EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~ 作:エルミン
今回の最初では変身した状態で戦いが始まりますので、ご了承ください。
雨が降る中で、エグゼイドに変身した士道と怪人態になったグラファイトの戦いが始まった。
士道が走り、接近してガシャコンブレイカーを降り下ろす。
グラファイトはそれを難なく避けるが、士道はすぐに体を回転させて横に切り、追撃を行う。
その追撃をグラファイトはすぐに構えた短剣で防ぎ、士道の胴を蹴る。
士道は後ろに吹っ飛びながらも、倒れず踏ん張り止まり、そのまま走る。
「はぁ!」
「甘い!」
士道の攻撃を難なくかわし、横からキックで攻撃。更に体制を崩した士道にパンチを数回当てて、回し蹴りで士道を倒す。
「そんなものか?ならば、さっさと終わらせる」
「んなわけ・・・ねぇだろ!」
士道はドラゴナイトハンターZガシャットを取り出し、起動した。
《ドラゴナイトハンターZ!》
音声と音楽、タイトル画面が表示され、タイトル画面から他のゲーマよりも大きいハンターゲーマが出現。その姿はまさにドラゴン。
ゲーマドライバーのレバーを閉じて、空いているスロットに入れ、再び開く。
「第五変身!」
《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!》
《アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンターZ!!》
ハンターゲーマが士道の全身に付き、合体が完了した。
エグゼイド、ハンターゲーマー・レベル5になった。
だが・・・・・・。
「がっ・・・・・・!?」
変身した直後、士道はハンターゲーマからもたらされる力が大きすぎる事を実感した。
士道の全身に電気が走る。
今までにない感覚。まるで自分が大量の空気を送られ続ける風船になったようだ。そして、限界はすぐにやって来た。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
大きな雄叫びを上げると、風船が割れて空気が周囲に弾けるように力があふれでて、周囲に爆発が起こった。
「何!?」
「きゃっ・・・!?」
グラファイトと四糸乃は士道の暴発に驚いた。しかし、驚く暇もなく士道が叫びながらグラファイトに襲いかかる。
走りながら左腕の銃からエネルギー弾を放ち、接近したところで右手の剣で切りつける。
それも力任せに振るう、とても良いとは言えない強引な太刀筋だ。グラファイトは全てを短剣で防ぎ、背中の武器を手に持って攻撃する。
しかし、士道は防御せず目の前のグラファイトを攻撃し続ける。
その戦い方は荒々しく、とても今まで通りとは思えない。それも当然だ。士道は今、ハンターゲーマの力を制御できずに暴走しているからだ。
「オォォォォォォォォォォォォォ!!」
「くっ、今のエグゼイドは獣か!だが・・・限界も近いか?」
グラファイトの言うとおり、今の士道は暴走状態。士道自身の限界は近い。
しかし、今の士道はお構いなしに暴れる。両腕の武器から放たれる攻撃でグラファイトを攻めていく。
右腕の剣から真空刃を複数放つ。
グラファイトはそれを難なく避けるが、いくつかは四糸乃が隠れている場所の近くに当たる。
「きゃあぁぁぁっ!」
四糸乃は悲鳴を上げて、体を小さく縮こませる。四糸乃には当たらなかったが、下手をしたら・・・・・・。
「・・・あ・・・?」
変身が解ける前、四糸乃の悲鳴を聞いた士道は理性を取り戻し・・・四糸乃のいる場所が目に入り、それが自分のせいで出来たことを理解した。
「俺・・・・・・が・・・・・・?」
「ふん・・・黒龍剣!」
グラファイトは呆然とする士道に、双刃にエネルギーを溜めて、X字の黒い斬撃を飛ばす。
呆然としていた士道は対応が遅れてまともに受けてしまい、大きなダメージを受けて変身が解け倒れてしまう。
グラファイトはつまらなそうにため息を吐き、そのまま去っていった。
四糸乃は倒れている士道の方に歩み寄る。士道は体が傷だらけで、体力もほとんど残っていない。
制御が出来ず、暴れまわった代償だ。
「だ、大丈夫・・・ですか・・・・・・?」
「・・・・・・ごめん、四糸乃・・・・・・君のいた周りがあぁなってるのは、俺が・・・・・・俺のせいで・・・・・・」
士道は理解していた。自分がドラゴナイトハンターZの力をコントロール出来なかったせいで、四糸乃に危害を加えそうになっていた事を。
今回は士道本人が直接四糸乃に攻撃をする事はなかったが、その可能性もあったのだ。
「し、士道さん、は・・・悪くない・・・です。私は、大丈夫です・・・から・・・」
「・・・ちくしょう・・・・・・!」
守ると決めた相手を守るどころか、危害を加えそうになっていた事。ドラゴナイトハンターZの力を制御出来なかった事。
それらは全て、自分が弱いからだ。そう思い込んでしまっていた。
そして士道は限界を迎え、気を失った。
ーーーーーーーーーー
その後。四糸乃が意思と関係なく
病院にはバグスターウィルスに感染した多くの人々が搬送されていた。
病室にも入りきらず患者用のソファや廊下等にシーツをひいて、そこに寝かせて対応に当たっていた。
士道が目を覚ました時、既に翌日になっていた。栞と折紙は既に、グラファイトの捜索に当たっていて不在だった。
士道は起きてすぐにグラファイトを探そうとする。すると、剛太とエレナが入ってきて士道を抑える。
忙しい折紙や栞に変わって様子を見に来たが、士道が起きてすぐに行動を起こそうとしたので、慌てて抑える。
士道はまだダメージや疲労が残っており、万全では無いのだ。
「し、士道君!また寝てないと駄目よん!」
「離してください!このままじゃあグラファイトが・・・四糸乃が!」
「落ち着くのよ!今のあなたが行っても力になれないわ!」
「俺じゃないと駄目なんです!バグスターを倒すのも、恭太郎先生を救うのも、精霊を救うのも、俺がやらないと!」
士道は聞く耳を持たず、自らが行こうと暴れる。
グラファイトを倒せず、四糸乃を守るどころか一歩間違えれば傷つけていたかもしれない。
そのショックから、今の士道は完全に冷静さを失っていた。
その時、ドアが開いて日向 恭太郎が入ってきた。フラフラしながらも士道の元に向かう。
「せ・・・先生!?」
「審議官、まだ寝ていないと!」
「・・・すまない、士道君の声が聞こえて・・・どうしても言いたいことがあるんだ」
恭太郎は真っ直ぐに士道を見て、ハッキリと告げる。
「士道君、今の君は間違っている」
「え・・・・・・」
「医者とは、一人で一人の患者を治療するだけではない。時には、複数人の医者同士でチームを組んで一人の治療に当たることがある。
チーム医療というものだ。高い腕を持つドクターでも、同じドクター同士で連携しより困難な病気や怪我を治す。
ドクターも、仮面ライダーも、どんなに凄い知識や技術に力があっても、一人きりで出来ることは少ない。
だからこそ・・・そういう時こそ、他の皆と力を合わせ共に戦うべきなんだ」
「・・・・・・俺は・・・・・・全部を一人で・・・・・・」
宗次郎はそっと士道の頭に手を置く。
「士道君。何でも一人でこなそうとすることは、誰にも頼らないということは、強いということではない。それを・・・忘れないでくれ」
恭太郎がそこまで語った所で具合が悪くなり、剛太とエレナが病室へ戻す為に付き添う。
その前に、剛太も士道に言う。
「私が言おうとしていた事は審議官が言ってくれたわん。私から言うことがあるとすれば・・・あなたは一人じゃない」
三人出て、士道一人になった。士道は恭太郎の言葉で自分が間違っていた事を自覚し、深く落ち込んでしまった・・・。
ーーーーーーーーーー
十香は、剛太から連絡を受けてCRに来ていた。そこで、顔を俯かせ座ったままの士道を見つけた。
十香はそっと歩み寄り、士道の隣に座る。剛太から士道に何があったかを聞いていた十香は、士道を元気にしなければ!と意気込んでここに来た。
「シドー・・・大丈夫か?」
「・・・・・・十香」
十香の声に反応する士道。その声も沈んでいて暗い。
そんな士道を見た十香は、何も言わず、そっと士道を抱きしめた。
「シドー・・・・・・」
十香は士道を優しく抱きしめたまま、そっと頭を撫でる。すると、士道はポツポツと言い始めた。
「何が・・・何が天才ゲーマーだ。何が恭太郎先生を救うだ。何が精霊の運命を変えるだ。何が四糸乃のヒーローになるだよ。
一人で意気込んで、勝手に動いて、口で格好いい事を言っておきながら、ただ情けねぇばかりじゃねぇか・・・!」
「・・・・・・シドー。大切な人が危ない目にあってしまって、慌ててしまったのだな」
十香は士道に優しく、自分の気持ちを伝える。
「シドー、一人で全てを抱え込む事はしないでくれ。力を借りたい時は遠慮なく言ってくれ。
精霊の力を封印された私は満足に戦えない、きっと大した事はないかもしれない。
だが、私はシドーを信じて支える。それが出来るように全力を尽くす。
シドー、もうお前は一人で戦うのではなく、皆が一緒だ。シドーが私達を守り支えてくれるなら、私もシドーを支える。約束するぞ」
「十香・・・・・・」
「うむ・・・・・・」
十香に寄り添いながら静かに泣く士道。士道を優しく包む十香。その温もりは、士道の心を癒し救っていく・・・。
暫くしてから、士道は十香から離れる。
「ありがとう、十香。俺はもう大丈夫だ」
「本当か!?」
「あぁ、本当だ」
「本当の本当に、本当か?」
「本当の本当に、本当だ!」
「「・・・・・・あははははは!」」
お互いに笑い合う。士道はもう先程のような暗い感情は無くなっていた。
「十香・・・恭太郎先生、昔俺を助けてくれた先生に謝ってお礼を言いたいんだ。一緒に来てくれ」
「うむ!」
まだ万全では無いため、士道は十香に寄り添ってもらいながら、恭太郎の所に。
そして、恭太郎に十香を紹介してから、士道は恭太郎に頭を下げた。
「・・・先生、ごめんなさい。俺が間違ってました。これからは皆と一緒に戦います。
皆が俺を支えてくれるように、俺も皆を支えて一緒に戦う・・・そのようにしていきます」
今までの士道と違い、悩みもなくなりいつも以上に凛々しくなった士道。
そんな士道を見て、三人は心から安心した。
「良かった・・・今の士道君なら安心出来るな。頼む士道君。精霊を、感染者の人々を・・・私を助けてくれ」
「はい、俺達が必ず!」
「あぁん!士道ちゃん素敵だわーん!」
「本当に・・・」
士道と十香は、一緒に病室を出た。次に向かうのは栞達の所だ。
その途中、士道は内心でドラゴナイトハンターZのガシャットについて考えていた。
(ドラゴナイトハンターZは、本来は四人プレイが可能なゲーム。一人プレイも可能だが、二人以上で遊ぶ事を前提とした難易度になっている・・・)
(そのゲームのガシャットならば、ガシャットにだって複数人プレイのモードがあるはずだ。そうすれば、ハンターゲーマの力をコントロール出来るはずだ。
確か・・・ゲーム版のドラゴナイトハンターZは複数人プレイをするには、ゲームの序盤で・・・・・・)
ここまで考えて、士道は思い出した。ドラゴナイトハンターZの四人プレイをするにはどうするかを。
(そうだ、思い出した!・・・・・・でもそれをやると、栞達が嫌な思いをするかもしれないが・・・・・・でも、やるしかない!)
ーーーーーーーーーー
暫くして、CRの会議室に戻った士道と十香。そこには栞と折紙と狂三。さらに琴里と令音も来ていた。
「士道!・・・大丈夫?」
「あぁ、もう大丈夫だ。それと・・・・・・皆、ごめん」
士道は皆に深く頭を下げ、謝罪した。
「俺、宗次郎先生やハーミット・・・四糸乃を助ける事で頭が一杯で、皆を頼らなかった。
俺がやらなきゃ・・・じゃなくて、"皆で力を合わせて"じゃないといけないのに、一人で突っ走って・・・・・・ごめん。
皆、改めてお願いしたい。グラファイトを倒して、宗次郎先生を救い、四糸乃を救いたい。一緒に戦ってほしい」
士道の謝罪の言葉を聞いて、誰よりも早く動いたのは琴里だ。
琴里は士道との下がっている頭に拳骨をお見舞いした。
「いっ!?」
「言うのが遅い!!」
痛む頭を抑えながらも上げると、琴里は目に涙を溜めている。相当心配をかけてしまったのだ。
「ちゃんと頼ってよ!フラクシナスの皆は、令音は、私は!士道の力になりたい!
精霊との交渉やデートだけじゃない、バグスターとの戦いだって、バグスターウィルス感染者を救う事だって!私達も力になれる!」
「あぁ、ごめん。そしてありがとう、琴里。早速だけどお願いしたい」
「えぇ、何でも言って」
「四糸乃は手に白いウサギのパペットを付けているけど、今はそのパペットを・・・よしのんっていうんだが、それを無くしてしまっている。
天宮市のどこかにあるはずだ、それを見つけてほしい」
「了解よ。クルー総出、自立カメラや探索機もフル稼働で探すわ!」
「・・・・・・言い顔になったね、シン。格好いいよ」
「令音。早速行くわよ!一秒でも早く見つけるわ!」
「・・・了解した」
琴里は士道の頼みを了承。令音は士道の頭を優しく撫でてから、CRを出た。
「十香。もしかしたらこの先、四糸乃やASTを止めるために戦う可能性もある。そうなったら・・・」
「私も戦うのだな?任せるが良い!必ずシドーの力になる!・・・ふっふっふ、覚悟しろメカメカ団!」
もうASTと戦う気マンマンな十香を落ち着かせて、士道は栞、折紙、狂三に向き合う。
「そして、栞と折紙と狂三。三人には重要な事を頼みたい。皆に嫌な思いをさせてしまうかもしれないけど、どうしても必要な事なんだ」
士道は軽く深呼吸してから、三人にハッキリと言った。
「俺と戦ってくれ」
次回予告
士道の提案により、栞と折紙と狂三は士道一人と戦うことになる。
一方、よしのんの捜索も進む中、四糸乃は・・・。
第5話 ドラゴンをHuntせよ!
「どうした・・・?もう終わりかよ?」