EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第二話 校舎案内、後にReal sister!?

士道は屋上での会話の後に、一人で琴里に連絡し狂三が精霊としての正体を現した時、フラクシナスでも霊力の反応をキャッチした事を聞いた。

 

『間違い無いわ。フラクシナスの観測データから見ても完全に精霊の数値を叩き出している。

 

狂三は正真正銘の精霊よ。ASTがちょっかいを出して来る前にケリを付けましょう」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

『それにしても、ナイトメア・・・ね』

「・・・狂三の識別名だよな、それがどうした?」

 

『・・・・・・空間震とは別に、昔からその手で多くの人間を手にかけた。故に”最悪の精霊”とも言われているわ、それがナイトメア』

 

「手にかけたって・・・・・・・・・まさか!?」

『そのまさかよ』

 

琴里の言う「手にかけた」の意味がわかり、驚愕と動揺を隠せないまま弁明するように言う。

 

「ま、待ってくれよ!狂三は仮面ライダーとしてバグスターと戦って、多くのゲーム病患者の命を救ってきたんだぞ!」

 

『落ち着いて士道。その事は私達も理解しているし、否定しないわ。

 

実は、ナイトメア・・・時崎 狂三については、こちらの調査によると・・・大体四、五年前くらい前から誰の命も奪わなくなったみたいなの』

 

「そ、そうなのか・・・?」

 

『えぇ。時崎 狂三が関わったと思われる幾つかの事件で、四年から五年くらい前以降は亡くなった人は一人もいないそうよ。衰弱や気絶はあるけど。

 

でも、それより前には時崎 狂三の手にかかり実際に亡くなった人がいるそうよ。

 

四、五年前から心境の変化があって、命を奪う側から守る側になった・・・・・・と思うわ』

 

「奪う側から、守る側に・・・・・・」

 

『士道。時崎 狂三を信じるなとは言わないわ、私達も否定しない。

でも念のため、一割くらいは警戒心を持っておいて。彼女については、わからない事の方が多いのだから』

 

「・・・・・・あぁ」

 

 

士道はそれだけを伝えると、琴里との通話を終えた。

 

その通話を終えた時、士道は心に溜まった色々な物を吐き出すように、少し大きく長いため息を吐いたのだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

放課後。ついに授業が全て終了し、士道たちはホームルームの時間を迎えていた。岡峰 珠恵が教室内に入室し、教卓に上がる。

 

「最近、この天宮市では衛生省から発表があったバグスターウィルスによるゲーム病が流行っています。

 

必ず家に帰ったら手洗い、うがいをする事!これを守るようにして下さいね!約束ですよ、約束!」

 

珠恵は伝言を伝えると教室から出て行き、ホームルームも終了、下校時間へとなった。

 

(バグスターウィルスは、手洗いとうがいだけでどうにかなるものじゃないけどな・・・)

 

士道は内心で苦笑しながら、こちらに足を進める狂三と合流。

 

「狂三、行こうか」

「ええ、よろしくお願いしますわ」

 

士道の隣に並んだ狂三が歩き始める。

 

『フラクシナス』のクルーたちも既に攻略体制に入っており、琴里も令音も館内に戻り、各々が全霊を尽くしていた。

 

 

そんな中、教室の扉を開けて体勢を低くし士道と狂三の動向を伺う十香がいた。

 

更に、耶倶矢と夕弦、折紙と栞も一緒だ。

 

士道と狂三はお互い楽しそうに談笑しながら歩いている。しかも、狂三が士道の腕に抱きつき、顔を赤くして慌てる士道を見て微笑んでいる。

 

 

「むうっ・・・・・・むむむ~!狂三がシドーを一人占めとは・・・・・・ずるいではないか・・・」

 

「士道め・・・我ら八舞という至高の乙女がいるというのに・・・狂三にデレデレしてぇぇぇ・・・・・・!」

 

「嫉妬、夕弦達のくっつきアピールが足りないようですね」

 

「狂三さん、私達の士道への気持ちをわかっててあんなにくっついてるっぽいなぁ・・・・・・むぅ」

 

「皆、一旦落ち着こう。まず、尾行する時は気配を極力消して、つかず離れずの距離を維持するの。

 

証拠の確保がしたいならシャッター音がしないカメラを用意して写真を撮る。

 

あるいは会話の録音がしたいなら指向性マイク・・・無理なら読唇術を身につけた方がいいよ。

 

抜き足差し足忍び足を意識せずとも自然に出来るようにして、それからー」

 

折紙が行う尾行講座に、折紙以外の面々はポカンとしてしまう。

 

「・・・・・・ハッ!し、静まれショートカットヘアーのもう一人の私・・・!私はストーカーじゃない士道君が心配なだけだからヤキモチ妬いてるのは否定できないけど・・・・・・!」

 

「だ、大丈夫か折紙!しっかりするのだ!」

「大丈夫・・・大丈夫・・・・・・ありがとう十香さん」

 

十香の声で正気に戻った折紙はもう一人の自分に打ち勝ち、気配を殺して慎重に足を進めた。他の皆も折紙の後に続く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

天宮市の上空一万五千メートルには、空飛ぶ巨大な艦隊"フラクシナス"がある。

 

現在クルーたちは総力を尽くして士道をサポートしていた。

 

「好感度は現在、五五.五。モシモシファ○ズ状態から変化していません」

 

「精神状態オールグリーン、安定しています・・・・・・ところで、モシモシファ○ズって何ですか?」

 

 

解析用顕現装置(リアライザ)が弾き出した数値を見る限りでは、現時点では普通ということを表している。

 

モニターに琴里と神無月が集中していた時、ついに動きがあった。

 

『士道さん、どこから案内して下さるのですか?』 

『そうだな・・・まずは』

 

士道の後をつける狂三が士道に訊ねる。その時、AIが三つの選択肢を叩き出す。

 

①屋上

②保健室

③食堂•購買

 

「各自選択、五秒以内」

 

クルーたちは現れた選択肢の中からそれぞれの番号を選ぶ。

 

屋上で三票、保健室二票、もっとも少ないのが、食堂•購買の一票だった。

 

「予想通り、屋上が人気ね。③に入れたのは誰?」

 

「・・・私だ」

 

食堂•購買に票を入れたのは、令音だった。琴里は令音を見てその真意を訊ねる。

 

「理由を聞いても良いかしら?」

 

「・・・夕方まで待って、夕日が差してからの方がいい雰囲気になり、目標達成までの近道へとなる・・・そう思ったんだ。

 

それにいきなり保健室だと、シンがいかがわしい事を考えていると誤解されてしまう可能性がある」

 

 

令音の意見を聞いた琴里は、納得をして首を縦に降り、士道へ指示する。

 

「さすが令音。士道、聞こえる?」

 

琴里からの指示を聞き、士道が狂三を見て伝える。

 

 

『まずは食堂と購買を見ておこうぜ。ここには、これから世話になることがあると思うからさ』

 

『分かりましたわ』

 

士道の言葉に狂三は笑顔で了承し、士道の後を追った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

まだ完全下校の時間までは猶予がある時間帯。

士道と狂三は誰もいなくなった食堂と購買を訪れていた。

 

「ここでの人気は焼きそばパン。カレーパンとか、コロッケパンとかも美味いけど、焼きそばパンは安いから人気がある。

 

次に食堂のメニューについてなんだが、ここでの人気は唐揚げ定食だな」

 

「そうなんですの・・・・・・あら?」

狂三は、棚に二本だけ残っている缶ジュースを発見。

 

その缶に表記されているジュースの名前を見て、"懐かしさ"を感じ微笑むと、その二本を手にとって買う。

 

「くださいな」

「はい、260円ね」

 

「狂三?」

「案内をしてくださるお礼ですわ。さぁ士道さん、リンゴジュースをどうぞ」

 

「あぁ、ありが・・・・・・狂三、これは何だ?」

 

「え?美味しいですわよ」

 

「・・・"ニューステージな白銀リンゴ味"って何だ?白銀リンゴなんて知らないが」

 

「飲まず嫌いはもったいないですわよ」

 

「・・・狂三のは、"禁断の果実な赤リンゴ味"って、神話に出てくるやつか?」

 

「気にせず飲んでみてください・・・ごくごく・・・美味しいですわ」

 

「・・・ごくごく・・・・・・美味いな」

 

「ちなみに、滅多に店に並ばないレアの"金メッキな黄金リンゴ味"、"ダークネスな黒リンゴ味"もありますわ」

 

「金メッキな時点でパチモンじゃねぇか。後、黒リンゴってどう考えても、熟しきって腐ったリンゴだろ」

 

「ふふ・・・・・・このジュース、昔は薫さんと一緒に飲んでいましたわ」

 

「風鳴 薫さんと・・・?」

「えぇ。薫さんが買ってくれて初めて飲んだのですが・・・・・・それ以来、一緒に飲むことが増えましたの」

 

狂三は、笑顔で話続ける。

 

「薫さんは、本当に不思議な方ですわ。明るくて、元気いっぱいで、人のスペースに入り込んでくる癖にいつの間にか馴染んでて・・・」

 

「狂三・・・」

 

「わたくしには、絶対に成し遂げなければならない事がありますの。絶対に立ち止まれない・・・。

 

ですが・・・・・・薫さんに出会ってから、立ち止まってしまいました・・・・・・立ち止まってしまうくらい、大切になっていましたの」

 

 

「・・・・・・」

「ごめんなさい、しんみりとしてしまいましたわね。さぁ士道さん、飲み終えたら案内の続きをお願いいたします」

 

立ち上がる二人。士道は薫の事について話している狂三の表情が鮮烈に印象に残っていた。その表情は、とても優しい笑顔だったから。

 

ちなみに、折紙は士道の飲んだ空き缶を無意識に手に入れようとして、十香達に止められた。

 

 

その後、保健室や音楽室等を案内し、士道による案内は終わり二人は帰宅するために別れたのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

案内を終えた後。士道は十香、栞、折紙、耶倶矢、夕弦の六人で帰宅していた。

 

五河家と精霊マンションは隣同士であり、栞の住む家も五河家から歩いて二~三分の距離である。

 

折紙の家も士道の家の方向にあるため、このメンバーで帰ることが当たり前になっていた。

 

「今日の晩飯は・・・・・・そうだな、ハンバーグにするか」

 

「おおっ!!それは本当かシドー!!」

『あ、私も賛成よ』

 

「あらゆる肉の集いし、旨味の塊・・・食する事で贄となりし者達の供養としよう」

「解説、ハンバーグに賛成とのことです。勿論、夕弦も賛成です」

 

「もし良ければ、栞と折紙もどうだ?一緒に晩飯にしないか?」

 

「良いの?ありがとう。お母さんは今日、病院に泊まり込みで仕事だから適当に済ませようと思ってたけど、ご馳走になるね」

 

「私も良いかな。家に帰っても一人だし」

 

 

喜ぶ十香と、士道が付けっぱなしのインカムを通して琴里も賛成の意を示す。

 

他の面々も賛成。これで五河家の晩御飯はハンバーグに決定した。

 

その時、士道達に青い髪のポニーテールに泣きぼくろが特徴の、琴里と同じくらいの少女が声をかけてきた。

 

「す、すみません!ちょっとよろしいですか?」

「ん?」

 

少女は首のペンダントの中と、士道を交互に見る。

 

「ま、間違いねーです・・・・・・この人が、この人が私の・・・・・・!」

 

そして少女は、まるで親しい仲を想像させるように表情を明るくする。

 

「・・・・・・に・・・・・・に!」

 

「に?」

 

「「「「「に?」」」」」

 

『・・・・・・に?』

 

「兄様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

少女は士道のことを兄様と呼び、士道の首に両腕を回し、士道の胸へと飛び込む!

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

士道達の驚愕の叫びが、辺りに響き渡った。

 

「・・・あ!し、失礼しやがりました!突然抱きついてしまって・・・ごめんなさいです」

 

少女は我に帰ったようにハッとなり、士道から離れて頭を下げて謝罪する。

 

「えっと、大丈夫だけど・・・君は?」

 

「はい、私は崇宮 真那と申します。それで、私はあなたの妹・・・正確には実妹です!

 

血の繋がりという確固たる絆を持つ関係でいやがります!」

 

『実妹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』

 

再び、真那以外の驚愕の叫びが、辺りに響き渡った。真那はその叫びを気にせず、士道に言う。

 

「このペンダントの中にある写真・・・この写真の人は私の兄様・・・つまりあなたでいやがります」

 

真那は自分の胸からペンダントを取り出す。そこには、幼い頃の士道と真那を思わせる二人の人物の写真があった。

 

「これは・・・・・・俺、なのか?」

 

「はい!間違いなく兄様でいやがります!」

 

士道達は真那のペンダントを見たが、それは確かに士道の顔だ。一桁後半の年代の幼い自分を彷彿とさせる。

 

真那は目に涙を溜めて、心からの嬉しさを言葉にして士道に伝える。

 

「ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様が何処かへ行ってしまったことだけは覚えています。

 

兄様のことが心配でしたが、こうして兄様と出会うことができて、真那は幸せなんです!」

 

そう言って、真那はもう一度士道に抱きつく。士道もそれを否定せず受け入れた。

 

何故だか真那を一目見た瞬間、士道も懐かしさを抱いた。そして嘘を言っていないと直感的に理解できた。

 

故に、士道は琴里にするように優しく頭を撫でる。真那は一瞬驚きながらも、嬉しそうに受け入れる。

 

 

 

 

その光景に琴里が、嫉妬の炎を"超・爆発"させている事に気付かないまま。




次回予告

琴里と真那、義妹と実妹の熱き戦いが始まる!
一方、令音と神無月は幻夢コーポレーションで、とある人物と接触する。


第三話 義妹実妹Battle!


「義妹と実妹、どっち派でいやがるのですか!?」


ーーーーーーーーーー


ついに士道と真那が出会いました。次回は妹同士の戦いです。

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