EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第七話 Siblingsの絆と愛

 

「殺ス・・・おニーちゃんのテキを・・・コロス・・・!!」

 

再び精霊《イフリート》の力を出してしまう琴里。

 

獰猛な笑みを浮かべ、灼爛殲鬼(カマエル)を持ってゲンムとパラドクスに向かって攻撃を仕掛ける!

 

その攻撃はかわされた。琴里は追撃をしようとするが、精霊の力に苦しみ、一旦離れていく。

 

「琴里!!」

 

エグゼイドはレベル2に戻って琴里の元に向かって走り、レーザーもそれに同行する。

 

追いかけようとするゲンムだが、パラドクスが立ち塞がる。

 

「道具の分際で・・・私を苛立たせるな・・・!」

 

ゲンムはガシャットギアデュアルβを取り出し、ダイヤルを回しスターターを押してゲーマーを召喚する。

 

《タドルファンタジー!》

 

《デュアルアップ!Satan appeared! Say“MAOU” TADDLE FANTASY!!》

 

紫色のファンタジーゲーマーを召喚。これもパラドクスと同じくレベル50である。

 

ファンタジーゲーマーは浮遊したまま動き魔法陣を展開して、そこから魔法の砲撃を放つ。

 

パラドクスは攻撃をかわしていくが、途中でウイルス達を倒し駆けつけた十香達精霊を発見。

 

パラドクスは十香達の方に動き、ゲーマーの攻撃を十香達に向くように誘導。

 

ファンタジーゲーマーの攻撃を、十香の塵殺公が切り裂き防ぐ。

 

「精霊達、アレの相手は任せるぜ。ゲンムは俺が引き受けてやる」

 

それだけ言うと、パラドクスはゲンムに向かって走る。ゲーマーの相手を十香達に押し付けたのだ。

 

「ちょ・・・あいつ押し付けていったし!」

「憤慨。面倒が増えました」

 

「ですが、あのゲーマーを放っておくわけにもいきませんわ」

「皆、私達であれを倒そう」

 

「は、はい・・・!」

「よーし、やっちゃうよー!」

 

精霊達は魔法陣を展開したファンタジーゲーマーに向けて、戦いを挑んでいく!

 

そして、エグゼイドとレーザーが琴里の元に駆けつけると、琴里は蹲って苦しそうに胸元を抑えている。

 

しかも、エグゼイドが近づいた瞬間、即座に灼爛殲鬼を持って守るはずの士道に攻撃をしてしまう。

 

ガシャコンソードの刀身で受け止めたが、それは灼爛殲鬼の熱で焼き切れ折れてしまう。

 

エグゼイドはバックステップで後方に下がり、その直後にゲーマドライバーのレバーを閉じガシャットを抜いて変身を解く。

 

「し、士道!?何をしてるの危ないよ!?」

 

「栞はそのままでいてくれ・・・琴里に対して武力で解決するのは出来ない。ここは説得で止めてみせる。俺は、絶対に諦めない!」

 

士道は説得で琴里を止めようとしていた。だが、琴里の事態が急変する!

 

「お・・・おにーちゃん・・・・・・ア、アアァァァァァァ!!」

 

士道を視界に入れて認識した途端、灼爛殲鬼の炎が琴里自身を燃やし苦しめる!

 

理由としては、琴里は先程士道に攻撃してしまった事による精神的ショックに加えて、強大な力がますます上がり琴里の耐えられるキャパシティを超えてしまったのだ。

 

「・・・!?こ、琴里いぃぃぃぃぃ!!」

 

苦しむ琴里を見て、士道は駆け寄る!そして燃え盛る炎を纏う琴里を士道は抱きしめる。

 

炎の熱は士道を容赦なく焼き苦しめるが、士道はそれでも離さない!

 

「お、おにーちゃん!?だめ、離れて!」

 

驚いた琴里が見ると、士道の肉体が焼かれ煙も出ている。すぐに離そうとするが士道自身が離れてくれない。

 

「琴里・・・俺は琴里にすっげぇ感謝してるんだぜ」

「え・・・?」

 

「母親に捨てられて閉じこもっていた時も、出られるようになった時も、その先も俺の側にいて支えてくれた。

 

琴里がいてくれたから、俺は変われた。琴里の心の強さに俺は救われた」

 

「おにーちゃん・・・・・・」

「俺は知っている。琴里は強い・・・お前の強さは精霊の力にも負けないって」

 

「うん・・・!」

 

「琴里・・・一緒に帰ろう、五河家に」

「うん!」

 

士道の言葉を聞いて、琴里は全身全霊で霊力を抑え、遂に自分の炎を消すことが出来た。

 

 

「琴里っ!!」

 

倒れた琴里の体に外傷はないが、霊装は自分自身の炎によって殆どが焼け焦げ悲惨な姿になっている。

 

士道は体の多くに火傷を負い、一部は炭のように黒くなっている。

 

「おにー、ちゃん・・・」

 

士道の声が聞こえ、動かない体を無理やり起こそうとする琴里。それを見た士道は、優しく琴里を抱きしめた。

 

「俺、まだ未熟で駄目な兄ちゃんだけど、これからも俺と一緒にいてくれ!」

 

「・・・うん!大好きだよ、おにーちゃん!!」

 

琴里は士道にずっと胸の内に秘めていた想いを伝えた。

 

士道もその気持ちに答えるようにそっと顔を近づけ、二人の唇は確かに重なった。

 

士道が琴里から唇を離すと、琴里の身を包んでいた霊装は光の粒子となって消え、士道の体内に入り込んできた。

 

一つは琴里の精霊としての力。もう一つは五年前の・・・士道が一度夢で見た五年前の火災時の記憶。

 

琴里の霊力を封印した事で、炎の回復能力も復活。多くの火傷は炎と共に消え去り元の肌に戻った。

 

琴里は霊力を士道に託すと立ち上がろうとするが体に力が入らず倒れそうになり、二人で支える。すると、栞が気付いたように横を見る。

 

「士道!」

 

栞が叫んだ直後、大きな爆発音が響く。その方向を見ると、パラドクスがゲンムを殴り地面に叩きつけていた。

 

「エグゼイドを・・・五河 士道を倒すのは俺だ!」

 

パラドクスは宣言をした直後、エナジーアイテムを三つ揃えた。それは全て同じものだった。

 

《マッスル化!》

《マッスル化!》

《マッスル化!》

 

攻撃力を上昇させるマッスル化を三枚同時に使用した事で、攻撃力が大きく向上させてからガシャットギアデュアルを取り出してダイヤルを回しホルダーに再びセットする。

 

《デュアルガシャット!》

《パーフェクトクリティカルコンボ!!》

 

キメワザを発動したパラドクスは、強力なキックをゲンムに叩き込み一撃で変身解除させた。

 

パラドクスには「攻撃を与えた相手の全防御システムを一時的に停止させるプログラムを流し込み、直接ダメージを与える」という機能がある。

 

実質的に防御無視の攻撃が可能であり、このシステムの為か不死身の能力を持つゲンム・ゾンビゲーマーレベルXを変身解除にまで追い込んだのだ。

 

自分で開発した機能によって、黎斗は敗北したと言っても過言ではない。

 

 

ボロボロになりながらも立ち上がる黎斗。変身を解いたパラド、そして士道、栞、ゲーマーを退け集結した精霊達が油断なく黎斗を見る。

 

すると、黎斗は狂気の笑みを浮かべながら言い出した。

 

「ハァ、ハァ・・・・・・クッ・・・・・・ハハハァ・・・!『五河 士道は俺が倒す』、君はそう言った・・・・・・。

 

私に歯向かった罰だ・・・・・・その望みを・・・・・・絶つ・・・・・・!」

 

黎斗は狂気の笑いのまま、()()を叫ぶ。

 

 

 

「五河 士道ゥ!

 

何故君が適合手術を受けずに、エグゼイドに変身できたのか!

 

何故新しいガシャットを生み出せたのか、何故変身後に頭が痛むのかぁ!

 

その答えはただ一つ・・・・・・!」

 

 

「やめなさい!」

「それ以上言うな!」

 

狂三とパラドが黎斗を止めようと走る。だが、間に合わない。

 

 

 

「ハァァァ・・・・・・五河 士道ゥ!

 

君が!世界で初めて・・・・・・!バグスターウィルスに感染した!

 

()()()()()()()()()だからだァァア゛ーーーーーッハハハハッ!!

 

ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!」

 

 

「俺が・・・・・・ゲーム病・・・・・・?」

 

俯く士道、驚きのあまり固まる十香達。悔しそうに顔を歪める狂三。

 

怒りのまま黎斗の襟元を掴み睨みつけるパラドと、笑い続ける黎斗。

 

そんな中、俯いていた士道は顔を上げて・・・。

 

 

 

 

 

「なんだ、()()()()()()()()()。どんな理由かと思ってたけど・・・想像してたよりは()()()()()()()()()

 

拍子抜けしたかのように、あっさりと言ってみせた。

 

「・・・何?」

 

黎斗は思わず聞き返すが、士道は黎斗の言った事実を受け入れていた。

 

「・・・・・・俺は今、体内のバグスターウイルスに感謝してるぜ。こいつがあるから、エグゼイドになれた。

 

こいつがあるから、俺は精霊やゲーム病患者の為に戦う力が手に入った。だから・・・・・・」

 

士道は俯かせていた顔を、そして右腕上げる。己の中に湧き上がるものに素直に従いながら・・・。

 

 

 

「そんな暴露ネタ、俺には効かねぇよ!!」

 

そして腕を振り抜いた瞬間、一本の大剣が具現化した!その大剣は凄まじい衝撃波を生み出しながら黎斗とパラドに迫る!

 

「「ーーーっ!?」」

 

士道の放った斬撃の威力は凄まじく、二人は大慌てで後退しギリギリで回避し、そのままこの場から撤退した。

 

「シ、シドー!?どうしてシドーが塵殺公(サンダルフォン)を!?」

 

士道の手には十香が愛用している大剣・・・天使・塵殺公(サンダルフォン)が握られていた。士道は天使を顕現させたのだ。

 

「・・・はは、なんで、だろうな・・・」

 

十香の驚愕の声と皆の驚愕の視線に、士道は自分でもわかってないようで戸惑いの声で答えた。

 

塵殺公は士道が顕現させて十秒程で消えてしまい、今は「確かに塵殺公があった」という実感だけが残っていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、フラクシナスで回収された士道が向かったのは医務室だ。

 

琴里の霊力を封印する間、十香と四糸乃、八舞姉妹と狂三は、黎斗が呼び出したファンタジーゲーマーとの戦いをしてくれたが、やはりダメージはあった。

 

故に検査を行ったが、皆が軽傷で済んでいた。

 

余談だが、狂三はフラクシナスに回収されるより前に姿を消しているため不在である。

 

更に余談だが、美九と折紙もフラクシナスにいて精霊の看病を手伝ってくれている。

 

が・・・美九が看病に託けて体を触る行為をして、折紙に止められていた。

 

琴里はまだ眠っていた。傷は完全に塞がっているため、しばらくすれば眼を覚ますそうだ。

 

 

医務室から退出して、艦橋を目指して歩いていた時、令音が士道に声をかける。

 

「・・・・・・シン、今日は本当に良くやってくれた。心から感謝を」

 

いきなり令音が頭を下げたことに、士道は慌てて令音を止める。

 

「そんな、頭を上げてください!俺は当然のことをしたまでですから!」

 

士道が令音を元の姿勢へ戻した。そして、気になっていた事を訪ねた。

 

「そう言えば何で琴里の霊力の封印は、ぶっつけ本番なのに上手く言ったんでしょうか?」

 

「・・・あぁ、それはね」

 

士道が疑問に思っていたことを話すと、令音がフラクシナスのモニターで琴里の好感度を示したデータを表示した。

 

その内容と令音の話を聞いて、士道は納得したと同時に嬉しさと恥ずかしさも感じ、顔が赤くなっていくのを自覚した。

 

 

 

少し時が経ち、夜。琴里は眼を覚ました。隣の椅子には士道が座っている。

 

「琴里・・・もう大丈夫か?」

「おにーちゃん・・・うん、大丈夫。黒いリボン、取ってくれる?」

 

琴里言われ、士道は黒リボンを渡す。慣れた手付きで結び士道と向き合う。

 

「士道・・・・・・ごめんなさい。それと・・・ありがとう」

 

「お前が無事ならそれで良いさ。それに霊力を封印出来たのは、その・・・お前が俺をあんなに想ってくれてたからこそ、だし」

 

「え?」

「いやその・・・ここに来る前に令音さんが・・・」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

令音がフラクシナスのモニターで琴里の好感度を示したデータを表示した時。

 

琴里の好感度は常に最高値が維持されているが、一部で線が消えている部分があった。

 

「・・・・・・実は好感度がMAXを超えていたんだ。だから表示されないんだ・・・カンストと言う言葉が一番正しい。

 

・・・琴里のキミへの好感度は常にMAXを維持し、下がるどころか時々上昇していたんだよ」

 

世界最高とも言えるスペックを誇るラタトスク製の観測機械ですら、カンストするほどの数値を出していた。

 

そして士道も遂に、真相に辿り着いた。

 

「・・・言っていたじゃないか。琴里は・・・・・・お兄ちゃんが大好きだと」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・ていう話を聞いた。その・・・俺をそんなに想ってくれて、ありがとうな」

 

「・・・〜〜〜〜〜っ!?」

 

令音に自分の恋心を、想っている当人にバラされた恥ずかしさはかなりのもので、声にならない声を上げて、掛け布団に全身を隠すようにかける。

 

「令音のバカ・・・アホー・・・」

 

「俺は嬉しかった。琴里が俺を大切だと想ってくれている事を知れて、俺も今まで以上にお前を守りたいって思えるようになったんだ」

 

士道は真剣な表情と声で言う。琴里も掛け布団から顔を出して士道を見つめ・・・。

 

一瞬だけだが、琴里が自分から士道にキスをした。そして驚く士道に琴里は心からの感謝と好意を込めて笑顔で言う。

 

「ありがとう、おにーちゃん!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。令音はモニターを見ていた。それは精霊の士道への好感度を示す物だ。

 

霊力を封印した十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦も琴里と同じく好感度は常にMAXを維持し、下がるどころか時々上昇していた。

 

また、狂三はわからないが栞や折紙、美九も好感度MAXだと令音は考えている。

 

見終えたモニターを消し、呟く。

 

「・・・・・・これからも頼むよ、シン」

 

その言葉には、様々な思いが籠もっていた。




次回予告

琴里一件が片付いて落ち着いた頃、士道は折紙と一緒にお出かけという名のデートを行う事に。

一方、黎斗は士道からガシャットを奪うことを諦めていなかった。

第八話 レベル50のFantasy

「魔王の力、見せてあげる!」


ーーーーーーーーーー


今回で原作四巻の話は終わりですが、ブレイブとスナイプのレベル50の話を書いて五章は終わります。

それと、今回エグゼイドで有名なあのシーンを書きましたが、士道は「それがどうした!」であり気にしていない感じです。

また天使を出せたのは、士道の精神的な成長やあの場での強い決心があったから・・・という感じです。

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