四葉の姫君   作:らふらふ

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8話

私達母子は現在、四葉本家に住んでいる。沖縄海戦以来、お母様の体調が良くないからだ。お母様は自分が長くないことを悟っているようで、叔母様や私達と静かに暮らしたいとのこと。

 

原作では叔母様とお母様って仲が悪かったはずなんだけれど……まあ仲が良いに越したことはない。

 

「叔母様、深咲です」

 

「入ってちょうだい」

 

部屋に入ると、葉山さんの足元に拘束された男が転がっている。忍び込もうとして捕まったのかな?

 

「この男、うちの研究員なのだけど、どこかに情報を流そうとしていたのよ」

 

「分かりました。少々お待ちを」

 

男に近づき、覚醒させる。

 

「どこの手の者?どこまで情報を流した?お前の仲間は?ーー」

 

次々と質問をしていく。返事など必要ないため、スムーズに尋問は進む。

 

「お待たせしました。七草の手の者のようです。末端も末端ですけどーー」

 

「お疲れ様でした。七草には少しお仕置きが必要なようね。ホントにあの男は昔から四葉を目の敵にして……」

 

叔母様が吐き捨てるように言う。

 

「叔母様、現当主に関しては分かっておりますが、次期当主はどうなのでしょう?たしか七草智一さんでしたか?」

 

「現当主ほど四葉に対する執着もないし、策謀もあまり好まないようです。しかし、七草の数は脅威ですからね。次期当主の代も油断はできないでしょう」

 

「数を削げるようならいいんですが……」

 

「そうねえ、うちは身内だけの少数精鋭ですからね。なかなかそちらにまで手が回らないわ。そうそう、もうすぐ深咲さんの直轄部隊が完成しますから、彼らを使ってみますか?」

 

「そうですね、末端から少しずつ削りますか」

 

**********

 

「お兄ちゃん、入ってもいいかな」

 

「どうぞ」

 

「CADの調整をお願いしたいの」

 

「いいぞ。ところで、最近叔母上によく会いに行っているようだが……」

 

「いろいろ頼まれごととか、聞きたいこととかあってね……」

 

「あんまり……いやなんでもない」

 

お兄ちゃんは叔母様が信用出来ないようで、忠告したそうにしている。さすがに本家の中だから、言うのを憚ったんだろう。そんなに警戒しすぎることもないのに……ちょっと叔母様が不憫だわ。だってお兄ちゃんは叔母様のーー

 

「本格的にやるのか?」

 

「うん、ズレを感じるわけじゃないけど、出来る時にしておきたいんだ」

 

「分かった」

 

下着姿になり、寝台に寝転がる。CADの調整には個人の魔法力を測定する必要があるため、全身スキャンで測定をする。機械による測定と同時に、お兄ちゃんの「眼」による測定も行われる。凝視される形になり正直少し恥ずかしいが、必要なことだから仕方がないのだ。

 

測定が終わり、服を着る。お兄ちゃんは測定データを尋常じゃない速度で処理している。流石は未来のトーラス・シルバーである。

 

「終わったぞ。起動式を少し整理しておいたよ。あとソフトのごみ取りもな」

 

「ありがとう。うん、いつも通り違和感ない」

 

「ところで、三高に行くって話だが、CADの調整はどうするんだ?そうそう会えないだろうしな」

 

「そのことなんだけどね、七波ちゃんに調整技術を教えてあげて欲しいの。理論は学んでるけど、実践がまだなのよ。お兄ちゃんに教えてもらえば、安心して調整をお願いできるわ」

 

「お安い御用だよ」

 

「ありがとう。よろしくね」

 

**********

 

「深咲、入ってもいいかしら」

 

「どうぞ、お姉ちゃん」

 

「穂波さんがおやつを用意してくれたから、一緒に食べましょう」

 

「ありがとう。あら、お兄ちゃんは?」

 

「お兄様は少し用事があるんですって」

 

「じゃあ仕方ないね。ところで、いつの間にお兄様と呼ぶようになったの?」

 

「沖縄で助けてもらった時からよ」

 

「そっか、二人が仲良くなってくれて嬉しいわ」

 

「思えば、私がお兄様を誤解して遠ざけていたことで、深咲も板挾みだったのね」

 

「いつか仲良くなってくれるって分かってたから、大丈夫よ。昔はともかく、今では尊敬してるみたいだし」

 

「そうなの、お兄様を尊敬しない私なんてもう想像できないわ」

 

お姉ちゃんは頬を染めている。これ、本当に尊敬だけかしら……?

遠回しに聞いてみよう。

 

「お姉ちゃんは将来の結婚の事とか、どう考えているの?」

 

「うーん、深咲が四葉を継いだら、私は分家として司波家当主になると思うのよね。それはいいけど、それに相応しい婚約者を選ばれるのはちょっと……」

 

「じゃあ、相応しい能力を持った相手を自分で見つけるしかないんじゃない?」

 

「やっぱりそうかしら。だけど、本当のお兄様を知ってしまったら、他が物足りなく見えてしまって……」

 

これはやっぱり恋しちゃってるのかしら。ハッキリとは分からないけど、直接的に聞くわけにはいかないし。

 

「でも結婚と言えば、深咲の方が先じゃないの。一条の次男でしたっけ?」

 

「そう、口説き落とさないとね。でも、直接的なアプローチは叔母様の嫌がる『こちらからの申し入れ』に当たると思うのよね。だから、相手から来るようにしなくちゃ……難易度が高いわ」

 

「まあ、大変そうね。何か出来ることがあったら遠慮なく言ってね。愚痴も聞くわよ」

 

「ありがとう、お姉ちゃん。そう言ってくれるだけで心強いわ。差し当たっては同じクラスになれるかどうかね」

 

「そればかりは運ですものね」

 

「うーん、やっぱり運に頼るのはダメね。確実に出会えるようにプロデュースしなきゃ。叔母様に協力してもらいましょう」

 

「それがいいわね」

 

部屋にノックの音が響く。

 

「深咲様、真夜様がお呼びです」

 

「今すぐ行きます」

 


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