの2人、事情を知っているのか?逆に、事情を知らない者は、恐怖の感情を抱いていたのだった。

 

 その日の夜は、大広間で寝る事になった。先生達は、必死にシリウスを探したけどとうとう見つからなかったそうだ。エックスは、まずは理解してくれそうな人に教えた方が良いじゃないかと言ってきた。俺は、やはりペティグリューは誰かのペットに成りすましている可能性が高い事、そしてそいつはグリフィンドールにいる事を話して今の段階で話すのをやめさせた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。