『倉元家』異世界に転生させられちゃう ~まさかの家族で異世界生活!?~   作:しげちゃん

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突然のお裾分けに驚いちゃう

ん゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛

 

門柱のマンドレイクが声をあげ、室内に植えられた魔法でリンクされた花から声が漏れる。

全然声が響かない上にもっ凄い怖い。夜だったら間違いなくチビる。

もっと鈴とかで良いと思うの。それでなくてもノックで良くないですかね?

お袋は全く違和感を感じず、掃除する手を止めてパタパタと玄関に向かっていった。

 

「はいはーい あらぁー 先日はどーもぉー」

 

しかし、いつどこで何をしてたらそんなに交流関係が広がるんだ?

 

「あらぁ 悪いわねぇ いいのかしら? 」

 

また何かお裾分けだろうか?

ここから玄関の声だけ聞けばいつもの日常なのだが、宙を浮きスヤスヤと眠る妹に、その妄想は数秒と持たない。寝息をたてて何とも気持ち良さそうに宙をフワフワ漂っている。

 

「たけるぅー ちょっと手伝ってぇー」

 

どうやら世間話も終えたようだ。手伝うって事は何かを結構大量に貰ったのかな?

ソファからよいせと腰をあげる。

 

「はいはーい また何かお裾分けー?」

 

「えぇ 魔王頂いちゃった 玄関にでも飾るから手伝ってくれる?」

 

「へぇー魔王ね……魔王!?」

 

お裾分け!?魔王お裾分け!!!?

思ってたのと全然違うし全然動いてないけどなにこれ!?岩!?彫刻!?こわっ!!でかっ!!

 

「え?魔王ってあの魔王!? お袋……あれ?どこ行った!?」

 

「我を運ぶがいいゴミよ」

 

……喋りやがったぁ!!

なにこれ目だけ動いてませんかね!? もっ凄い気持ち悪いんですけど!!

え、これ魔王なの!? なんで彫刻で、なんで我が家にお裾分けられたの!?理解に苦しむNOW!!

 

「貴様の主《あるじ》に討伐されたのだ 本当に屈辱なくらいボッコボコにされたのだゴミよ」

 

討伐!?主って親父のことか!? マジか!! マジで伝説なりよったか!!

最近帰ってないと思ったら意外と頑張ってたか!!

 

「違う 魔女にだゴミよ」

 

違うんかい。

……魔女?うちのお袋の事言ってんのか?

 

「そうだゴミ お前の主は恐ろしかったゴミ」

 

「ゴミゴミうるさいなもう!!お前の方が充分ゴミだろ!!

そんで普通に会話してっけど心読むなよ!! 読心術とか思春期には辛いぞマジで!!」

 

「ならば早く運べ 滅ぼすぞゴミ」

 

なんて生意気なやつだ。

いや、魔王なんだからこれくらい当然か。

一先ずズルズル引きずりながら玄関へと運び入れる。

……ちょっと欠けたけど大丈夫だろ。

 

「で、なんで倒された筈の魔王が石像彫刻で我が家の玄関でオブジェになってんだ?

出るたび帰るたびこれの横通るとか 超怖いな」

 

いやまぁ運んだのは俺なんだけどね。

 

「我を倒すことに憧れて、みな冒険者として精進している

その夢を壊す訳にもいかぬとお前の主が存在を残しつつ我を討伐した訳だ

我が倒されるとこの世界の収入源と食料は無くなるらしいからなぁ……あ、ゴミ」

 

いまゴミ付け忘れたなコイツ。慣れてないなら早急に止めなさいよ。

 

「こ、こっちをそんなに見るな」

 

「石像が顔赤らめてんじゃねぇぇぇぇ!! お前がヒロインとかないから!!ありえねぇから!!」

 

「我に性別などない 安心しろ」

 

どっちに安心すりゃいいんだよ……。

 

「というか冒険者でもないお袋がどうやって魔王《おまえ》の討伐を?」

 

「時給パートで冒険者の雇われ補助をしていたな まさか冒険者より強いとは思わなんだ……」

 

パートって魔王討伐してたのかよお袋っ!!

いいの!?冒険者以外が魔王討伐しちゃって!?

 

「すっごい我が追い詰められたから 腹いせに我が死んだら魔獣も魔石も無くなるぞ! と教えたら冒険者共は泣き崩れてな あれは実に爽快だった!フハハハハハ!!」

 

魔獣の肉おいしいもんなぁ 柔らかいしジューシーだし

魔石も大事な収入源だし必需品だよなぁ

まぁそれにしたって……

 

「追い詰め方が女々しいなアンタ」

 

「手段を選ばない、それが魔王ぞ?しかしパート魔女にあっさり石化され存在しつつも封印された我は 討伐メンバー以外誰にも知られる事なく、巡り巡ってここにたどり着いた訳だ」

 

お裾分けじゃなくて只の面倒事の押し付けだったかー

こんなんでも魔王だし家には誰も置きたくないわなー

 

「という訳でチャンスさえあれば復活するから 精々震えて眠るがいいゴミ」

 

「さっきまでゴミついて無かったぞ キャラがブレブレじゃないか」

 

この賑やかな非日常に2階の部屋から一人、まだ眠たげな顔をしながら出てきた。

理不尽転生者第2号の結衣である。

まぁ召喚したの俺なんだけど。

 

「今日も賑やかねぇ……異世界って毎日こうなの?」

 

「おはよー 日々驚きの連続だよマジで?」

 

「おはよ で、なにそれ?」

 

「魔王」

 

「宜しくゴミ」

 

「ホントに驚きの毎日だわ…… いちいち体力勿体ないから激しくは驚かないけど……」

 

「あのゴミは貴様の妹か? 姉か?」

 

「俺の召喚嫁」

 

「よよよ嫁とか言うな!! 言っとくけど まだ私は帰る事諦めてないからね!?」

 

あぁ……可愛いなぁ やっぱ帰りたがってるなぁ

 

「あれ?それが魔王だったら倒してジ・エンド 私現実世界へ戻れるパターンじゃないの!?」

 

「まず俺が異世界に来たのは別に魔王討伐が目的じゃない ということは

その俺が召喚した結衣も別に魔王討伐が理由ではない あぁヒロインがいたらな……ぐらいの気持ちがあって魔法使ったもんだから俺と幸せになれば現実戻れる! ……かもしれないって何度説明したら」

 

「はいそこっ!! かもしれないって大事よね!?見逃せないよね!?召喚理由めっちゃ不純だし!!」

 

あぁ……怒ってらっしゃる 可愛いなぁ 嫌がってるなぁ

 

「勝手に異世界放り出されて勝手に結婚とか無理だから!可能性微々たるものなのに そんなもんに人生全て預けるとかあり得ないから!!姫とか王女みたいだなって言われた時は少し危なかったけど!」

 

「貴様らこの世界の住人ではないのか?」

 

「まぁな ようやっと1ヶ月くらいって所だ」

 

「生まれて300年の我がこんなぽっと出の者に……」

 

「お気持ち察するよ まぁ今後は我が家の番魔王として 精々玄関の護衛宜しくな」

 

「魔王に砦の入り口を守らせるとはな……」

 

ー 倉元家 突然のお裾分けに驚いちゃう ー


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