EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

45 / 54
第二話 五年前のTruth

空中艦フラクシナスの医務室で、士道は気を失いベッドで横になったままの琴里に付き添っていた。

 

パラドとの戦いで負った傷は、琴里の炎の力が無くなる前に完治したので問題ないが、琴里が精霊だった事は士道に大きなショックを与えていた。

 

自分の家族が・・・幼い頃から一緒に過ごした少女が、世界の災厄と呼ばれてしまっている精霊であった事に。

 

ちなみに今、医務室には十香、四糸乃、八舞姉妹、折紙、栞がいる。狂三はいつの間にか姿を消していたが。

 

更に、ラタトスクに転職したという真那だが、検査などが色々あるためすぐに入るわけではなく、もう少し出向中のASTのままになるらしい。

 

表向きには、来禅高校での事件に巻き込まれて重症を負った・・・という事にするらしい。

 

栞と折紙が琴里の額の汗を拭いたりなどの看病を行い、士道は琴里の手を握っている。

 

士道としては、手を繋いでいないと心配になってしまうからだ。

 

「シドー・・・琴里は大丈夫か?」

「大丈夫・・・だと思う。気を失ってるだけみたいだから」

 

「琴里さんが、精霊・・・」

『しかも炎だって。四糸乃とは正反対だねぇ』

 

「うーむ、琴里のあの力は凄まじいものであったな」

「首肯。破壊力で見ると、上位に入ると思います」

 

皆が琴里について語っていると、琴里がゆっくりとだが意識を取り戻し目を開けた。

 

「んぅ~・・・・・・あれ、おにーちゃん・・・?」

「琴里!大丈夫か!?俺がわかるか!?」

 

「うん・・・・・・そうだ、おにーちゃんが危なくなって、それで私は・・・・・・」

 

今の琴里はリボンを付けていないが、妹モードで話している。

 

琴里は栞に頼んで置いてあった黒いリボンを取ってもらい、付ける。

 

 

それから無言の時間が続いたが、琴里が水を一口飲んでから、自分の事を話し始めた。

 

「皆、聞いてほしいの。私は、五河家に生まれた人間。それは間違いない」

 

俯き、掛け布団を握る手を見ながら・・・。

 

「五年前のあの日に・・・私は変わったの」

 

 

琴里は少しだけだが覚えていた、五年前の事を。

 

「私は、精霊になった。正確に言えば、精霊の力を持った人間って言った方が正しいかもしれない」

 

「精霊の力を持った、人間・・・?」

 

琴里は自分が覚えている範囲の事を語る。

 

 

五年前、天宮市で大規模火災事件が起こった。それは、精霊になった直後の琴里が力をコントロール出来なかった故に起こった事だった。

 

そして、士道が既に存在していたキスによって霊力を封印できる力によって琴里の力は封印され、士道に炎による回復能力が備わった。

 

琴里は自分が精霊になった時の事は、殆ど覚えていない。

 

精霊の力もシミュレーションで訓練をしていたが、実際に使ってのはパラドとの戦闘が初めてだった。

 

そして、ここまで聞いた士道は自分も五年前の事は覚えていないと言う。琴里は、士道と琴里の記憶を、誰かが消したと推察した。

 

その後で、琴里はラタトスクに見出だされ、精霊が自分のように辛い思いをしているなら救いたい・・・と思いラタトスクに入った。

 

そして士道が精霊の説得役に選ばれたのも、精霊の力を封印する力があるのが分かった。

 

さらに士道の回復能力も、元々は琴里の灼爛殲鬼の能力である。

 

更に灼爛殲鬼の力は、琴里でも制御できないほどに強力な破壊衝動をもたらす。

 

今は落ち着いているが、いつ出てもおかしくない。

 

衝動を抑える薬は開発されており、いつでも飲めるように準備されている。

 

 

士道から戻した琴里の霊力は、いつ暴走するか分からない。

 

それを阻止するために、琴里の霊力の再封印。つまり・・・・・・十香達と同じようにキスをして霊力を封印する必要がある。

 

士道は慌てた様子ですぐにでもキスをしようとするが、琴里が抑えて止める。

 

何故、と聞く士道に琴里は・・・。

 

 

 

「わ・・・・・・私だって女の子よ。キスするなら今じゃなくてもっといい雰囲気の時というか、ちゃんとお互いの気持ちを・・・・・・。

 

私の状況を考えたら、すぐにでも封印すべきなのかもしれない。でも・・・・・・とにかく、今はダメ!」

 

顔を真っ赤にしながら、士道を注意するように・・・それでいて”何か”を期待しているように士道をチラチラ見ている。

 

女子達はすぐに察し、全員で士道を見る。士道も少しして理由が思い至り、少しのため息を吐く。

 

 

本当は、琴里の言う通り琴里の霊力をすぐに封印したほうが良いのかもしれない・・・否、琴里の心身の安全を考えるならそうするのがベストだ。

 

琴里自身もそれを重々承知している。承知の上で”わがまま”を言っているのだ。

 

 

私とデートして、デレさせて・・・と。

 

 

「琴里・・・自分の状況を分かってて言ってるのか?」

「えぇ。全て、承知の上で」

 

「・・・・・・あぁもう、分かった!ただし、危ないと思ったらすぐに、無理矢理にでも霊力を封印するからな!」

 

「・・・・・・うん、ありがとう。おにーちゃん」

 

琴里は素直に礼を言う。士道も自分は甘いと自覚しつつも、義妹のわがままを叶えたくなってしまったのだ。

 

女子達も琴里をからかいながらも、自分達もサポートする事を約束。

 

すると、令音が入ってきた。士道が琴里への対応について先程決めた事を説明。

 

「・・・・・・琴里の状況は分かっているね?」

 

「はい。でも、俺は琴里のわがままを叶えてあげたいです。琴里には俺とのデートを楽しんでほしいですから」

 

琴里は士道の言葉に顔を更に赤くし、だが喜びが上回りそれを隠すように掛け布団の中に顔を埋める。

 

「・・・・・・分かった、私達も全力でサポートする。それと・・・」

 

令音が言うには、薬で霊力の症状を抑えても状態が安定するのを待つと、二日後が最も安定する日であるという。

 

「・・・少し厳しい言い方だが、二日後を逃したらもうチャンスは無いと思ってほしい」

 

「逃しませんよ、絶対に」

 

言い切る士道。短くも力強い決意の籠もった言葉に、令音も頷く。

 

 

士道と琴里のデートが決まった・・・決行は二日後。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。狂三は誰もいないCRの中にいて、一人でパソコンを操作していた。

 

士道の血を拭いたハンカチを、専用のスコープで分析しながら。

 

そして操作を・・・否、解析を終えた狂三は画面に表示された結果を見て、驚きながらも納得していた。

 

「・・・ようやくわかりましたわ。何故二人に分裂出来たのかも。士道さん、あなたは・・・・・・」

 

 

 

 

バグスターウィルス反応・・・()()

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 




次回予告

士道とフラクシナスクルーで、琴里とのデートプランについて会議をする。一方、黎斗側でも新たな動きがあった。


第三話 琴里とのDate plan


「我々の忠誠と愛を込めて叫べ!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。