EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第三話 琴里とのDate plan

 

琴里とのデートが決まった後。

 

士道は琴里が無事だった事による安心からか、張り詰めていた気が緩んだのか、パラドとの戦闘での疲労が一気に噴出。

 

令音に言われ、琴里の事は令音に任せて二〜三時間ほど仮眠を取ることになった。士道を心配した女子達も同行、あっという間に大所帯。

 

別の部屋にあるベッドに横になると、あっという間に寝てしまう。仮眠どころか熟睡である。

 

女子達が、誰が士道と添い寝するかでバチバチと火花を散らす中、士道は夢を見た。

 

それは、琴里から聞いた話・・・五年前の、士道が十一歳だった時の風景だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

燃えている。家が、町が燃える。その地獄のような中を幼い士道は、走り続けた。

 

「琴里・・・!」

 

琴里の名を呼びながら、地獄の化した町を走る。

 

この日は琴里の九歳の誕生日だった。そのプレゼントを買いに、士道は駅前まで出かけていたが、戻っている途中でこの火災となったのだ。

 

家に戻ろうとしたら、街が炎に包まれていた。一瞬呆然としたが、すぐに琴里の安否確認のため走り出した。

 

仕事が忙しい両親は、仕事で家を空けている。今、家には琴里一人だけだ。

 

幼い琴里はきっと逃げる事ができず泣いている、苦しんでいる・・・そう考えた瞬間、士道は走り出した。

 

「琴里ーーーーっ!!」

 

琴里の名を叫びながら、家へと走る。

 

だが、走っている途中で浅く広いクレーターを見つけ、そして、その中心に・・・幼い女の子がへたり込み、泣いていた。

 

袖と裾が広がる和装、頭部に角が出ているが髪に括られた白いリボンを見た瞬間、琴里であると察した。

 

「琴里!」

 

手にした鞄を放り、泣いている琴里に方に走る。

 

「おにーちゃん・・・・・・おにーちゃん、おにーちゃんっ!」

 

涙が止まらない顔を両手で拭い、琴里が士道を呼ぶ。

 

しかし、士道が近づいた瞬間・・・琴里の身体にまとわりついた炎が膨み、琴里が目を見開き、肩を震わせ、大声を上げた。

 

「おにーちゃん! 来ちゃだめぇぇぇぇぇっ!!」

 

「え?」

 

瞬間、士道は体積を増した炎の爆発を受け、吹き飛ぶ。

 

背中から地面に落ちた士道の身体は、全身が大火傷を負っていた。

 

全身が激痛に苛まれ、意識が遠くなっていく。

 

這うように琴里がすぐに駆け寄る。今度は炎が発せられる事はなく、琴里が士道に触れても大丈夫だった。

 

士道の瞳には、大粒の涙を流す琴里の顔が映る。

 

これ以上琴里を泣かせてはいけない。心は叫びながらも、体が動いてくれない。

 

どんどん視界が霞み、意識が薄れゆく。しかし、それでも!

 

「大丈夫だ、泣かないで。俺は・・・本当に大丈夫だから・・・!」

 

諦めず、士道は立ち上がる。心を奮い立たせて、琴里の為に力を振り絞る!

 

「おにーちゃん・・・たすけて!」

 

「あぁ、お兄ちゃんが必ず助けるからな!」

 

二人の確かに繋がれた瞬間・・・。

 

 

「ねえ、彼を助けたい?」

 

そんな声が、士道と琴里の上から響いた。更にその言葉を聞いた士道は・・・・・・。

 

 

「助けたい・・・絶対に・・・助ける・・・!」

 

士道がそんな事を呟いた。その呟きが聞こえた琴里が士道の顔を見ると・・・・・・。

 

 

士道の両眼が、赤く染まっていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「琴里っ!」

 

琴里の名を叫びながら、ガバッと起き上がった士道。周りには令音だけがいた。

 

「・・・起きたかい、シン」

「令音さん・・・・・・他の皆は?」

 

「・・・寝ているシンを中心に色々バトルをしていたけど、寝ているシンの邪魔になってはいけないと思って、退室させた」

 

「・・・何やってたんだ皆は」

 

令音は士道の呟きには答えず、代わりに琴里の現状について説明した。

 

琴里はフラクシナス内の隔離エリアにおり、薬も飲んで落ち着いているとの事だ。

 

「・・・シン、琴里とのデートについて話し合いがしたい。ついてきてくれ」

 

「はい」

 

ベッドを出た士道は令音の後に続いて部屋を出た。

 

 

通ったことのないルートを通り、令音が扉のパネルを操作すると、ピピッという音がして扉が自動でスライドした。

 

「・・・さ、入ってくれ」

 

中は広い空間になっており、中央には円卓状の机が設えられ、作戦会議室のような場所には、すでに何人ものクルー達が席に着いていた。

 

 

「ここ、会議室ですか?」

「・・・そんなところだ。空いている席に座ってくれたまえ」

 

令音はユラユラと幽霊の挙動で空いている席に座り、士道は令音の隣に座る。

 

全員の着席を確認した奥の席に腰かけていた男が、コホンと咳払いをしてから立ち上がった。

 

琴里が隔離エリアに収容されている現在、この空中艦フラクシナスの最高責任者は副艦長であり、実戦部隊副司令官でもあるドM・・・失礼、神無月 恭平である。

 

 

「良く集まってくれました、皆様。

 

緊急事態につき、司令に代わってこの私、神無月がこの場を仕切らせていただきます。

 

士道君も、しばらくお付き合い頂けると幸いです」

 

「はい、もちろんです」

 

士道が頷くと、神無月は満足げに首肯して言葉を続ける。

 

 

「では、早速本題に入りましょう。以前から司令の身体について以前から知っていた者、今回の件で初めて知った者・・・色々な方がいるでしょうが、どうか協力をお願いします。

 

議題は、二日後に迫った司令と士道君のデートプラン作成です。各々持ち寄った情報を紹介して共有しあい、心から楽しいと思える一日を演出するのです」

 

 

そう言って神無月が部屋に並んだクルー達を見回し、大きく息を吸う。

 

「・・・シン。少し耳を塞いでおきたまえ」

「え?」

 

不意に令音がそう言って、士道は首を傾げた・・・その瞬間。

 

 

 

「諸君、親愛なるラタトスク機関員諸君!我らが女神の一大事だ。日頃の御恩に報いる時だ!

 

五河 琴里司令が! 我らの助けを必要としている! それに答える気概はあるか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

神無月が叫ぶと、円卓に着いていたクルー達が一斉に大声を上げて、凄まじい豪声が空気をビリビリと震わせる。

 

「愛がでけぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

愛の大きさに思わず叫ぶ士道など気にせず、神無月は続ける。

 

 

 

「司令に誉められたいか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

「司令の心からの笑顔が見たいか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

「司令から靴の踵で足を思いっきり踏まれたいか!?」

 

「「「「「お・・・う?」」」」」

 

自分の願望が思わず出てしまい、神無月はコホンと咳払いをして改めて叫ぶ。

 

 

「我々の忠誠と愛を込めて叫べ!!」

 

「「「「「琴里様チョーイイネ!サイコー!!」」」」」

 

クルー達の熱狂が、ブリーフィングルームに響く。

 

「よろしい! ではこれより会議を開始する! 司令の希望や願望、それらすべてを成就させ、我らが司令をデレさせん!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

 

「なぁにこれぇ」

「・・・まあ、皆は琴里が大好きなのさ」

 

「はぁ・・・義兄としては嬉しいような恥ずかしいような・・・複雑な気持ちです、ハイ」

 

複雑な士道を置いて、会議は進行していく。だが、各々の願望を勝手に言ってるだけで、なかなか良案が出なかった。

 

「く・・・一体どうすれば・・・」

 

神無月が苦しげにうなり、見かねた令音が小さく息を吐いた。

 

「・・・まあ、そこまで難しく考える必要もないと思うけれどね」

「と、言いますと?」

 

「・・・そうだな。シン、琴里が行きたいと言っていた場所などはないかい?」

 

「行きたがってる場所ですか?・・・・・・あ、そうだ。CMでやってるのを見て栄部のオーシャンパークに連れてって、とか言われました」

 

「・・・ん、そうか。ならそこにしようかな?」

 

士道が言うと、令音が軽い調子で頷いた。

 

「い、いいんですか? 琴里が言ったっといっても、妹モードの時ですよ?」

 

「・・・構わないさ。四糸乃のように別人格になっていると言う訳じゃないからね。感情を発露している状態であるし、好都合なのではないかな」

 

「なるほど・・・」

 

「オーシャンパークですか・・・・・・ん?オーシャンパークという事は、司令の可愛い水着姿が見られるのですね!?」

 

「「「「「・・・っ!」」」」」 

 

神無月の言葉に、士道と令音以外のクルー達が息を詰まらせる音が聞こえる。

 

以前士道達が温泉に行った時は、誰も琴里の水着姿を見れなかったのだ。

 

そして、オーシャンパークの案がすんなりと決まったのであった。

 

それと、オーシャンパークへは士道と琴里以外にもサポートも含めて十香達精霊組や栞と折紙も加える事になった。

 

ラタトスクも琴里の為にとサポートを万全にするが、琴里はフラクシナスの面々を知り尽くしているという事もある。

 

だが、それでも成功させないといけない。

 

すると、折紙から連絡が入る。黎斗の襲撃を受け、ガシャットを奪われてしまった、と。

 

士道は令音達に説明をして、すぐに折紙の元へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道のいる部屋から出た折紙は外を歩いていたが、ゲンム・ゾンビゲーマーに変身した黎斗の襲撃を受ける。

 

同じくブレイブに変身した折紙を返り討ちにして、タドルクエストガシャットとドレミファビートガシャットを奪っていた。

 

倒れる折紙が手を伸ばすも届かず、目の前で奪われてしまったのだ。

 

更に、琴里との戦闘でまだダメージが残っている筈のパラドも動き、CRから帰る途中の狂三を襲撃。

 

パラドクスに変身し、圧倒的なレベル差とエナジーアイテムのコンボによって倒してしまい、バンバンシューティングガシャットとジェットコンバットガシャットを奪ってしまった。

 

 

知らせを聞いて駆けつけた士道は、まずは折紙の元へ。体は問題ないが、ガシャットを奪われた事実は変わらない。

 

ダメージはあるが、歩く事は問題なく出来るという事で、二人で一緒に狂三の元へ。

 

狂三は襲われた現場から動かず待機していた。士道と折紙と合流し、パラドに襲われガシャットを奪われた事を報告。

 

三人で話していると、突如黎斗が襲撃。透明化のエナジーアイテムで身を隠していたのだ。士道の所有するガシャットを奪う為に。

 

不意打ちで襲撃を仕掛け、ガシャコンマグナムで射撃。

 

その攻撃を受けて、士道はドラゴナイトハンターZガシャットを落としてしまい、黎斗によって回収されてしまう。

 

黎斗は「残りはいずれ」と言い残して撤退。まんまとやられてしまった三人・・・特に折紙と狂三は悔しさで拳を強く握った。

 

琴里を救う為のデートを前に、大変な事が起こってしまった。仮面ライダーは、これで士道と栞の二人だけである。

 

今は琴里を優先するが、琴里の件が片付いたらすぐにガシャット奪還を決意したのであった。

 

 

その後、報告を受けた栞も合流。栞は襲撃を受けなかった為、ガシャットは奪われずに済んだ。

 

この事があった後、令音から呼び出しを受けた士道と栞はある物を受け取った。

 

それは、以前から開発していた新型ガシャット。

ラタトスクと幻夢コーポレーションの共同開発ガシャット第一号となったものだ。

 

令音は黎斗によるガシャット強奪の報告を受けて、少しでも戦力の低下を防ぐため、今渡したという。

 

新型ガシャットは、マイティブラザーズXXと同じ形で、色は爆走バイクガシャットと同じ色をしている。

 

絵もタイトルも違うものになっていて、爆走バイクの発展型と言えるだろう。

 

もしかしたら、琴里とのデートの時も何かあるかもしれない。そう考えた士道は、心の中で気を引き締めた。

 




次回予告

会議の翌日、士道と精霊組はガシャットを奪われた悔しさを感じる折紙と狂三を連れて、新しい水着選びの買い物に出かける。

そして折紙と狂三からガシャットを奪った黎斗は、それを使ってある物を作り出す。


第四話 水着Selectと新たな力

「シドー、これはどうだ?」

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