『倉元家』異世界に転生させられちゃう ~まさかの家族で異世界生活!?~   作:しげちゃん

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予想外の魔法使っちゃう

『倉元 武は夢を見ていた

まだ高校生の彼は現在 異世界に転生し新たな生活を送っている』

 

「ここは……どこだ?」

 

『彼は先の見えない、まるで永遠に続くかの様な暗闇の空間で 自分の状況を理解できず……』

 

「えぇぇーーい!! さっきから勝手にナレーションすんな!! 誰だ!! そしてここどこだ!!」

 

「もうちょっと続けたかったのに……仕方ない

ここは君の夢の中だな 御免《すまん》な 都合的にここにしか出れんかった 顔は恥ずかしいからNGでお願いします」

 

顔出しNGとか…

こっちは初日から散々顔晒されたっての!!

これはもう一度聞かねばなるまい。

 

「で?あんた誰だよ!?」

 

「私か? んー……まぁ君達を異世界に飛ばした元凶といいますかな?」

 

こいつかぁぁぁ!!

尚更顔出せやこの野郎!!何を恥ずかしがってるんだ!!

 

「てんめぇぇが俺達をすっ飛ばしやがったのかぁぁぁ!!! 普通初日で出てくるじゃろがい!!何ほったらかして自給自足させとんじゃ!!」

 

「止まんないな文句が ゴメンて まじゴメンて」

 

「軽いわぁ!!」

 

なんだコイツは散々家族ごと巻き込んどいて…

神だか天使だか知らんがどうもダメパターンな、外れパターンな臭いがする。

 

「まぁいいや そんで? 何で俺達を異世界に? まず冒険者にすらなれてないんですけど!!

しかも魔法使えてないんですけど!? 悪を成敗するには色々不足しすぎなんですけどっ!!」

 

「なんかこう、勢いでなっちゃったよね♪」

 

「なっちゃったよね♪ じゃねーよ!! なんだ勢いって!?」

 

「俗にゆうノリという奴だな 酔い潰れた勢いで」

 

ノリっ!!理由なき異世界召喚っ!!

 

「……え? 特に理由ねーの!? 魔王討伐とか国救うとかじゃないの!? 異世界召喚てそれが醍醐味みたいな所ない!?」

 

「確かにそーゆーお願いはこっちですることもあるよ? ただ君に……君たちに関してはそーいった条約は結ばれていない そう!イレギュラーという訳だな! 好きだろ?イレギュラーって言葉!」

 

特異体質みたいな話なら男しては震える言葉だけど、このイレギュラーはあんたの失敗に値する意味ではないか!? 心なしかチッと舌打ちが聞こえた気がしたが続けて聞くとしよう。

 

「じゃあ使命もなくホントにアンタのノリで俺ら召喚されちまったのか!?」

 

「酒の勢いで好きな子に告白しちゃうとかお前もあるだろ? 後々《のちのち》後悔しちゃうやつ」

 

おっとーぅ……後悔って言っちゃうんですねぇー。それってもう完全にミスって事ですよねぇー?

 

「いや俺未成年だしその例え話は全く共感できねぇ」

 

「真面目よのー もっと人生楽しめよ若造ー」

 

なんでそんな幻滅されたような声でガッカリされなきゃならんのだ……

楽しくなるはずの人生のレール勝手に組み替えたのどこのどいつだっ!!

 

「てか後悔してんならさっさと現実世界に戻してくれよな……」

 

「それが出来るのは創造主《マスター》だけなんだよねー 無許可の転生なんてバレたら私クビになっちゃうじゃない だから絶対に言ってなるものか」

 

「……」

 

マジかこいつ! この状況で我が身を案ずるか!

 

「マスターここですぅぅぅぅ!ここに犯罪者!いえ堕天使がいますよぉぉぉぉぉ!!」

 

「やめてぇぇぇ! 呼んでも絶対来ないと分かってるけど一応やめろぉぉぉぉ!!」

 

マジかよぉぉぉ……。

世界は理不尽に回ってると思ってたけど、ここまで不条理だとは思わんかったぁぁぁ……。

 

「はぁ……この際俺の宇宙よりひろーい心でお前のミスを受け入れたとしてもだな?

 もっとさチートとかあるじゃん? ウハウハとかあるじゃん!? 美少女とかいるじゃん!? 俺に不親切だよこの世界!!」

 

「正式な手順踏んでれば多少は君の想像通りの展開にはなったかもねぇ ただ今回は私としたことが酔い潰れて非公式、裏ルート、私のプライベートでウッカリ召喚しちゃった訳なのだ ルールに縛られないって私って自由で素敵じゃない?」

 

「もうマジで捕まれよあんた」

 

「まぁまぁ ルートはどうあれ異世界なんて望んで来れる訳じゃないんだからさ」

 

ホントに後悔しとんのかこいつ……。

表情拝めないけど、全然反省してるように聞こえないんですが……。

「とにかくこれじゃあ俺の存在価値だだ下がりだよ!!埋もれてるよ キャラ的にっ!!」

 

「そこそこなツッコミキャラがあっていいじゃないか 好きだぞ? 私はそのキャラ」

 

「そんな無能なスキル要らねぇよ!! もっとこうせめて魔法使えるとかさぁ!

世界観だけで俺にファンタジー感が無いんだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

「そんな咽び泣くなよ……おっとそうだった!君の夢に出てきた理由を忘れてた!」

 

「?」

 

声の主はそう言うと、薄暗かった空間が天から少しずつ明るくなり、小さな丸い玉が仄かに光りゆっくり降りてきた。

 

「これは?」

 

「元の世界に戻すのは無理なんだけどせめて魔法くらいは譲渡しようと思ってね 選択できないのは申し訳ないけど私の力の一部だから役に立たない事はないと思うよ さっ!それに触ってみな」

 

恐る恐る触ろうとすると、手を伸ばす前に勢いよく自分の体に向かって体の中へ消えていった。

 

「うぉっ!? 触る前に向こうから来ましたが!?」

 

「はははっ 気に入られたらしいな これで君も魔法が使えるようになったよ」

 

「マジか! 魔法いけるのか!! キタこれ!!」

 

「起きたら使ってみるといいよ んじゃっ! 私は宴会に行くから! 楽しむがいいさ!」

 

「自由すぎんだろ…… そうだあんた名前は?」

 

「ん? アリアだよぉぉぉ………」

 

徐々に声が途切れた所を見るとホントに宴会に行きおったな……。

まぁとにかく目が覚めたら魔法が使える!!

ようやくファンタジーっぽいことが始まりそうだ!

 

何だろうなー チートとまではいかないがそこそこ良いのが……

いかん!妙なフラグを立てれば俺のキャラは更にヒドイ事になりそうだ。

早く目を瞑《つむ》って起きる事にしよう。何かややこしいけど。

 

◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆

 

目覚めると朝で、体を起こすと綺麗な町並みが二階から見える。

異世界というより海外みたいだ。魔法と色んな種族がいなければ……

 

と、ふと夢のことを思い出した。

 

「そうだ! 魔法!!」

 

身体の中に昨日とは、いつもとは違う明らかな変化を感じる。

これは俗に言うマナという奴か? MP的な感じなのだろうか?

自分の中にストックされる力を確かに感じる。なんというか満腹感に近い。

 

急に手に入れた『力』だけにまだ違和感があるけど、どうやら声の主《アリア》の言うとおり魔法を使えそうだ!!

二階の部屋から階段を駆け降り外に飛び出すと、家の裏にある森でさっそく念じてみる。

魔法の出し方なんぞ知らんが、なんかそれっぽくポーズを取って手をかざしてたら出るもんなのか?

 

むむむぅ……でろーでろーでろー……魔法でろぉぉぉぉぉ!!

 

心で念じると、すぐ目の前の地面に巨大な魔法陣が展開!!

陣を中心に風が纏いメチャメチャかっこいい!!

 

「キタキタキタぁ!!」

 

……あれ? でもこれってなんの魔法だ?

肝心な能力について聞くのを忘れていた。風が纏っているからやっぱ風の魔法か?

 

と思った矢先、天から強力な光が魔法陣をめがけて落ち、自分の目の前で爆風と爆煙をあげる。

 

「のぉぉぉぉぉぉっほぉぉぉぉぉ!!?」

 

強力な爆風で飛ばされる武と、家の前に防壁をつくり守る妹、というか妖精。

 

イヤイヤイヤ!! 強力だけど死んでまう!! 術者が死んでまう!! なにこれ距離1メートル手前とかアホか!! 自分のMPっぽいのも残ってないし、なんか体がスースーする。

これはハズレだな……あの野郎よくも……

 

と爆風が起こった場所に目を移すと一人の人影が見えた。

まさか……!?

 

「やばい!! 人巻き込んだか!?」

 

と思って駆け寄り近付くと、さっきの爆風の割には森の木も倒れていない。

お袋か妹が何かしたのか?と思ったがどうも違うらしい。

 

先程の陣の中心には見知らぬ女の子がキョトンとした顔で立っていた。

彼女の服装を見て直ぐに悟った。どうやら俺の魔法は攻撃魔法ではなかったらしい。

 

「ここ……どこっ!?」

 

あぁ……この反応は見覚えがある。懐かしいと思うにはあまりにも早すぎる見たことある反応だ。

どうやら俺は……

 

異世界転生した地で異世界召喚してしまったらしい。

 

ー 倉元家 予想外の魔法使っちゃう ー


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