FGO<Fate/Grand ONLINE>   作:乃伊

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1-12(後)でボツっていた、ディルムッド召喚後のライネスたちの裏話。またの名をsettei回。



幕間の物語「それぞれの『FGO』①」

> [1/1] それぞれの『FGO』:ライネス・エルメロイ・アーチゾルデの場合。

 

 

 カルデア所長を務めるオルガマリー・アニムスフィアの執務室は、時計塔の一員らしい魔術師然とした内装の部屋だった。

 決して派手ではないが、値札を付けさせたら義兄(あに)さえ卒倒するだろう調度品の数々。無論、家系としては新参もいいところの義兄の家(ベルベット)と、長い歳月を継代し血を重ねてきたアニムスフィアでは家格からして比較にならぬのだが……ライネスにとっては伯父ケイネス在りし日のエルメロイを思わせる、どこか懐かしい貴種の棲家(すみか)だった。

 

「……それで、平行世界ですって? 正直勘弁してほしいわね」

 

 部屋の奥に据えられた執務机から、顔も上げずにオルガマリーが言った。その両手は、机へ山積みされた資料を取ってはバラバラとめくり、手元の紙に何事か書き記しては山に戻すという作業を続けている。先日、ライネスの英霊召喚を多忙で欠席したというのは事実のようだった。

 

 そこからやや離れた応接ソファに座って顔を突き合わせているのは、ライネスと彼女のサーヴァント【ディルムッド・オディナ】、そして義兄でありクランリーダーでもあるエルメロイII世にエジソンという面々だ。実に男臭い。

 

「しかし疑う理由は存在しない。……もっとも、特異点環境下における英霊の振る舞いなど、我々にとっては前例もなく判断しようのない話ではあるが」

 

 義兄が応えると、ライネスの傍らに座するディルムッドの視線がやや(うつむ)いた。ライネスにとっては馴染み深い視野が戻ってくる。

 ライネスは現在、サーヴァントとして契約を交わした使い魔、つまりディルムッドの視界を共有することで外界を認識している。彼女自身の目は、「自分の顔を見ないでほしい」というディルムッドの頼みもあって未だ眼帯の奥である。しかしあまり身長が高くないライネスにとって、180 cmを軽く越える背丈のディルムッドの視界はどうにも違和感が拭えないものだった。

 

「別に信じないわけじゃないわ。ただ、こっちはもう特異点の修復だけでとっくに手一杯なの。なんで人類を庇護するはずの英霊が、よりにもよって人理定礎の破壊なんかに手を貸しているのかしら。それも一騎や二騎じゃない、どうせ他の特異点も同じような有様なんだろうし……はあ。そこへ更に第二(ゼルレッチ)の領分まで関わってくるですって? ホント、頭が痛いわよ……」

 

 そう。実際、頭の痛い話ではあるのだ。全く別の可能性世界の話など。

 

 ディルムッドの語る「彼が知るエルメロイ」は、確かにエルメロイの一員であるライネスにとっても信用できるだけの記述を含んでいた。仮にディルムッドを信用しないとすれば、可及的速やかに彼へそれらの情報を与えた(リークした)存在を明らかにし、断固とした対応を取らねばならないほどの、秘匿されるべき記述を。

 

 が、しかしだ。

 

 あくまで彼が語ったのは、この世界とは異なる「聖杯戦争が過去に何度も行われている」平行世界の出来事だ。

 その一つに参加した伯父ケイネスと、婚約者だったというソフィアリ家の令嬢ソラウ。サーヴァントとして召喚されたディルムッド……その3人が迎えた、無惨な敗北についての過去がたり。

 

 言うまでもないことだが、ケイネス・エルメロイとて無敵の超人ではない。切った張ったの現場では手傷も負うだろうし、死ぬことだってあるだろう。その相手が人外の超常(サーヴァント)であるなら尚更だ。ゆえに問題は、その敗北への過程でディルムッドが魔術師という存在に対して致命的な不信感を抱いてしまったことにある。

 一応、人理修復というカルデアの目的や召喚者ライネスに対しては一定の理解を示してくれているものの、わだかまった不信感がいずれろくでもない結末に至るだろうことは、ディルムッドの語る別世界のケイネスの末路からして明らかなことだった。

 

(……まあ、正直私としてはライダーのサーヴァント【イスカンダル】のマスターだったウェイバー・ベルベットという少年の話の方が気になるのだけどね)

 

 ディルムッドは、彼の敵の一人だったというウェイバー少年の未来像が目の前に座っていることには気づいていないようである。実際、今の義兄には十代の頃の面影なんて深く刻まれた眉間の皺くらいしか残っていないのだから、仕方のない話ではあるだろうか。

 むしろ、その話を聞いてからの義兄の態度の方が不審極まりない。どうやら我が義兄は、よその可能性世界においてもケイネス・エルメロイ・アーチボルトという男に対して不義理を働く定めにあるようだった。動揺もむべなるかな。

 その義兄が、ゴホンと咳払いをして白々しくも語りだす。

 

「とにかく──ランサー、ディルムッド・オディナ。我々が、召喚に応じた英霊に対して契約に基づき協力を要請する立場であることは変わりない。マスターとサーヴァントという違いはあれど、互いに協働してこの人類未曾有の危機に立ち向かってくれるとありがたいのだが」

 

「ロード・エルメロイ。その言葉が確かならば、貴方は信頼に足る見識をお持ちのようだが……」

 

「……II世だ。II世をつけてくれ」

 

 ほら。義兄の言葉にディルムッドが意外そうな顔をしているぞ。そして義兄は義兄で変なアピールをしなくていいというのに。正体がバレたらいかにもややこしいことになりそうで、実に面白そうな状況である。

 と、義兄は苦り切った表情を隠しもせぬままライネスを見た。当然ライネスは、愉悦にニヤつく内心を露ほども見せない理想的令嬢の面持ちである。義兄は溜息を吐いた。

 

「ともかく。ともかくだ……今、私の話はいいだろう。問題はレディ、君だ。君はディルムッドとの連携確認を兼ねてしばらくカルデアに滞在するべきだ。彼の魔貌によるプレイヤーへの精神汚染問題については、回避策が有効機能することが確認できたので正式実装を待つだけだが、特異点に乗り込むには互いの信頼関係が浅すぎるからな」

 

「それは最初からそうする気でいたが。私のレベル上げもあるしね」

 

「ならば構わないが……」

 

 そう。ディルムッドとの信頼関係構築と並ぶもうひとつの目下の問題。それは、ライネスを構成する霊基体……つまりゲームアバターのレベル上げだ。

 プレイヤーのレベルとは、カルデアが各アバターに供給する魔力量が数値として示されたものである。敵を倒しミッションをクリアすることで経験値が貯まっていく。それはすなわち、カルデアの人理修復により多くの貢献を果たしたプレイヤーに、優先的に魔力リソースを割り振っていくという仕組みに他ならない。

 

 魔術師であるライネスとしては、選りすぐりのプレイヤーだけを優遇し魔力を融通してやれば良いのではないかという気もするのだが、カルデアはそのような選択肢を取るつもりはないらしい。あくまで「ゲーム」としての体裁を保った環境を、プレイヤーに提供し続けるつもりのようだった。

 

(それでも、変えざるを得ないところは多々あるようだが……)

 

 ライネスが知るだけでも、いくつか面倒臭そうな仕様変更が行われている。

 その一つがレベル上げに関する手続きで、特異点でいくら経験値を貯めても、それをアバターのレベルとして反映できるのはカルデアゲートに戻ってからの話になるのだ。現地でレベルを上げることが不可能な仕組みになっていた。

 義兄に言わせれば、レベルを上げるのに特定の場所や施設への訪問手続きが必要というのは一部のゲームで時折みられるシステムとの話だが、プレイヤーにしてみれば余計な手間が掛かる事この上ない。実際、どうしてこんなやり方を採用しているのか……?

 

「それは実に良い質問だ、ライネス君!」

 

 おっと、うっかり疑問を口に出したらディレクターのエジソン氏が反応してしまった。ライネスが言葉を返す暇もなく、獅子頭の彼の両肩のランプが激しく輝くと、部屋の壁に白い画面が投影される。どうやら投影装置(プロジェクター)としての機能があるらしい。正直あれは何の飾りなのかと思っていたのだが、そういえば彼は発明家であると同時に実業家でもあるのだったなと、今更ながらに思い出させられた。

 

「それについては私から説明しよう。ここに担当のロマニ君がいれば良かったのだが、彼は今、制御系のシステム開発に呼び出されていてね。私同様、多忙の身ということだな……フハハ、労働はいいぞ諸君!」

 

「はあ」

 

「とはいえ、レベル上げが控えている君にここで時間を取らせるのもなんだから簡単にいくとしよう。ざっくり、結論から言うならば……現地でレベルを上げられない仕様を導入した意義とは、カルデアから君たちの観測と修正をしやすくするためだということになる」

 

 エジソンは嬉々として語り出し、アニムスフィアは自分の仕事は終わったとばかり資料の山に埋没し始めた。ディルムッドが主人(ライネス)の代わりに壁のスライドを見てくれてはいるが、特段興味はなさそうである。どうするんだこれ。

 

「特異点に下ろされた君たちのアバターは、いわば時代の異物である。つまり、常に観測され証明され続けていなければ、存在が揺らぎ、変質あるいは消失する危険があると言えるだろう。マスターの数が数人程度ならばスタッフが手作業で観測や証明を行うのもアリだろうが、流石に万単位の対象を個別に観測することは不可能だ」

 

「……つまり、代替手段が存在すると?」

 

「その通り! 人の手が足りぬならば機械を以って補えば良い。それこそが人の叡智、システムの存在意義というものだ。『FGO』のゲーム開発にあたり、そのためのシステムを我々は組み上げた」

 

 パチン、とエジソンが指を鳴らすと、壁のスライドに「U字」に似たカーブが表示される。

 その谷底には小さな円球が描かれていた。

 

「この円球が示すのが、君たちの観測データだと思ってほしい。特異点におけるプレイヤーの観測データは常に揺らぎ、変動し続けている。放置すれば重大な意味的変質を招き、最悪、消失(ロスト)もありうることだろう」

 

 エジソンの言葉に合わせて、円球が左右に揺れる。

 

「しかし、特異点における観測データを『本来の君たち』の元データと照合しそれ以外のブレを雑音(ノイズ)として弾くことで、特異点でも変質を免れることが可能になった。それが我々の観測および証明の第一工程だ。これを、機械でもって代行させる」

 

 揺れ動く円球は、やがて谷底でその動きを停止した。

 

「谷底に当たるのが『本来の君たち』を示すデータだ。

 現在このカルデアでは、常に円球のブレ、すなわち観測の変動を取り除き、この谷底に限りなく近いデータを出力できるようなシステムが構築されている。いわば、霊子演算装置を用いた機械学習といったところか」

 

「失礼、お尋ねしたいのだが」

 

「どうぞ」

 

 義兄が軽く手を上げ、エジソンが応じる。

 

「私は機械学習の分野は全くの専門外で、素人質問になってしまって申し訳ないのだが……要するに、雑音除去自己符号化器(デノイジング・オートエンコーダ)のようなものが実装されていると考えてよいのだろうか?」

 

 ……同じ素人であるはずのライネスに理解できない質問を、本当に素人質問と呼んでいいのだろうか?

 

「ううむ……そうだな。ノイズ混じりの入力からノイズを除去するという意味では、似たようなことをしていると言っていい。ただ次元を削減したいのではなく、実際しているわけでもないので、きちんとYes/Noで答えるのは難しいということはご理解いただきたい。正直に言えば、おそらくプレイヤーの精神が現実の肉体と切り離された時点で、情報の削減が発生することは避けえないものになっている。それでも我々は、可能な限りアバターの変質がプレイヤー本来の精神に影響しないよう保存することを目指しているし、そのための技術だと考えている。一応フォローさせてもらうが、現場の運用にあたってはこれに加えて鏡の魔術や二重存在現象などを利用することで、多少の観測のゆらぎについては安全マージンが取れるレベルまで証明精度を上げている……しかし最終的には、人の手でチェックしなければならないことも多い。どうにも厄介な問題だな」

 

 エジソンの回答も、何を言っているのかさっぱり分からなかった。

 

「……」

 

「他に何か質問は?」

 

 エジソンが問いかける。質問以前に、せめて話のバックグラウンドを理解できるように説明してほしい。どうしたものかと思案するライネスの横で、義兄が再び手を挙げる。

 

「大変興味深いお話だったと思う。つまり我々のアバター、いわば特異点における肉体は常に可能な限り同じ状態を保つようリアルタイムで修復され続けているという理解でよろしいだろうか? ……ああ、なるほど。生体機能でいうところの恒常性(ホメオスタシス)の維持を再現しているのか。負の(ネガティブ)フィードバックを。それで、レベルアップが出来ないような仕組みになっている」

 

 何がなるほどだ。だが、エジソンは我が意を得たりとばかりに大きく頷く。

 

「その通り! レベルアップとは、アバターを強化するために加える修正だ。しかし、それもまた変化であることには変わりない。すなわち、カルデアのシステムから見れば、レベルアップによる強化自体が修復すべきノイズとして認識されてしまうのだ。ゆえにレベルアップは特異点の外で行う必要があり、カルデアの計算機にレベルアップ後の状態を学習させるため、しばらくの滞在時間が必要となっている」

 

 …………。な、なるほど? 何となく……意味はわかったような気がする。気がするだけだが。

 

 だが、そこで再びの沈黙。エジソンは更に追加の質問を待っているような素振りを見せているが……。

 いや、本当にどうするんだこれ。ライネスからすれば、いま聞きたいことは特にない。学問肌とは縁のないディルムッドに至っては尚更だ。ディルムッドから送られてくる視界が、エジソンのスライドから彼の手元の槍にちらちらと移りかけていた。完全に、目の前の講義より自分の槍に巻きつけてある布の結び目の締まり具合の方が気になっている。

 

 しかし現代魔術科のトップは伊達ではない。義兄は、この状況でまたもや手を挙げた。

 ライネスは内心で安堵する。流石だ義兄よ。さすあにだ。

 

「現代科学を下敷きにした魔術の融合。霊的な因子を用いた機械学習……まさに現代魔術というべき、見事な成果だ。しかし、それを実現するためには相当な規模の計算資源が必要になるのでは?」

 

「おお! 良い質問だ。それは実際、かなり深刻な問題であった! その問題の解決にあたったのも私であるが、現状としてはカルデアに提供された疑似霊子演算機(トリスメギストス)を解析し、私のスキル【大量生産】を用いて増産したものを運用することで補っている状況だ。やはりオリジナルのコピーは難しく、量産型は様々な点でダウングレードせざるをえなかったが……。無論、電力問題はエジソン印の特製発電機と特製電源装置で解決済みである!」

 

 そして再び始まる、現代魔術師と発明王による一対一の質疑応答。

 完全に周囲のことは置いてけぼりの気配である。

 

「……ああ、前々から聞こうと思っていたのですけど。どうせ電気で動くものなら、妙な装置を使わずコンセントみたいな一般用配線から電源を取っても良いんじゃないの? 技術部門は貴方に任せているから予算の範囲で使う分には問題ありませんが、正直金額が馬鹿にならないのよね」

 

「いや、そうもいかんのだよ。これはいつもの直流交流や商用電源の話だけでなく、複数の事情があってだな。つまり……」

 

 更に紙面へ没頭していたはずのアニムスフィアが二人の議論に興味を示し、質疑応答は終わる気配がない。ライネスはディルムッドを促し席を立った。このままここにいても仕方ないだろう。

 と、アニムスフィアの机に置かれた資料の山に目が止まる。現在抜き出されているのは、『黄金伝説』『ペロー童話集』『In a Glass Darkly』。

 それはサーヴァントになった英霊たちの記録と思しき資料群だった。対応するのは、聖女マルタと聖ゲオルギウス、青ひげ(ジル・ド・レェ)……カーミラ?

 

「カーミラが現界しているのか?」

 

 ライネスが呟いた問いに、エジソンと議論する口を休めてオルガマリーが答えた。

 

「リハ……いえ、投獄中のプレイヤーが聞き出したのよ。尋問を担当しているみたい。もっとも向こうも隠す気はないみたいだし、本当にカーミラなのかどうかは疑わしいけれど……」

 

 カーミラ。アイルランドの作家シェリダン・レ・ファニュの作品に現れる女吸血鬼であるが……拷問を得意とするらしいオルレアンの女サーヴァントとは印象が少し異なる。拷問室に置かれているという『鉄の処女(アイアンメイデン)』はむしろ血の伯爵夫人エリザベート・バートリーを彷彿とさせるが、そちらは既に少女期のエリザベートが存在を確認されていた。

 

「あの少年も大変だな。空を飛んだかと思えば牢屋に閉じ込められた挙句、二重スパイの真似事をさせられるなど。カルデアの関係者というわけではないんだろう?」

 

「そうね。悪いとは思っているのだけど……。カルデアに協力してくれてはいるのよ。ただ、どうも人間関係がややこしいというか。ロマニをやたらと怖がってるし」

 

 オルガマリー曰く、カルデア職員でもあるマシュ・キリエライトおよびそのマスター・リツカを介したカルデア側への積極的な取り込みには、彼のサーヴァントであるクー・フーリンが難色を示しているらしい。オルレアン地下牢から出獄できる目処が立たないため、カルデアからレイシフト適性プレイヤーへの状況説明会にも欠席する見込みだという。もっとも、カルデアに召喚されたクー・フーリンを通してある程度の事情は把握しているだろうが。

 

「クー・フーリンは、『彼』を導師(ドルイド)として導くのが今の自分の仕事だ、とか言いだしてね」

 

 ……なるほど、そういう主従関係もあるのか。

 ディルムッドと同じ神話体系の出身であるからいずれ引き合わせたいとは思っていたが、サーヴァントとマスターの関係という意味でも見るべきところはありそうだ。

 

 それに、そうだ。見るべきところと言えば。

 

「そういえば、先のファヴニールからの撤退戦におけるリツカの座標特定は見事だった。流石は天体科のアニムスフィアと言ったところか。仕込んでいたというマーカー、あれは星座かい?」

 

「ええ、そうよ。個々人に別々の星座を意味するマーカーを割り振れば個人を特定出来るようになるし、観測者(カルデア)被観測体(プレイヤー)という関係性を構築しやすくなるわ──それにこうでもしないと、プレイヤーなんてちょっと目を離した隙にフラフラ何処へ行くのか分かったものじゃないんだから」

 

 オルガマリーは何の気負いもなさそうな様子でそう答えた。

 その様子を、ライネスは怪訝に思う。

 今オルガマリーが語ったマーカーの正体は、天体魔術というものの仰々しさからすると、識者ならば笑ってしまうほどに卑近な小技である。自分がオルガマリーの立場だったとして、そんなせせこましい魔術の使い方をプライドが許すだろうか?

 

 いや、『自分なら』大丈夫だろうという自覚はある。なぜならそうした小技は、他ならぬライネスの義兄もまた得意とするところであるからだ。魔術師としての実力不足ゆえにか、義兄は良くも悪くも(なり)振り構わぬ魔術行使をすることがある。そしてライネスは、そんな義兄の姿も決して嫌いではない。

 

 では、何がオルガマリーにそのような『形振り構わなさ』を許させるのだろう?

 

 彼女の個人的事情に立ち入る気などありはしないが。

 おそらくそこには、この『FGO』というゲームが大きく関わっているのだろうと察せられて。

 

 人理焼却という未曾有の危機の中で()けることも折れることも許されない立場のオルガマリーは、それでも今、彼女なりに幸せなのかもしれないと……。

 

 少しだけ、微笑ましい気持ちになったのだった。

 




(機械学習については作者も素人知識丸出しの付け焼き刃なので、変なこと言ってたらすみません。)

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