EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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序章 士道プロローグ
第一話 その名はEX-AID!


世界は、人々は。謎の空間地震に、未知のウィルスに脅かされている。

 

 

特殊災害指定生命体が引き起こす、空間震がある。

 

人に感染し、怪物を生み出すウィルスがある。

 

 

だが、希望はある。

 

 

特殊災害指定生命体を救える、力と優しさを持つ少年がいる。

 

そして、ウィルスの脅威から人々を救うために戦う、ヒーローがいるのだから。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

四月一日。己が通っている高校の始業式まで、後九日に迫っている。

 

 

その日、五河 士道は買い物を終えて帰宅する途中であった。

 

士道は中学一年生まで、ゲームに夢中で大会に出て優勝した事もある。

 

天才ゲーマー『S』と呼ばれていた時期もあった。

 

でも、中学二年生になってからは、高校への進学も近づいたから、ゲームも控えるようになっていった。大会も出なくなった。

 

そして、士道は幼い時交通事故で入院していたが、その時に救ってくれた医師の影響で自身でも医師を志し参考書等を買い医学を学んでいた。

 

大学も、天宮市にある医療の大学に進学する予定だ。

 

 

今の士道は、高校一年生。

始業式は四月十日だから、後九日で二年生となる。

 

歩いてる途中、喉が乾いたので近くの公園にある自販機でジュースを買って、ベンチに座って飲む

 

「ふぅ・・・」

 

一息ついて、空を見上げる。青い空に白い雲。穏やかな時間が感じられる。

 

 

しかし、今の天宮市は空間震という脅威がある。

 

空間の地震と言うべきこの現象は、三十年前にユーラシア大陸で発生した時は、死傷者一億五千万人という大災害になった。

 

その後もちょくちょく発生していて、この街・・・「天宮市」は、東京都南部から神奈川県北部までの空間震跡地に立てられた最新都市だ。

 

空間震が発生した際の避難先のシェルターの普及率が、全国一位となっている。

 

「~~~♪」

 

「ん?」

 

「~~~♪」

 

女の子の声が聞こえる。その歌声はとても綺麗で、聞いている者の心に染み込んでくるみたいだ。

 

その歌声がどうしても気になり、士道は声のする方へ向かうことにした。

 

そこは、公園の中にある木々の中。その中に一ヶ所だけ木の無い空間があった。そして、その中に歌声の主を見つけた。

 

 

「~~~♪」

 

それは、一人の女の子。歌いながら踊っており、その姿は物語に出てくるお姫様のようだ。

 

 

「すげぇ・・・」

 

思わず、つぶやいてしまった。でも、それほどに幻想的な光景だった。

 

その女の子は、士道より背が低くて幼さが多く残っている感じだ。

 

膝位まで伸びている白銀色の髪は、空から降り注ぐ太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。

 

着ている服は、白くて清楚なワンピースそれが彼女の可愛らしさを引き立てている。

 

やがて、少女は歌い終わり、踊りも止まった。

 

 

「・・・・・・」

 

パチパチパチと、ほとんど無意識に拍手をしていた。

拍手の音で、ようやく自分が拍手をしている事に気付いた位だった。

 

「えっ・・・!?」

 

少女は小さな声で、驚きながらも士道の方を向いて、目があった。

 

「えーっと、ごめん!歌声が聞こえたから気になって来てみたんだ。

 

さっきの歌、凄く良かったよ!上手かった!」

 

「・・・・・・」

 

俺が声をかけても、少女は驚いたまま固まっている感じだった。

 

「---」

「え・・・?」

 

少女は何かを言ったようだが、小さくて聞き取れなかった。

 

すると、少女は士道の近くまで小走りで駆け寄ってきた。碧眼の目が、俺を見つめる。

 

 

「あの・・・・・・本当に、上手だったのですか?」

 

「あ、あぁ!本当に、上手だったよ」

「良かった、です。歌は好きですけど、あまり自信がなくて・・・」

 

「俺は自信を持って良いと思う。あんなに上手かったんだからさ」

 

 

「あの・・・・・・私、栞です!」

「え・・・」

 

風鳴(かざなり) (しおり)・・・私の名前です」

 

「あ、えぇと・・・俺は、五河 士道」

「良い名前です!よろしくお願いいたします、士道!」

 

「あれ、風鳴って・・・もしかして風鳴 翼さんの・・・?」

 

「はい、従姉妹なのです。翼お姉ちゃんのお父さんと、私のお父さんは兄弟なのです」

 

 

「そうか・・・・・・えっと、風鳴さん?ちゃん?」

「栞・・・です。名字だと翼お姉ちゃんと被っちゃうのですよ」

 

「えっと・・・栞?」

「はいなのです!」

 

士道が名前で呼ぶと、栞は笑顔で頷く。

 

しかし何故だろう。この子に警戒心も躊躇いも無く話せるのは。

 

何故だろう。この子と初めて会った感じがしないのは。懐かしさを感じるのは。

 

それは・・・・・・士道本人にもわからない。

 

 

その後、一旦ここから離れて公園に戻ることになった。先程の歌について、詳しく感想を聞きたいそうだ。

 

ここで士道は栞が銀色のアタッシュケースを持ってきたことに気付いた。

 

「なぁ。そのケース、何が入ってるんだ?」

「え・・・あ、これですか!?これは、その・・・」

 

「ん?」

 

答えづらそうにしている栞。やがて人差し指を口元に当てて笑顔で・・・。

 

「秘密です♪」

 

可愛らしく、秘密にしたのであった。

 

その時、あるものが視界に入る。

 

「あれは!」

 

疑問に思って栞が見ている方を士道も見てみると、子供が歩いてきた。七、八歳位の男の子だ。

 

だが、体はフラフラで顔も赤い。体調不良なのはすぐにわかった。

 

栞が駆け出すのと同時に、士道も駆け出していた。栞は倒れそうになった男の子の体をそっと支える。

 

 

「大丈夫?」

 

栞が優しく訊ねる。男の子はそっと頷いた。

 

 

「すぐに病院に!」

「待ってください!」

 

栞は聴診器みたいなのを取り出して男の子に向ける。すると、何やら映像が写し出される。

 

文字やマークが出ている。

 

「やっぱり感染していた・・・しかもここまで進んでる・・・早くしないと、奴等が出ちゃいます」

 

 

画面を見ながら呟く。困惑しているのに気づいたのか、栞が士道の方を見た。

 

「士道・・・この子は」

 

瞬間・・・!

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

男の子が苦痛の叫びを上げたかと思うと、体から「何か」が溢れ出て、大きな怪物になってしまった。

 

「あれは・・・・・・何だよあれ!?」

「バグスターウィルス・・・人に感染する未知のウィルスなのです」

 

 

(俺に出来ることは無いのか?)

 

そう考えたその時、栞が持っていたアタッシュケースを開ける。

 

「これは私が本来使っているのとは違うけど・・・仕方ないのです」

 

開けると、そこにはゲーム機っぽいバックル・・・・・・ゲーマドライバーとゲームソフトっぽい機械・・・・・・ライダーガシャットが入っていた。

 

ガシャットの下部分はマゼンダ色で「マイティアクションX」という文字と絵が書かれていた。

 

幻夢コーポレーションが数日前に発売したアクションゲームと同じタイトルだ。

 

ケースから取り出して、それを使おうとしたところで・・・。

 

 

士道が栞の持つゲーマドライバーとライダーガシャットを奪い取る。半分は衝動的に。

 

「士道!?」

 

「よくわからないけどな・・・・・・女の子に任せて俺は何もしないなんて出来ない!」

 

士道は、()()()()()()()()()()()()()()ドライバーを装着し、右手に持ったガシャットを起動する。

 

 

《マイティアクションX!!》

 

音声、音楽と共にマイティアクションXのロゴが出て、ゲームエリアが展開。チョコブロック型のがいくつも出てくる。

 

そして・・・。

 

 

「安心しろ・・・何とかしてみせるからよ!」

 

士道も変わった。ニヤリと野生的な笑みを浮かべる。更に目が赤くなった状態で固定される。士道の天才ゲーマー『S』としての人格だ。

 

 

「変身!!」

 

士道はゲームドライバーにガシャットを装填し・・・。

 

 

《ガシャット!》

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

 

士道は変身した。仮面ライダーエグゼイド、レベル1へと。

 

「士道・・・どうして!?」

栞が驚く中、士道は武器を召喚して手に持つ。

 

 

《ガシャコンブレイカー!》

 

「まだわからねぇ事多いけど、これで戦える」

 

士道はガシャコンブレイカーをバグスターユニオンに向けて、ハッキリ宣言した。

 

「ノーコンティニューで、クリアする!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「エグゼイドが起動したか。あの子はもう適合者を見つけたのか?」

 

「しかし、妙だな。私が把握している限りの適合者は全員仮面ライダーになっているし、追加で適合者が増えたという事も無い」

 

「・・・・・・まさか」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

この体・・・一見ゆるキャラみたいで動きにくそうだが、軽やかに動くことが出来る。

 

士道はバグスターに向けて一気に走り出した。

 

バグスターが腕を降り下ろしてくるが、ジャンプしてかわして武器であるガシャコンブレイカーで一発殴った。

 

『HIT!』という文字も出てくる。

 

着地してバグスターを見ると、怒ったのか士道に向かって突進してくる。士道も背を向けて走り出すが、決して逃げる訳ではない。

 

 

マイティアクションXの主人公、マイティはお菓子を食べることで強くなる。

 

この周りのチョコブロック、利用が出来ると考え一番近くにあるチョコブロックまで走っている。

 

空中に浮いているチョコブロックまで到着したところで怪物がジャンプして、士道を押し潰そうとする。

 

士道は斜め前までジャンプして、チョコブロックをブレイカーで叩く。

 

すると、中から黄色い、ダッシュしている人の絵が書かれたメダルが現れた!

 

コレが士道が狙っていたもの、『エナジーアイテム』だ。

 

幻夢コーポレーション社が開発したゲームには、このエナジーアイテムを得ることで様々な能力を一時的に得られる、という機能がどのゲームにもある。

 

 

士道は早速出たエナジーアイテム、『高速化』を得る。

 

スピードアップしたことで、バグスターをかなりの速さで連続攻撃出来た。

 

『HIT!』の文字が『GREAT!』に変わった所で、効果が切れた。

 

 

士道はバグスターの頭を蹴って高くジャンプする。

 

倒れるバグスターに向けて、止めの一撃として高所から力を込めた一撃を叩き込んだ!

 

『PERFECT!』の文字と共に怪物も爆発。男の子も出てきた。

 

「大丈夫か!?」

 

士道はガシャコンブレイカーを投げ捨てて、すぐに男の子に駆け寄る。

 

見た感じ、傷などは無い。助け起こそうとしたが・・・。

 

スカッ

 

「・・・!?」

 

士道の手が、男の子の体をすり抜けてしまった。よく見ると、男の子の体が透けている。

 

「士道!」

 

困っていると、栞が駆け寄ってきた。

 

「栞!怪物を倒したのに、体が・・・」

 

「バグスターは、感染者のこの男の子から分離しただけ。分離させて、もう一度倒さないといけないのです。

 

そうしないと、この子は消えてしまう」

 

「消える!?」

 

「バグスターは、感染者の体を乗っ取って消したとき感染者を介さず動ける完全体になる。

 

消えた人は・・・・・・死ぬんです」

 

 

「そうだ。その女の言う通りだ」

 

説明の途中で、男の声が聞こえた。

前を見ると、細かいのが一ヶ所に集まって、人の形をなした。

 

いや、どちらかと言うと、怪人だ。

 

しかも、その怪人の周囲にも頭が鶏肉のような奴らが何体も現れた。

 

「我らバグスターの繁栄の為、人間には消えてもらう!」

 

マイティアクションXに出てくるボスキャラクター、ソルティ伯爵の姿をした怪人が高らかに宣言した。

 

「・・・・・・」

 

その言葉を聞いて、士道の心に怒りが沸き上がってくるのを感じた。

 

(こいつら、人の命を何だと思っていやがる!?)

 

 

「栞・・・あいつを倒すには、どうすればいい?」

 

「士道、その姿・・・レベル1は、感染者からバグスターを分離させることが出来る力。でも、戦闘に適しているとは言えないのです」

 

「それで?」

 

「分離したバグスターを倒すなら、真ん中のレバーを開いて、レベル2にレベルアップしてください」

 

「わかった!」

 

バックルの中央、マゼンダ色のレバーを掴み・・・。

 

「第二変身!!」

言葉の直後にレバーを開く!

 

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!》

 

 

絵が書いてある光の壁が自動で迫ってくる。

 

それを受け入れると、体のパーツが弾けとんで、士道の体が変わった。

 

近くにあった車を鏡代わりにして見てみると、ゆるキャラのような姿から、まともな人の姿になっていた。

 

「これがレベル2か」

 

「ふん。レベルアップしようとも、私には勝てん!」

 

そう言って、ソルティが士道に攻撃を仕掛けてきた。

周りに現れた、頭が鶏肉みたいな連中・・・バグスターウィルスも攻撃を仕掛けてくる。

 

士道は投げ捨てたガシャコンブレイカーをもう一度呼び出して、周りのウィルス達を倒していく。

 

ソルティが杖で殴りかかってくるが、士道はAボタンを押す。

 

『ジャ・キーン!』

 

ガシャコンブレイカーを剣にして、受け止める。

 

栞の方を見ると、戦闘員は栞にも迫っていく。

すぐに駆け寄ろうとしたが、栞の目付きは鋭かった。

 

栞は一番前の一体の腹を蹴り、体を回転させてもう一体も蹴りつけた。

 

武器を突きつけてきた二体の腕を掴んで後ろへと投げ飛ばし、他の戦闘員達には、自分から近づいて殴り、蹴り倒していく。

 

しかし、決して長くないスカートだから、蹴る度に士道は変身して視力が良くなっている為、ハッキリと白色の下着が見えてしまう。

 

「私は大丈夫です!そっちに集中して!」

「わ、わかった!」

 

今は戦闘に集中するべく、気持ちを切り替える。

 

押しきって、ソルティを斬りつける。

Bボタンを三回連続で押して、連続で斬る。

 

ソルティは雷を放ってくるが、士道はそれをかわして力を込めて蹴る!

 

吹っ飛ぶソルティ。着地したところで、栞が倒し損ねたであろうウィルス達が士道に向かって来た。

 

「士道!」

「大丈夫だ!」

 

ガシャコンブレイカーを逆手に持って、全力で走り全てのウィルスをすれ違い様に切り裂いた!

 

爆発し、消えるウィルス達。残るはソルティだけだ!

士道の近くまで駆け寄ってきた栞が、教えてくれる。

 

「士道、左腰のスロットにガシャットを入れて、ボタンを二回押してください。それで必殺技が出せるのです」

 

「OK!」

 

栞の言う通り、機械を取り出してスロットに入れて、ボタンを押す。

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

更にもう一回押す。

 

《MIGHTY CRITICAL STRIKE!!》

 

音声の後、右足にエネルギーが溜まっていく。

そして、ソルティに飛び蹴りをくらわせた!

 

《会心の一発!》

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

ソルティが爆発した。倒すことに成功したのだ。

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と共に、マイティアクションXの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

その後、男の子の様子を見てみると、体が元に戻った。レバーを閉じてガシャットを抜くと、変身が解けた。

 

「もう大丈夫。この子は助かりました」

「良かった。本当に良かった・・・」

 

この子を助けることが出来た。頑張った甲斐があったな・・・そう思いながら、安堵のため息を吐いたのだった。

 

その後、詳しい事情の説明は明日してくれるのだが、その時にバグスター対策組織に招待してくれる事になった。

 

その約束をして、今日は栞と別れたのだった。ちなみに、買ったCDはちゃんと回収したのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

そして、その戦いを最初から見ていた一人の男が立ち上がり・・・。

 

「新しいゲームの始まりだな・・・士道」

 

そう呟いて、静かに姿を消したのであった。




次回予告


バグスター対策組織に招待された士道。
そこで、出会いと再会と戦いが待っていた。


第二話 爆走するLAZER!


「アクセル全開!」

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