Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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久々の投稿です


プロローグ
第0-A話 それぞれの動向


1986年7月7日

 

「母さん!聞いて聞いて!父さんが、父さんが帰って来たんだ!母さんを心配して!戻って来たんだ!!」

 

 6歳ほどの少年が、病院で寝ている女性、キャサリンに話している。

 

「ゼロ。もうお父さんは、私たちのいない所に出掛けてるから帰って来ないわ。」

 

 女性は、もういない自らの夫の事を息子に言った。これで嘘を付くのは何十回目かになる。だが、それは自分を元気付けようとする為にやっているので、咎めなかった。

 

 もう自分は長くない。5年前のハロウィーンまで果てしない逃亡生活が続いた。終わってから異変を感じた。そしたら乳癌、ある程度のレベルまで進行していた。

 

 一度は除去出来たけど、再発。しかも今度は至る所に転移してたので、入退院を繰り返している。いくら、夫の前妻の子のフォルテや屋敷しもべ妖精のシルバがいるからと言って、これではゼロがあまりにも不憫過ぎる。

 

 だから出来るだけこの子の傍にいようとした。思えば、夫と出会ったのは10年前。病院での仕事が終わった時。医師としては駆け出しだった。帰りに奇妙な男、数人に襲われた。その時に助けてくれたのが、夫。アルバート・フィールド。その隣にいたのが、彼の前妻の子であるフォルテ。小さな生き物の正体は、屋敷しもべ妖精のシルバ。性別は女性だそうだ。

 

 アルバートから素性を教えて貰った。でも、すんなり信じられた。目の前で魔法を見たのだから。そして何よりも、12歳年下の弟ギルデロイもそうだったから。自分と妹には、残念ながら魔法力が無いスクイブだった。だから、マグルとして、医者として生きる事にした。

 

 2年間アルバートと交際し、ゴールイン。でもそれは、魔法界のテロリストである闇の陣営からも狙われる事を意味してた。それでも天は、私達に愛の結晶を授けてくれた。最愛の息子、ゼロを。

 

 大きな一軒家に魔法をかけたアルバート。万全の護りとなった。ゼロが生まれる2か月前の事。アルバートは最期、数十人の死喰い人から私達家族を逃がす為に殿を務めた。フォルテはその時、新入生としてホグワーツに行っていた。間に合わなかったが、救援に駆け付けて来たアルバス・ダンブルドア曰く、夫は3日3晩倒れる事無く死喰い人を全員道連れにして立ったまま死んだそうだ。

 

 いつもアルバートやフォルテ、シルバに助けられてばかり。闇の陣営の首領、ヴォルデモート卿が倒れたと聞いて、これからはアルバートに代わって2人の息子と妖精を守っていこうと思った矢先がこれとは。

 

 ああ。もう意識が遠退いていくようだ。

 

「く……薬の話があるんだ!伝説の何でも直す薬!!魔法界になら……きっと。」

 

 ゼロが今にも泣きそうなのを堪えながら、必死に私を元気付けようとしている。フォルテは、帽子で目で隠し、泣こうとしているのを隠している。

 

「フォルテ、シルバ。私はもうここまでみたいだわ。あなた達には、いつも迷惑を掛けてばかり。守るつもりが、守られていた。」

 

「そんな事は無い。義母さん。あなたと出会うまでは、母親なんて碌でも無い存在だと思ってた。俺の実の母親は、フィールド家を滅ぼした悪魔だから。だが、あなたは俺の実の母以上に母親らしかった。この俺をゼロと同じく息子として扱ってくれた。感謝している。あなたからは、もう十分過ぎるほど色々いただいた。もう安心して欲しい。ゼロは、何があっても守る。そうだろ、シルバ。」

 

「奥様。心配なさらないでください。フォルテ様と共に、ゼロ坊ちゃまを必ずや、守り抜きます。」

 

 それを聞いて安心した。シルバは、パチンと消えた。周囲の人間に知られたら危険過ぎるから、気を遣ったのだろう。

 

「ゼロ。」

 

 息子の名を呼ぶ。

 

「これから辛い事……悲しい事があるかもしれない。でもね、楽しい事……嬉しい事もある。夢を持って……自信を持って……本当なら……もっと色々な事を……教えてあげたい。そして…………も……っと……一緒にい……たい。ゼロ…………ゼロ……愛しているわ。」

 

「母さん?……母さん!母さん!!イヤだあああああああああああ!」

 

 ゼロの悲痛な叫びが部屋の中に響き渡る。キャサリン・フィールド。死亡。死因、乳癌を始めとした体の至る所に転移した癌。それを5年間闘病し続けた。

 

*

 

「!?……何だ、夢か。」

 

 ゼロは、目を覚ました。

 

「クソ。この時期になると、あの出来事が夢として出て来るのか。」

 

 カレンダーを見る。今日は、1993年7月7日。彼の母、キャサリン・フィールドの命日であった。

 

「お目覚めでございますか。ゼロ坊ちゃま。」

 

 フィールド兄弟が住んでいる大きな一軒家。ゼロに声を掛けたのは、アルバートの代から仕えている屋敷しもべ妖精のシルバだ。彼女は、ゼロの世話係でもあり、育ての親とも言える存在なのだ。ゼロとフォルテは、従来の魔法使いと違って、このシルバを邪険には扱ってない。どちらも、彼女に育てて貰った恩があるからだ。というよりフィールド家は、屋敷しもべ妖精をかなり厚遇している。丁重に扱う。故に、シルバは厚保程度の権限を持っている立場なのである。

 

「大丈夫さ。」ゼロは、顔色が悪い。

 

「この時期になりますと、いつも奥様の夢を見るのですね。」

 

「もう割り切ってる。」

 

「ゼロ坊ちゃま。割り切る事と、乗り越える事は別問題でございます。それをお忘れ無く。」

 

 シルバは、ゼロが見栄を張っている事を既に見抜いていた。だから、ゼロを諭したのだ。

 

「うん。ありがとう。それじゃ、お休み。」

 

「お休みでございます。」

 

 ゼロは、再び眠りについた。宿題は80%終わってる。あと一週間で、残りを仕上げよう。

 

 

*

 

 1979年、某国某所。どこかの研究施設。そこにそいつはいた。

 

「――様!とうとう、――の血肉を回収出来ました。これで、全てを無に帰す生体兵器Gを作り出す事が出来ます!やりましょう!私が被験者となります!」

 

「私としては、あなたには危険な目に遭って欲しくないのだけれど?」

 

「あなた様は、人間からも吸血鬼からも迫害される私を救っていただきました!!恩返しがしたいのです!!」

 

「……分かったわ。あなたの意思を尊重する。それで、今から生み出して、完成はどれくらいになるかしら?」

 

「1980年の4月16日になるかと。」

 

「そこに、この――――を組み込んでおきましょう。」

 

 そして、現代。グラントは、相変わらず抗争に明け暮れていた。ついさっき、敵対組織の『ブリッツ』を壊滅に追い込んだ所だ。その報告を、ボスに報告するのだ。

 

「オヤジ。ブリッツを潰してきた。」

 

「良くやったグラント。流石は、俺の息子だ。しかし、もう13年か。お前を拾ったのは。物心ついた時から、喧嘩や格闘技をして、8歳で総隊長だからな。……それで、魔法の学校はどうだ?」

 

「ああ。楽しいぜ。その時だけ、有意義な時間を満喫出来る。」

 

「そうか。しばらく休め。学校の勉強も怠らないようにな。」

 

「おう。ありがとう。オヤジ。」

 

 グラントは、自分の部屋に戻る。苦手じゃない科目から勉強を始めた。

 

「俺って、一体?」

 

 自分が何者なのか、それに疑問を持ち始めるグラントであった。

 

*

 

「ルシウス!どうしましょう!アイツの狙いは、ドラコよ!」

 

 すらっとしていて色白、髪はブロンドで目は青い女性がルシウスに切羽詰まった状態で夫に相談している。

 

「シシー!ドラコとスピカとコーヴァスを連れて逃げろ!何て事だ。こんな奴に目を付けられるなんて!」

 

 ルシウス・マルフォイは、妻であるナルシッサ・マルフォイにドラコとコーヴァス、2人の息子と娘スピカと共に逃げるように促す。

 

「うふふふふ。逃げられると思ってるのかしら。あなた達ごときの強さで。この私、リチャード・シモンズから。」

 

 喋っているのは男だ。金髪で、丸刈り頭の。そして、クラシックチュチュを着用している。また、オネエ言葉を話す。無言呪文で、ルシウスのあらゆる呪文を一蹴する。

 

「さて、遊びは終わりよ。来い(アクシオ)。」

 

 リチャードが、黒紫のオーラを待とう。それと同時に、ルシウスの周囲10メートルに小型隕石が沢山降り注いだ。

 

「私を舐めるな!護れ(プロテゴ)!!」

 

 何とか防いではいるが、盾にヒビが入り始める。

 

「ルシウスは封じたわ。次は、加速せよ(アクセレイド)!」

 

 リチャードは、ナルシッサとドラコの前に現れた。

 

「ドラコに手を出したら、タダじゃおかないわよ!」

 

 ナルシッサが強い口調でリチャードを威嚇する。だが、当の本人は全く意に介してない。

 

「口煩いメス2匹とオス1匹は目障りだわ。麻痺せよ(ステューピファイ)!」

 

 ナルシッサとスピカとコーヴァスは、成す術無く失神した。

 

「スピカ!コーヴァス!母上!クソォ!!スネイプ先生から教えて貰ったこの呪文で!お前を倒してやる!!切り裂け(セクタムセンプラ)!!!」

 

 リチャードの体の至る所が、切り刻まれた。だが、すぐに傷口は治ってしまった。

 

「そ、そんな……」

 

 ドラコは、非常に怯えてる。自分の切札を、こうもあっさりと破られるのは完全に想定外だったからだ。

 

「やる時はやるし、案外勇気もあるじゃないの。気に入ったわ。だから、私へのプレゼントを……あ・げ・る。」

 

 リチャードは、ドラコの左首筋に噛み付いた。そして、何かを流し込んだ。そして、ドラコから離れた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 凄まじい激痛が走る。この世のものとは思えない悲鳴を上げる。そして、ドラコが意識を失った時、噛まれた部分に漆黒の痣が出来た。

 

「貴様!!ドラコに、私の息子に何をした!!!」

 

 憤怒の形相で、リチャードを問い詰めようとするルシウス。

 

「この子は、私を求めてくるのよ。力を求めてね。それじゃ、またどこかで会いましょう。」

 

 リチャード・シモンズは、姿くらましした。それと同時に、ナルシッサとスピカとコーヴァスも起きた。

 

「シシー。セブルスに連絡だ。彼なら、何か解決出来るかもしれない。」

 

「分かったわ。ルシウス。」

 

「お父様。お兄様は治りますか?」

 

 スピカが聞いて来た。コーヴァスも心配そうな顔をしている。

 

「大丈夫だ。ちゃんと痣を取ってくれるはずだよ。スピカ。」

 

 スピカとコーヴァスの頭を撫でながら、ルシウスは微笑んだ。心中、穏やかではないのだが。

 

『必ず思い知らせてやるぞ、リチャード・シモンズ。』

 

 そう思いながらも、今は意識を失った長男の安否の方を優先したルシウスだった。

 

「ククククク……ここまでお花畑な思考を持っていると、一層滑稽じゃないか。ルシウス。ナルシッサ。」

 

 突如、声が聞こえた。何も無い場所から、吐き出されるかのように右眼だけを露出している、奇妙な仮面を被った男が出現したのだ。

 

「貴様!何者だ!?」

 

 ルシウスが、仮面の男に杖を向ける。だが、本能で感じ取っていた。コイツは、余りにも危険過ぎると。

 

「俺の名はダアト。まあ、お前が良く知っている人間とでも言っておこう。」

 

 何を言っているのか分からないルシウス。だが、これだけは断言出来る。この男は、強さ、危険度、凶悪さ、全てにおいて義姉ベラや先程のリチャード・シモンズ以上の要素がある。

 

「ふっ……バカめが。何も知らず、ヘラヘラと笑ってやがる。」

 

「私が、本心からそうしているとでも思ってるのか!?」

 

 ダアトの嘲る様な口調に、苛立ちを隠せなかった。

 

「これからお前達闇の陣営に降りかかる地獄も知らずに……浅ましく滑稽だな。」

 

「何だと!?」

 

「これから……いっその事死んだ方が良いと思える程お前達マルフォイは苦しむ事になるだろう。そんな中で、運良く生き残れたとしても……俺達とは別の…………究極の地獄に気付くのさ!」

 

「究極の……地獄。」

 

 嘘だ。嘘だと言って欲しいと願っているナルシッサ。ダアトは、そんな彼女を見て嘲笑っている。

 

「敵である筈の……ダンブルドアに泣きつくお前らの姿が目に浮かぶ。笑いが込みがって来るわ。」

 

 もう我慢の限界だった。こちらが何も言わなければ、好き勝手にボロクソに言い放った。それに飽き足らず、自分達を見るダアトの眼は、虫けらでも見ているかのようなそれであった。

 

「ふざけるな!そんなむざむざと、殺されてたまるか!私は、生き残る為なら何だってするのだ!!息絶えよ(アバダ・ケダブラ)!!」

 

 ルシウスは、仕込み杖から緑の閃光を発射。ダアトは避けようともせず……直撃した。

 

 当たった。死んだ。何処の誰だか知らないが、その胸糞悪い面をひっぺはがしてやろう。ルシウスはそう思ったが、ダアトはピンピンしていた。イヤ。正確には、死の呪いがすり抜けたのだ。

 

「ルシウス!」ナルシッサが、夫の肩に縋りつく。

 

「それまで……せいぜい、仮初めの平和を謳歌しているが良い。」

 

 ダアトは、吸い込まれるかの様に消え去っていった。

 

*

 

 隠れ穴。ウィーズリー家の面々は、日刊予言者新聞のガリオンくじの項目を見ていた。

 

「いい。アーサー。番号は6737804687よ。」

 

「分かってるって。モリーや。」

 

「お父さん。頼みますよ。」

 

 ウィーズリーおじさんは、当選番号を確認する。

 

「…………やった!当たったぞ!」

 

「「すっげー!流石親父だぜ!」」

 

 フレッドとジョージの双子も喜んでいる。

 

「パパ凄いや!」

 

 ロンも思わず感激している。

 

「夏休みが楽しくなりそうだわ!」

 

 ジニーは、すっかり元気になっていた。

 

「ロン。新しい杖も買っておくよ。そして学費以外で、エジプト旅行に行こう!」

 

 こうして、ウィーズリー家の夏休みが確定した。

 

*

 

 グリモールド・プレイス 十二番地のブラック家。ここでは、イドゥンとエックスが魔法の修行をしていた。

 

守護霊よ来たれ(エクスペクト・パトローナム)!」

 

 エックスが黒豹を出している。しかし、30秒後に消滅。

 

「はあ……はあ……まだ、時間が短過ぎる!」

 

「以前は15秒でしたのに、随分と伸びましたわね。秘密の部屋の時の持続時間を再現するのはもうしばらくかかりそうですね。」

 

「あの時は、無我夢中だったからさ。でも何で、あの時はあれだけの長時間出せたんだろう?」

 

 その時、ブラック家の屋敷しもべ妖精クリーチャーが2人のいる部屋に入って来た。

 

「お嬢様。お坊ちゃま。そろそろ夕食の時間です。」

 

「オーケー。ありがとうね、クリーチャー。すぐ行くよ。」

 

「ありがとうございます、クリーチャー。それじゃあ、エックス。今日はこの位にしましょう。また明日、続きをやるです。」

 

「了解!」

 

 キッチンへ2人は向かった。

 

*

 

 プリペッド通り。エリナ・ポッターは、魔法史と魔法薬学の宿題に苦戦していた。他はすんなり出来た。でもこの2つだけは、とても苦手なのだ。

 

「火あぶりの刑なんてどこを探せばいいのやら。はあ、あと一週間か。待ち遠しいなあ。」

 

 ダーズリー家にも言ったが、夏休み初日の2週間後にロイヤル・レインボー財団がエリナを迎えに来ることを伝えた。

 

 この財団は、彼女の兄であるハリー・ポッターの家なのだ。ローガー家やロイヤル・レインボー財団のメンバーはエリナを家族と見做してくれている。

 

 今回は、バーノン・ダーズリーの経営する会社の資金援助もするという話もロイヤル・レインボー財団からの手紙で持って来ていた。

 

「ハリー。ボクの唯一残った家族。今頃、どうしてるのかなあ。」

 

 エリナにとってハリーとは、唯一生き残っている家族で、双子の兄だ。彼は、自分と違ってずば抜けて優秀。学年主席のイドゥン・ブラックとも互角に戦えるのだ。それどころか、ルール無用の戦闘となれば彼女など瞬殺する技量の持ち主。そして、この状態の彼と対等に戦えるのはゼロにグラントの2人だけだ。

 

 成績の方も、変身術を除いてはハリーが一回りも二回りも優秀である。特に、魔法薬学と闇の魔術に対する防衛術において、彼の右に出る者はいないと言われている。それでもエリナ・ポッターを邪険にせず、時には命を張ってでも守るのだ。

 

今の生活も、悪いとは思ってない。でもいつかは、兄である彼と暮らせるかなと夢見ていたのだ。

 

*

 

 リトル・ハングルトンの外れにあるボロ屋。もう無人となっているが、かつてここには聖28一族の一つ、ゴーントが住んでいた。近親婚を繰り返した末に、最後の一人はアズカバンで死亡し、断絶した。

 

「所詮、ヴォルデモートの保護魔法なんてこんなものだろう。」

 

「イーニアス。やりますね。」

 

「さっさと仕事を終わらせましょう。兄上。姉上。」

 

 会話しているのは、エイダ、イーニアス、アドレーのローガー3姉弟だ。育ての親であり、実の祖父と暮らしている。祖父の名はアラン・ローガーだ。彼の調査結果の末、探し物を探している。

 

「洞窟に行ったおじい様とハリーは大丈夫でしょうか?」

 

「姉上。心配いりません。あの2人なら、ちゃんとやるでしょう。入りましょう。」

 

 アドレーが、エイダの心配を解した。ゴーント家に突入した3人。木箱の中に、それは隠されていた。

 

「これが…………」

 

「マールヴォロ・ゴーントの指輪。お祖父様から回収しろと言われたもの。」

 

「木箱ごと持ち帰ろう。」

 

 3人は、目的の物を回収して、その場を姿くらましで後にした。

 

*

 

 ここは洞窟の中。壮年の男性と、少年がいた。

 

「義祖父ちゃんの昔の先生が、本当にリドルとのやり取りを教えてくれるとは思わなかったよ。」

 

「まあ、ハリーのお陰ではあるけどな。殆ど。そして、スラグホーン先生の孫娘の説得もかなり効いたのだろうな。」

 

「俺、大した事してないけどね。それで、本当にここが隠し場所なの?義祖父ちゃん。」

 

「ああ。ここは、奴の育った孤児院に近い海岸沿いの岸壁にある洞窟。ここに、目的の物がある。行こうか。」

 

 アランとハリーは、洞窟の中を突き進む。やがて、一つの壁の前に辿り着く。

 

「血が通行手形か。とことん腐った男だな。」アランが吐き捨てるように言った。

 

「すぐに回復する俺の番か。」ハリーが、ウイルスモードを発動する。

 

 彼は、何の躊躇いも無く持っていたサバイバルナイフで右腕を切った。そこから出る血を壁に付着させる。結果、岩壁は消滅、暗い道が開かれた。そして、ハリーの腕の傷はもう何事も無かったかのように消えている。この程度の傷ならば、W-ウイルスの力ですぐに回復するのだ。

 

「ハリー。そこまで無茶はしなくても良かったのに。」

 

「ここからは、義祖父ちゃんの力が要るかも知れないからね。温存しといて。」

 

「分かった。」

 

 更に進むと、湖が見えた。中央には、緑に光る何かがある。そして湖の中には、死体が漂っていた。渡るには、専用の小舟がいる。

 

「この小舟は、一人前の魔法使いしか乗せられないようだ。」

 

「つまり、半人前はカウントされないって事?」ハリーが質問した。

 

「そう。未成年を過小評価し過ぎだ、リドルは。」

 

 そう言って、小舟に乗る。特に何の障害も無かった。中央の小島まで辿り着く。そこには、水盆が据えられている。中を見ると、ロケットがあった。

 

「義祖父ちゃん!あったよ!スリザリンのロケットが!!」

 

「ああ。だが、この緑色の液体を飲み干さないといけない。私がやろう。」

 

 アランは、あっという間にすぐに飲み干した。だが、顔色を悪くし、その場に樽ってしまった。しかも、亡者が襲い掛かって来た。

 

「クズどもが!雷鳴と共に散れ!天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)!!!」

 

 ハリーが黄金の雷を、アセビの杖から放つ。電流、電圧をそれぞれMAXの100億まで増幅させた。亡者は消滅した。ハリーは湖の水をすくい上げ、それをアランに飲ませた。

 

「ありがとう、ハリー。」アランは、水を飲む。少し、持ち直したようだ。

 

 ハリーは、ロケットを手に取る。だが、彼は違和感を抱いた。神々しい感じがしない。どこにでもありそうな、そんな感じ。

 

『自慢じゃないけど、宝や金目の物の真贋を見抜く力はあるんだけどな。出来れば、本物であって欲しいけど。これは、どうやっても偽物かもな。』

 

 その予想が当たるかのように、ロケットは偽物だった。ハリーは、思わず舌打ちしてしまう。同封してあった手紙には、こう書いてあった。

 

『闇の帝王へ

 あなたがこれを読む頃には、私はとうに死んでいるでしょう。

 しかし、私があなたの秘密を発見したことを知って欲しいのです。

 本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです。

 死に直面する私が望むのは、あなたが手強い相手に見えたその時、

 もう一度死ぬべき存在になっている事です。――R.A.B』

 

 もう1枚、手紙があった。『デス・イーターは厨二臭いです。それと、あなたのロリコンストーカーの趣味を治してください。』と書いてあった。

 

「R.A.Bか。まずは誰なのか、突き止めないとね、義祖父ちゃん。」

 

「そうだな。まずは、死喰い人を捕まえる事から始めないとな。そうだ、ヤックスリーを捕まえるか。奴は情報通だ。キットに頼もう。」

 

「キットにやらせるんだ。まあ、キットを相手にするのは、相手からすれば国1つを相手にするようなものだけど。何しろキットは、魔法使いの中でも極僅かな『覚醒』した魔法使いだからね。」

 

「キットは、まだ固有能力は持っていないが。」

 

 念の為、偽物も持ち出すことにした。そして、洞窟を脱出した。

 

「もうここに用は無いな。神の怒り(デイ・デイーラ)!!!」

 

 虹色の破壊光線を打ち、洞窟を完全に破壊した。中は、見るも無残な形となった。一応入れるには入れるが、危険地帯となった。アランは、早速キットに連絡を取った。キットは、それを聞いて早速ヤックスリーの制圧に乗り出した。

 

*

 

 とあるどこかの国。どこかの場所。ある洞窟に、10人ほどの影があった。何かしらの会話をしている。

 

「この3年以内に、ヴォルデモートは再び動き出すだろう。」

 

「だから、先手を取ると言うわけか。死喰い人に対して。」

 

「そうだ。早速、死喰い人を一族ごと滅ぼすのだ。行くぞ!」

 

 10人の影は、どこかに消えた。




ハリー、エリナ。誕生日おめでとう!

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