EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~ 作:エルミン
士道の前に現れた少女。名前は崇宮 真那。
士道の実妹と名乗った少女は、士道達の後に続いて五河家へと到着した。少女は五河家を見上げ、声を漏らす。
「おおっ!ここが兄様がお世話になっておられるお家ですか!お邪魔しやがります!」
よくわからない敬語を使う真那に苦笑しつつ家の廊下を進み、士道たちはリビングへと到着する。
「おかえりなさい、お・に・い・ちゃ・ん!」
やたらと『おにいちゃん』と言う部分を強調して士道の帰りを待っていた黒リボンの琴里がリビングに仁王立ちで立っていた(帰って来たタイミングに合わせて立った)。
真那は琴里の側まで歩いて行き、手を差し出す。差し出された手を琴里も取り、お互いに握手をする。
「おおっ!お家の方でいやがりましたか!うちの兄様がお世話になっています!」
真那はフレンドリーに琴里に接していた。琴里も特に変わった様子もなく普通に真那と接していた。
リビングのソファーからは十香達が士道たちの様子を興味深そうに見守っている。
(崇宮 真那・・・その名前、どこかで聞いたことがあるような・・・)
折紙は真那の名前に聞き覚えがあるような気がしたが、中々思い出せずにいた。
「なぁ・・・真那。いくつか質問があるんだけど良いか?」
今度は士道が真那に訊る。真那は麦茶を飲んでいたコップから口を離して笑顔で快諾する。
「はい!何でしょうか兄様?」
「・・・・・・実は俺、ここに来る前までの記憶が無いからだから母親のことも真那のことも記憶には無いんだ。何か知らないか?」
士道の問いを聞いて真那は表情を陰らせ、下を向く。真那は申し訳なさそうに口を開く。
「その事でいやがりますか・・・実のところ私もその頃の記憶はねえのです・・・。
ここ三年くらいの記憶は存在しやがるのですが、兄様と同じくその時の記憶は私にも・・・」
今まで黙り込んでいた琴里が真那の言葉を聞いて、確認する。
「ねぇ、士道に見せたペンダント・・・私も見ていいかしら?」
「はい、どうぞです!」
真那からペンダントを受け取り、中の写真を見る。
「確かに士道みたいだけど・・・他人の空似じゃないの?士道がこれぐらいの時にはすでに五河家に養子に来ていたわ」
「いえいえ、私にはわかります!ただ顔が似ているだけではありません!兄様センサーにビビッと来ましたから!」
「何だそのセンサー!?」
「精度百万パーセントですよ♪」
「九十九万九千九百パーセントオーバー!?」
「・・・・・・~~~っ!ええい、イチャイチャするなーーー!!」
琴里は自分以外の、精霊ではない女の子・・・しかも妹を名乗る女の子とイチャイチャ(琴里視点)していることヤキモチを止められない。
精霊相手ならヤキモチはあれど仕方ないと、ある程度割りきれる。
だが、精霊ではない普通の女の子が士道と仲良くする事には耐えられない。
ただでさえ、栞や折紙がいるのに実妹まで加わったら・・・!
更に、妹という大切な立場を脅かされるという恐怖心もあってか、ついついキツくなってしまう。
「士道はうちの大切な家族!五河家の一員で私のおにーちゃんなの!!士道を連れて行こうっていうなら、そんなことは許さないわ!!」
「ま、待ってください!それは誤解でいやがりますよ!連れていくつもりは全くねえです!」
「え?」
真那が返した言葉に、琴里は呆気にとられていた。
「兄様がこの家での生活を語られている時の表情はとても幸せそうでした。それを壊そうだなんてそんなことは真那にはできねえです。
ここに来るまでの道中で聞きましたけど、兄様はあなたのことをとても大切にしておられ、自慢の可愛い妹だとも仰ってやがりましたよ?」
「わ、分かってるじゃない・・・・・・」
士道がこの家での生活が幸せと思っていると真那から伝えられたことにちょっと嬉しく思っていた・・・・・・が。
「でもまあ、妹レベルとしては実妹である真那には負けていやがりますけどね!」
緊張感、百万パーセント。
真那が発した言葉に琴里が反応した。視線を槍のごとく鋭くし、なめていたチュッパチャプスを噛み潰したのだ。
「へぇ、面白いことを言うじゃない・・・?私から言わせてもらえば、血縁者が離れ離れ時点で紙切れのような脆くて弱い関係にしか見えないけど?
私は士道の妹を十年以上もやっているわ、妹レベルは私の方が断然上だと思うけど?」
琴里の言葉に、真那のこねかみがピクリと動き、何かオーラのようなものが可視化するほど具現化する。
「ハッ、片腹痛えです!それは机上の空論でやがります!義妹は所詮他人です。
その点、実妹は血を分けていますからね!これだけで妹レベルは雲泥の差があります!たかだか十年程度なんざアドバンテージにすらならねえです!」
「血縁血縁って血縁がそんなに大事なの!?他にも・・・!」
「笑止千万でやがります!だいたい義妹は・・・!」
二人の言い争いはヒートアップし、士道を含む他の皆は身の危険を感じてか、ソファーから離れて部屋の隅で様子を伺っていた。
「ハッ!言ってなさいよこのおたんこなす!実妹じゃ結婚だってできないじゃない!!」
「え!?」
「「「え!?」」」
「・・・・・・ハッ!?」
琴里の放った言葉に一同の視線が琴里へと集中する。
琴里は自分が何を言ったか分かると顔を真っ赤に染め、机を強く叩きつける。
「と、とにかく!今は私が士道の妹よっ!分かった!?」
「うるせーです!実妹最強伝説を知らねえでやがりますか!!」
琴里と真那は、士道に訪ねる。
「士道!あなたは!」
「義妹と実妹、どっち派でいやがるのですか!?」
予想外なことを聞かれた士道は、軽く息を吐いて言う。
「俺は、義妹実妹・・・そういう理由で家族に優劣なんて付けたくない。だから優柔不断って思うかも知れないが、ここでは両方って言わせてもらう」
「・・・わかりました、兄様が言うなら従うです」
「・・・しょうがないわね」
「そういや真那、お前今は何処でお世話になってるんだ?」
士道が言うと、真那は少し言いづらそうにしながらも答える。
「えーっと、その・・・私を拾ってくれた人がイギリスで会社の社長をしていまして。その会社の寮で暮らしながら働いていて・・・」
「俺より年下なのにもう働くとは・・・・・・ブラック企業じゃないよな?」
「だ、大丈夫ですよ!少しの事務と雑用の簡単な仕事ですから!」
真那はコップの麦茶を全て飲みきってから、帰ろうとする。
「とにかくお邪魔しました!兄様、時間が出来たらまたお尋ねしやがりますね!!」
真那は一礼して五河家を出た。今日は転校した狂三を案内し、実妹の真那と出会い・・・中々に濃い一日だったと感じたのであった。
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同時刻。幻夢コーポレーションに神無月 恭平と村雨 令音は訪れていた。ここでとある人物に出会うためである。
応接室で待つ二人の所に、ようやく姿を現した。
「す、すみません!遅くなってしまいました!」
「大丈夫ですよ、わざわざ時間を作ってくださって、ありがとうございます」
「・・・ありがとうございます」
二人は立ち上がり、頭を下げる。訪れた人物も頭を下げて椅子に座る。
「えっと・・・衛生省の方から話は伺っています」
「はい、その件で参りました・・・
小星 作。幻夢コーポレーションの開発部に勤務する男性だ。恭平と令音は作に用があって来たのだ。
社長である檀 黎斗の失踪後、会社の立て直しの為に開発中止になっていたゲームの開発を着手して、無事に完成にこぎつけたのだ。
「あなたは、檀 黎斗が残したデータを元に新しい仮面ライダー用ガシャットを"二本"開発したと伺いました。
そのガシャットを開発出来る技術を持つあなたに、
「確かに、僕は五年前からガシャット開発に携わっていますし、自分でガシャットを開発したこともあります・・・」
「・・・我々はガシャットについてのノウハウは全くありません」
「そこで、ガシャットを我々と共同開発としたいのです」
令音と恭平の説明に、作は少し悩んだ末に・・・。
「わ・・・わかりました。僕なんかで良ければ、力になります」
「おぉ、ありがとうございます!では、詳しい話を」
その後、連携の取り方やどういうガシャット作るか。また、作業後の報酬について・・・など様々な話し合いが続く。
そして、話し合いが終わろうとした所で、作が二人に言う。
「あの・・・」
「・・・どうしました?」
「実は・・・少し前に僕が作った二本の仮面ライダー用のガシャット・・・その内の一本が何者かに盗まれてしまって・・・」
「え、そうなのですか?」
「・・・それは初耳ですね」
驚く二人に、作は話を続ける。
「二本共、僕が初めて自力で完成させたガシャットですから、思い入れがありまして・・・。
もし良ければ、奪還にご協力いただきたいのですが・・・もちろん、僕も協力します。出来たらで構いませんから・・・」
「・・・大丈夫ですよ、喜んで協力いたします」
「あ・・・ありがとうございます!」
令音は了承して、恭平も頷く。作も頭を下げてお礼を言う。
そして、ガシャットについて話す。
「僕が作ったガシャットは、"ナイトオブサファリ"と"ジュージューバーガー"の二本です。
盗まれたのは、ナイトオブサファリの方です。どうか、よろしくお願いいたします!」
再び頭を下げる作。恭平と令音は、二人で一緒に答える。
「お任せください」と・・・・・・。
次回予告
真那との出会いから少し後。士道は狂三とデートの約束を取り付ける。だが新たなゲーム病患者がCRに運ばれた。
第四話 進軍のRevol!
「もっともっと、撃たれなさい!」