EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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お待たせいたしました。久しぶりの更新ですが、少し短めになっております。


第五章 五河シスター
第一話 第五精霊・Efreet


「さぁ・・・・・・私達の戦争(デート)を始めましょう」

 

身体の周囲に炎を纏わせ、空に立っている。

 

天女の羽衣のような、燃える和装・・・霊装の神威霊装・五番(エロヒム・ギボール)を着ていて、側頭部から伸びた二本の角を携えた少女。

 

その力。その姿。精霊としか思えない姿をした少女の名を、士道は一人しか知らない。

 

 

「琴里・・・・・・!?」

 

その少女は五河 琴里。ラタトスクの司令官であり士道の義妹だった。

 

パラドもその姿を認識し、仮面越しに目を輝かせる。

 

 

「新しい精霊、炎の・・・ハハハハハハ!心が踊るな!」

 

「黙りなさい、あなたは少しやりすぎたわ。跪きなさい、お仕置きタイムよ」

 

しかし琴里は鬱陶しげに鼻を鳴らし、担いでいた戦斧をゆっくりと持ち上げた。

 

 

灼爛殲鬼(カマエル)!」

 

琴里は静かに言葉を発し、炎の戦斧を凄まじい勢いで前方に振り抜いた。

 

琴里が灼爛殲鬼を振り抜いた瞬間、その先端の炎の刃が揺らめく。

 

パラドは十香達の攻撃のように受け止めようとするが、迫ってきた瞬間に危険を察知したのですぐに回避した。

 

その判断は正解だった。灼爛殲鬼の一撃は大きく、今のを避けていなかったら仮面ライダーに変身していても大ダメージは避けられない。

 

琴里はパラドに注意しながら、士道に言う。

 

「士道、すぐにこの場から逃げなさい!今のあなたは、簡単に死んじゃうんだから!」

 

琴里に言われて気付いた。あの炎が発生していない。

 

ギリギリ左手は治し終えたようで問題ないが、あの炎の力が無くなっている事をハッキリと自覚した。

 

 

「まさか、この炎の精霊って・・・・・・お前だったのか!?」

「いいから早く!」

 

琴里は強めに避難を促しながら、パラドに灼爛殲鬼で攻撃を仕掛ける。

 

だが、パラドは琴里の懐に素早く入り込み、灼爛殲鬼を振るうのに最適な距離を保つのを妨害。

 

パラドがノックアウトゲーマーで戦うのに最適な距離を保ちつつ、琴里に連続でパンチを叩き込む!

 

体に連続パンチを受けた琴里は、大きなダメージを受けて倒れる。

 

霊装を纏っていても仮面ライダーの・・・接近戦に特化し高いレベルと攻撃力を持つパラドクスの攻撃をモロに受けて、流石に無傷という訳にはいかなかった。

 

だが、琴里の全身から炎が噴き出して全身に広がっていき、琴里は身を起こす。

 

炎が収まると、一切のダメージが無くなっていた。琴里が灼爛殲鬼を構え直し・・・。

 

 

「もっと早くこうするべきだったの・・・?」

 

すると、琴里は呟き始める。だが、目からは少しずつ光が失われており、呟きも独り言のように、無意識に言い続ける。

 

 

「隠し事なんてしないで、もっと早く精霊の力を取り戻していれば、士道の力になれたの?

 

おにーちゃんがあんなに傷つかないで、苦しまないで済んだかもしれないの?

 

でもそうしていたらおにーちゃんはきずがなおらなくてもっとたいへんなことになって・・・?

 

おにーちゃんがいなくなっちゃう、いやだいやだいやだいやいやいやいや」

 

琴里がどんどん狂っていく。精霊の力に飲み込まれそうになる・・・・・・・・・その刹那、琴里の視界にパラドが映り、先程の戦いで倒れた士道の姿が浮かび・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オマエノセイデ、オニーチャンガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

人間から出たとは思えない、怒りの叫び。それは、爆発してしまった爆弾のように、噴火してしまった火山のように。

 

だがそれは・・・それだけ士道の事を大切に想っているからこそ。彼の事が大切で、大好きで、愛しているからに他ならない。

 

だからこそ、己の快楽のために彼を傷付け、苦しめた者には・・・。

 

 

「灼爛殲鬼ッッ!!!」

 

報いを与える。

 

(メギド)ッッ!!!」

 

琴里の叫びに呼応し、棍のみとなる灼爛殲鬼。更に変形し、柄の部分が本体に収納され、琴里が掲げた右手に装着。

 

肘から先を長大な棍に覆われた砲台を構えた琴里は、パラドに狙いを定めた。灼爛殲鬼を展開させて赤い光を放ち、琴里の周囲の炎を吸収。

 

「流石にやばい!」

《パーフェクトパズル!》

 

危機感を抱いたパラドはパズルゲーマーに戻り、エナジーアイテムを五枚、自分に素早く引き寄せる。

 

《回復!》《回復!》

《鋼鉄化!》《鋼鉄化!》《鋼鉄化!》

 

ライダーゲージを癒やす”回復”を二枚と、対象を一時的に鋼鉄化する”鋼鉄化”を三枚入手。腕をクロスさせて身を固める。

 

ライダーゲージを最大まで回復させ、鋼鉄化も三枚積み重ね。それ程の事をしなければならない・・・パラドにそう思わせる程の危機感を抱かせた。

 

士道達も直感で威力の高さを悟り、顔を腕で覆って踏ん張りの体制を取る。

 

次の瞬間、熱の大光線が放たれた。言葉では言い表せない圧倒的な熱量が、パラドに直撃して吹っ飛ばされた。

 

屋上を削り取ってしまうほどに強力な攻撃だった。

 

その衝撃が士道達にも襲いかかる事に・・・ならなかった。

 

「兄様!」

 

その声と同時に、声の主・・・崇宮 真那がCRユニットを纏って現れ随意領域(テリトリー)を全開にして皆を守ったのだ。

 

撃ち終えた琴里は後ろを向き、士道達が無事なのを確認すると安心したのか、膝をついて倒れてしまう。

 

士道達は慌てて駆け寄って確認すると、気を失っているようだった。

 

すぐにフラクシナスから隊員がやってきて、皆がフラクシナスの医務室へ行く事になった。

 

「士道さん・・・大丈夫ですの?」

「あぁ・・・でも、まさか琴里が・・・それに、お前・・・真那だよな」

 

「あ~、はい。兄様の妹、真那でいやがりますよ。実は私、海外の対精霊部隊に所属しているんです」

 

「そ、そうなのか!?」

「でも、ラタトスクに転職する事になりました!よろしくお願いいたします!」

 

笑顔で敬礼する真那。狂三は、突然の話に困惑する士道の顔に残っていた血をハンカチでそっと拭き取る。

 

士道も今回の事についての驚きで、まだ心の整理が出来ていないのか呆然としていた。

 

 

こうして、パラドが引き起こした来禅高校襲撃は終わったのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

パラドは灼爛殲鬼の”砲”を受けても生きていた。回復でライダーゲージを満タンにして、鋼鉄化三つで防御を固めていたおかげで保ったのだ。

 

だが、それでもしばらく起きれない程のダメージを受けていた。琴里の灼爛殲鬼による攻撃は、今確認されている精霊の中でもトップクラスの攻撃力だ。

 

それを受けて消えずにいるだけ上等である。パラドは吹っ飛ばされた先の地面に変身が解けた状態で仰向けに倒れていたが・・・。

 

 

「ハハハ・・・・・・ハハハハハハ!!あ~・・・・・・面白かった」

 

 

笑っていた。




次回予告

精霊の力を取り戻した琴里から事情を聞く士道。その口から語られるのは、五年前の出来事であった。

第二話 五年前のTruth

「五年前のあの日に・・・私は変わったの」


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