EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第八話 レベル50のFantasy

琴里の霊力を封印して少しの日が経過した頃。士道は今、フラクシナスの医務室で検査を受けていた。

 

士道が黎斗との戦いで十香の天使「鏖殺公」を顕現させた・・・その事について、士道の体に異常が現れていないかを検査しているのだ。

 

MRIのような機器によるスキャンを終えて、装置から出て来た士道は上半身を起こす。

 

慣れない検査を終えてベッドから離れたが、ここで士道は体に力が入らなくなり、膝から崩れ落ち転んでしまう。

 

「痛った・・・まだ疲れが残ってるのか・・・?頭痛は無くなったけど・・・」

 

マイティブラザーズを使用した際の頭痛は改善されたが、天使の使用を含む、これまでの疲労が蓄積した影響なのかもしれない。

 

「・・・大丈夫かい?シン・・・」

「はい、ありがとうございます」

 

検査をしていた令音がすぐに駆け寄り、士道を助け起こす。令音に礼を言って立ち上がり、一緒に医務室を出る。

 

「・・・シン、今日は家に帰ったらすぐに睡眠を取るんだ。疲労が蓄積しているようだからね」

 

「え?いや、十香達の晩飯を作らないといけないですし」

 

「・・・先程のシンを見ては放っておけない。精霊達には事情を説明して、夕食はこちらで手配する」

 

士道の目を見ながら、真剣に言う令音。

 

「・・・檀 黎斗やバグスターの事を考えればすぐに動けるようにするべきなのはわかる。だが、休める時に休むべきだ」

 

「・・・・・・わかりました。令音さん、十香達をお願いします」

 

士道は納得し、ワープで自宅に戻り十香達と少し話をしてすぐにベッドに入ると、あっという間に寝てしまった。

 

令音は少し考え、ある事を思いつく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、旧幻夢コーポレーション内で檀 黎斗は苛立っていた。

 

黎斗は士道に真実を伝えることで膨大なストレスを与え、消滅させるつもりだった。

 

だが、士道の精神的な強さは予想を超えており真実の宣言は意味を成さず精霊の力で反撃を受ける始末。

 

だが、黎斗は己の野望を諦めていない。パソコンを操作してこれまで回収したバグスターのデータを反映して「究極のゲーム」作成を進めていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

次の休みの日。今までゲーム病発生の報告も無い平和な日々が続いた。

 

士道も戦闘なく日常を送れたため、疲労具合も大分改善されている。そしてこの日は、士道は出掛ける事になっていた。

 

「士道君、今日はよろしくね」

「折紙。付き合ってくれてありがとな」

 

鳶一 折紙と一緒に。

 

理由としては、令音がこのお出かけ(デート)をセッティングしたのである。

 

士道に気分転換のためのデートを企画したが精霊相手だと、どうしても気を使って精神的疲労を無意識に溜めてしまう恐れがある。

 

この日は精霊の事を一旦除外して人間とのデートとしたのだ。候補として栞、折紙、美九の三人が上がった。

 

栞は久々に休暇を取れた母、風鳴 エレナとのお出かけがあり、士道からも家族の時間を優先して欲しいと言われ辞退。

 

美九もどうしても外せない仕事があるので、涙を流しながら辞退。

 

唯一予定の空いていた折紙が選ばれたのであった。そういう事もあり、二人でデートを行う事に。

 

折紙も令音から士道を気遣って欲しいと頼まれており、折紙は何時もより気合いを入れていた。

 

そんな二人が訪れたのは、日本舞踊を披露する舞台。折紙がたまたまチケットを入手した為、一緒に見ることになった。

 

 

会場に向かう途中、折紙は心配と不安の表情で訪ねてくる。

 

「士道君、体は大丈夫?」

 

「ん?あぁ。ここ最近はバグスターも現れてないし、ちゃんと休みを取れてるから、前より良くなったぜ」

 

「そっか・・・でも、また悪くなったらすぐに言うようにね」

「わかってる。十香達にも言われたからな」

 

「男の子って女の子の前では、痛いのや辛いのを我慢するのが格好いいって思っている感じがあるから。

 

女の子側で言うなら、大切な人が痛さや辛さを我慢して明るく振る舞われる方が悲しくて辛いんだよ・・・。

 

だから、無理をしないでちゃんと伝えるように、ね」

 

「はい、我慢ばかりで心配かけてすみませんでした」

「よろしい」

 

折紙が士道に無理や我慢をせず、元気でいてほしいという気持ちを伝える。

 

士道も、その言葉を素直に受け入れたのだった。

 

 

二人が話をしながら歩いている内に、目的地の会場に到着した。

 

ところが、会場の近くまで来たら二人の着物を着た女性が何やら揉め事を起こしていた。

 

「コラ、何ですかその動きは!」

 

一人が止めようとするが、もう一人はロボットダンスの様にカクカクとした動きばかりであり、しかも力も強いのか抑えも聞かないようだ。

 

 

そして、女性の体からバグスターウイルスが溢れ出て、女性の体を包み込む。

 

そして女性はバグスターになってしまった。

 

進化したバグスターウイルスから生まれたバグスターであり、バグスターユニオンの形態をスキップして、ゲーム病の患者の体を乗っ取る事で実体化したのだ。

 

赤い体を持つロボットのような姿・・・ゲキトツロボッツのラスボスをモチーフとしたバグスター、ガットンバグスターだ。

 

「この女の身体は乗っ取った。システム起動。レベル30(サーティ)

 

コラボスの時と同様に、右腕の強化アーム「ガットンスマッシャー」をクルクル回して士道達に威嚇する。

 

「レベル30・・・進化したウイルスだからやっぱ高けぇな。折紙、下がってろ」

 

ガシャットを奪われ所持していない折紙を下がらせ、士道はゲーマドライバーを装着。マイティアクションXとゲキトツロボッツ、二つのガシャットを起動する。

 

《マイティアクションX!》

《ゲキトツロボッツ!》

 

「第三変身!」

 

エグゼイドはレベル3となり、ガットンに向かって走る。

 

 

エグゼイドの強化アームとガットンの強化アームがゲキトツ!衝撃が周囲に広がりアスファルトが抉れる。

 

衝撃で後ろに飛んでいき、そのまま着地。強化アームを前にロケットパンチのように飛ばす。

 

ガットンも同じように飛ばしそれがぶつかり、弾かれ地面に落ちる。

 

エグゼイドは近くに落ちていたエナジーアイテム、マッスル化を広い攻撃力を上げてキックを当てる。

 

強化アームを拾い装着し直したが、直後ガットンの強化アームが背中からエグゼイドを攻撃。

 

前に吹っ飛ばされた状態からガットンの頭突きを喰らって更にダメージが入る。

 

「士道君!」

「大丈夫だ!やっぱりレベル差がデカいな・・・こうなったら」

 

駆寄ろうとする折紙を止め、マイティブラザーズXXガシャットを取り出す。

 

すると、エグゼイドの視界にエネルギー弾が折紙に向かって放たれるのが見えた。

 

「危ない!!」

すぐに動き、折紙を庇う。

 

「大丈夫!?・・・まさか」

 

エグゼイド近くにより、前を見るとそこにガシャコンマグナムを持ったゲンムがいた。

 

「さて、エグゼイドのガシャットを回収する」

ガシャットギアデュアルβを取り出し、ファンタジーゲーマを召喚する。

 

その姿に威圧感も感じられるが、折紙は臆する事なく睨む。

 

「折紙、俺はまだやれる!」

 

突如、折紙がゲーマドライバーからマイティアクションXガシャットをエグゼイドの手から奪ってしまう。驚くエグゼイドに折紙は優しく微笑んで言う。

 

「大丈夫、任せて。私も、士道君を守るから」

 

言い終えた直後、一転して真剣な表情になり、ガシャットを持ったまま走る。

 

「これが欲しかったら、私を捕まえてみて!」

「ほぉ・・・いいだろう。相手をしてやれ、ファンタジーゲーマ」

 

ゲンムの指示でファンタジーゲーマが動き出し、折紙を追いかけながらエネルギー弾を撃ち続ける。

 

折紙はAST時代に鍛えた身体能力を駆使して、周囲の建物の凹凸や高低差を利用して、縦横無尽にかわしていく。

 

そして、痺れを切らしたようにファンタジーゲーマが突進を行う。停止した折紙はその突進攻撃を受ける直前で下に飛び降りる。

 

二階分の高さだったが、無事に着地。ファンタジーゲーマーはそのまま激突。置いてあったエナジーアイテムを拾う。

 

それは、《混乱》。それを修得したファンタジーゲーマは混乱して変な動きをしながら周囲にエネルギー弾を乱射する。

 

その攻撃はゲンムとガットンに命中。ガシャットギアデュアルβを落としてしまう。

 

ファンタジーゲーマも所有者の手を離れた事で消滅、そして折紙がガシャットギアデュアルβを拾い手に入れた。

 

折紙はこれが目的で、ゲーマ相手に戦いを挑んだのだ。ゲンムは起き上がりながら言う。

 

「なるほど、考えたな。だが、そのガシャットはレベル50。レベル5までしか到達していない君に使いこなせるかな?鳶一 折紙」

 

「・・・使いこなしてみせる。士道君を守るために!」

 

後ろで見守る士道を思いながら、折紙はゲーマドライバーを装着し、ギアデュアルβのダイヤルを回す。

 

《タドルファンタジー!》

《Let's Going King of Fantasy!》

 

「ステージ50、変身!」

 

そしてドライバーにセットし、レバーを開いて変身する!

 

 

《デュアルアップ!タドルメグルRPG!タドルファンタジー!》

 

変身時には一度クエストゲーマーレベル2に近い姿になり、召喚したファンタジーゲーマと合体。

 

魔王とドラゴンを合わせたような意匠の鎧と兜をまとった姿となり、まさに魔王と呼ぶに相応しい姿になる。

 

これが仮面ライダーブレイブ・ファンタジーゲーマーレベル50!

 

 

折紙はその力の負担に苦しむが、その力を我が物にしてみせた。そして、そこからはブレイブが圧倒的な力を見せる。

 

念動力でゲンムとガットンを動かし、壁に打ち付けてダメージを与える。

 

飛行能力で宙に浮かび、闇の剣の光弾で攻撃。

 

ガットンのロケットパンチと、ゲンムのガシャコンマグナムのエネルギー弾をバリアで防いで着地。

 

バグスターウイルスの軍団を召喚し、空間の穴からミサイルの様に打ち出して攻撃までしてみせた。

 

「君が私のガシャットを使うならば、こちらも・・・」

 

折紙から奪ったタドルクエストガシャットを起動、ガシャコンソードを呼び出す。

 

そして、ガシャコンソードにタドルクエストガシャットを、ガシャコンマグナムにドラゴナイトハンターZガシャットを入れ、キメワザを発動する。

 

《TADORU!DRAGO KNIGHT!CRITICAL FINISH!!》

 

ハンターゲーマに炎を纏わせての突撃させるが、ブレイブもキメワザを発動する。

 

《TADORU!CRITICAL SLASH!!》

 

両足に赤黒いエネルギーを纏い、浮遊能力も合わせてキックを放つ!

 

炎を纏ったハンターゲーマを消し去り、ゲンムを吹っ飛ばし、ガットンを倒し女性を元に戻す事に成功。

 

更に、タドルクエストとドラゴナイトハンターZ、二本のガシャットを奪還する事が出来た。

 

「少し、侮りすぎたか・・・」

 

ゲンムはガットンのデータを回収し、撤退していった。

 

士道が救急車を呼んでいる間に折紙は変身を解いたが、直後に胸元を抑えて苦しんでしまう。

 

電話を終えた士道が折紙の異変に気付き、駆け寄る。

 

「折紙、大丈夫か!?」

「うん、ちょっと苦しいけど・・・動けるよ」

 

苦しむ理由として、力の制御が難しい事に加えて胸部を保護する鎧「ダークロードキュイラス」に搭載された装着者への負担を前提にした戦闘能力強化システムのせいで、変身者への負担が出てしまう。

 

戦闘が長引くと、肉体に負担が蓄積してしまうのだ。

 

女性が救急車で搬送され診察を受けたが、特に問題は無く明日には退院出来るとの事だ。

 

士道と折紙もCRに来ており、多少苦しみを残す折紙の側にいる士道だが、その姿を見て気付く。

 

自分が傷付き苦しむ姿を見た時の十香達も、今の自分と同じく心配で心が押し潰されそうなっていたのだろう、と。

 

(俺がもっと・・・皆に心配を掛けないくらい強くならないと・・・)

 

決心を新たにしながらも、折紙が早く良くなるようにと祈りながら、そっと折紙の手を握るのであった。

 

 




次回予告

士道と狂三が遊園地内で出てしまったゲーム病患者の対応をする中、黎斗が現れ狂三に戦いを挑む。

第九話 レベル50のSimulation

「戦艦の火力を召し上がれ!」


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