目が覚める。ぼんやりと意識が覚醒して行く。枕元の時計を見る限りまだ6時前で、目覚ましが鳴った訳では無いのに目が覚めてしまう辺り、この生活が習慣づけられてしまったようだ。高校の頃からは考えられない。
ここの提督になっておよそ一年が経った。かと言って提督としての自覚が生まれるでもないのだが。なんならまだ顔と名前が一致していない艦娘すら居る。流石俺。も、もちろん覚えてるのも居るから。
予定よりも大幅に早く起きてしまったが、働きたくない。よし、目覚ましが鳴らなかったことにしていつも通り二度寝を決め込むとしよう。早起き出来るようになったが二度寝しないとも言ってない。大丈夫だ。無理矢理起こしに来るような小町は居ない。
…………。
………………。
あああああ、小町に会いたい。
比企谷八幡、21歳。絶讚ホームシック中です。
二度寝の気分じゃなくなったので起きることにする。はぁ、小町ぃ……。
もしここにマッカンすら無ければ俺は死んでいたな、うん。定期便で欲しいものを聞かれた時にマッカンと答えておいて良かったぜ。
ホームシック故に妙にセンチな気分になりながら自室でマッカンを飲んでいると、けたたましい音と共に俺の部屋のドアが蹴り開けられた。あぁ、蝶番が……。
「クソ提督!! いつ迄寝てんのよ、仕事……っ!? くっ、クソ提督が、起きてる……!?」
ドアをひと蹴りでお釈迦にしたこの少女は駆逐艦、曙。長い髪を花の髪留めでサイドテールにして纏めているのが特徴。あと口が悪い。
「いや俺だって自分で起きる時くらいあるわ。何? 俺が早起きするのはブリ⚪︎チみたいな驚かれ方する程の事なの?」
「あんた目ぇ離すと二度寝三度寝して出てこないじゃない! 仕事しなさいよ!」
馬鹿な、流石の俺もそこまで寝たことは……あるわ。しかも一昨日だ、めっちゃ最近だったわ。
「あー、せめて小町が起こしてくれれば起きるんだがなぁ(起きるとは言ってない)」
そんなことをボヤいたら曙が固まった。どしたの?
「こっ小町って、誰……? ま、まままままさか、彼女? そのキモい目で? クソ提督に!?」
なんか物凄い顔で
キモい目でって酷くない? いや事実だけども。
「何テンパってんのか知らんが、小町は世界一可愛い俺の妹だ」
成長につれて可愛いだけでなく綺麗が追加され、綺麗で可愛くあざとい妹が完成してしまった。って何その陽乃さんと一色のハイブリッド、おねだり断れる気がしねえ。
「な、なんだ妹さんね、誰かクソ提督の毒牙に掛かってたのかと思って焦っちゃったじゃない!」
なんか雪ノ下みたいな事言ってる……。
「流石に理不尽じゃないすかね……。んで、作戦室でいいのか? あとドア直しとけよ」
大方近場に敵艦隊が現れたとかだろう。
「そうよ。鳳翔さんの飛ばしてた索敵機が発見したの。結構近いから早いとこ潰さないと面倒なことになりそう。……ド、ドアは直しとく、ごめんなさい」
こいつらの事だからマジで『面倒なだけ』なんだろうなぁ。今更何が来ても蹴散らす未来しか見えない。
それとめっちゃ小さい声でごめんなさいしてるが、残念だったな、俺は難聴系じゃないんだよ! まぁ治すのは朧とかだろうけどな。こいつ不器用だし。
「というかやっぱり俺いらなくない? 作戦っつっても俺が考える訳じゃないし。マッカン飲んでゴロゴロしてていい?」
「いい訳ないでしょクソ提督」
尻を蹴られた。